食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回からは、アイテム編です。

時系列としては、エンデュミオンの手前ぐらいになります。


アイテム編
ドリームとアイテムの同盟


夜の学園都市。

 

ネオンが輝き、道路には行き交う車のライトが流れている。

 

そんな都市の一角、繁華街の中にある高級レストランの一室で、食蜂結絆と麦野沈利は向かい合って座っていた。

 

「へえ、わざわざ高級レストランに誘ってまで話したいことがあるってわけ?ドリームのリーダーさんよ」

 

麦野はナイフでステーキを切りながら、軽く警戒するように結絆を見つめた。

 

彼女の態度は一見余裕があるように見えるが、相手が結絆である以上、慎重さを捨てることはない。

 

「うん。まあ、飯でも食いながら話そうかって感じだよお。君とこうしてゆっくり話すのも久しぶりだからねえ」

 

「確かに、共闘は何度かしたけど、こうやって食事をするってのは初めてかもね」

 

結絆はワインを軽く口に含みながら、麦野を見た。

 

余談だが、結絆は自身の能力の影響で酒を飲んでも一切酔わない。

 

「早速本題に入るけどお、今回君を呼んだのは、ドリームとアイテムで協力体制を築かないかって話をするためなんだよねえ」

 

「協力?お前の組織と私の組織が?」

 

「そういうことだよお。学園都市には色んな勢力があるけどねえ、うちとアイテムが組めば、更なる影響力を持てると思わないかい?」

 

麦野は肉を刺したフォークを口元に運びながら、慎重に言葉を選ぶようにして口を開く。

 

「お前の組織が情報網に強いのは知ってる。でも、それだけで私が首を縦に振ると思う?」

 

「もちろん、君達にとってのメリットも考えてるよお」

 

結絆は余裕の笑みを浮かべながら、麦野の表情を伺う。

 

「例えば、麦野家の小麦の流通量を増やしてあげるとかねえ?」

 

麦野の目がわずかに細められる。

 

「結絆、お前はどこまで知ってる......」

 

「まあまあ、俺も統括理事会の一員だからねえ。亡本の後釜で入ったってのもあって、学園都市の食糧事情を管理したり都市インフラを任されてるからねえ。」

 

麦野は少し黙った後、ニヤリと笑った。

 

「やっぱりお前は抜け目ないわね。でも、それを本当にやってくれるって保証は?」

 

「保証するよお。統括理事会のルートを使えば、融通を利かせることは可能だからねえ。まあ、その代わりに、アイテムの人材を時々使わせてほしいんだよねえ」

 

「ふぅん......ま、お前がそこまで言うなら、乗ってやってもいいかもね」

 

麦野はしばらく考え込むように天井を見上げ、それからゆっくりとグラスを持ち上げた。

 

「了解。お前が約束通り、麦野家の小麦の流通を増やしてくれるなら、アイテムはドリームと組んでやるよ」

 

「決まりだねえ」

 

結絆は笑みを浮かべ、麦野のグラスに自分のグラスを軽くぶつけた。

 

カチン、と澄んだ音が響く。

 

こうして、ドリームとアイテムは協力体制を築くことになった。

 

 

 

 学園都市の某所、高級感のあるラウンジの一角にて、食蜂結絆はアイテムのメンバーであるフレンダ、絹旗、滝壺と共にくつろいでいた。

 

「いやー、同盟ってのは便利なもんなわけよ。前まで情報を手に入れるのも一苦労だったのに、最近はドリーム経由でサクッと手に入るってわけよ!」

 

フレンダが嬉しそうに笑いながら、カクテルのグラスを揺らす。

 

以前は彼女達は、独自のコネクションや裏ルートを駆使して情報を得ていたが、ドリームの情報網を活用することで、より迅速かつ正確に情報を手に入れることができるようになった。

 

結絆をはじめ、操祈や蜜蟻やミサカといった精神系能力者や電撃使いの頂点を抱えてるドリームは、情報戦に置いて無類の強さを誇る。

 

「超助かってますよね。戦闘用の装備も、ドリームのおかげで超手に入りやすくなりましたし」

 

絹旗がそう言いながら、最新型の小型の窒素ボンベを軽く叩いてみせる。

 

「うん。情報があると、戦いの計画も立てやすい」

 

滝壺がいつもの無表情ながらも、静かに感謝の言葉を述べる。

 

結絆はそんな三人の様子を眺めながら、ゆっくりと笑みを浮かべた。

 

「君達にそう言ってもらえるならあ、この同盟も悪くないってことだねえ」

 

