マジックシアターのカフェスペースで、帆風潤子は紅茶を片手に優雅な微笑みを浮かべていた。
その向かいに座るフレンダは、目の前のスコーンをいじりながら、じっと帆風を見つめている。
「それでですね、この前、結絆さんと一緒に鏡の世界に行ったんですよ!」
帆風が楽しそうに語り出すと、フレンダは興味を示した。
「へえ?鏡の世界?」
「はい。結絆さんの部屋にある鏡で、鏡の向こう側に広がる別世界へ行けるんです」
フレンダはスコーンをかじりながら、「面白そうじゃん」と言って身を乗り出した。
「ねえねえ、そこってどんなところだったの!」
「特に印象に残ってるのは、南国のビーチです。どこまでも続く白い砂浜、透き通るような青い海、そして強く降り注ぐ太陽の光......。結絆さんと一緒にサーフィンをしたり、海の幸で料理を作って食べたり、とても楽しかったですよ」
「へえ、結絆ってサーフィンなんかできるわけ?」
「はい、それはもう、波の上を華麗に舞うように......!」
帆風は頬を紅潮させながら、うっとりと語る。
フレンダは「まあ、結絆なら何でもできそうな気はするけどさ」と苦笑した。
「そして、火山地帯にも行ったりしたんです」
「火山?いきなり?」
「ええ。でも、ただの火山じゃありませんよ。空には大きな雲の怪物がいたり......。火山地帯では私は体調を崩しちゃったんですけど、結絆さんが付きっきりで看病してくれたんです。あの時の結絆さんは、とてもかっこよかったですよ!」
帆風はうっとりと目を閉じ、余韻に浸るように口元を抑える。
「二人きりだったんだよね......夜とかは何してたわけ?」
「ふふ......。二人で星を眺めていたり、お互いの体温を感じながら寄り添ったり......」
フレンダは、そこで何かを察した。
「......まさか、キスとかしたの!?」
「はい!」
帆風は恥じらうことなく、むしろ誇らしげに頷いた。
フレンダは、スコーンを喉に詰まらせそうになった。
「ちょ、ちょっと待って!?結絆とそんなに進んでるわけ!?」
「ええ、もちろんです。結絆さんは大切な人ですから!」
帆風はうっとりと微笑む。
フレンダは、やや呆れたようにため息をついた。
「いやいや、すごい惚気っぷりなんだけど......。ていうか、あたしも鏡の世界に行ってみたいんだけど?」
「ふふ、それなら結絆様にお願いしてみては?」
「......そうと決まれば、早速結絆に頼みに行こう!」
フレンダは意気込んで立ち上がり、さっそく結絆を探しに行くのだった。
結絆の部屋に、アイテムのメンバーが集まっていた。
フレンダが「鏡の世界に行ってみたい」と言い出したことで、麦野、絹旗、滝壺も興味を持ち、結絆に頼み込んだのだ。
「俺の部屋にみんなで来るのは珍しいねえ」
結絆は笑いながら、部屋の隅にある大きな鏡に手を当てた。
「それが、鏡の国に超つながる鏡なんですか?」
絹旗が少し興味深そうに覗き込む。
「そうだよお。ここから向こうの世界に行けるからねえ」
結絆が手を動かすと、鏡の表面が水面のように揺らぎ始め、やがて向こう側に異世界の光景が映し出された。
アイテムのメンバーは息をのむ。
「おおー、すごい。まるでファンタジーの世界みたいじゃない!」
フレンダが目を輝かせる。
「まあ、せっかく来たんだし、さっさと行きましょ」
麦野が腕を組んで言う。
「じゃあ、行くよお」
結絆が鏡の中に足を踏み入れると、麦野、フレンダ、絹旗、滝壺も次々と後に続いた。
次の瞬間、一行は雲の上に立っていた。
足元には柔らかい光の粒が舞い、まるで幻想の世界にいるかのようだった。
上空には虹が広がっており、心地よい風が吹いていた。
「ここが鏡の国の中心かあ」
フレンダが感嘆の声を上げる。
「そうだねえ。ここはどこへでも行けるターミナル駅みたいな場所だよお。今回は南国の島に行く予定だけど、他にもいろんな場所に行けるよお」
結絆がそう説明すると、滝壺が静かに口を開いた。
「鏡の世界......不思議な気配がする」
