食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回は、結絆と美琴がイチャイチャする話です。


結絆と美琴の関係性

 学園都市の午後は、夏の日差しが傾き始める頃合いだった。

 

喫茶店の窓際に座る御坂美琴は、ストローを軽く噛みながら、少し疲れたようにテーブルに肘をついていた。

 

その向かいには、食蜂結絆が紅茶を片手に座っている。

 

「なんかさあ、病院で寝込んでたせいか、体がバキバキなのよね」

 

美琴はぼやくように言いながら、肩を軽く回した。

 

その動作だけでも、僅かに顔をしかめる。

 

「なるほど、美琴は、案外身体にくるタイプなんだねえ」

 

結絆は微笑しながら、紅茶を一口含んだ。

 

「そりゃあ、退院した後も、毎日学校やら勉強やらで気を抜く暇もないんだから仕方ないでしょ。特に最近は、変な事件も多いし......」

 

「なるほどねえ。まあ、身体を酷使してるんなら、ちゃんとメンテナンスしないとダメだよお?」

 

「それは分かってるけどさ、どうすればいいのか、よく分かんないし......」

 

美琴がため息をつくと、結絆はクスリと笑った。

 

「じゃあ、俺がマッサージしてあげようかあ?」

 

「は?」

 

突然の提案に、美琴はぽかんとした顔をした。

 

「俺は、普段から帆風達の健康管理のためにマッサージをしてるんだよお。筋肉の張りをほぐすのは、結構得意なんだよねえ」

 

「えっ......そうなの?」

 

「うん。帆風は格闘技の訓練で身体を酷使するし、蜜蟻は姿勢が悪くなりがちだからねえ。定期的にケアしてあげないと、パフォーマンスに影響が出ちゃうんだよお」

 

「へえ......」

 

結絆は、基本的に何でもできるのである。

 

意外な事実に、美琴は少し考え込んだ。

 

「それに、美琴も同じでしょお?バキバキの状態で生活してたら、どっかで変に力入って怪我しちゃうかもしれないよお?」

 

「......まあ、それは......確かにそうかも......」

 

美琴は渋々ながら納得した。

 

確かに、ここ最近の疲れは溜まる一方で、どこかでリセットしなければいけないと感じていた。

 

「......じゃあ、お願いしてもいい?」

 

「もちろんだよお」

 

結絆はにこりと笑い、店を出ると美琴を自分の部屋へと案内した。

 

 

 

 「じゃあ、うつ伏せになって楽にしてねえ」

 

結絆の部屋には、簡易なマッサージ用のベッドが置かれていた。

 

美琴は少し緊張しながらも、指示通りにうつ伏せになる。

 

「えっと......変なとこ触らないでよ?」

 

「はいはい、ちゃんとプロの施術をするから安心してよお」

 

結絆は手を軽く温めると、美琴の肩に優しく触れた。

 

「んっ......!」

 

指が僅かに押し込まれると、美琴は思わず小さく声を漏らした。

 

「うーん、結構張ってるねえ。これは放っておいたら痛くなるやつだよお?」

 

「そ、そんなに?」

 

「うん。特に肩甲骨のあたり、凝りすぎてて動きが悪くなってるねえ」

 

結絆の指がゆっくりと圧をかけながら動く。

 

最初はくすぐったいような感覚だったが、次第に深い部分にまで圧が届き、美琴は思わず目を閉じた。

 

「ふぁ......気持ちいい......」

 

「でしょお? こうやってじっくりほぐしていくのが大事なんだよお」

 

結絆は力加減を調整しながら、美琴の背中を丁寧にほぐしていった。

 

「......ねえ、結絆ってさ、本当に色んなことできるのね」

 

「ん?まあねえ。みんなの役に立てるなら、それでいいかなって思ってるよお」

 

「......なんかさ、ちょっと尊敬するかも」

 

「褒められると、嬉しいねえ」

 

そんな何気ない会話をしながら、結絆の手は確実に美琴の凝りを解きほぐしていった。

 

しばらくすると、美琴の呼吸が深くなり、心地よさに包まれているのが伝わってきた。

 

「ん......なんか、眠くなってきた......」

 

「それはリラックスしてる証拠だよお。疲れたときは、ちゃんと休まないとダメだからねえ?」

 

「うん......」

 

美琴の返事は、だんだんと間延びしていく。

 

そしてついには、微かな寝息を立て始めた。

 

結絆は優しく微笑むと、最後に軽く背中を撫で、タオルをかけてやった。

 

「おやすみ、美琴」

 

そう小さく呟いて、結絆はそっと部屋の灯りを落とした。

 

 

 

 夕方の光が窓から差し込み、柔らかなオレンジ色が部屋を包み込んでいた。

 

御坂美琴はゆっくりとまぶたを開けた。

 

心地よい温もりに包まれながら、ぼんやりと天井を見つめる。

 

