食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回は、結絆と帆風が、鏡の国の南国の島や白銀の世界を旅する話です。




南国の島と氷の大地のお話

 南国の島に到着した結絆と帆風は、周囲の景色にしばし見惚れていた。

 

青い空、白い砂浜、そしてどこまでも広がるエメラルドグリーンの海。

 

まるで絵画のような光景に、二人は思わず感嘆の息を漏らした。

 

「結絆さん、ここ、本当に綺麗ですね......!」

 

「だねえ。せっかくだから、ちょっと探索してみようかあ?」

 

帆風も頷き、二人は島の奥へと足を踏み入れた。

 

木々の間を進むと、さまざまな種類のフルーツが実っているのが見えた。

 

見たことのない形をした果物も多く、結絆は興味津々で一つ手に取る。

 

「これ、食べてみるかい?」

 

「大丈夫でしょうか......?」

 

「まあ、俺が試してみるよお」

 

結絆は果実を軽く割り、口に運んだ。

 

甘酸っぱい風味が口の中に広がり、ジュースのように瑞々しい。

 

「うん、おいしいよお」

 

そう言って帆風にも渡すと、彼女も恐る恐る口に運び、目を丸くした。

 

「本当ですね!甘酸っぱくて、とても美味しいです!」

 

「この島、探索のしがいがありそうだねえ」

 

二人はフルーツをいくつか採りながら、さらに島を歩き回った。

 

そして海岸に戻ると、結絆は波の様子を見てニヤリと笑った。

 

「せっかくだから、サーフィンでもしてみようかあ?」

 

「えっ、サーフィンですか?」

 

「この波なら、きっと気持ちいいよお」

 

島には、偶然にも木製のサーフボードが流れ着いていた。

 

それを手に取り、結絆はさっと波に乗る。

 

帆風は最初は戸惑っていたが、結絆のサポートを受けながら何度かトライするうちに、徐々にバランスを取れるようになっていった。

 

「結絆さん、すごいです!こんなに楽しいなんて!」

 

「でしょお?風も気持ちいいし、最高だねえ」

 

波の上を滑る感覚を楽しみながら、二人はしばらくサーフィンを満喫した。

 

陽が傾き始めるころには、砂浜に戻り、しばし休憩する。

 

「こんなに楽しい時間を過ごせるなんて、思ってもいませんでした」

 

「旅の途中だけど、たまにはこういうのもいいよねえ」

 

帆風は静かに微笑み、結絆の隣に寄り添った。

 

南国の空気を味わいながら、二人はしばし穏やかな時間を過ごすのだった。

 

 

 

 南国の島の暖かな陽射しが降り注ぐ中、結絆と帆風は透き通る海の近くに腰を下ろしていた。

 

「せっかくだし、釣りでもしてみようか?」

 

結絆がそう提案すると、帆風は少し驚いたような顔をしたが、すぐに微笑んで頷いた。

 

「いいですね、結絆さん。どんな魚が釣れるのか楽しみです!」

 

二人は近くに生えていた木の枝を加工し、即席の釣り竿を作った。

 

糸の代わりに結絆が持っていた丈夫な糸を使い、釣り針には小さな貝のかけらをつける。

 

餌には、先ほど見つけた南国特有のフルーツを少し潰して使用することにした。

 

 「これで釣れるといいんだけどねえ。」

 

結絆が海に向かって釣り糸を垂らすと、帆風も隣で真剣な表情で釣りを始めた。

 

波の音が心地よく響き、二人はしばし静かな時間を過ごした。

 

「......あ、何かきました!」

 

帆風が声を上げると、竿の先が激しく揺れていた。

 

結絆もすぐに手伝い、二人で力を合わせて引き上げる。

 

現れたのは、鮮やかな赤と黄色の美しい魚だった。

 

「すごいねえ、南国らしい魚だ。」

 

その後も順調に釣りを続け、数匹の魚を釣り上げた。

 

夕暮れが近づいた頃、二人は釣った魚を調理することにした。

 

「火山の熱を利用すれば、効率よく料理できますね。」

 

結絆は以前利用した火山の岩場を思い出し、近くにあった温かい石の上に魚を乗せる。

 

さらに、南国のフルーツを刻み、果汁を魚に振りかけることで自然な甘みを加えた。

 

