一応、後の話につながるところもあります。
狙われた彼女
学園都市の繁華街。夏の陽射しがアスファルトを照りつけ、行き交う人々の影を伸ばしていた。
「お姉さま、この帽子などいかがですの?」
「うーん......ちょっと派手すぎない?」
常盤台中学の制服に身を包んだ白井黒子と御坂美琴は、休日のショッピングを楽しんでいた。
賑やかな通りを歩きながら、時折立ち止まっては気に入った商品を手に取る。
しかし、そんな和やかな時間は、不意に終わりを告げる。
「っ——!」
美琴の身体がビクリと震えた。
「お姉様?」
黒子が振り向くと、美琴は自分の腕を押さえていた。
制服の袖にわずかな穴が開いている。
そこからじわりと血が滲み、微細な金属片のようなものが落ちた。
「......吹き矢?」
美琴が呟く。
次の瞬間、彼女の膝が崩れ落ちた。
「お姉様!?」
慌てて駆け寄る黒子。美琴の額には汗が滲み、呼吸が荒くなっていた。
「......なんか、身体が......重い......」
「まさか、毒!?くっ......どこから撃たれましたの!」
黒子は素早く周囲を見渡すが、犯人らしき人物は見当たらない。
人混みに紛れて逃げたのか、それとも遠距離からの狙撃か——
「お姉様、今すぐ病院へお連れしますわ!」
黒子は美琴の肩を支えながら、意識の朦朧とした彼女の身体を自分の腕に抱えた。
「黒子......ごめんね......せっかく一緒に買い物を楽しんでいたのに......」
「何を言ってますの、お姉様の健康が最優先ですわ。こんな時ぐらい、黒子に任せてくださいな」
黒子は、空間移動(テレポート)を繰り返し移動を続ける。
目指すは学園都市第一の医師、冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)の病院。
「行きますわよ、お姉様!」
こうして、黒子は、焦りを見せながら冥土返しの病院に向かったのだった。
病院の一室。
美琴はベッドに横たわり、冥土帰しが真剣な表情でモニターを見つめていた。
黒子はその傍らで不安げに見守っている。
「......どうなんですの?お姉様の容態は......?」
黒子の問いに、冥土帰しは静かに答えた。
「......これは、僕でも見たことのない毒だね。現状、解毒する方法はないよ」
「......っ!」
美琴の顔が青ざめ、黒子も驚愕に目を見開いた。
「そんな......! じゃあ、お姉様は......?」
「今は毒の回りを遅くしてるけど、根本的な対処をしなければ二日以内に死に至るね」
悔しそうな顔をした冥土帰しの言葉が、部屋の空気を重くする。
美琴は拳を握りしめ、唇を噛んだ。
「......何かできることはないんですの!?こんなことで......お姉様を......!」
「......先生、何か方法はないんですか?」
必死に訴える美琴と黒子を見て、冥土帰しは静かにため息をついた。
「一つだけ可能性があるかもしれないね。僕の技術を継いでくれてる食蜂結絆に頼めば、何か案を出してくれるかもしれないよ」
「結絆......?」
美琴が顔を上げる。
黒子も驚いたように目を瞬かせた。
「彼ならば、この毒の正体を突き止めたり、対処法を見つけることができるかもしれない。もっとも、彼が解決できる保証はできないけどね」
冥土帰しの言葉に、二人は顔を見合わせた。
残された時間は二日。彼に頼るしかない——。
一方その頃、食蜂結絆は椅子に深く腰掛け、目の前のモニターに映し出された情報を見つめていた。
その鋭い眼光が、画面に映るデータを一つひとつ吟味していく。
「......ヴェノム、か」
低く呟いた結絆の声には、わずかに怒気が混じっていた。
モニターには『御坂美琴・毒による急性症状』『未知の毒素』『生命維持の猶予:二日』といった診断結果が並んでいる。
彼は視線を上げ、部屋の片隅に立つ少女——ミサカ00000号を見た。
