食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回と次回で、鏡の国編はおしまいです。




鏡の世界の宇宙、そして最終決戦

 鏡の中へと足を踏み入れた瞬間、結絆の視界が大きく歪んだ。

 

まるで万華鏡の中に迷い込んだような感覚に襲われ、身体がふわりと浮くような錯覚に陥る。

 

我々の領域へようこそ。

 

誰かの声が聞こえた気がした。

 

そして——

 

「っ......!」

 

気づけば、結絆と帆風は暗闇の中に立っていた。

 

いや、立っているという表現が正しいのかすら分からない。

 

足元には何もなく、ただ果てしない宇宙が広がっているだけだった。

 

無重力の宇宙空間。

 

地球も、月も、太陽も見当たらない。

 

見渡す限り、光り輝く無数の星々が広がっている。

 

息ができない!?

 

「っ!? ここ......宇宙!?」

 

帆風が驚きの声を上げる。

 

「......おいおい、マズいんじゃないかい?」

 

結絆も眉をひそめた。

 

宇宙といえば、空気がない。

 

呼吸ができなければ、すぐに窒息してしまうはず——

 

しかし、

 

「......あれ?」

 

結絆はゆっくりと息を吸い込んでみた。

 

普通に呼吸ができる。

 

それどころか、胸いっぱいに満ちる空気は地上のものよりも澄んでいて、まるで清涼な水を飲んだかのように心地よかった。

 

帆風も自分の口元を押さえ、ゆっくりと深呼吸をする。

 

「......呼吸が、できてるんですよね......?」

 

「みたいだねえ」

 

二人は顔を見合わせた。

 

「ここは、普通の宇宙じゃないんだねえ......鏡の世界の宇宙、ってことかい?」

 

「おそらく......でも、不思議な場所ですね」

 

帆風はふわりと体を浮かせるように動かしながら、周囲の光景を見渡す。

 

青、赤、金色に輝く星々が、遠くで瞬いている。

 

地上から見る星空とは違い、それらの星々はすぐ手が届きそうなほど近くに感じられた。

 

結絆は軽く足を動かしてみる。

 

重力がほぼないため、体がゆっくりとふわりと浮いた。

 

まるで水の中にいるような感覚だったが、息苦しさはまったくない。

 

「......なんだか、宇宙遊泳してるみたいだねえ」

 

「確かに......」

 

帆風はくすりと微笑みながら、そっと手を伸ばした。

 

彼女の指先が、近くを漂っていた小さな光の粒に触れる。

 

——ひんやりとしていた。

 

「......これ、氷、ですか?」

 

帆風が不思議そうに呟く。

 

光の粒の正体は、小さな氷の結晶だった。

 

「へえ、宇宙の塵じゃなくて、氷か......。冷たくて気持ちいいねえ」

 

結絆も指先で氷の結晶をつまむ。

 

そのまま、そっと手を放すと、氷の粒はゆっくりと漂いながら、星の海へと消えていった。

 

 

 

 二人はしばらくの間、漂いながら周囲の星々を眺めていた。

 

ある星は、青白く輝き、冷たい氷の世界のように見えた。

 

また別の星は、深紅の光を放ち、まるで燃え盛る炎の塊のようだった。

 

どの星もそれぞれに個性があり、まるで宝石のように美しかった。

 

「なんだか、不思議な気分ですね......」

 

帆風が静かに呟く。

 

「こんなに近くで星を見られるなんて......地上では絶対にできないことです」

 

「確かにねえ」

 

結絆は腕を組みながら、ゆったりと星空を見上げる。

 

「星ってさ、普段は遠くから眺めるものだろう? でも、こうして近くで見ると......また違った感じがするねえ」

 

まるで、宇宙そのものが二人を包み込むかのような感覚だった。

 

「......いい景色だねえ」

 

「はい......」

 

二人はしばらく言葉を交わさず、ただ星々の輝きを静かに眺めていた——。

 