「これ、絶対おいしいですよ!」

 

帆風が嬉しそうに言いながら、焼き上がった魚をひと口食べる。

 

外は香ばしく、中はふっくらとした仕上がりになっていた。

 

結絆も一口食べると、自然の恵みが凝縮されたような豊かな味わいに思わず顔を綻ばせた。

 

「うん、いいねえ。南国の料理って感じがするよお。」

 

二人はゆっくりと料理を味わい、心地よい風を感じながら満足そうに微笑み合った。

 

食事を終えた後、二人は簡易的なテントを作ることにした。

 

ヤシの葉を重ね、木の枝を組み合わせることで簡易的な屋根を作る。

 

その下に柔らかい草を敷き、寝床を整えた。

 

「これで今日はここで休めますね。」

 

帆風が安心したように呟き、結絆の隣に座る。

 

波の音が穏やかに響く中、二人は並んで横になり、夜空を見上げた。

 

星が美しく輝き、潮風が優しく肌を撫でる。

 

「結絆さん、今日は楽しかったです。」

 

帆風がそっと呟くと、結絆は微笑みながら頷いた。

 

「うん、俺も楽しかったよお。」

 

静かな夜が更けていく中、二人はキスをした後に、穏やかな眠りへと落ちていった。

 

 

 

 朝日が水平線から昇り、南国の島全体を黄金色に染め上げる。

 

波の音と鳥のさえずりが響く中、結絆と帆風は島の散策を続けていた。

 

夜のうちに十分な休息をとった二人は、南国の豊かな自然を楽しみながら新たな発見を求めて歩いていた。

 

「結絆さん、あそこに何かあります!」

 

帆風が指差した先には、岩場の間にぽっかりと口を開けた洞窟があった。

 

洞窟の奥からはわずかに潮の香りが漂い、内部へと続く水の流れが見て取れる。

 

近づいてみると、洞窟の先には青く透き通った水中へと続く階段があり、その向こうには何やら人工的な構造物が見えた。

 

「海底遺跡......か。まさか、こんな場所にあるとはねえ。」

 

結絆は興味深げに洞窟の入り口を眺めながら呟いた。

 

二人は慎重に足を進め、水中へと降りていく。

 

結絆の持つ原典の力のおかげで、水中でも呼吸ができるように調整し、帆風の負担にならないようにしていた。

 

水路が張り巡らされた遺跡の内部は神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 

壁には古代文字のようなものが刻まれ、ところどころに苔や海藻が生い茂っている。

 

水流は一定の方向へと流れており、それに逆らわないように進むことで、無駄な体力を使わずに移動できた。

 

「この水の流れ、まるで道案内をしているみたいですね。」

 

「うん、何かの仕掛けかもしれないねえ。とりあえず、この流れに従って進んでみようか。」

 

結絆は帆風の手を引きながら、慎重に進んでいく。

 

水路の分岐点に差し掛かるたびに、水流の強さを感じ取りながら、より安全なルートを選んでいった。

 

やがて、大きな広間に辿り着いた。

 

中央には石造りの祭壇のようなものがあり、その周囲には柱が並んでいた。

 

しかし、その柱の一部は崩れており、天井からは光が差し込んで幻想的な光景を作り出していた。

 

「これは......儀式の場だったのかもしれないねえ?」

 

結絆は柱に刻まれた模様を見ながら推測する。すると、奥の方で何かがきらりと光った。

 

「結絆さん、あそこ!」

 

帆風が指差す先には、大きな鏡の破片が水底に沈んでいた。

 

二人は慎重に近づき、それを手に取る。

 

「また鏡の破片......何か関係があるのかなあ。」

 

「きっとそうですね。この遺跡自体も、鏡の国の異変と何か繋がっているのかもしれません。」

 

鏡の破片を手にしたことで、遺跡の奥へと進む道が開かれるかもしれない。

 

二人はさらに探索を続けることにした。

 

 

 

 この先に何が待ち受けているのか、結絆と帆風は、互いに頷き合いながら水中遺跡の奥へと足を進めた。

 

海底遺跡の奥深くへと足を踏み入れた結絆と帆風は、慎重に進みながら周囲を観察していた。

 