「ミサカ、お前に仕事を頼みたい」
「......了解しました、とミサカは指示を待機します」
淡々とした口調。
しかし、その奥には自身の姉の命を奪おうとする者への怒りが感じられた。
「美琴が襲われた。使われた毒......間違いない、ヴェノムの仕業だ」
ヴェノム——学園都市に潜む暗殺者。
特殊な毒を操る能力者であり、その正体や活動拠点は未だ不明とされている。
しかし、結絆は過去に一度彼と対峙したことがあった。
「......奴の毒、以前に喰らったことがあるからねえ」
結絆は苦い記憶を呼び起こしながら、拳を握りしめた。
過去の戦いで、ヴェノムは毒を媒介とした極めて狡猾な戦術を駆使し、結絆すら一時的に追い詰めた。
その時は、自己制御(セルフマスター)によって何とか毒の影響を排除できたが、普通の人間が喰らえば命を落とすのは確実だった。
「......ミサカ、お前にヴェノムの行方を追わせる。やつを見つけ出せ」
「標的の情報を整理、現在のデータベースには該当する具体的な行動履歴はなし、とミサカは報告します。しかし、過去の傾向から分析するに、ターゲットは第七学区か第二学区周辺に潜伏している可能性が高い、とミサカは推測します」
「なら、そこを中心に探るよお。奴が関わった痕跡があるはずだからねえ」
「了解、ミサカは直ちに行動を開始します」
ミサカは一礼し、部屋を出ていく。
結絆は立ち上がり、窓の外を見つめた。
「......美琴、安心しな。俺が必ず助けてやるからねえ」
彼の瞳には、決意の炎が灯っていた。
夜の学園都市。
冷たい風がビルの隙間を駆け抜ける。
結絆は静かに足を踏み出し、廃墟の一角へと向かっていた。
ミサカの情報提供により、ヴェノムが潜伏している場所が判明したのだ。
そこは第二学区の地下にある廃工場。
かつて実験施設として使われていた場所で、今は誰も近寄らない死角になっている。
「......まったく、こんなところに引きこもってるなんて、相変わらず陰気な野郎だねえ。」
結絆はため息をつきながら、廃墟の奥へと進んでいく。
そして、金属の扉を軽く蹴ると、中から男のくぐもった声が聞こえた。
「......誰だ?」
「やあ、ヴェノム。久しぶりだねえ」
暗闇の中から現れたのは、痩せた男だった。
全身を黒いコートで包み、目や左腕や右足には、機械のボディーが見える。
長い髪が乱れたままのその姿は、まるで死神のようだった。
「......食蜂結絆。どうして俺の居場所が......今更俺を殺しに来たのか!?」
「ふふ、俺を誰だと思ってるんだい?学園都市でお前みたいな毒使いが目立たないわけがないよねえ。」
ヴェノムの目が細くなった。
「まさか......御坂美琴の件か?」
「そうだよお。お前のせいで、俺の大切な仲間が死にかけてるんだ。だからねえ、お前には、ここで死んでもらう」
次の瞬間、ヴェノムは迷いなく腕を振り上げた。
無数の針が結絆に向かって放たれる。
だが——
「遅いねえ」
結絆の姿は、一瞬で消えた。
次に現れたのはヴェノムの背後。
「なっ......!?」
ヴェノムが驚愕した刹那、結絆の手刀が彼の首元に突き刺さる。
鋭い衝撃と共に、ヴェノムの身体が地面に叩きつけられた。
「お前の毒は知ってるよお。だから、不意打ちには警戒してたんだよねえ」
ヴェノムは喘ぎながら必死に身を起こそうとするが、結絆の足が彼の胸を踏みつける。
「......っ、待て......俺を殺しても......解毒の方法は......」
「知ってるよお。だから、お前を殺した後に俺が知ればいい」
「!?クソっ、悪魔め......」
「おや、鋭いねえ。じゃあ、さよなら」
そして、結絆はヴェノムの腹を拳で抉った。
結絆はヴェノムの息の根を止めた後に、悪魔の名を呼ぶ。
「ムルムル、やつの情報を引き出せ」
すると、ヴェノムの死体が動き出し、結絆の命令に従って情報を話し出す。
