時系列は、気にしないでください。
猫耳を付けてみるお話
学園都市の某カフェにて。
「......っていうわけで、俺は今、悪魔と共生してるんだよねえ」
結絆は、紅茶を飲みながら何気なくそう呟いた。
目の前の操祈は、ストローを咥えたまま瞬きをする。
「......へ?」
「うん?だから、俺の中にムルムルっていう悪魔が居候してるんだよお」
「あのねぇ......いくらお兄様でも、唐突にそんなこと言われたらポカーンってなるんだけどぉ?」
操祈は、コップの端を指先でコンコンと叩きながら、呆れたように首を傾げる。
「ま、いいけどぉ。で、そのムルムルって悪魔は、何か面白いことはできるのかしらぁ?」
「面白いことねえ......。まあ、色々できるよお?」
「ならぁ、何かやってみせてよぉ」
操祈はいたずらっぽく微笑む。
結絆は少し考えた後、小さく「んー」と唸った。
「......じゃあ、エスメラルダに猫耳でも生やしてみるかい?」
「ふふっ、それはいいわねぇ。やっちゃいましょぉ!」
結絆は微笑を浮かべながら、ムルムルに命令を下す。
『ムルムル、エスメラルダに猫耳を付けろ』
次の瞬間、どこかで「にゃっ!?」という驚愕の声が響いた——。
結絆がエスメラルダを呼び出すと、カフェの穏やかな雰囲気を切り裂くように、カラン、と扉が開く音がした。
「結絆さん、いきなりどうしたの?」
現れたのは、最近ドリームに加わったエスメラルダ。
彼女は、少し焦った表情でこちらへ歩み寄ってくる。
しかし。
結絆と操祈の視線は、彼女の頭に集中していた。
「......ぷっ」
操祈が最初に吹き出した。
「えっ......何か変なところでもあるの?」
エスメラルダは首を傾げる。
彼女の緑色の髪の上に、ぴんと立ったふわふわの猫耳がしっかりと生えていた。
「いや、いやいやいや......これは、アレだよねえ......ムルムル、ちゃんと仕事したねえ......っ!」
結絆も口元を押さえながら笑いをこらえるが、すぐに限界が来る。
「ぶはははっ!!!」
「くふふっ、お兄様ぁ、最高よぉ!」
操祈もテーブルを叩きながら笑い出し、二人で爆笑する。
「......??」
エスメラルダはきょとんとしている。
自分の外見に何か異変が起こっていることに、まったく気づいていないようだった。
「ちょ、ちょっとエスメラルダ、鏡見なさいよぉ」
操祈がスマホのカメラを向けると、画面に映った自分の姿を見て、エスメラルダの目が驚きで大きく見開かれる。
「......っ!?これって猫耳......!?」
彼女は頭に手を当て、猫耳の存在を確認すると、顔を赤らめながら結絆を睨んだ。
「結絆さん......これってどういうこと?」
「いやあ、ちょっとした実験だよお。まさかこんなに可愛くなるとは思わなかったなあ......」
「そ、そんな......私が......可愛い......?」
エスメラルダは耳まで真っ赤に染まり、思わず後ずさる。
「ぷふっ、これは大成功ねぇ!お兄様ぁ、他の人にもやってみたらどうかしらぁ?」
「......そうだねえ。たとえば猟虎や入鹿には犬耳......帆風には......うーん、ライオンのたてがみとか?」
「ふふっ、いいじゃなぁい。それぞれのイメージに合うのをつけてあげるのよぉ」
操祈が楽しそうに提案する。
「くっ......二人とも、人の外見を弄んで......」
エスメラルダは不満げな表情を見せるが、その猫耳がぴくぴくと動くたびに可愛さが増し、結絆と操祈はまた笑いをこらえるのに必死だった。
『ムルムル、他の皆にも試してみようかあ』
結絆が心の中で呟くと、ムルムルの高笑いする声が聞こえたのだった。
夜のドリーム本部——マジックシアターの一室。
そこには、ドリームの女性メンバー達が揃っていた。
「ええっと......つまり、私達全員に何かを付けるってこと?」
警策看取が腕を組みながら結絆を見つめる。
「うん、まあねえ。ちょっとした遊びだよお」
