食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

77 / 221
今回は、結絆達にとって重要な話になっています。


黒幕の撃破、そして......

 騎士から受け取ったマスターソードの刃が煌々と輝き、結絆の手に馴染むように収まる。

 

その剣から放たれる光は、まるでこの異形の怪物を討つために存在しているかのようだった。

 

結絆は軽く剣を振り、感触を確かめる。

 

「......悪くないねえ」

 

目の前の怪物はなおも巨大な腹部の目をぎょろりと動かし、じっと結絆を睨みつけている。

 

「オ前、ソノ剣ヲ......」

 

低く唸るような声が響いた。

 

「マスターソード......使いこなしてみせるよお」

 

結絆は軽く肩をすくめると、一気に踏み込んだ。

 

シュンッ!

 

空間を裂くような音とともに、マスターソードが放つ蒼白い斬撃が怪物へと一直線に飛んでいく。

 

ズバァァァァン!!

 

剣気が怪物の腕を切り裂き、漆黒の血液が飛び散った。

 

「グアァァァ......!」

 

怪物が呻き声を上げ、苦痛に身をよじらせる。

 

その隙を逃すはずもなく、結絆はさらに踏み込み——

 

「もらったあ!」

 

ドゴォッ!!!

 

怪物の腹部に狙いを定め、マスターソードを突き刺した。

 

刃が目の表面を深々と貫き、内部から光があふれ出す。

 

「ギィ......ギィィィィ......!!」

 

怪物は大きくのけぞり、苦しみながら倒れ込む。

 

「結絆さん......!」

 

帆風が駆け寄る。

 

「終わったんですかね......!」

 

「いや、まだ油断しない方がいいよお......」

 

結絆は剣を構えたまま、怪物の様子を慎重に見つめる。

 

その瞬間——

 

ズズズズズ......ッ!!

 

怪物の体が激しく痙攣し始めた。

 

「......やっぱり、そう簡単には終わらないかあ」

 

結絆が呟いた直後、怪物の腹部の目が突如として膨れ上がり、異様な光を放ち始める。

 

「アアアアアアア......!ワレハ......マダ......終ワラヌ......!!」

 

暗闇の空間全体が揺れ、黒い霧が怪物の体に集まり始めた。

 

「なっ......!?」

 

「結絆さん......!何か来ます!」

 

膨れ上がった目が裂けるように広がり、怪物の肉体を押しのけながら、より巨大な形態へと変貌していく。

 

 

 

 第二形態

 

それは、まるで肉の塊に巨大な邪眼が融合したような異形だった。

 

手足は完全に消え、巨大な目だけが脈打ちながら宙に浮かんでいる。

 

「コレガ......我ノ真ノ姿......」

 

重々しい声が響くと同時に、怪物の目から極太の光線が放たれた!

 

「っ......!」

 

結絆と帆風は瞬時に左右に跳び、光線を回避する。

 

光線が地面に着弾すると、そこから闇の瘴気が立ち上り、空間自体を蝕んでいく。

 

「結絆さん、普通の攻撃では通じなさそうですね......!」

 

「まあ、第二形態なんだから強くなるのは当然だよねえ......」

 

結絆はマスターソードを握りしめ、ギラリと光る怪物の目を見据えた。

 

「でも、こっちにはこの剣がある。だったら、やることは一つだよねえ」

 

「はい!」

 

二人は呼吸を整え、再び怪物に向かって突撃する——!

 

 

 

 異形の怪物が宙に浮かび、巨大な邪眼を脈打たせながら、なおも結絆を睨みつけていた。

 

「コレガ......終ワリダト......思ウナ......!」

 

黒い光を帯びた瘴気が空間全体に広がり、あたりの景色がゆっくりと崩れ始める。

 

「このままだと、鏡の国自体が飲み込まれちゃうねえ......」

 

結絆は剣を構えながら、冷静に状況を見極めた。

 

その時——

 

「結絆さん......!」

 

帆風が、結絆の隣に立ち、そっと彼の手に自分の手を重ねた。

 

「この剣の力......二人で振るえば、きっと......!」

 

彼女の瞳には揺るぎない信念が宿っていた。

 

結絆は小さく笑い、「いいねえ」と呟く。

 

「じゃあ、やってみようかあ」

 

二人はマスターソードの柄を共に握り、深く息を吸い込んだ。

 

剣が光を帯び、その輝きは次第に増していく。

 

「イザ......ナエ......!」

 

怪物の邪眼が大きく見開かれ、漆黒の光線を放とうとした、その瞬間

 

「帆風!いくよお!」

 

「はい!」

 

二人は力を込めて、マスターソードを一気に振り下ろした。

 

ズバァァァァァンッッ!!!!