結絆も今回の同盟には大きなメリットを感じていた。

 

アイテムの戦闘力を活かすことで、自身の組織の影響力をさらに広げることができるのだ。

 

更に、麦野家から入ってくる穀物の流通量を増やすことによって、莫大な富を得ることにつながってもいる。

 

「それに、俺も君達のおかげで学園都市に対する影響力を強めることができたよお。やっぱり、実力のあるチームと組むのは大事だねえ」

 

そう言いながら、結絆はフレンダに軽く目配せをする。

 

「OK、じゃあここは一つ、同盟成功の祝いってことで乾杯しようじゃないの!」

 

「超いいですね、それ」

 

「うん、いいと思う」

 

四人はそれぞれのグラスを掲げ、カチンと鳴らす。

 

こうして、ドリームとアイテムの同盟は、確かな形で学園都市の裏社会に根付いていった。

 

 

 

 一方で、学園都市の暗部には数多くの組織が存在する。

 

その中でも、低ランクの暗部組織に属する者達は、ドリームとアイテムの同盟を面白く思っていなかった。

 

「......ここがアイテムのアジトか」

 

夜の帳が降りた学園都市の一角。

 

廃工場を改造した建物の前に、三つの暗部組織の構成員達が集結していた。

 

一つ目の組織は、《ブラックアウト》。

 

主に電気系の能力者で構成された小規模部隊で、リーダーは《雷切(らいきり)》の異名を持つ男、志藤蓮司(しどう れんじ)。

 

二つ目の組織は、《レッドフォッグ》。

 

煙や霧を操る能力者を中心にした集団で、リーダーは《ブラッドミスト》と呼ばれる女、滝本朱音(たきもと あかね)。

 

三つ目の組織は、《アイアンバウンド》。

 

金属を操る能力を持つ者達で構成されており、リーダーは《鋼鉄の牙》を名乗る男、坂城豪(さかしろ ごう)。

 

三つの組織は、それぞれの能力を活かしながら慎重にアジトへと近づいていた。

 

「偵察班からの報告では、麦野沈利達はアジトにいるはずだ。奇襲を仕掛けて一気に片をつけるぞ」

 

志藤がそう指示を出すと、滝本がニヤリと笑った。

 

「ドリームと組んだせいで調子に乗った報いってことね。ま、潰しちまえばアイテムの戦力は削げるし、ドリームにとっても大ダメージってところでしょ?」

 

「ふん、ヤツらも裏社会の秩序を理解していないわけじゃないだろうが......この同盟は余計だったな」

 

坂城が低く呟くと、構成員達は一斉に武器を構え、アジトの扉を蹴破った。

 

しかし、そこには誰もいなかった。

 

「......は?」

 

構成員達は目を見開いた。

 

確かにここがアイテムのアジトのはず。

 

だが、室内には人の気配がない。

 

あるのは整理整頓された家具と、中央のテーブルに置かれた一枚の紙。

 

志藤が警戒しながら紙を手に取ると、そこには流れるような文字でこう記されていた。

 

『奇襲を仕掛けるなら、もう少し計画を練ったほうがいいと思うよお?この情報、麦野達にはあらかじめ伝えておいたからねえ。by食蜂結絆』

 

その瞬間、背筋が凍る。

 

「......情報が漏れていた、のか?」

 

「チッ、アイテムの連中がいないってことは、もしかして......」

 

坂城が何かに気づいたように周囲を見回した直後、背後のシャッターが勢いよく閉まった。

 

そして、スピーカーから結絆の軽い声が響く。

 

「君達も、学園都市の暗部で生きてきたなら、もう少し慎重に動いたほうがいいと思うよお?アイテムを潰すつもりだったのかもしれないけどねえ、君達が今やってるのは単なる無駄足だよお」

 

「......くそっ!」

 

滝本が叫び、能力を発動させようとする。

 

しかし──

 

「やるなら覚悟しなよお?俺がアイテムに情報を流してたってことは、当然、こっちの準備も整ってるってことなんだからねえ」

 

結絆の言葉が終わると同時に、辺りに仕掛けてある爆弾のカウントダウンが始まる。

 

「っ......!退却するぞ!!」

 

三つの組織のリーダー達はすぐさま撤退を決意した。

 

こうして、アイテムのアジトへの襲撃は、何の戦果も得られぬまま失敗に終わった。

 

 

 

 深夜の学園都市。

 

マジックシアターの居住エリアにある高級ラウンジ。

 