天井の隙間から差し込むわずかな光が、青く透き通った水路を照らし、静寂の中で水の流れる音だけが響いている。

 

「ここまで来ると、まるで別の世界みたいですね」

 

帆風が感嘆の声を漏らす。結絆もまた、周囲の幻想的な景色に目を奪われながら先へと進んでいく。

 

しばらくすると、水面が大きく波打ったかと思うと、突然、目の前に大きな青い影が現れた。

 

「......ん?」

 

結絆が警戒しながら目を凝らすと、それはなんと、ステンドグラスにも描かれていた浮き輪を付けた青色の鮫だった。

 

まるで人間のように表情豊かで、興味深げにこちらを見つめている。

 

「まあ!?なんだか可愛らしいサメですね」

 

帆風が微笑みながら言うと、鮫はまるでそれに応じるかのように、嬉しそうに水中でぐるりと回転した。

 

「もしかして、俺達をどこかへ案内してくれるのかなあ?」

 

結絆がそう問いかけると、鮫は大きく頷くように身体を揺らし、尻尾を振りながら水中を進んでいった。

 

まるで「ついてこい」と言わんばかりだ。

 

二人は顔を見合わせると、鮫の後を追って進んでいく。

 

鮫は流れの緩やかな水路を巧みに泳ぎ、迷うことなく進んでいく。

 

やがて、遺跡の最奥へと辿り着いた。

 

そこには、荘厳な装飾が施された大きな鏡が佇んでいた。

 

鏡の表面は波紋のように揺れ、まるで水そのもののような不思議な輝きを放っている。

 

「これは......」

 

「きっと次の場所へとつながる鏡ですね」

 

帆風がそう言うと、鮫は満足そうに頷き、口をぱくぱくと動かしながら二人を見つめた。

 

まるで「さあ、進め」と促しているようだった。

 

「ありがとう。おかげで助かったよお」

 

結絆が鮫の頭を軽く撫でると、鮫は嬉しそうに目を細めた。

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

帆風の言葉に頷き、結絆と帆風は意を決して鏡の中へと飛び込んだ。

 

次の瞬間、二人の身体はふわりと宙に浮いたような感覚に包まれた。

 

 

 

 目を開くと、そこには広がるのは白銀の世界だった。

 

「......寒いです」

 

帆風が思わず身を縮める。

 

目の前には、一面の銀世界が広がっていた。

 

雪が静かに降り積もり、遠くには氷の山脈が連なっている。

 

「どうやら、今度は氷の世界みたいだねえ」

 

結絆は息を白くなっていることに気付き、体を適応させて、その後周囲を見渡した。

 

足元の雪はふかふかとしており、歩くたびに心地よい感触が伝わってくる。

 

「温暖な南国の島から一気に冬景色......なかなか忙しいですね」

 

「そうだねえ。でも、次の鏡の手がかりを見つけるためには進むしかないか」

 

二人は再び歩き出した。新たな冒険が、今まさに始まろうとしていた。

 

 

 

 白銀の世界に足を踏み入れた瞬間、凍てつく風が結絆と帆風を包み込んだ。

 

息を吐くたびに白い霧となり、視界を曇らせる。

 

辺り一面は雪と氷に覆われ、空は灰色の雲に閉ざされていた。

 

静寂が支配するこの世界に、二人の足跡だけが新たに刻まれていく。

 

「......さ、さむいです......」

 

帆風は腕を抱え、体を縮こまらせながら震えた。

 

彼女の常盤台の制服はこの極寒の地では心許なく、僅かな時間で頬は赤くなり、手もかじかんでいるようだった。

 

「帆風、大丈夫かい?」

 

「は、はい......でも、少し......寒くて......」

 

その様子を見た結絆は、小さく息をついてから、自分が着ていた服を脱ぎ、帆風に差し出した。

 

「ほら、これを着なよ」

 

「えっ、でも......!そ、それじゃあ結絆さんが......」

 

「俺は平気だよお。息も白くなってないでしょお?」

 

結絆はにっこりと笑い、まるで平然としているかのように振る舞った。

 

実際、彼の能力“自己制御(セルフマスター)”は自身の体温調節すら自在に操ることができる。

 

極寒の地だろうと灼熱の大地だろうと、彼にとっては大した問題ではないのだ。

 