 

剣から放たれた光が、一瞬で世界を満たす。

 

それは衝撃波となり、鏡の国の空間全体を揺るがすほどの威力を持っていた。

 

「グ......ギャアアアアアアア!!!」

 

怪物は断末魔の悲鳴を上げ、その巨体が光の中に呑み込まれていく。

 

邪眼が砕け、漆黒の霧が一気に散る。

 

そして、怪物は完全に消滅した。

 

辺りに静寂が訪れる。

 

闇に覆われていた空間は徐々に澄み渡り、温かな光が満ちていった。

 

「やりましたね......」

 

帆風がほっとしたように微笑む。

 

「ふう、なかなか手強かったねえ......でも、これで——」

 

結絆がそう言いかけた時、どこからか声が聞こえた。

 

「勇敢なる者よ......」

 

二人が振り向くと、そこには騎士が立っていた。

 

「貴殿らの勇気と力により、この鏡の国は救われた」

 

騎士が片膝をつき、深く頭を下げる。

 

それと同時に、鏡の世界に生きる者達が次々と現れ、歓声を上げた。

 

「ありがとう......!」

 

「救世主よ!」

 

空には美しい星々が輝き、鏡の国はかつての平和を取り戻していく。

 

帆風が結絆の隣で微笑みながら、そっと言った。

 

「結絆さん、これで......もう大丈夫ですね」

 

「そうだねえ......」

 

結絆は剣を見つめると、それを静かに鞘に収めた。

 

 

 

 怪物が消え去り、鏡の国に平和が戻った。

 

澄み渡る空、輝く湖、そしてどこまでも続く幻想的な風景が広がっている。

 

「さて、そろそろ帰ろうかあ」

 

結絆は手元にある修復された鏡を見つめながら、ぽつりと呟いた。

 

しかし、

 

「結絆さん......もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」

 

「ん?どうしたんだい?」

 

「せっかくこんな素敵な場所にいるのに......すぐ帰るのはもったいないです。少しだけ、二人で鏡の国を回りませんか?」

 

帆風はどこか恥ずかしそうに言葉を紡ぐ。

 

結絆は一瞬考え、やがて優しく微笑んだ。

 

「そうだねえ......せっかくだし、もう少しゆっくりしようかあ」

 

 

 

 二人は広大な草原へと足を運んだ。

 

鏡の国の自然は、まるで夢の中にいるような美しさだった。

 

草原はどこまでも広がり、風に揺れる花々が色とりどりに咲き誇っている。

 

結絆は持っていたバスケットを広げると、中からサンドイッチや果物を取り出した。

 

「結絆さん、いつの間にこんな準備を?」

 

「ん?さっきの騎士が『旅の思い出に』って渡してくれたんだよお」

 

結絆は悪戯っぽく笑いながら、サンドイッチを一つ手に取り、帆風へと差し出す。

 

「ほら、食べなよお」

 

「ふふっ、ありがとうございます」

 

帆風は微笑みながら、それを受け取り、一口かじった。

 

風が心地よく吹き抜ける。

 

「なんだか......夢みたいですね」

 

「うん、確かにねえ」

 

二人は草の上に寝転がり、青空を眺めた。

 

 

 

 日が暮れ始めると、二人は山の頂上へ向かった。

 

高台に登ると、そこから鏡の国を見渡せる。

 

遠くには光り輝く湖があり、空には無数の星が瞬いていた。

 

「すごい......」

 

帆風は目を輝かせながら、星空を見上げる。

 

結絆も空を見上げながら、静かに言った。

 

「こんなに綺麗な星空、なかなか見られないねえ」

 

「ええ......まるで宝石みたいです」

 

二人は並んで座りながら、夜の静けさを楽しんだ。

 

ふと、帆風が小さく呟いた。

 

「結絆さん......この世界で、こうして二人で過ごせて......本当に良かったです」

 

「うん......俺も、そう思うよお」

 

結絆は帆風の肩にそっと手を置き、優しく微笑んだ。

 

 

 

 鏡の国でのひとときは、まるで夢のようだった。

 

しかし、どんな旅にも終わりが来るものだ。

 

結絆と帆風は、ついに帰還の時を迎えていた。

 

雲の上に浮かぶ鏡の前に立ち、二人は最後にもう一度、周囲の景色を眺めた。

 