 

 

 宇宙の星々を眺めていた結絆と帆風だったが、突如として背後に違和感を覚えた。

 

「......ん?」

 

結絆が振り返ると、そこには三つの光がふわふわと浮かんでいた。

 

直径80センチほどの小型の円盤——UFOだった。

 

それぞれ銀色のボディを持ち、下部には青白い光が灯っている。

 

まるでホタルのようにゆっくりと点滅しながら、彼らの周囲を旋回していた。

 

「こいつはまた......奇妙なものが出てきたねえ」

 

「結絆さん、あれは......?」

 

「さあ、どうだろうねえ。とりあえず敵意があるかどうか見極めないと」

 

結絆が慎重に構えると、UFOのうちの一機が前方に滑るように移動し、甲高い電子音を発した。

 

ピピピ......シュウウウウ......

 

すると、UFOの側面に光が集まり、そこに奇妙な文字が浮かび上がった。

 

しばらくの間、文字は変化し続けたが、数秒後、見慣れた日本語に変換された。

 

『ついてこい』

 

 

 

 「......ついてこいってさ」

 

「どうします?」

 

「行くしかないよねえ。こんな宇宙で道に迷ったら帰れないからねえ」

 

UFOは二人が動き出すのを確認すると、ふわりと前進し始めた。

 

その速度は速すぎず、まるで「ついてこられるか?」と問いかけるような動きだった。

 

結絆と帆風は無重力の中を進みながら、UFOについていった。

 

すると、しばらくして視界の先に巨大な建造物が現れた。

 

「......おいおい、凄い建物があるねえ!?」

 

「すごい......!」

 

二人の目の前に現れたのは、巨大な球体状の基地だった。

 

直径数百メートルはありそうなその構造物は、金属の外壁に覆われ、無数の光が点滅している。

 

まるで宙に浮かぶ要塞のような威圧感を放っていた。

 

基地の下部には開閉式のゲートがあり、UFOはそこへ向かって滑るように進んでいく。

 

結絆と帆風もそれに続くと、ゲートがスムーズに開き、二人は中へと招き入れられた。

 

 

 

 基地の内部は、さらに驚きに満ちていた。

 

壁面には無数のディスプレイが並び、異星の言語と思しき文字が流れている。

 

天井には青白い光のラインが走り、まるで電流が流れているかのように脈動していた。

 

「これは......完全に学園都市の技術を超えてるねえ」

 

「結絆さん、ここの技術......もし手に入れられたら、学園都市の科学も大きく進歩しそうですね」

 

「そうだねえ。でも、そう簡単に手に入るもんでもなさそうだ」

 

二人が辺りを見回していると、UFOの一機が前方へと進み、床に光のラインを描いた。

 

「こちらへ」

 

「どうやら案内してくれるみたいだねえ」

 

「行きましょう」

 

こうして、結絆と帆風は未知なるハイテク基地の探索を開始することになった。

 

 

 

 結絆と帆風はUFOの先導に従い、ハイテク基地の内部を進んでいた。

 

通路は金属の光沢を帯び、壁にはさまざまなホログラムが映し出されている。

 

どこか学園都市の研究施設にも似た雰囲気があるが、それ以上に未知の技術が詰め込まれているのを感じさせた。

 

「......すごいですね、ここ」

 

帆風が辺りを見回しながら驚きの声を上げる。

 

「だねえ。でも、これを作ったのが地球の技術じゃないなら、どこで生まれたものなんだろうねえ」

 

結絆は慎重に通路の構造を観察しつつ歩を進めた。

 

やがて、UFOが一つの扉の前で停止する。

 

どうやら、指令室のようだ。

 

電子音とともに、扉がスライドして開いた。

 

二人が部屋へ足を踏み入れると、中央には巨大なホログラムが浮かんでいた。

 

そこに映し出されていたのは、巨大な手袋のような形をした二体の魔獣。

 