だが、それをわかっていても、帆風は困ったように視線を泳がせた。

 

「でも......」

 

「俺は平気だから気にしなくて大丈夫だよお。それよりも、帆風が凍えちゃう方が問題だからねえ。」

 

優しい口調で言いながら、結絆は帆風の肩にそっと上着をかけた。

 

温もりの残る布地に包まれた瞬間、帆風の震えが少し和らいだ。

 

「......ありがとうございます、結絆さん......」

 

帆風は申し訳なさそうにしながらも、結絆の厚意を断ることなく上着の前をしっかりと閉じた。

 

その瞬間、彼女の顔に安堵の色が広がる。

 

「よし、それじゃあ、少しでも温まるために歩き続けようかあ」

 

「はい......!」

 

帆風は結絆の言葉に力強く頷いた。

 

二人は雪を踏みしめながら、一歩一歩進んでいく。

 

結絆の上着に包まれた帆風は、さっきよりも確かに温かさを感じていた。

 

雪の降る静かな世界の中で、結絆と帆風の足跡が長く続いていった。

 

 

 

 白銀の大地を歩き続けた結絆と帆風は、やがて巨大な氷の城にたどり着いた。

 

その城は純白の氷でできており、陽光を受けて幻想的に輝いている。

 

氷柱が並び、天井からは無数の氷の結晶がぶら下がっていた。

 

 「ずいぶん立派な城ですね、結絆さん」

 

「そうだねえ。中に何があるのか、ちょっと気になるねえ」

 

二人は注意深く扉を開き、中へと足を踏み入れた。

 

内部は一層冷え込んでおり、吐く息が白くなる。

 

氷の床は滑りやすく、慎重に進む必要があった。

 

城の内部を探索していくと、広いホールの中央に大きな氷の彫像が並んでいた。

 

それぞれが異なる動物の姿をしており、まるで何かを守るかのように配置されている。

 

「まるで警戒されているみたいですね」

 

「うーん、もしかすると罠かもねえ」

 

結絆がそう言った瞬間、突然氷の壁の奥から黒い影が飛び出した。

 

その影は四足歩行の獣......ではなく、なんと二足で立ち上がった。

 

「グルルルル......」

 

それは犬のような姿をした格闘家だった。

 

筋骨隆々の体に、異様に大きな耳が特徴的だった。

 

耳はまるで盾のように分厚く、鋼のような強靭さを誇っていた。

 

「お前達、何者だ......」

 

「俺達はただ探索しているだけだけど......どうやら話し合いは無理そうだねえ」

 

犬の格闘家は返事をする間もなく、素早く地面を蹴って帆風へと飛びかかった。

 

その巨大な耳を鞭のように振るい、帆風の体を捕らえた。

 

「くっ......!」

 

帆風は耳に絡め取られ、そのまま空中へと放り投げられる。

 

壁に激突する寸前、結絆が瞬時に駆け寄り、帆風を抱き留めた。

 

「大丈夫かい、帆風」

 

「すみません......でも、あの耳、厄介ですね」

 

犬の格闘家は低く唸りながら、今度は結絆に狙いを定める。

 

耳を高速で振り回し、強烈な打撃を繰り出してきた。

 

「なるほどねえ、その耳が武器ってわけだ」

 

結絆は冷静に攻撃をかわしながら、反撃の隙を狙う。

 

しかし、犬の格闘家は驚異的な反射神経を持ち、結絆の攻撃をことごとく回避した。

 

「だったら、こっちも本気を出させてもらうよお!」

 

結絆は足元の氷を蹴り、瞬時に間合いを詰める。

 

そして、異空間から金属を取り出して、犬の格闘家に向けて放った。

 

結絆の攻撃は、犬の格闘家の耳を直撃した。

 

その衝撃でバランスを崩した犬の格闘家に、帆風が追撃を仕掛ける。

 

「はあっ!」

 

帆風の拳が犬の格闘家の腹部に命中し、勢いよく吹き飛ばした。

 

犬の格闘家は床に転がり、動きを止めた。

 

「ま、参った......お前達、強いな......」

 

犬の格闘家は荒い息をつきながら起き上がり、戦意を収めた。

 

「俺はこの城の守護者だ。侵入者かと思って攻撃したが......お前達は敵ではなさそうだな」

 