輝く湖、広がる草原、そして遠くに見えるあの山頂。

 

「......そろそろ、帰ろうかあ」

 

結絆がそう言うと、帆風は小さく頷いた。

 

だが、その目には何か決意のような光が宿っていた。

 

「結絆さん、最後に一つだけ......伝えたいことがあります」

 

「ん? 何かなあ?」

 

帆風は静かに息を吸い込み、結絆の瞳を真っ直ぐに見つめた。

 

「私、結絆さんのことが好きです」

 

澄んだ声が、鏡の国に響く。

 

それは迷いのない、確かな想いだった。

 

「......そっかあ」

 

結絆は一瞬目を見開き、そして少し困ったように微笑んだ。

 

「俺も帆風のこと、すごく好きだよお」

 

「......!」

 

帆風の頬がわずかに紅潮する。

 

だが、結絆は少しだけ視線を落とし、続けた。

 

「でもねえ......俺のことを好きだって言ってくれる人が、他にも何人もいるのは......知ってるんだよお」

 

「......」

 

「俺はどうすればいいのかなあ?一人だけを選ぶのが、正しいことなのかなあ......」

 

結絆の声には、珍しく迷いが滲んでいた。

 

すると、帆風はくすっと微笑み、意外な答えを返した。

 

「それなら......全員と付き合えばいいんじゃないですか?」

 

「......え?」

 

思わず、結絆は目を瞬かせた。

 

「私は結絆さんが好きです。でも、他の皆も結絆さんのことが好きで、結絆さんも皆のことを大切に思っている......なら、皆さんを幸せにすればいいんです」

 

「いやあ......それは、ちょっと大胆すぎないかなあ?」

 

結絆は苦笑しながら、頭をかいた。

 

「でも、私にとって一番大事なのは、結絆さんが幸せでいてくれることです」

 

帆風は優しく微笑む。

 

「だから、結絆さんが誰かを選ぶのではなく、皆を大切にしてくれるなら、それでいいんです」

 

その言葉に、結絆はしばらく黙った。

 

そして、やがて小さく笑った。

 

「......そっかあ。うん、そういう考えも、あるかもしれないねえ」

 

結絆はゆっくりと帆風の手を取った。

 

「じゃあ、俺は......帆風も、他の皆も、ちゃんと幸せにするよお」

 

帆風の瞳が、嬉しそうに輝く。

 

「約束ですよ?」

 

「うん、約束だよお」

 

そうして二人は、鏡の中へと足を踏み入れた。

 

次の瞬間、まばゆい光が世界を包み込み――結絆と帆風は、元の世界へと戻っていった。

 

 

 

 眩い光に包まれ、足元にしっかりとした感覚が戻ってくる。

 

結絆と帆風は、確かに元の世界へと帰還したのだった。

 

「......ここは」

 

周囲を見回せば、そこは馴染み深いドリームの本拠地であるマジックシアターの一角。

 

まるで何も変わっていないかのような風景が広がっていた。

 

しかし、次の瞬間――

 

「結絆クぅぅン!!」

 

「......うおお?」

 

叫び声とともに、蜜蟻が勢いよく飛びついてきた。

 

「どこ行ってたのよお!? いきなり消えるから心配したんだからあ!!」

 

彼女は結絆の胸に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめる。

 

「もう、結絆さん......突然姿を消すなんて、どういうつもり?」

 

続けて、警策看取が腕を組みながら鋭い視線を向けてきた。

 

「あれだけの人数が探したのに、結絆さんも潤子ちゃんも見つからないし......一体何があったの?」

 

「......ごめんねえ、皆」

 

結絆は軽く頭をかきながら、申し訳なさそうに微笑んだ。

 

「ちょっと、不思議な体験をしてきたんだよお」

 

「不思議な体験?」

 

警策が眉をひそめる。

 

そこへ、入鹿と猟虎、悠里千夜も駆けつけてきた。

 

「無事でよかった......心配したんだからね」

 

「失踪してた間、いろいろ調査したけど手がかりなしだったよ」

 

「潤子ちゃんまでいなくなるなんて......どういうこと?」

 

次々と問いかけられ、帆風が一歩前に出る。

 

「実は......私達、鏡の世界に行ってました」

 

その言葉に、全員が驚いたような表情を浮かべる。

 

「......はあ!?」

 

「鏡の世界!?」

 

「何それ......本気!?」

 

皆が怪訝そうにする中、結絆はゆっくりと語り出した。

 