「ふふっ、お兄様ぁ、早くやっちゃいましょぉ!」
操祈が横でニコニコと笑いながら促す。
『ムルムル、みんなに似合うのを頼む』
結絆がそう指示すると、部屋の空気がふわりと揺らぐ。
「えっ......?」
蜜蟻愛愉が不思議そうに頭を触ると、もふっとした感触が手に伝わった。
「......ちょっと待って、なにこれ?」
「ええっ!?頭に変なものが生えてる!?」
弓箭入鹿が慌てて自分の頭を触る。
次の瞬間——
「きゃはっ!皆、可愛いじゃないのぉ♪」
操祈が楽しそうに手を叩いた。
そこにいた全員の頭には、それぞれ動物の耳が生えていたのだ。
「えっと......私は犬耳......?」
入鹿は自分の頭を撫でながら困惑する。
「私は......猫耳?す~~~~っごく似合ってるね!!」
悠里千夜が自分の姿を鏡に映してまじまじと観察する。
「......私も、犬耳......?入鹿と一緒」
猟虎は耳をぴょこぴょこと動かしてみる。
「わあ、潤子ちゃんのライオンのたてがみ、すっごく似合ってるわよお!」
愛愉が目を輝かせながら帆風を見る。
「え、ええっ!?私、こんなことになっているんですか!?///」
鏡に映る自分の姿を見て、帆風は顔を真っ赤にして狼狽える。
「結絆さん!これってどういうこと!?」
入鹿が詰め寄るが、結絆はにやりと笑う。
「いやあ、皆似合うなあと思ってねえ?」
「ちょっと!私は納得してないんだけど!?っていうか、なんで私は犬耳なの!?」
「ふふっ、入鹿にはピッタリじゃない?お兄様の前では、いつも犬みたいに従順じゃなぁい」
「誰がワンワンよ!」
入鹿が抗議するが、その犬耳がぴくぴくと動くせいで、全く迫力がない。
「くふっ......ぷっ......」
結絆と操祈は、お互いの顔を見合わせて吹き出した。
「いやあ、これはいいねえ。なかなか面白いことになったよお」
「ふふっ、お兄様ぁ、今度は街中でやってみたらどうかしらぁ?」
「それは......また今度考えようかなあ」
結絆が苦笑する中、ドリームのメンバー達は、耳を触ったり動かしたりしながら、すっかり盛り上がっていた。
学園都市某所のカフェ。
結絆はテーブルに肘をつきながら、ゆったりとした笑みを浮かべていた。
「いやあ、来てくれてありがとねえ、美琴、黒子」
「......なんか嫌な予感がするんだけど」
御坂美琴は腕を組みながら、警戒するように結絆をジト目で見つめる。
「お姉様、結絆さんが呼んでくださったのですから、きっと何か面白いことがあるに違いありませんの」
白井黒子が隣でにこやかに言う。
「そうそう、ちょっとした実験なんだけどねえ。まあ、そんなに身構えなくてもいいと思うよお?」
「......絶対なんかやる気でしょ、アンタ」
美琴は結絆の余裕たっぷりの態度を見て、直感的に危険を察知した。
「よし、じゃあ帰る!」
さっと立ち上がる美琴。
しかし——
「黒子、頼むよお」
「了解いたしましたわ♪」
「えっ、ちょっ——ちょっと待って!?ぎゃあああ!?」
美琴が逃げようとした瞬間、黒子のテレポートが炸裂し、一瞬で彼女の腕ががっちりとホールドされる。
「うふふ、お姉様、逃がしませんわよぉ?」
「くっ、黒子ぉ!アンタ、裏切ったわね!?」
「お姉様に可愛いものをつける機会を逃すわけにはまいりませんの♪」
「可愛いもの!?黒子、アンタまさか、それをわかってて......」
美琴が叫ぶが、すでに遅かった。
『ムルムル、頼むよお』
結絆が心の中で合図を送ると、次の瞬間——
「......え?」
美琴の頭に、ふわふわの猫耳がぴょこんと生えた。
「ちょっ......!?えっ、なにこれ!?」
美琴が自分の頭を触ると、手にやわらかい感触が伝わる。
「ふおぉ~、お姉様、似合っていますわ♪」
黒子が感動したように手を叩く。
「いやいやいや、なにこれ!?何が起こったの!?」
「いやあ、美琴は元々猫っぽいところあるし、すごく似合うねえ」
結絆はニヤニヤしながら美琴を観察する。