結絆と帆風は互いに顔を見合わせ、警戒を解いた。

 

「なるほどねえ。俺達は敵意はないよお。ただ、この世界の異変を調べてるだけさ」

 

犬の格闘家はしばし考えた後、頷いた。

 

「そうか......ならば、この先にあるものを探すといい。お前達が探しているものがあるかもしれん」

 

そう言って、犬の格闘家は奥へと続く扉を指し示した。

 

「ありがとう。行ってみるよお」

 

結絆と帆風は礼を言い、先へと進んでいった。

 

氷の城の奥には、一体何が待ち受けているのか──二人は緊張感を抱きながら、新たな冒険へと足を踏み入れた。

 

 

 

 氷の城の奥深く、結絆と帆風は慎重に足を進めていた。

 

城の内部は冷気が満ち、壁や天井にはつららがびっしりと生えている。

 

足元の氷の床は滑りやすく、注意を怠ればすぐに転倒しそうだった。

 

「結絆さん、この城......妙に静かですね」

 

帆風が辺りを警戒しながら言う。

 

確かに、ここまで進んできたが、敵の気配はほとんど感じられなかった。

 

それがかえって不気味だった。

 

「そうだねえ。罠でも仕掛けられているのかもしれないし、油断は禁物だよお」

 

結絆がそう言った直後だった。

 

突如、頭上の氷の天井が激しく砕け、赤い光が降り注いだ。

 

「ッ!?」

 

次の瞬間、巨大な影が二人を襲う。

 

咆哮とともに現れたのは、全身が燃え盛るような赤い鱗に覆われたドラゴンだった。

 

その鋭い爪が振り下ろされるのを見た結絆は、すぐさま帆風の腕を引き、間一髪で回避する。

 

「な、なんですか!?ドラゴン!?」

 

帆風が驚愕の声を上げる。

 

ドラゴンは空中を舞いながら口を開き、炎のブレスを吐き出した。

 

凍てついた城の内部とは対照的な灼熱の熱風が吹き荒れ、周囲の氷を一瞬で蒸発させた。

 

「やばいねえ......こいつは本気で殺しに来てるよお」

 

結絆は素早く距離を取りながら、時空間の原典を発動し、空間の裂け目から槍を取り出す。

 

それをドラゴンの翼に向けて投げ放つと、槍は見事に命中し、ドラゴンの動きが鈍った。

 

「帆風、隙を作るから、攻撃を!」

 

「はい!」

 

帆風はランペイジドレスを展開し、一瞬で結絆の隣から姿を消したかと思うと、ドラゴンの背後に回り込み、その鍛え抜かれた拳を叩き込んだ。

 

しかし、ドラゴンの鱗は異常なほど頑丈で、拳が弾かれてしまう。

 

「っ......硬い!」

 

「やっぱり、並の攻撃じゃ通らないよねえ。でも、弱点はあるはずだよお」

 

結絆は冷静にドラゴンの動きを観察する。

 

そして、強靭な鱗をまとった体に対し、唯一赤く光っていない部分——胸の中心に青白い核のようなものがあることに気付いた。

 

「あれだねえ......!帆風、俺がこいつの動きを止めるから、一気にそこを叩いてくれ!」

 

「分かりました!」

 

結絆は水の原典を発動させ、周囲の氷を操りながらドラゴンの体を縛り付けた。

 

一方、帆風はその隙を逃さず、最大限の力を込めた拳をドラゴンの核へと叩き込む。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

渾身の一撃がドラゴンの核に直撃すると、ドラゴンは悲鳴を上げ、赤い光を放ちながら消滅していった。

 

その場には何の痕跡も残らず、ただ静寂が戻るのみだった。

 

「......倒せたんですかね?」

 

帆風が息を整えながら確認する。

 

結絆は周囲を警戒しつつ、頷いた。

 

「うん。でも、ちょっと気になるねえ。普通の生き物じゃないみたいだったよお」

 

結絆の言葉通り、今のドラゴンはまるで誰かに作られた存在のように感じられた。

 

何者かが意図的に生み出し、結絆達を妨害しようとしていた可能性が高い。

 

「......この城には、まだ何かあるかもしれませんね」

 

「だねえ。もっと奥に進んで、何が待ち構えているのか確かめようかあ」

 

