食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回で、一方通行編は終わりです。

タイトル通り、結絆が学園都市統括理事会の一人になります。


結絆、学園都市統括理事会の一人になる

 エスコフィエ号の事件を片付けた後、結絆はすぐに亡本裏蔵の居場所を特定した。

 

統括理事会の一員である彼は、今もどこかで学園都市の支配を謀るために暗躍している。

 

「......さあ、会いに行くとしようかねえ」

 

結絆は微笑みながら、静かに夜の学園都市へと消えていった——。

 

 

 

 「クソッ、まさかこんなことになるとは......!」

 

高級車に乗りながら移動している亡本裏蔵は、焦りを露にしながら後方を見る。

 

夜の学園都市を駆け抜ける高級車の背後からは、一人の人間が猛スピードで迫ってくる。

 

「......あれが食蜂結絆か」

 

亡本は震える手で拳銃を握りしめながら、ルームミラー越しに背後の影を睨んだ。

 

彼は学園都市の統括理事会の一員であり、今まで誰もが逆らえなかった存在。

 

しかし、今日という日は違う。

 

普段使っている学園都市の地下を走る列車は、ドリームのメンバーが既に破壊しており利用することはできない。

 

「......あの化け物を、止める方法はあるのか......?」

 

亡本の脳裏に、エスコフィエ号での惨劇がよぎる。

 

あの船をたった一人で沈めたのが、今自分を追っている男——食蜂結絆。

 

(......いや、まだだ。学園都市統括理事会の座を守るためには......)

 

「おっと、どこまで逃げる気かねえ?」

 

突如、結絆の声が、車の上から聞こえた。

 

「......!?まさか、追いついたというのか」

 

「そんなゆっくり走ってたんじゃ、すぐに追いつかれちゃうよお」

 

亡本が驚愕する間もなく

 

ガコン!!

 

「なっ......!?」

 

突如、車体が大きく浮き上がる。

 

「ひぃっ!」

 

車の運転手が怯えの表情を露にする。

 

結絆は、車をゆっくりと持ち上げて、そのままぶん投げた。

 

亡本のリムジンは路上を跳ねながら制御不能になる。

 

そして——

 

ズガァンッッ!!

 

リムジンは派手に横転し、歩道のガードレールに突っ込んで動きを止めた。

 

蒸気と煙が立ち込める中、亡本は朦朧とした意識のまま、ゆっくりと車のドアを開けた。

 

「ぐっ......」

 

全身の痛みを堪えながら這い出ると、目の前に立つ男がいた。

 

食蜂結絆。

 

「いやあ、派手に逃げ回るもんだねえ」

 

彼は軽く肩をすくめながら、にこやかな笑顔を浮かべる。

 

「......く、くそっ......!」

 

亡本は拳銃を抜き、結絆に向ける。

 

しかし、引き金を引いたところで彼を殺すことができるはずがなかった。

 

「俺に銃を向けるなんて......いやいや、随分と肝が据わってるじゃないかねえ?」

 

銃弾は結絆に命中したが、結絆には傷一つつかない。

 

「馬鹿な......!?か、怪物め......!」

 

「そんな怪物に、今からお前は殺されるんだよお」

 

結絆はスッと近づき、亡本の顔を覗き込む。

 

「これは、処刑だよ」

 

「ま、待て、統括理事長がこんなことを許すと思っているのか!」

 

「アレイスターから許可は貰ってるよお、残念だったねえ」

 

「あ、ありえん......」

 

「お前はやりすぎたからな、楽に死ねると思うなよ」

 

バシャアアアッ!!

 

水が爆発したような音が響き、亡本の全身が一瞬で水の中に沈む。

 

正確には、水の檻に閉じ込められたのだ。

 

「溺れ死ぬってのはねえ、結構苦しいもんだよ?」

 

結絆は楽しげに言いながら、水の檻を弄ぶ。

 

亡本は必死に水を掻こうとするが、水槽の内側はまるでゴムのように伸縮し、上へ逃げることすら許されない。

 

ぐぼっ、ぶぼぼぼっ......!!