「これはいいものですわ......写真、写真を撮らなくては!」
「や、やめろぉぉぉ!!!」
美琴は顔を真っ赤にして抵抗するが、黒子の空間移動による拘束からは逃げられない。
「ちょ、ちょっと!早く元に戻してよ!!」
「うーん、まあ、しばらくそのままでいいんじゃないかなあ?」
「よくないわよ!!!」
必死に抗議する美琴を見て、結絆と黒子はますます楽しそうに笑うのだった——。
「......もう、早く元に戻してよ!!」
美琴は顔を真っ赤にしながら頭の猫耳を押さえている。
「いやあ、美琴、ほんと似合うねえ」
「ふふっ、お姉様、最高に可愛らしいですわぁ」
「は、はあ!? こんなの可愛くないでしょ!!」
美琴が抗議するが、結絆と黒子は全く気にしていない。
そこで、結絆は思いついたようにポケットから一本の猫じゃらしを取り出した。
「さて、ちょっと試してみたいことがあるんだけどねえ」
そう言いながら、美琴の目の前に猫じゃらしをふわりと揺らしてみる。
「......え?」
美琴の目が、一瞬だけその猫じゃらしに釘付けになった。
「お姉様ぁ、なんだか目つきが変わりましたわよ?」
「ち、違う!!べ、別にそんなのに興味なんか......!!」
美琴は顔を真っ赤にしながら目をそらそうとするが——
ふりふり。
結絆が猫じゃらしをもう一度揺らす。
「......っ!」
美琴の指先が、わずかにピクッと動いた。
そして、次の瞬間——
「——はっ!!」
美琴の手が思わず猫じゃらしを捕まえようと伸びていた。
「ぷっ......あははははっ!!」
結絆は耐えきれず吹き出した。
「お、お姉様......まるで、本物の猫ですの......!」
黒子も目を輝かせながら、笑いを堪えきれずにいる。
「ち、違うの!体が勝手に反応しただけで!!べ、別に遊びたかったわけじゃなくて!!」
美琴は必死に言い訳をするが、その耳はピクピクと動いている。
「いやあ、猫耳がついてるだけで、こんなに猫っぽくなるとはねえ」
「お姉様はやっぱり猫属性ですのね♪」
「うるっさい!!もうやめてよお!!!」
美琴の叫び声がカフェに響き渡り、結絆と黒子はますます楽しそうに笑うのだった。
「よーし、美琴、もっと撫でてあげようかねえ?」
「ちょっとやめろおおおお!!」
結絆が美琴の猫耳を優しく撫でると、美琴は顔を真っ赤にしてジタバタと暴れる。
「お姉様、本当に可愛いですわぁ......!」
黒子はうっとりとした表情で、美琴の頭に手を伸ばす。
「だから!触るなっての!!」
美琴が電撃を纏おうとするが、その前に——
プルルルルル......!
結絆のスマートフォンが鳴った。
「ん?ちょっと待ってねえ」
結絆が電話に出ると、すぐに焦ったような声が飛び込んできた。
『ちょっと!結絆!今どこ!?』
「おや、エスメラルダじゃないかあ。どうしたんだい?」
『どうしたのじゃないわよ!マジックショーの公演、もうすぐでしょ!?なのに、まだ猫耳つけたままなのよ!?』
「ああ、それ?もちろんつけたままだよお?」
『ダメよ!こんな姿でステージに出たら、私の演出が台無しになっちゃう!!』
エスメラルダの必死な声に、結絆はくすっと笑う。
「でもねえ、猫耳つけたままショーをしたら、それはそれで盛り上がると思わないかい?」
『絶対ダメ!真剣なマジックショーに猫耳は......っていうか、私以外のケモ耳もなんとかしてよ!!』
電話越しにエスメラルダの切実な叫びが聞こえ、結絆はますます楽しそうに微笑むのだった——。
華やかなスポットライトがステージを照らし、観客席からは熱気が漂っていた。
「さあ、皆様!今夜のショーの主役、エスメラルダの登場です!」
司会者の声に合わせて、エスメラルダがステージの中央に歩み出る。
「......うう、なんで私は猫耳をつけたままなのよ......」
ちなみに、エスメラルダ以外のケモ耳は解除してある。
小声でぼやきながらも、彼女はすぐにプロの表情に切り替え、華麗にステッキを振った。
シュッ!