その前に立っていたのは、身の丈30センチメートルほどの人物だった。

 

全身を白銀の装甲で覆い、顔には仮面をつけている。

 

その背後には無数のモニターが配置され、忙しなく情報が流れていた。

 

「ようこそ、地球人よ」

 

低く、響くような声が指令室にこだました。

 

「俺達を呼んだのは君かなあ?」

 

結絆が前に出ると、指揮官は頷いた。

 

「そうだ。我々の基地の近くに、突如として二体の魔獣が現れた。それらはまるで意志を持つかのように動き、周囲を破壊して回っている。このままでは、この基地も危険にさらされるだろう」

 

帆風が前に進み出る。

 

「その魔獣が......手袋の形をしているんですか?」

 

「そうだ。巨大な手袋のような形状をしており、強大な力を持っている。我々の通常兵器では倒すことができなかった」

 

「ふむ......」

 

結絆はホログラムの魔獣をじっと見つめる。

 

それはまるで巨大な拳がそのまま生き物になったような異形だった。

 

指揮官は言葉を続ける。

 

「君達の力を見込んで、魔獣の討伐を依頼したい。我々の兵器が通じない以上、戦う術を持つ者の力を借りるしかない」

 

「なるほどねえ。......まあ、引き受けるのはいいけど、その魔獣のいる場所は?」

 

「この基地から少し離れた、無重力の廃墟区域に潜伏している」

 

指揮官が指を動かすと、ホログラムが拡大し、魔獣の居場所が示された。

 

「結絆さん、どうします?」

 

「......困ってる人がいるなら、助けるしかないよねえ」

 

結絆は不敵に笑い、指を鳴らす。

 

「未知の敵ってのはワクワクするもんさ。ちょっと暴れてこようじゃないの」

 

「わかりました!」

 

帆風も静かに頷く。

 

指揮官は満足そうに頷き、再び指を動かすと、ホログラムが消えた。

 

「では、準備が整い次第、専用の転送装置を用いて君達を魔獣のいるエリアへ送る。準備ができたら通路を進んでくれ」

 

「了解」

 

結絆は軽く手を上げ、帆風とともに指令室を後にする。

 

こうして、二人は未知なる魔獣との戦いへ向かうのだった。

 

 

 

 結絆と帆風は、転送装置によって魔獣の潜むエリアへと送られた。

 

目の前に広がるのは、まるで宇宙空間に浮かぶ廃墟のような異様な光景だった。

 

かつては何らかの施設だったのか、無数の金属片や建造物の残骸が宙を漂っている。

 

そして、その中央に——巨大な手袋の形をした二体の魔獣が待ち構えていた。

 

「......いたねえ」

 

結絆が小さく呟くと、魔獣達は動き出した。

 

一体は堂々としたようなオーラを纏い、もう一体は奇妙な淡い光を放っている。

 

それぞれが異なる性質を持つことが一目で分かる。

 

そして、二体は突如として手の形を変え、指を突き立てて——

 

 次の瞬間、銃声のような音が響いた。

 

「ッ!」

 

指の形をした弾丸のようなものが、結絆と帆風に向かって発射される。

 

二人は瞬時に左右へと回避したが

 

「くっ......! 重力が......」

 

帆風の体がふわりと浮いてしまい、制御が利かなくなる。

 

この空間では、通常の重力とは異なり、まるで宇宙空間にいるかのような浮遊感がある。

 

「ちょっと厄介だねえ......!」

 

結絆も感覚のズレに苦しみながらも、瞬時に能力を発動し、体のバランスを調整する。

 

今度は魔獣達が拳を握りしめ、強烈なパンチを繰り出してきた。

 

無重力の空間でありながら、その一撃は凄まじい速度で迫る。

 

「帆風、避けるよお!」

 

「はい!」

 

二人は無重力を利用しつつ、ギリギリで拳の軌道を外す。

 

だが——

 

ドガァァン!!!