「なるほどねえ......この毒は、通常の解毒剤では無理だけど、特定の手順を踏んで治療すれば分解できるってわけだねえ。」
そして、ヴェノムが木原幻生に雇われていたことがわかった。
木原幻生は、結絆とは因縁のある人物であり、彼でさえ幻生の居場所を正確には把握できていない。
幻生の計画をヴェノムは聞かされていなかったのか、これ以上の情報を得ることはできなかった。
結絆は冷たい目でヴェノムを見下ろし、最後に一言だけ呟いた。
「じゃあ、お前はもういらないねえ」
そして——
刹那、ヴェノムの体は粉々に砕け散った。
死体を一瞥し、結絆はゆっくりと立ち上がる。
「さて、美琴のところに行こうかねえ」
そう言い残し、結絆は静かに闇の中へ消えていった。
学園都市・とある病院の一室。
御坂美琴は病室のベッドに横たわり、荒い息を繰り返していた。
顔色は悪く、汗が額に滲んでいる。
傍らには白井黒子が心配そうに座っていた。
彼女の手は美琴の手をしっかりと握りしめていたが、その手も微かに震えている。
すると、病室の扉が音もなく開いた。
「待たせたねえ」
聞き慣れた声が響く。黒子が振り返ると、そこには結絆の姿があった。
彼は落ち着いた様子で部屋に入ってくる。
しかし、その眼差しは鋭く、美琴の状態を見定めていた。
「結絆......」
美琴がかすれた声で呼びかける。
結絆は彼女の傍に歩み寄り、その額に手を当てた。
「大丈夫。すぐに良くなるからねえ」
そう言うと、結絆は片手をゆっくりと上げ、指先に微細な電流を走らせた。
それは一般的な電撃とは異なる、極めて精密な電気信号。
その波長はヴェノムの毒を分解するために特化されていた。
「いくよお、美琴。ちょっとだけ我慢してねえ」
結絆の手が美琴の首筋に触れる。
次の瞬間、静かな電流が体内へと流れ込んだ。
「......っ!!」
美琴の身体が一瞬だけ強張る。
しかし、それも束の間——
彼女の表情から苦痛の色が消えていく。
胸の上下も安定し、浅かった呼吸がゆっくりと深くなっていく。
「......はぁ......はぁ......」
美琴の目が開いた。先ほどまでの苦しみが嘘のように、瞳に力が戻っている。
「お姉様!」
黒子が歓喜の声を上げ、美琴の手を握り直す。
美琴は少し疲れたように微笑んだ。
「......ありがと、結絆」
「当然のことをしたまでだよお。君を死なせてしまったら、俺は一生後悔しそうだからねえ」
結絆はそう言って、優しく微笑む。
「本当にありがとうございますの......!結絆さんがいなければ、お姉様は......っ」
黒子は感極まって涙を滲ませながら、深々と頭を下げた。
「お礼なんていいよお。大事なのは美琴が無事だったってことだからねえ」
結絆は軽く肩をすくめると、病室の椅子に腰を下ろした。
しかし、黒子は俯いたまま、震える声で呟いた。
「......私が、もっと強ければ......こんなことには......」
美琴が辛そうな表情を浮かべる。
「黒子......」
「結局、私は何もできませんでしたの......お姉様を守れず、ただ黙って見ていることしか......っ」
悔しさがこみ上げる黒子の肩が小刻みに震える。
その姿を見て、美琴はそっと彼女の手を握った。
「何言ってるのよ、黒子」
「......お姉様?」
美琴は優しく微笑む。
「私はね、今回、本当に怖かった。毒が回っていくのがわかるし、身体は動かなくなっていくし......死ぬかもしれないって思った。でもね、その時、ずっとそばにいてくれた黒子が、私を励ましてくれて......それが、どれだけ心強かったか......」
「......っ!」
「黒子、戦うだけが強さじゃないよ。私が折れそうになった時に、ずっと支えてくれた。だから、感謝してるわよ」
黒子の瞳から、再び涙がこぼれた。
「......お姉様......っ」
彼女は美琴に抱きつき、泣きじゃくる。