ステージ上のテーブルから、一瞬のうちにトランプが舞い上がる。
カードが宙を舞い、まるで意思を持ったかのように彼女の手元へと吸い込まれる。
「すごいぞ!」
「かっこいいわ!」
観客の歓声が響く中、ふと別の声が混じる。
「ていうか......猫耳、かわいくない?」
「えっ、ほんとだ。めちゃくちゃ似合ってる!」
「マジックもすごいけど、その猫耳姿がまた最高!」
エスメラルダは魔法のようにトランプを消していくが、観客の反応が明らかに二つの方向に分かれているのを感じていた。
「......もしかして、猫耳のせいでマジックより私自身に注目がいってる?」
彼女の頬がわずかに赤くなるが、すぐに気を取り直す。
「まあいいわ......最高のショーを見せてあげる!」
エスメラルダは両手を広げると、天井から無数の光の粒が降り注ぎ、それが金色の鳥へと変わる。
「うわあ......!」「すごすぎる!」
観客が総立ちになり、拍手が鳴りやまない。
「にゃんとも素晴らしいマジックでしたね!」
司会者の軽口に、エスメラルダは一瞬だけ目を細めたが、すぐに優雅な笑みを浮かべる。
「皆さん、今夜は楽しんでいただけましたか?」
「最高だったー!」
「エスメラルダにゃん、かわいい!!」
その言葉に、彼女は肩をすくめつつも微笑んだ。
「......ま、たまにはこういうのもアリかもしれないね」
こうして、猫耳をつけたままのエスメラルダのマジックショーは、予想以上の大成功を収めたのだった。
学園都市の昼間、カフェのテラス席で紅茶を楽しんでいた結絆の前に、操祈が満面の笑みで座った。
「ねぇ、お兄様ぁ。ちょっとお願いがあるんだけどぉ」
結絆はカップを持ち上げながら、軽く片眉を上げた。
「んん?どうしたんだい、操祈?」
「今から当麻に会いに行くんだけどぉ、ちょっと驚かせたくてぇ......」
そう言いながら、操祈はにっこりと笑った。
「お兄様の力で、私に可愛い猫耳を生やしてくれない?」
「ほう......猫耳をつけて当麻を驚かせるとは、なかなか面白いことを考えるねえ」
結絆は微笑を浮かべながら、少し考えた後、頷いた。
「よし、それじゃあムルムルに頼んでみようかねえ」
彼は軽く指を鳴らした。
次の瞬間——操祈の頭の両側から、ふわりとした金色の猫耳がぴょこっと生えた。
「わぁ!すごーい!」
鏡で自分の姿を確認すると、操祈は満足そうに微笑んだ。
「似合ってる?」
「もちろん。可愛いよお、操祈」
「んふふっ、それなら早速当麻のところに行ってくるわぁ♪」
彼女は嬉しそうに席を立ち、当麻の元へと向かった——。
しばらくして、寮の近くを歩いていた上条当麻は、いつものように溜息をついていた。
「はぁ......何かわからないけど、嫌な予感がするんだよなぁ」
そんな彼の前に、突然現れたのは——
「やっほー、当麻♪」
「お、おう......って、ん?」
当麻は目を瞬かせた。
目の前にいるのはいつもの操祈......のはずだったが、彼女の頭には可愛らしい猫耳がぴょこんと生えていた。
「な、なんだその耳!?まさか結絆の仕業か!?それとも新しいオシャレ!?」
真っ先に結絆を疑うあたり、当麻の直感は冴えている。
「うふふ、驚いたぁ?」
操祈はくるっと回ってみせながら、楽しそうに笑う。
「いや、驚いたなんてもんじゃねぇよ......」
当麻は目を擦りながら、じっと操祈を見つめる。
「しかも妙に似合ってるし......」
「やだぁ、褒めても何も出ないわよぉ?」
「待て待て!てか、むしろどこからどうツッコめばいいんだよ!」
「ふふっ、これはねぇ、お兄様に生やしてもらったの♪」
「......やっぱり結絆の仕業かよ!!」
当麻は頭を抱えた。
結絆の気まぐれと、操祈の悪ノリが合わさると、とんでもないことになる
そんな確信を得た瞬間だった。
「......いや、やっぱり滅茶苦茶似合ってるな」