 

魔獣の拳が残骸に直撃し、大爆発が巻き起こる。

 

金属の破片が飛び散り、衝撃波が二人を襲う。

 

「ぐっ......!」

 

「帆風、大丈夫かい?」

 

「問題ありません......!」

 

帆風はすぐに体勢を立て直し、結絆と共に反撃の機会を伺う。

 

「よし......ちょっとお返ししてやろうかあ!」

 

結絆は水の原典の力を解放し、宙に水の刃を生み出す。

 

「これでどうだねえ!」

 

無数の水刃が魔獣に向かって放たれた。

 

一体は即座に手を開き、巨大な盾のような形に変化させて防御する。

 

しかし、もう一体は反応が遅れ、水刃が直撃した。

 

「ッ!!!」

 

青白い光を放つ魔獣の一部が切り裂かれ、空間に液状の光が飛び散る。

 

「やっぱり通るみたいだねえ」

 

結絆は確信し、さらに攻勢をかける。

 

一方、帆風も天衣装着(ランペイジドレス)を発動し、全身にオーラを纏った。

 

「結絆さん、私もやります!」

 

彼女は無重力の空間を利用し、一気に魔獣の背後へ回り込む。

 

強烈な蹴りが魔獣の後方を直撃し、無重力であるにもかかわらず、魔獣の体がぐらつき、その場に留まることができず後方へと吹き飛んだ。

 

「よし、あと一体!」

 

結絆は残った方に向き直り、さらに水の原典を展開する。

 

しかし——

 

「終ワリデハナイ」

 

突如、魔獣達の体が再び光を放ち、異様なエネルギーを放ち始めた。

 

「......自己再生?」

 

結絆が眉をひそめた瞬間、魔獣達はその場に留まらず、廃墟の奥へと逃げるように飛び去っていく。

 

「逃げる気かねえ?」

 

結絆はすぐに追いかけようとするが、帆風が静かに首を振った。

 

「結絆さん、ここは一度戻りましょう。敵の再生能力を考えれば、何か対策を練る必要があります」

 

「......まあ、そうだねえ」

 

二人はひとまず、基地へ戻ることを決める。

 

この手強い魔獣達を倒すために、次なる策を考えなければならないのだった。

 

 

 

 結絆と帆風は、一度基地へと戻り、指令室で情報を整理していた。

 

先ほどの戦闘で得られたデータを分析し、魔獣達の弱点を探る。

 

「結絆さん、これを......」

 

帆風が指し示したホログラムには、魔獣達の構造が映し出されていた。

 

二体の魔獣は、互いにエネルギーを共有する特性を持っている。

 

つまり——

 

「2体同時に倒さなければ、倒した片方がもう片方のエネルギーで復活する」

 

「なるほどねえ......それでさっき逃げたってわけかあ」

 

結絆は頬を掻きながら、少し考え込む。

 

しかし、単純に二体を同時に撃破すれば良いのなら、対策は立てられる。

 

「やるよお、帆風。今度こそ、あいつらを完全に仕留める!」

 

「はい、結絆さん!」

 

二人は再び転送装置へと向かい、決戦の地へと赴いた。

 

 

 

 舞い戻った戦場には、先ほどと同じ二体の魔獣が待ち構えていた。

 

彼らもまた、結絆を迎え撃つ準備を整えていたのだ。

 

片方が拳を握りしめ、もう片方が指を突き出す。

 

「また同じ攻撃パターンかねえ?」

 

結絆は余裕の笑みを浮かべながら、帆風とアイコンタクトを交わす。

 

帆風も小さく頷いた。

 

「いきます!」

 

二人は一気に分かれ、それぞれの魔獣に向かって突撃する。

 

魔獣の指先から光弾が放たれるが、結絆は瞬時に光弾の軌道を見切り、スレスレでかわす。

 