美琴はそんな黒子の背中を優しく撫でた。
黒子は美琴の手を握ったまま、涙を拭いながら微笑んだ。
「これからも、よろしくね、黒子」
病室には、温かい空気が満ちていた。
美琴の容態がよくなってきたことを確認し、結絆は病室の扉に手をかけ、軽く振り返った。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るよお」
美琴はベッドの上で起き上がり、少し迷ったように視線を落とした。
そして意を決したように結絆を呼び止める。
「......結絆、待って」
彼は扉を開けかけた手を止め、美琴に向き直る。
「どうしたんだい?」
「......その......」
美琴は視線を泳がせながら、少し頬を染めた。
そして、小さな声で続ける。
「今日は......横にいてほしい......」
その言葉に、病室の空気がふわりと変わる。
黒子が驚いたように美琴を見つめた。
「お、お姉様......?」
美琴は戸惑いながらも続ける。
「......なんかさ、まだ怖いのよね。さっきまで死ぬかもしれないって思ってて......。だから......今日は、そばにいてほしい」
結絆は一瞬目を見開いたが、すぐにふっと微笑んだ。
「わかった......美琴がそう言うなら、横にいるよお」
美琴は少しほっとしたように息をつく。
「でも、俺は添い寝とかはしないよお?俺が横にいたら落ち着くっていうなら、話し相手くらいはしてあげるけどねえ」
「うん、それでいい。ありがと、結絆」
黒子はそれを見て、複雑な表情を浮かべた。
美琴の気持ちは理解できるし、結絆が信頼できる相手であることも分かっている。
しかし、自分は寮の門限があるので帰らなければならない。
黒子は小さく息を吐き、心の中で思い直した。
(......結絆さんなら大丈夫ですの。お姉様のこと、ちゃんと守ってくださるはずですの)
黒子は少し迷った後、結絆の方を見てゆっくりと頷いた。
「結絆さん......お姉様のこと、よろしくお願いしますの」
「お安い御用だよお」
黒子が帰った後、結絆は軽く肩をすくめ、病室の椅子を引き寄せる。
そして、美琴の方に向き直りながら、穏やかな口調で言った。
「じゃあ、美琴、何か話したいことでもあるかい?」
美琴は少し考え、ふっと微笑む。
「......そうね。思い出話でもしよっか!」
そして、結絆と美琴はこれまでに共に解決した事件を振り返った。
病室の空気は少しずつ和らぎ、夜は静かに更けていくのだった。
病室の空気が少し穏やかになったころ、結絆はふと手元の赤いスカーフを取り出した。
「美琴、手品でも見せてあげようかあ?」
「えっ、手品?」
美琴は少し驚いたように目を瞬かせた。
「そうそう。こういうときは楽しいことした方がいいでしょお?」
そう言いながら、結絆はスカーフをひらりと振る。
「まずはこの赤いスカーフを......ほいっ」
彼はスカーフを丸め、手の中にそっとしまい込む。そして、片手を開いて美琴に見せる。
「ほら、何もないでしょお?」
「え、本当に消えた......?」
美琴が目を丸くしていると、結絆はニヤリと笑いながら、もう片方の手をゆっくりと開いた。
「じゃーん!」
そこには、ゲコ太のフィギュアがちょこんと乗っていた。
「えっ!? なんで!? どういうこと!?」
美琴は驚きながらも、フィギュアを手に取る。
「これ、すごい......! ていうか、これって......」
「うん、それは美琴にプレゼント。さっきのスカーフが変化したってことにしておいてよお」
結絆は軽く肩をすくめながら、優しく微笑んだ。
「......ありがとう」
美琴は少し照れくさそうにしながらも、大事そうにゲコ太のフィギュアを握りしめた。
「楽しい気分になれた?」
「うん! なんか気が紛れた!」
美琴が笑顔を見せると、結絆は満足そうに頷いた。
「それならよかった、美琴が笑っていると俺も嬉しいよお」