二人は決意を新たにし、再び氷の城の奥へと歩を進めた。

 

その先に何が待っているのか、まだ分からないまま。

 

 

 

 氷の城の奥へと進む結絆と帆風は、城の地下へ続く螺旋階段を見つけた。

 

階段を降りると、そこには広大なホールが広がっており、氷でできたシャンデリアが天井から吊るされ、淡い青白い光を放っていた。

 

だが、二人の視線を引いたのは、その中央に立つ異形の存在だった。

 

その存在は、黒いシルクハットと赤い裏地のマントを身にまとい、胴体も顔もない。

 

ただ、浮遊するマントの中に杖を持つ手だけが存在し、その手が優雅に宙を舞っていた。

 

「おやおや、お客人とは珍しい。こんな寒い場所までよくぞいらした。」

 

空間に直接響くような不思議な声がホールに満ちる。

 

杖を持った手がシルクハットの縁を軽く弾くと、シルクハットが宙を舞いながら回転し、その中からふわりと温かい湯気が立ちのぼった。

 

「......食べ物?」

 

帆風が思わず呟くと、シルクハットの中からは、芳ばしい香りが漂う料理が次々と現れた。

 

焼きたてのパン、こんがりと焼かれた肉、色鮮やかなスープ......どれも目を引くほど美味しそうだった。

 

「ふふふ、お腹が空いているのでしょう?どうぞ、遠慮なく召し上がれ。」

 

「......罠じゃないだろうな?」

 

結絆は疑念の眼差しを向けながら、警戒を解かずにいた。

 

「失礼な。これは私の精一杯のおもてなしですとも。」

 

マジシャンは宙を舞う杖を回しながらシルクハットを撫でた。

 

「さあ、どうぞ。」

 

結絆は慎重に料理の一つを手に取り、ほんの少しだけかじってみた。

 

そして、特に異常がないことを確かめると、帆風に向かって小さく頷いた。

 

「......本当に大丈夫みたいだねえ。」

 

帆風は少し迷いながらも、用意された料理に手を伸ばした。

 

スープをひと口すすると、口の中に優しい温かさが広がり、冷えた身体を内側から温めてくれるようだった。

 

「すごく美味しいです......!」

 

「でしょう?私はマジシャンですからね。」

 

マジシャンは誇らしげに杖を一振りし、さらにいくつかの料理をシルクハットから取り出した。

 

「良質な食事は人を癒し、心を豊かにする。さあ、存分に味わってください。」

 

結絆も料理を口にし、その味の深みに驚いた。

 

どの料理も絶妙な味付けで、香ばしさと旨味が絶妙に絡み合っている。

 

「これは......ただの料理じゃないなえ。君は、食材の持つ本来の力を引き出しているだろう?」

 

「流石ですね。」

 

マジシャンは軽く杖を振って見せた。

 

「私は料理を通じて魔法を紡ぐ者。美味しいだけではなく、身体を温め、力を与える料理を作るのが得意なのです。」

 

帆風はスープを飲み干し、少しずつ顔色を良くしていく。

 

「確かに、体がぽかぽかしてきました......。」

 

「それは良かった。」

 

マジシャンは満足げにうなずいた。

 

「さて、お腹も満たされたことですし、次の目的地へ進む準備はよろしいでしょうか?」

 

「......君は俺達の進む道を知っているのかい?」

 

結絆が問いかける。

 

「ええ、もちろん。あなた方が求めるものも、そしてこの氷の城が秘める秘密も。」

 

マジシャンは意味深に笑うと、杖を一振りした。

 

すると、ホールの奥にある氷の壁がゆっくりと開き、新たな道が姿を現した。

 

「さあ、この先へ進みなさい。」

 

マジシャンはシルクハットを優雅に浮かせながら言った。

 

「私の役目は、あなた方の道を開くこと。そして、ほんの少しだけ、旅の疲れを癒やすことです。」

 

結絆と帆風は顔を見合わせ、深く息をついた。

 

そして、意を決して開かれた道へと足を踏み入れた。

 

彼らの旅は、まだ続いていく。




鏡の国は色んな地形があるので、話を膨らませやすいですね。

調子に乗って書きすぎたので、話はまだ続きます。
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