結絆達がセブンスミストの事件を解決した翌日、学園都市は相変わらずの晴天だった。
じりじりと照りつける太陽が、夏の暑さを感じさせる。
なお、結絆は自身の能力の影響で暑さや寒さへの耐性はかなり高いので、いつもと変わらずに過ごしている。
結絆が通う高校でも、そろそろ夏休みが目前に迫っており、クラスメイトたちもどこか浮足立っていた。
教室の窓際では、青髪ピアスが「海かプールかでリア充度が変わるんやで!」と熱弁をふるっている。
「はぁ? そもそも彼女がいなきゃリア充もクソもねぇだろうがにゃー」
隣で呆れた顔をしているのは土御門元春だ。
彼もまた夏休みの予定を考えているのか、腕を組んで天井を仰いでいた。
「皆は、夏休みの予定とか決まってるのかい?」
結絆が何気なく問いかけると、青髪ピアスが勢いよく振り返った。
「もちろん! ワイはビーチでナンパ三昧の予定や!」
「はいはい、捕まらないようにねえ」
さらりと流すと、今度は土御門が笑いながら口を開く。
「俺はちょっと舞夏と飯でも食いに行く予定ぜよ」
「ふーん。そっちは真面目なデートかい?」
「それはどうかにゃ~」
結絆は肩をすくめた。その横では、上条当麻が机に突っ伏してため息をついている。
「はぁ......俺に夏休みなんてないんじゃないかって気がしてきた......」
「補習?」
「補習......」
上条は虚ろな目で頷く。
そんな彼の肩を、土御門がドンと叩いた。
「ま、頑張れよ。補習組には俺らが差し入れでも持ってきてやるぜよ」
「なんか余計に傷が広がりそうなんだが......」
そんなやり取りをしていると、教室のドアが開いた。
小萌先生が教科書を抱えて入ってくる。
「みなさーん、席についてくださいねー」
その声に、浮かれていたクラスメイトたちが慌てて席に戻る。
夏休み前とはいえ、授業はまだ終わっていない。
結絆も気を引き締めて、ノートを取り出した。
そんな、学園都市の高校生らしい、なんでもない夏の一幕だった。
授業が終わり、結絆は校門の前で待っていた操祈と合流した。
彼女は相変わらずのゆったりした口調で微笑みながら近づいてくる。
「お兄様ぁ、今日も暑かったわねぇ。帰りにどこか寄り道しない?」
「いいねえ。じゃあ、どこか涼しいところで話そうか」
二人は近くのカフェに入り、冷たい飲み物を注文すると、結絆はふと思い出したように話を切り出した。
「そういえば、最近レベルアッパーっていうのが噂になってるらしいなあ」
「ん~、まあそれなりに情報は入ってきてるけどぉ......お兄様はどう思う?」
「まだ詳しくは知らないけど、能力者が急に暴走する事件が増えてるのは事実みたいだねえ」
操祈はストローをくるくる回しながら、少し考える素振りを見せた。
「確かにねぇ。能力が急に強くなるって話もあるしぃ、何かしらの方法でレベルアップできる手段があるのかもしれないわねぇ。でも、それが安全かどうかはまた別の話だけどぉ」
「......やっぱりねえ、そんな簡単に能力が上がるものじゃないよねえ」
「そうよねぇ。それにしても、お兄様がこんなことを気にするなんて珍しいわねぇ?」
「......なんとなく、気になっただけだよお」
結絆はグラスの水滴を指でなぞりながら言葉を濁した。
結絆は、どこぞのツンツン頭と違って積極的に事件に首を突っ込む体質ではない。
しかし、今回の事件は自身の根幹にかかわるものだと結絆は思っていた。
そして、しばらくレベルアッパーについて話した後、操祈が突然、にやりと笑った。
「ねぇねぇ、話は変わるんだけどぉ......当麻とのデートプラン、ちょっと相談に乗ってくれないかしらぁ?」
「ほう!?」
結絆は思わず飲み物を吹き出しそうになった。
話題の変更力が強すぎる。
「いや、別にいいが......デートって、また急にどうしたんだい?」
「ちょっとした計画なのよぉ♪ せっかくの夏休みだしぃ、当麻の意識をもっと私に向けさせるチャンスかな~って思ってねぇ」
「......それ、普通にデートじゃなくて作戦の一環じゃないのかい?」
「細かいことは気にしないの♪ それでねぇ、どんなプランが効果的かしらぁ?」
結絆は考え込む。当麻と操祈が二人とも楽しめる場所を考えてみることにする。
「まあ、ストレートに遊園地とかかねえ? 夏ならプールもアリかもしれないねえ」
「ふむふむぅ......なるほどねぇ。参考にさせてもらうわぁ」
操祈は満足そうに頷いた。
「じゃあ、また計画を練るわねぇ♪ ありがと、お兄様♡」
「はいはい、健闘を祈るよお」
二人は軽く笑いながら、カフェを後にした。
夏休み前の学園都市は、まだまだ騒がしくなりそうだった。
前半は高校の話、後半は兄妹の会話を書きました。
当麻の補習については操祈がどうにかすると思います。
そして、当麻と操祈のデートの話はしばらく先です。