「そんなの、もう見切ってるよお!」

 

反撃として水の刃を放ち、魔獣の体を切り裂く。

 

一方、帆風も天衣装着を発動し、魔獣の拳を受け止めながら反撃を繰り出していた。

 

帆風の拳が魔獣の装甲を打ち砕く。

 

だが、決定打にはならない。

 

二体はすぐに回復し、再び立ち上がった。

 

「やっぱり、二体を同時に倒さないと......!」

 

結絆は息を整え、最後の作戦を実行に移すことを決意した。

 

「帆風、決めるよお!」

 

「はい!」

 

結絆は全身の力を解放し、能力を最大限まで高めた。

 

同時に水の原典の力を込めた水刃を形成する。

 

帆風もまた、天衣装着を最高潮まで高めた。

 

二人は、一瞬のタイミングを見極める。

 

そして——

 

「せえええええい!!!」

 

二人は同時に突撃し、魔獣達へ渾身の一撃を叩き込んだ。

 

「グォォォォォォ......!」

 

二体の魔獣は悲鳴を上げながら、一瞬にして崩壊していく。

 

復活する間もなく、完全に消滅した。

 

そして、魔獣達の消滅した跡に、鏡の破片が静かに浮かんでいた。

 

結絆はそれを手に取り、微笑む。

 

「これで、次に進めるねえ」

 

「はい、結絆さん!」

 

二人は鏡の破片を持ち、次なる冒険へと向かうのだった。

 

 

 

 結絆と帆風が手袋の魔獣を倒し、鏡の破片を手に入れた後、二人は再び基地へと戻った。

 

指令室では、指揮官が待ち構えており、二人の帰還を歓迎するように微笑んだ。

 

「君達のおかげで、我々の基地は救われた。本当に感謝する」

 

「結構大変だったよねえ」

 

結絆は、そう言いながらも軽く肩をすくめてみせるが、帆風はため息をつきながら深く頷いた。

 

「はい、私達も大変な戦いでした。でも、皆さんの協力があったからこそ、勝てました」

 

「そう言ってくれると嬉しい。さて、約束通り、お礼をしよう」

 

指揮官は手を上げると、背後の装置が作動し、空間に大きな鏡が出現した。

 

「この鏡は、鏡の世界の中心へと繋がっている。そこにはあらゆる場所へと繋がる鏡が存在し、この世界の秘密が隠されていると言われている」

 

「ふうん、そりゃ面白そうだねえ」

 

「行ってみる価値はありそうですね、結絆さん」

 

「もちろんさ、行こうかあ!」

 

二人は鏡の中へと飛び込んだ。

 

 

 

 鏡を抜けた瞬間、結絆と帆風の足元に柔らかな感触が広がった。

 

視界に映るのは、白っぽい雲の大地。

 

まるで天上の楽園のような場所だった。

 

「......まるで、空の上ですね」

 

「鏡の世界の中心って、こういうことかあ」

 

雲の地面はふわふわと柔らかく、それでいてしっかりと踏みしめることができる。

 

周囲を見渡すと、あちこちに大小様々な鏡が浮かんでおり、それぞれが異なる場所へと繋がっているようだった。

 

「ここから、これまで行ったいろんな世界へ行けるってことだねえ」

 

「はい......でも、あれを見てください」

 

帆風が指をさした先に、巨大な鏡があった。

 

しかし、その鏡は中心部分が大きく欠けており、ひび割れていた。

 

「この鏡......今までの破片をはめ込めそうだねえ」

 

「もしかして......これを修復するのが皆さんの目的だったのでは?」

 

二人は手元の鏡の破片を取り出し、欠けた鏡に近づいた。

 

結絆は試しに、一つの破片を欠けた部分に当ててみる。

 

すると——

 

ピカァァァァァ......!