「......んん......?」

 

身体を少し動かした瞬間、違和感を覚える。

 

いや、違和感というより、むしろ驚きだった。

 

「え、なにこれ......めっちゃ軽い......」

 

さっきまで肩や背中に溜まっていた重苦しい疲労が、まるで嘘のように消えていた。

 

最近起き上がるときに感じる鈍い痛みもない。

 

むしろスムーズに動けることに、美琴は驚きを隠せなかった。

 

「おお、ようやく目覚めたねえ」

 

優しい声が耳に届く。

 

視線を向けると、食蜂結絆が椅子に腰掛けながら、にこやかに美琴を見ていた。

 

「あ、結絆......」

 

「よく眠ってたよお。すごく気持ちよさそうだったから、起こさないでおいたよお」

 

「......そうだったんだ」

 

美琴は軽く寝返りを打ち、改めて自分の体の変化を確認する。

 

「なんか、すっごくスッキリしてる......あんた、本当にマッサージ上手いんだね」

 

「ふふっ、伊達に帆風達の身体のメンテナンスをしてるわけじゃないからねえ」

 

結絆は自信ありげに笑う。

 

その表情に、美琴は素直に感謝の気持ちを抱いた。

 

「本当にありがと、結絆。正直、こんなに楽になるとは思わなかったから」

 

「おお、美琴が素直にお礼を言うなんて、なんか新鮮だねえ」

 

「う、うるさいわね......!」

 

頬を少し赤くしながら、美琴はそっぽを向く。

 

しかし、その仕草がかえって微笑ましく見えた。

 

「でもねえ、美琴。実はまだ完全じゃないんだよお?」

 

「......え? どういうこと?」

 

「今は背中や肩の凝りをほぐしただけでねえ。手足のツボもしっかり押してあげると、もっと快調になるんだよお」

 

「手足のツボ......?」

 

「うん、特に足の裏には全身の調子を整えるツボが集中してるし、手のひらも意外と疲れが溜まりやすいんだよお。そこもケアすれば、もっと軽くなるはずだよお」

 

結絆の説明に、美琴は少し考え込んだ。

 

確かに、今でも十分スッキリしているが、さらに良くなると言われると、興味が湧いてくる。

 

「......じゃあ、その手足のツボも押してみてくれる?」

 

「もちろんだよお」

 

結絆は、美琴の前にしゃがみ込んだ。

 

「じゃあ、まずは手から始めるよお」

 

結絆は美琴の手をそっと取ると、親指で手のひらの中央をじんわりと押し始めた。

 

「ん......!」

 

思わず美琴の指がピクリと動く。

 

じわじわと圧がかかるごとに、心地よい刺激が広がっていく。

 

「ここは『労宮(ろうきゅう)』っていうツボでねえ、ストレスとか疲労を和らげる効果があるんだよお」

 

「へえ......なんか、じんわり効いてくる感じ......」

 

結絆はゆっくりと手の指先まで揉みほぐし、優しく刺激を加えていく。

 

その丁寧な手つきに、美琴はだんだんと力が抜けていくのを感じた。

 

「ふふ、リラックスしてきたねえ」

 

「......なんか、また眠くなりそう......」

 

「それくらい気持ちよくなってるってことだよお」

 

美琴は半ば放心状態になりながらも、次第にマッサージの心地よさに身を委ねていた。

 

「じゃあ、次は足だねえ」

 

結絆は美琴の足を優しく持ち上げ、足裏をじっくりと指で押していく。

 

「ひゃっ......!」

 

突然の刺激に、美琴はびくりと反応した。

 

「うわっ、すごい反応だねえ。もしかして足裏、結構張ってるんじゃない?」

 

「そ、そんなこと......あっ、でも......」

 

結絆が親指でじんわりと足裏を押し込むと、予想以上の気持ちよさが広がった。

 

「ここは『湧泉(ゆうせん)』っていうツボでねえ、疲労回復とかエネルギーの循環を良くするんだよお」

 

「......あんた、本当に何でも知ってるわね......」

 

美琴は感心しながらも、次第に身を委ねていく。

 

「気持ちいいなら、もっとじっくりやろうかあ?」

 

「......うん、お願い......」

 

結絆の手は休むことなく、美琴の疲れを優しく解きほぐしていった。

 

心地よい刺激が全身に広がるたび、美琴の顔には穏やかな表情が浮かんでいく。

 

「ふふ、美琴、すごくリラックスしてる顔してるよお」

 

「......文句ある?」

 

「ないない、とっても可愛いと思うよお」

 

「~~っ!?」

 

突然の言葉に美琴は顔を赤くしながらそっぽを向いた。

 

そんな彼女の反応を見ながら、結絆は優しく微笑み、引き続き手足のマッサージを続けるのだった。

 