 

必死にもがく亡本の表情は恐怖と絶望そのものだった。

 

「さて、時間切れだねえ」

 

結絆が指を振ると、水の檻が一瞬で消え去った。

 

亡本の身体は地面に崩れ落ち、既に息絶えていた。

 

「ふぅ......ま、こんなもんかねえ」

 

結絆は亡本の死体を見下ろしながら、軽く肩を回す。

 

「さて......学園都市の統括理事会、ひとつ席が空いたねえ」

 

 

 

 翌日。

 

学園都市統括理事会の議場にて——

 

「......本日をもって、亡本裏蔵に代わり、新たな統括理事会の一員として食蜂結絆を迎えることが決定された」

 

統括理事会の一人の言葉とともに、拍手が起こる。

 

結絆は微笑みながら、議席へと座る。

 

(これで、学園都市の表と裏、どちらにも手を伸ばせるってわけだねえ)

 

彼の眼は、すでに次の計画を見据えていた。

 

 

 

 ドリームの拠点のマジックシアター

 

薄暗い部屋の中、ソファや椅子に腰掛ける複数の影。

 

そこに、ゆったりと歩みを進める一人の青年、食蜂結絆がいた。

 

「......さて、と。今日はちょっとした報告があってねえ」

 

結絆が軽く指を鳴らすと、そこにいたドリームのメンバー達が注目する。

 

「俺は、統括理事会のメンバーになったよお」

 

その言葉に、室内の空気が一瞬固まる。

 

「......は?」

 

最初に反応したのは、蜜蟻愛愉だった。

 

彼女は目を細めながら、結絆の言葉の真意を探るように睨みつける。

 

「いくらアナタでも、それは冗談にしては度が過ぎてるんじゃないかしらあ?」

 

「冗談じゃないよお。亡本裏蔵を始末したら、その枠が空いたからねえ。どうせなら俺が入っておいた方がいいと思ってさあ」

 

結絆は軽く肩をすくめる。

 

「つまり......学園都市の権力の頂点に、結絆さんも片足を突っ込んだってこと?」

 

警策看取が腕を組みながら言う。

 

その声色は驚きよりも、どこか懐疑心を帯びていた。

 

「まあ、そんなところだよお」

 

結絆の言葉を聞き、蜜蟻は小さく息を吐いた。

 

「結絆クンは本当に凄いわよねえ。私達も活動を始めてから長くなるけどお、いよいよ来るところまで来たってことよねえ」

 

「そうだねえ、ここまで来れたのは皆のおかげだよお」

 

結絆はニヤリと微笑むと、ゆっくりと椅子に腰掛けた。

 

「それと、実はねえ......ドリーを助ける方法が、見つかるかもしれない」

 

その言葉に、ドリームのメンバー達の表情が変わる。

 

「......どういうこと?」

 

「統括理事会に入ったことで、俺は学園都市の極秘研究にもアクセスできる立場になった。おかげで今まで手の届かなかった情報も手に入るようになったからねえ。それに......」

 

結絆は、視線を蜜蟻達へ向ける。

 

「皆も知ってるだろうけど、学園都市には世に出せないような研究が山ほどある。今までは上の連中の意向でどうにもならなかったけど......俺がその立場にいるなら、話は違う」

 

結絆は、淡々とそう語る。

 

「結絆クン......無理だけはしないでねえ......」

 

蜜蟻の声には、普段の余裕が感じられなかった。

 

「わかってるよお、俺は皆を置いて死ぬつもりはないし、やりたいこともまだまだたくさんあるからねえ」

 

結絆は静かに答えた。

 

蜜蟻達は黙ったまま、結絆を見つめていた。

 

その目には、抑えきれない感情が渦巻いている。

 

「......結絆さん。絶対に一人で何でもしようとはしないでね!ドリーを助けられたとしても、結絆さんが死んじゃったら意味はないんだよ」

 

警策も、蜜蟻と同様に結絆の方針に賛成しつつも結絆のことを気遣う。

 

「そうだねえ、ここからが正念場だ。皆、これからもよろしく頼むよお」

 

結絆は軽く笑ってみせる。

 

蜜蟻達はまだ何かを言いたげだったが、それ以上は言葉を発さなかった。

 

ドリームのメンバー達との日常、それが結絆の最も大切にしていることであると知っているのだから。




今回はここまでです。

次回からは、オリジナルストーリーをいくつか挟んだ後に、白井黒子編という流れになります。

オリジナルストーリーは、結構長めです。
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