 

眩い光が溢れ、破片が鏡へと溶け込むように吸収されていく。

 

「やっぱり! 結絆さん、他の破片も!」

 

「分かってるよお!」

 

二人はこれまで集めた破片を次々とはめ込んでいく。

 

そのたびに光が広がり、鏡は徐々に元の形を取り戻していった。

 

そして——

 

最後の一片

 

結絆がそれをはめ込むと、鏡は完全に修復され、美しく輝き出した。

 

「......直った、ねえ」

 

「はい......でも、この鏡は一体......?」

 

二人が鏡を見つめると、鏡の表面が揺らめき、何かが映し出され始めた——。

 

 

 

 修復された鏡の前に立ち、結絆と帆風は互いに頷き合った。

 

「さて、行こうかあ」

 

「ええ、結絆さん」

 

二人はゆっくりと鏡の中へと足を踏み入れた。

 

一瞬、周囲が光に包まれ、身体が浮遊するような感覚に襲われる。

 

そして、視界が晴れると、二人は見知らぬ空間へと降り立った。

 

そこは、暗闇に覆われた異様な場所だった。

 

地面は不気味な紫色に染まり、空には黒い霧が渦巻いている。

 

そして、何よりも目を引いたのは、目の前に佇む異形の存在だった。

 

その生き物は人の形をしていながら、その腹部には巨大な目がはめ込まれていた。

 

目の中央には紅い瞳がぎょろりと動き、結絆達をじっと見つめている。

 

「......なんだ、こいつは」

 

「すごい禍々しい気配ですね......」

 

怪物が不気味に口を開いた。

 

「......来タナ、鏡ヲ直ストハ......」

 

地響きのような声が響き渡る。

 

その瞬間——

 

ズォォォォンッ!!

 

怪物の腹部の巨大な目が強烈な弾幕を放ち、二人に向かって無数の光弾が襲いかかる。

 

「くっ......!」

 

「避けましょう!」

 

二人は瞬時に横へ飛び、光弾を回避する。

 

しかし、地面に落ちた光弾は爆発を起こし、衝撃波が襲いかかる。

 

「ちょっとこれは、ヤバい威力だねえ!?」

 

「結絆さん、あの目が弱点に見えます!」

 

「まあ、そりゃそうだろうけど......問題は、そこをどう狙うかだねえ」

 

帆風が天衣装着(ランペイジドレス)を発動し、怪物に向かって突撃する。

 

超高速の拳が放たれるが——

 

ガキィィィン!

 

怪物の腕が鉄のように硬く、帆風の拳を防いだ。

 

「なっ......!?」

 

「効かないのかあ!?」

 

結絆も能力を発動し、全力で怪物に斬撃を浴びせる。

 

しかし、腹部の目を狙おうとするたびに怪物の長い腕が邪魔をし、攻撃を当てることができない。

 

「......こいつ、隙がないねえ......!」

 

二人が後退しながら戦況を見極めようとしていると、不意に空間に黒い影が現れた。

 

サゥッ......

 

「......む?」

 

現れたのは、以前、古代遺跡で戦ったマントの騎士だった。

 

「貴殿......!」

 

帆風は、突然現れた騎士に対して驚く。

 

一方で、騎士は静かに結絆を見つめると腰から一本の剣を抜き、それを結絆に差し出した。

 

「これは......?」

 

「マスターソード。闇を断つ最強の剣......貴殿なら扱えるはずだ」

 

「へえ、最強の剣って言葉......いいねえ」

 

結絆は剣を受け取ると、その刃を確かめるように構えた。

 

その瞬間——

 

キィィィィン......!

 

マスターソードの刃が輝き、強烈なエネルギーが溢れ出した。

 

「これなら......やれるかもしれないねえ」

 

結絆は剣を振りかぶり、怪物の腹部の目を狙い、突撃する!!




鏡の国編は結構長くなってしまいましたが、次回でおしまいです。

鏡の国編は、本編との関係はありませんが、結絆達にとっては重要な話になっていたりします。
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