マッサージを終えた美琴は、ソファに座りながらしばらく余韻に浸っていた。

 

身体が軽くなり、心地よい脱力感が広がる。

 

さっきまでの疲労が嘘のように消えていた。

 

「......ふぅ。なんか、すごくスッキリした」

 

「でしょお? 俺の腕前を信じてくれたかなあ?」

 

結絆が満足げに微笑む。

 

美琴は少し照れくさそうに頷きながら、改めて結絆の方を向いた。

 

 

 

 「それで、俺にお礼がしたいんだっけ?」

 

「あ、そうそう。ここまでしてもらったんだから、何かお返しをしたいなって......」

 

「うーん、そうだねえ......」

 

結絆は腕を組みながら少し考える素振りを見せた後、くすりと笑った。

 

「美琴の恥ずかしがる顔が見たいなあ」

 

「はぁ!? 何言ってんのよ!」

 

「いやあ、普段ツンツンしてる美琴が真っ赤になるの、すっごく可愛いからねえ」

 

「なっ......///」

 

案の定、美琴は頬を赤らめて怒るように睨んできた。

 

しかし、それすらも結絆にとってはからかうには絶好の表情だった。

 

「くっ......!これ以上、恥ずかしい顔なんて見せないわよ!」

 

美琴は、結絆を軽くにらむ。

 

「んー、じゃあねえ......」

 

結絆は美琴の方へゆっくりと身を寄せる。

 

美琴が何事かと目を丸くする間もなく、彼はそっと耳元に囁いた。

 

「......さっきマッサージ中に寝てた時に、俺とデートしてる夢を見てたよねえ?」

 

「――――っっっ!!?」

 

瞬間、美琴の顔が炎のように真っ赤に染まった。

 

「な、な、な......!!」

 

言葉にならない声を漏らしながら、耳まで真っ赤になっている。

 

「ふふっ、やっぱり図星だったねえ?」

 

「違っ......違う!!そんな夢なんか見てないっ!!」

 

「へえ?でも、寝てる時、すっごく幸せそうな顔してたよお?」

 

「~~~っ!!」

 

美琴は両手で顔を覆いながら、ソファの上でジタバタと暴れる。

 

「や、やめてよ!! そんなこと言わないで!!///」

 

「ははは、可愛いねえ、美琴は」

 

「うるさい!!もうあんたに何かお礼するのやめた!!」

 

「ええ~、残念だねえ」

 

結絆は楽しそうに笑いながら、美琴の反応をじっくりと堪能していた。

 

 

 

 顔を真っ赤にしている美琴を眺めながら、結絆は楽しそうに微笑んでいた。

 

ジタバタと抗議する彼女の姿はまさに「恥ずかしがる美琴そのもの」で、からかいがいがある。

 

「もう......!本当にあんたって最低......!」

 

「ははっ、それは褒め言葉かなあ?」

 

「違うっ!」

 

美琴は睨みつけるが、その頬はまだ赤く染まっている。

 

その様子を見て、結絆はふと何かを思いついたように軽く指を鳴らした。

 

「じゃあさ、お詫びにディナーでもどうかい?」

 

「......へ?」

 

「美琴はいつも頑張ってるから、ご褒美が必要じゃないかなあ。俺も付き合うよお?」

 

「な、な......!!」

 

またしても美琴の顔が急激に熱を帯びる。

 

食事の誘い自体は普通のことかもしれないが、結絆の言い方があまりにも自然すぎて、変に意識してしまう。

 

「で、でも......そんなの、わざわざ......」

 

「ダメかなあ?」

 

結絆はわざとらしくしょんぼりとした表情を作る。

 

美琴はその表情に少し戸惑ったように視線を彷徨わせた後、ぎゅっと拳を握った。

 

「......その、別に......ダメじゃないけど......」

 

「つまり、一緒に行くってことだねえ?」

 

「~~~っ!!あんた、いちいち言い方がムカつくのよ!」

 

美琴は再び顔を真っ赤にしながら、結絆に向かって軽く拳を振り上げる。

 

しかし、彼はひらりとかわしながら満足げに笑った。

 

「よし決まりだねえ。じゃあ、ちょっと特別なレストランを予約してくるよお」

 

「えっ、レストラン?」

 

「うん、高級なところだよお。せっかくだから、美琴もオシャレしてきてねえ?」

 

「えっ、ちょ、ちょっと待って、そんなの聞いてない!」

 

「じゃあ、予約するからねえ」

 

そう言って、結絆はスマートフォンを取り出し、手早く予約を済ませてしまった。

 

「......よし、完了。さて、美琴、行こっかあ?」

 

「......なんか、すごく流されてる気がする......」

 

美琴は半ば呆れたようにため息をついたが、それでも彼と食事に行くのが嫌ではない自分に気づき、心の中で少し戸惑った。




次回も、美琴の話です。
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