鏡を通じて異世界へ渡り、騎士や魔獣と戦ったこと。

 

壮大な宇宙や不思議な大地を旅したこと。

 

そして、最後に鏡を修復し、世界を救ったこと。

 

一通り話し終えたころ、ドリームのメンバーは揃って言葉を失っていた。

 

「......ちょっと待ってよお」

 

蜜蟻が困惑した表情で口を開く。

 

「結絆クンと潤子ちゃんは、そんな大冒険をしてたってことお?」

 

「うん、そうだよお」

 

「それって、何日くらい......なのかな?」

 

警策が慎重に問いかける。

 

「うーん、ざっと一週間以上かなあ」

 

結絆がそう答えた瞬間、全員の目が大きく見開かれた。

 

「ちょ、ちょっと待って......」

 

今度は悠里千夜が困惑した様子で首を振る。

 

「結絆さん達が消えてから、こっちでは数分しか経ってないんだけど?」

 

「......え?」

 

今度は結絆と帆風の方が驚かされる番だった。

 

「ほんの数分......?」

 

帆風が思わず呟く。

 

確かに彼らの体感では、一週間以上の長旅だった。

 

しかし、現実世界ではほんの一瞬だったというのか?

 

「ってことは......」

 

結絆は顎に手を当て、思考を巡らせる。

 

「鏡の世界にいる間は、こっちの時間の進みが遅くなってるってことかなあ?」

 

「時間の流れが違う......?」

 

「そんなことが......」

 

弓箭姉妹や悠里千夜が顔を見合わせる。

 

だが、確かにそれなら説明がつく。

 

「......すごい話ね」

 

警策がため息をつきながら肩をすくめた。

 

「まあ、結絆さん達が無事に帰ってきたなら、それでいいけどさ」

 

「ホントよお! もう心配させないでよねえ!」

 

蜜蟻がぷくっと頬を膨らませる。

 

「悪かったよお、これからは気をつけるよお」

 

結絆は軽く頭を下げる。

 

それでも、鏡の世界での出来事は確かに現実だった。

 

体の感覚も、得た経験も、そして......帆風の言葉も。

 

(みんなを......幸せに、かあ)

 

彼はそっと帆風を横目で見た。

 

帆風もまた、静かに微笑んでいた。

 

結絆と帆風は現実世界へと帰還した。

 

だが、彼らの心には確かに、鏡の世界での記憶が刻まれていたのだった。

 

 

 

 「それで、それで? 鏡の世界ってどんな場所だったのかしらあ?」

 

蜜蟻愛愉がテーブルの上に乗り出し、興味津々な目で結絆と帆風を見つめる。

 

「そうだねえ......いろんな場所があったよお」

 

結絆は紅茶を片手に、穏やかに語り出した。

 

「雲の上の宮殿みたいな場所もあったし、広大な草原や、南国の海もあったねえ」

 

「うわぁ......すっごくロマンチックだね!」

 

千夜がうっとりとした表情を浮かべる。

 

「でも、大変なこともあったんじゃない?」

 

警策看取が鋭い視線を向ける。

 

「まあねえ......手の形をした魔獣と戦ったり、腹に目がついた怪物が出てきたりしたよお」

 

「は、腹に目!?」

 

「めちゃくちゃホラーね......」

 

弓箭姉妹が顔をしかめる。

 

「でもまあ、俺達も負けるわけにはいかないからねえ。帆風と二人でマスターソードを振るって、どーんとやったんだよお」

 

「結絆さんと潤子ちゃんが二人で......!」

 

千夜が目を輝かせる。

 

「そ、それなら当然、信頼関係も深まるよね......?」

 

その問いに、帆風はこくりと頷いた。

 

「はい......結絆さんがいたから、私は無事にここへ帰ってこられました」

 

「へぇ~......結絆クンのこと、相当頼りにしてたんだあ?」

 

蜜蟻がニヤリと笑う。

 

「それはもちろんです!」

 

帆風は微笑む。

 

だが、その次の瞬間――

 

「それに......結絆さんとキスもしましたし......」

 

「――は?」

 

場の空気が凍りついた。

 

帆風は一瞬、何を言ったのか自覚していなかったようだ。

 

しかし、蜜蟻が勢いよく椅子を引き、テーブルに手をついて叫ぶ。

 

「今、なんて言ったのお!?!?」

 

帆風の顔が、みるみる赤くなっていく。

 

「あっ......!?い、いやっ、違います!その......えっと......!!」

 