病室には、少しだけ温かい空気が流れた。
その後、しばらくして、美琴が小さく欠伸をした。
「ふぁ......なんか、急に眠くなってきた......」
彼女はゲコ太のフィギュアを抱えたまま、まぶたを擦る。
「そっかあ。じゃあ、いい夢を見られるようにしてあげようかあ?」
結絆はそっと美琴の額に指先を当て、原典の力を発動させた。
優しく暖かい波が広がると、美琴の表情が徐々に安らいでいく。
「......すごい......なんか、ふわふわする......」
「楽しい夢を見せてあげるからねえ。大丈夫、安心してゆっくり寝たらいいよお」
美琴は安心しきったように微笑み、そのまま静かに眠りに落ちていった。
彼女の寝顔は穏やかで、幸せそうだった。
結絆は美琴の様子を見守りながら、そっと息をついた。
「......よかったねえ。今は、ゆっくり休んで」
彼は椅子に腰掛け、美琴の寝顔を確認しながら、そっと目を閉じた。
病室には穏やかな静寂が広がり、夜が静かに更けていくのだった。
翌朝、病室の窓から差し込む朝日が、心地よい暖かさをもたらしていた。
美琴はゆっくりと目を開け、瞬きをする。
体の重さはすっかり消え、昨日までの苦しみが嘘のようだった。
「......なんか、夢みたい」
美琴はそっと手を握り、開いた。
力が入る。
昨日までは少し動くだけでもしんどかったのに、今は嘘のように元気だった。
「調子はどうかなあ?」
ベッドの傍らには、結絆が椅子に腰掛けていた。
彼は優しく微笑みながら、美琴の様子を見ている。
「うん、すごくいい。昨日までのあれが嘘みたいに元気になった」
美琴は自分の体を確かめるように腕を伸ばし、ゆっくりと深呼吸をした。
「それはよかったねえ」
結絆は満足そうに頷いた。
「本当にありがとう、結絆。助けてもらってばかりで、なんて言ったらいいのか......」
「いいんだよお。俺は好きでやってるだけだからねえ」
彼は軽く肩をすくめた。
「でも、やっぱりお礼はちゃんと言わせて。結絆がいなかったら、私は......」
美琴は言葉を詰まらせた。
もし結絆がいなければ、今ここでこうして笑っていることはなかったかもしれない。
「だから、本当にありがとう」
美琴は真剣な表情で、結絆の目を見つめた。
「ん、どういたしまして」
結絆は照れくさそうに笑った。
その後、美琴は正式に退院が許可され、病院を後にした。
外の空気を吸い、改めて元気になったことを実感する。
「やっぱり外はいいな......」
そんな美琴の前に、見慣れた姿が現れた。
「お姉様!!」
次の瞬間、美琴は強く抱きしめられた。
「黒子......」
後ろから思い切り抱きついた黒子は、震える声で言った。
「本当に、本当にご無事で......!私、心配で心配で......!」
黒子の腕に力が込められる。
いつもならすぐに引き剥がしている美琴だったが、今日はそれをしなかった。
むしろ、黒子の気持ちを受け止めるように、そのままそっと彼女を抱いた。
「心配かけてごめんね」
美琴は静かに呟く。
その言葉に、黒子はさらに美琴にしがみついた。
「もう......こんな思いは二度とごめんですの......!」
黒子の声は震えていた。
「......ごめんね。でも、もう大丈夫だから」
美琴は黒子の背中をそっと撫でる。黒子の小さな震えが、少しずつ収まっていくのがわかった。
「お姉様......」
ようやく黒子が顔を上げる。
目には涙が浮かんでいたが、少しだけ安心したような表情だった。
「黒子が来てくれて、嬉しかったよ。ありがとう」
「......当然ですわ」
黒子は少し照れくさそうにしながらも、美琴をしっかりと見つめた。
結絆はそんな二人の様子を少し離れたところから静かに見守っていた。
「ふふ、よかったねえ、美琴」
彼は小さく微笑むと、二人の姿を見ながら静かにその場を後にした。
次回は、結絆と美琴がいちゃつく話です。