三つの暗部組織がアイテムのアジトを奇襲する少し前に、食蜂結絆は、麦野沈利、フレンダ=セイヴェルン、絹旗最愛、滝壺理后と向かい合って座っていた。

 

テーブルには数種類のカクテルが並び、薄暗い照明が影を落としている。

 

「それで?結絆、わざわざ呼び出したってことは、ただの食事ってわけじゃないんでしょ?」

 

麦野がグラスを回しながら、じっと結絆を見据える。

 

「んー、まあ、そうだねえ。君達にちょっとした“お知らせ”があってねえ」

 

結絆は微笑を浮かべながら、軽く指を鳴らした。

 

すると、端末の画面が起動し、三つの暗部組織の情報が映し出された。

 

「《ブラックアウト》、《レッドフォッグ》、《アイアンバウンド》。この三つの組織がねえ、君達のアジトを襲撃しようとしてるよお」

 

「......へ?」

 

フレンダが一瞬固まり、絹旗も眉をひそめる。

 

滝壺は無言で画面をじっと見つめていた。

 

「それ、マジ?」

 

「マジだよお。君達のアジトに数時間後に襲撃を仕掛けるつもりらしいよお」

 

麦野はしばし沈黙し、それから不敵に笑った。

 

「......ふん、いい情報じゃない。あたしらに恩を売るつもりかい?」

 

「まあ、今回は俺からの親切心ってことにしといてくれたらいいよお。ドリームとアイテムは同盟関係なんだからねえ。万が一、君達が潰されたら俺も困るからねえ」

 

結絆は肩をすくめてみせる。

 

麦野はしばらく考え込むように指でグラスの縁をなぞった後、ゆっくりと口を開いた。

 

「今のアジトはもう使い飽きてたし、そろそろ新しい拠点に移ろうと思ってたのよ。だから、この機会にアジトを捨てるわ」

 

結絆は興味深そうに麦野の言葉を待った。

 

「結絆、お前のマジックシアターに住まわせてもらえない?」

 

「ほう、君達が俺のところにねえ......」

 

結絆は少し考える素振りを見せ、それから笑った。

 

「いいよお。俺としても、君達が身近にいてくれるなら安心だからねえ」

 

「はいはい。じゃあ、アジトの始末は任せるわ、フレンダ」

 

麦野は横目でフレンダを見る。

 

フレンダはニヤリと笑いながら親指を立てた。

 

「オッケー、爆弾の準備はバッチリだから、さっさと仕掛けてくるってわけよ!」

 

フレンダはすぐにアジトへと向かった。

 

 

 

 アジト内は、いつもと変わらぬ静けさに包まれていた。

 

しかし、その静けさが間もなく破られる。

 

「さて、どこに仕掛けようかなっと......」

 

フレンダは慣れた手つきで爆弾を配置していく。

 

入り口、主要な通路、作戦室──すべての要所に仕掛けを施した。

 

「ふふん、これで準備完了ってわけよ!」

 

フレンダは最後にアジトを見渡し、爆弾のスイッチを確認すると、静かにアジトを後にした。

 

こうして、アイテムは新たな拠点へと移動し、アジトはまもなく訪れる襲撃者達を待つこととなった。

 

 

 

 一方、静まり返ったアイテムの旧アジト。

 

不気味なほどの静寂の中、《ブラックアウト》、《レッドフォッグ》、《アイアンバウンド》の三つの暗部組織が慎重に侵入していた。

 

彼らの背後には、それぞれの組織の構成員達が控えている。

 

総勢50名以上の人員が、完全に空になったアジトに足を踏み入れていた。

 

だが、その異様な静けさに違和感を抱いた時には、すでに遅かった。

 

突然、天井に仕掛けられた爆弾が点火し、鋭い電子音が鳴り響いた。

 

「なッ──!」

 

轟音が響き渡る。

 

最初の爆発が天井を吹き飛ばし、そこから続くように、壁や床に仕掛けられた複数の爆弾が次々と起爆した。

 

爆炎が瞬時にアジト内を包み込み、衝撃波が四方八方へと炸裂する。

 

「ぎゃああああっ!」

 

「くそっ! これは罠だ!」

 

火の手が勢いよく燃え広がる中、ほとんどの構成員は爆風に巻き込まれ、火達磨になった。

 

悲鳴を上げる間もなく炎に包まれ、次々と崩れ落ちていく。

 

リーダー格の志藤、滝本、坂城の三人と、運よく爆風から逃れた10数人だけが何とか命を繋いでいた。

 