狼狽える彼女を、警策が冷ややかな視線で見つめる。

 

「"違う"って、今、はっきりと言ったよね?」

 

「潤子ちゃん......そ、その......本当に......?」

 

悠里千夜が顔を真っ赤にしながら、モジモジと聞く。

 

帆風は目を泳がせ、何とか誤魔化そうとするが――

 

「これは一大事ですね!」

 

猟虎が妙に力強く言い放ち、入鹿も腕を組みながら頷く。

 

「うむ......これは尋問が必要ね」

 

皆の注目が帆風へと集まる。

 

「えっと、その......違っ!本当にそういうのじゃなくて......!」

 

帆風は真っ赤な顔で必死に言い訳を探す。

 

しかし、蜜蟻がすかさず問い詰める。

 

「でも、キスしたんでしょ?」

 

「そ、それは......!!」

 

帆風の顔が、湯気が出るのではないかと思うほど赤くなる。

 

そして、ついに彼女は観念したように小さく息を吐き、目を閉じた。

 

「......うぅ、私は結絆さんとキスしました。でも、ちゃんとした理由があるんです!」

 

「理由?」

 

「私は......鏡の世界の火山で体調を崩したんです。それを見た結絆さんが私のために......!」

 

帆風は、当時のことを思い出しながら、強く言葉を紡ぐ。

 

「それに、結絆さんは何度も私を助けてくれました......そして、最後の最後、あの怪物を倒す時も、結絆さんが私の手を取って、一緒に剣を振るってくれたんです......!」

 

その言葉に、場が静まり返る。

 

「......それで?」

 

警策が続きを促す。

 

「そ、その......戦いが終わった後にも、私は思わず......」

 

帆風は視線を泳がせ、しどろもどろになりながら続ける。

 

「結絆さんがすごくかっこよかったので......気付いたら、つい......」

 

「つい?」

 

「......キス、しちゃいました......」

 

その瞬間――

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

千夜が悲鳴のような歓声を上げる。

 

「ま、まさか潤子ちゃんがそんな積極的だったなんてぇぇ!!」

 

「信じられない......!」

 

弓箭姉妹が衝撃を受けた表情を浮かべる。

 

「ちょ、ちょっと待ってえ!? そんな大事なことを今さら話すとかどういうことお!?」

 

蜜蟻がぷるぷると震えながら叫ぶ。

 

「だ、だって......皆がしつこく聞くから......!!」

 

「それで、結絆さんはどうしたの!」

 

警策が鋭く問い詰める。

 

帆風は真っ赤になりながら、結絆をチラリと見た。

 

そして、結絆は――

 

「ええっと......まあ、びっくりしたけどお、嬉しかったよお?」

 

あっけらかんと言い放つ。

 

「~~っ!!!」

 

帆風の顔が、もはやトマトのように真っ赤になった。

 

「あわわわわわわわ......」

 

彼女は両手で顔を覆う。

 

「はぁ......もう、やっぱり結絆さんってそういう人よね......」

 

警策は呆れたようにため息をついた。

 

「ふーん、なるほどねえ......」

 

蜜蟻はニヤリと笑い、結絆の肩をポンポンと叩く。

 

「結絆クン、後でじっくり話し合おうねえ?」

 

「お、お手柔らかに頼むよお......」

 

こうして、帆風の思わぬ告白によって、ドリームのメンバー達は大騒ぎとなるのだった。

 

 

 

 「......それじゃあ、結絆クン?」

 

蜜蟻が、にっこりと微笑みながら結絆に歩み寄る。

 

「さっきの話、聞いちゃったわよお?」

 

彼女の声は甘ったるいが、どこか挑戦的な響きを含んでいた。

 

「潤子ちゃんとは、もうキスしたのよねえ?」

 

その言葉に、周囲の空気がピリリと張り詰める。

 

結絆は紅茶を一口飲んで、ふわりとした笑みを浮かべる。

 

「まあねえ」

 

「......じゃあ、私ともするよねえ?」

 

蜜蟻は挑戦的な笑みを浮かべながら、結絆の顔にぐっと近づいた。

 

その瞬間、横から声が飛ぶ。

 

「待って、蜜蟻さん。あなただけ先に行かせるわけにはいかない」

 

警策が、腕を組みながら割り込んできた。

 

「私も当然、もらう権利がある」

 

「そうね......確かに、ここは公平に行くべきね」

 

弓箭入鹿が冷静に頷く。

 