「え?何か言ったかしらぁ?」
食蜂操祈が可愛らしく首を傾げると、彼女の頭に生えた金色の猫耳がぴくりと動いた。
当麻は内心の動揺を隠しながら、再度猫耳に目を向ける。
確かに最初は驚いたが、こうして改めて見ると、驚くほど自然に馴染んでいる。
「いや......本当に似合ってるって思ってさ」
操祈はその言葉を聞いて、嬉しそうに口元を緩めた。
「ふふっ、そぉ?お兄様に生やしてもらった時から、結構しっくりきてるのよねぇ」
「いや、普通の人は“しっくりくる”なんて言わないからな?」
当麻が呆れながら言うと、操祈は悪戯っぽく微笑んだ。
「せっかくだから、当麻にも触らせてあげるわよぉ?」
「え、いいのか?」
「もちろんぉ。優しく触ってねぇ?」
当麻は半信半疑ながらも、そっと手を伸ばし、操祈の猫耳に触れた。
「おお......ふわふわだ」
指先に伝わる柔らかな感触に、当麻は驚きを隠せなかった。
「んっ......くすぐったいわねぇ」
操祈は身をすくめながら、くすぐったそうに目を細める。
その様子がまるで本物の猫のようで、当麻は思わず微笑んでしまった。
「なんか、本当に猫みたいだな」
「やだぁ、そんなに触られたら......」
操祈は顔を少し赤くしながら、当麻の手をそっと握る。
「そんなに気に入ったなら、お兄様に頼んで当麻にも猫耳を生やしてもらおうかしらぁ?」
「ちょっと待て!俺は絶対遠慮するからな!」
慌てる当麻を見て、操祈は楽しそうに笑った。
「ふふっ、冗談よぉ。でも、たまにはこういうのも悪くないわねぇ」
そんな和やかな時間が流れる中、操祈の猫耳は夕陽に照らされ、金色に輝いていた
結絆は、静かな夜の空を見上げながら、ムルムルに語りかけた。
「今日は楽しませてもらったよお。ケモ耳騒動のおかげで、皆随分と盛り上がったからねえ」
ムルムルは高笑いしながら、結絆の内側に佇んでいた。
「ふふっ、それは何より。結絆が望むことなら、どんなことでも叶えてやろう。困ったことがあれば、また頼るといい」
ムルムルはそう言って、にこりと笑った。
その笑顔は、一見すると親しみやすく、どこか優しげなものだった。
しかし、結絆はその言葉の裏にある意図をすぐに察知した。
——こいつ、こちらを油断させようとしている。
ムルムルの心を読むまでもなく、その狙いは明らかだった。
まるで自分のことを信頼できる存在だと錯覚させるような言い回し。
その奥に潜むのは、ただの好意ではなく、確かな計算と駆け引きだ。
「俺に依存させようってか?」
結絆は目を細めながら、軽く肩をすくめた。
「別に頼ること自体は悪くないけどねえ......あんたみたいな悪魔に安易に借りを作るのは、ちょっと考えものかなあ」
ムルムルはその言葉を聞いて、微笑を深めた。
「ふふっ、流石だな。私の意図に気づいても、やっぱり動じないとは」
「そりゃあねえ。俺もこの世界でそれなりに長く生きてるんでねえ。あんたみたいな“策士”には慣れてるつもりだよ」
結絆は軽い口調で言いながらも、ムルムルの動向には常に警戒を怠らなかった。
彼の存在は確かに便利で、時に面白い。
しかし、それは同時に危険でもある。
絶対に気を許しきってはいけない存在——それがムルムルだった。
ムルムルはそんな結絆を見つめながら、再びくすくすと笑う。
「だがな、結絆。私がどう思っていようと、結局のところ、お前が私を使うかどうかは、お前次第なのだよ?」
「まあねえ。でも、お前も覚えておきなよお。俺は便利に使われるのは嫌いなんでねえ」
結絆は意味深に笑いながら、ムルムルに語りかけた。
ムルムルはその仕草に、ほんのわずかに目を細めた後、再び満面の笑みを浮かべた。
この悪魔との関係は、もう少し続きそうだ。
結絆はふっと夜空を見上げ、静かに息を吐いた。
今回は、いろんなキャラにケモ耳を生やしてみました。
番外編は、思いついた話を書いたタイミングで、適当に投稿していく予定です。