しかし、彼らも火の粉を浴び、呼吸するたびに熱と煙が肺を蝕む。

 

「......クソが......!」

 

志藤は歯を食いしばる。

 

滝本は腕に火傷を負い、坂城は瓦礫の下敷きになりながらも拳を震わせていた。

 

だが、彼らに絶望する暇はない。

 

建物は完全に崩れかけ、四方八方から迫る炎が逃げ場を狭めていく。

 

「撤退だ......! ここはもうダメだ!」

 

志藤の指示で、彼らは何とか出口を目指し、燃え盛る瓦礫をかき分けながら這い出す。

 

外の冷たい夜風が焼け付く肌を撫でたとき、彼らはようやく息をついた。

 

しかし、その瞳には怒りが宿っていた。

 

「......アイテムめ、ふざけやがって......!」

 

滝本が歯を食いしばる。

 

「このままで済むと思うなよ......!」

 

坂城が拳を握りしめる。

 

志藤は血まみれの顔で苦笑しながら、仲間達を見回した。

 

「......いいだろう。次は、アイテムじゃない。やつらと組んだ“ドリーム”を叩く......!」

 

三人の視線の先には、学園都市の中心にそびえる『マジックシアター』の灯りが、不気味に瞬いていた。

 

 

 

 マジックシアターの前に、志藤、滝本、坂城率いる低ランク暗部組織のメンバー達が、息を潜めながら集まっていた。

 

「......ここが、ドリームの拠点か」

 

志藤が低く呟きながら、煌びやかな外観を見上げる。

 

昼間は華やかなショーが行われるこの場所も、今は静寂に包まれていた。

 

ネオンの光は消え、入り口の自動ドアは固く閉ざされている。

 

「夜間は営業してないのね......。おかげで観客どころか警備も手薄みたいよ」

 

滝本が唇を吊り上げる。

 

周囲に人影はない。

 

表向きは単なる娯楽施設だから、深夜には厳重な防備を敷くようなことはないのだろう。

 

「だが、そう簡単には入れねぇだろうな。統括理事会の一員がいる組織の拠点だ。裏口や非常口も封鎖されてる可能性が高い」

 

坂城が太い腕を組みながら言う。

 

「ふん、それなら力技で開けるまでだ」

 

志藤は合図を送り、数人の手下がドアの施錠部分に細工を始める。

 

電子ロックは解除が難しく、一筋縄ではいかなかったが、組織の中には電子機器に強い者もいる。

 

数分の作業の後——

 

「よし、開いた!」

 

カチリ、と小さな音を立て、扉がわずかに開いた。

 

「あらら、意外と簡単だったわね?」

 

「所詮は娯楽施設ってことか?」

 

滝本と坂城が皮肉げに笑う。

 

「油断するな」

 

志藤は低い声で釘を刺す。

 

ドリームは単なる表向きのショービジネス集団ではない。

 

統括理事会のメンバーである食蜂結絆が率いる、学園都市の暗部でも異質な存在だ。

 

その拠点に踏み込む以上、何が待ち受けているかわからない。

 

慎重にドアを押し開け、先頭の数人が静かに中へと滑り込む。

 

「......妙に静かね」

 

滝本が周囲を見渡しながら呟く。

 

赤と金を基調とした内装、豪華なシャンデリア、整然と並べられた観客席——普段ならば華やかなショーが繰り広げられる空間は、今はただ暗闇に沈んでいる。

 

「警報も鳴らない......妙だな」

 

坂城が警戒するように辺りを見回す。

 

普通なら侵入者を感知して警備が駆けつけるはずなのに、そんな気配は微塵もない。

 

その時だった。

 

背筋を冷たいものが走る。

 

「......なんだ?」

 

志藤が顔をしかめる。

 

滝本と坂城も同じように、得体の知れない不安を感じていた。

 

「クソ......なんか嫌な感じがするぞ」

 

「誰かがこっちを見てる......?」

 

ゾワリとした感覚が全員を襲う。

 

まるで、見えざる何者かが、彼らの動きを静かに監視しているかのような嫌な予感。

 

志藤は拳を握りしめ、奥へと進む決意を固めた。

 

「......罠かもしれねぇが、もう後戻りはできねぇ。行くぞ」

 

しかし、その先に待っているものが何か、彼らには知る由もなかった。




ドリームとアイテムが同盟を組むことになりました。

アイテムのメンバーは、魅力的なキャラが多いですよね。

オリキャラが出てきましたが、皆さんが察している通りすぐに消えます。
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