「ならば私も......」

 

猟虎が勢いよく拳を握る。

 

「え、ええっと......私も......!」

 

悠里千夜も控えめながら手を挙げた。

 

「......ええと?」

 

結絆は少し困惑しながら彼女達を見渡す。

 

「全員、俺とキスしたいってことでいいのかなあ?」

 

「当たり前でしょお?」

 

蜜蟻はウインクをしながら結絆の胸元を軽く叩く。

 

「だってえ、結絆クンは私達の大切な人だもんねえ?」

 

「そうよ」

 

警策は真剣な表情で頷く。

 

「結絆さんがどれほど私達のことを想ってくれているのか、確かめたい」

 

入鹿が静かに言った。

 

「うーん......ならば、順番はどうします?」

 

猟虎が腕を組みながら聞く。

 

「べ、別に順番なんて......!」

 

千夜が顔を真っ赤にする。

 

しかし――

 

「じゃあ、私からねえ♪」

 

蜜蟻が素早く結絆の首に手を回し、唇を重ねた。

 

甘い感触がふわりと広がり、蜜蟻は満足げに微笑む。

 

「んふっ、やっぱり最高ねえ♪」

 

「蜜蟻さん......!」

 

警策が焦ったように口を開くが、そのまま彼女も結絆の腕を引いて――

 

「......私のことも、大切に思ってますよね?」

 

そう囁きながら、そっと唇を重ねる。

 

「勿論だよお」

 

警策は、頬を真っ赤に染める。

 

入鹿はそんな二人の様子を見て、小さく息を吐くと、静かに結絆に近づく。

 

「私も、結絆さんには感謝しています。そして......結絆さんのことを、大切に思ってて」

 

そう言うと、彼女は迷いなく結絆の頬に手を添え、優しくキスをした。

 

「ふふっ......これで私の気持ちは伝わりましたよね」

 

「ず、ずるいです......!」

 

猟虎が焦ったように顔を真っ赤にする。

 

「わ、私も......!」

 

彼女は勢いよく結絆に近づき、ぎゅっと目を瞑ると――

 

「え、ええい......!」

 

強引に結絆の唇を奪った。

 

「~~っ!!」

 

彼女はしばらく固まった後、顔を真っ赤にして飛び退いた。

 

「は、はわわ......!」

 

「んふふ~♪ かわいいねえ、猟虎ちゃん♪」

 

蜜蟻がくすくすと笑う。

 

そして――

 

「わ、わ、私も......!」

 

千夜が涙目になりながら、恥ずかしそうに近づいた。

 

「そ、その......結絆さん、だ、だいすき......!」

 

彼女は目を閉じて、そっと唇を重ねた。

 

結絆は微笑みながら、優しく千夜の背中を撫でる。

 

「皆......本当にありがとうねえ」

 

彼は、全員の顔をゆっくりと見渡した。

 

「俺は、皆のことが本当に大切だよお」

 

その言葉に、彼女達は嬉しそうに微笑んだ。

 

しかし――

 

「......む?」

 

その場に、突然、新たな気配が現れた。

 

「......ミサカも、結絆にキスをしたい、とミサカは主張します」

 

そこにいたのは、ミサカ00000号だった。

 

「お、お前もかい......?」

 

「当然です」

 

ミサカはまっすぐに結絆を見つめると、静かに近づいて――

 

「んっ......」

 

迷いなく、唇を重ねた。

 

その瞬間、蜜蟻達が驚愕する。

 

「ちょ、ちょっとお!? なんでミサカちゃんがいるのよお!?」

 

「私達の流れを持って行かれた......!」

 

「ふむ......さすがに意表を突かれましたね」

 

結絆は、ミサカの唇の感触を感じながら、心の中で苦笑した。

 

「......これで、ミサカの気持ちは伝わりましたか?」

 

ミサカは、無表情のまま結絆をじっと見つめた。

 

結絆は、静かに頷く。

 

「うん、伝わったよお。ありがとうねえ」

 

彼はミサカの頭を優しく撫でた。

 

そして、彼女達全員に向かって、改めて微笑む。

 

「俺は、みんなを大切にするよお」

 

その言葉に、蜜蟻達は満足げに微笑んだ。

 

こうして、結絆は改めて、彼女達全員の想いを受け止めるのだった。




鏡の国編は、終了です。

悩みましたが、ハーレムルートにすることにしました。

本当は、大覇星祭辺りでくっつけるつもりでしたが、じれったくなったのでこのタイミングにしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。