「まあ、普通の世界とはちょっと違うからねえ」
結絆は手を前に出し、近くにある鏡を拾った。
すると、そこから青く輝く光が差し込んだ。
「じゃあ、目的地に行こうか」
一行が鏡の中に飛び込むと、次の瞬間、目の前にはエメラルドグリーンの海が広がっていた。
南国の島の白い砂浜に立つと、どこまでも続く海が視界いっぱいに広がる。
「うわっ、きれい......」
フレンダが目を輝かせながら、早速サンダルを脱ぎ捨てて砂浜を駆け出した。
「ここなら超リラックスできますね」
絹旗も心地よさそうに海風を感じながら伸びをする。
「麦野、泳ぐ?」
滝壺が麦野に問いかける。
「せっかく来たんだし、ひと泳ぎするわよ」
「そうこなくっちゃ!」
フレンダが勢いよく海に飛び込み、水しぶきを上げる。
結絆は、そんなアイテムのメンバーを見ながら微笑んだ。
彼女達が楽しんでいる姿を見ると、誘ってよかったと思える。
「結絆は泳がないの?」
麦野が聞いてきた。
「俺は、もう少し皆が遊んでるのを見てからにしようかなあ」
「ふーん、なら先に楽しませてもらうわ」
そう言うと、麦野も服を脱ぎ、海へと足を踏み入れた。
鏡の世界での特別なひと時は、まだ始まったばかりだった。
鏡の世界に降り立った結絆たちは、青く透き通った海が広がる南国の島で思い思いに楽しんでいた。
砂浜はきめ細かく、遠くにはヤシの木がそびえ、白い雲がゆっくりと流れている。
太陽の光が海面を煌めかせ、波の音が心地よく響く。
フレンダは浮き輪を抱えてはしゃぎながら海に飛び込み、麦野と絹旗もそれに続く。
滝壺はゆっくりと水に浸かりながら、穏やかに波の感触を楽しんでいた。結絆は浜辺に腰を下ろし、みんなの様子を眺めながら微笑む。
「ゆはーん!早く入ってきてよ~」
フレンダが水をかけながら手招きする。
結絆は肩をすくめつつも、服を軽く整えて海へと足を踏み入れた。
ひんやりとした感触が心地よく、静かに波が寄せてくる。
「やっぱり鏡の世界って最高!現実じゃこんなに綺麗な海、なかなか見れないし!」
「確かにねえ。ここなら騒がしい都会の喧騒もないし、気楽に過ごせるよお。」
結絆がのんびりと答えたその瞬間、海の奥から異様な気配が漂ってきた。
突如として水面が大きく波打ち、巨大な影が現れた。
その正体は、異様に巨大なイカだった。
通常のイカとは比較にならないほどのサイズで、吸盤の先には鋭い棘が生えており、体表は青と白に輝いている。
「ちょっ、なにアレ!? デカすぎるって!」
フレンダが驚きながら叫ぶが、その声が届く間もなく、イカの長い触手が勢いよく伸びてきた。
そして、
「えっ——きゃあああああっ!!」
フレンダは一瞬で絡め取られ、宙に持ち上げられた。
イカはそのまま海の奥へと彼女を引きずり込もうとする。
「フレンダは、イカに好かれてるんだねえ。」
結絆は呑気にそう言いながらも、目は鋭く光っていた。
「好かれてるとか言ってる場合じゃないんだけど!?これ絶対、食われるやつ!!」
フレンダは必死に暴れるが、触手の力は想像以上に強く、身動きが取れない。
イカの口に近づくにつれ、鋭いクチバシがギチギチと音を立てて開閉する。
その瞬間、結絆が軽く手を振ると、次の瞬間にはイカの触手が音もなく斬り落とされた。
血のような青色の液体が海に滲む。
「へ?」
フレンダが呆然とする間に、さらに次々とイカの触手が分断されていく。
まるで見えない刃が舞っているかのように、寸分の狂いもなく、全ての攻撃が正確にイカの体を斬り裂いていた。
「みじん切り、完了だねえ。」
結絆が楽しげに言うと、イカは悲鳴を上げるような奇妙な音を発し、そのままバラバラになって海へと沈んでいった。
フレンダは、ぽちゃんと水に落ちる。
「......はぁ、死ぬかと思った......!」
息を荒げながら、フレンダは結絆を見上げる。
「結絆、もうちょっと早く助けてくれてもよかったんじゃないの!?」
「まあまあ、フレンダの悲鳴を聞くのもなかなか楽しかったからねえ。」
「冗談言ってる場合じゃないんだけど!」
フレンダは顔を真っ赤にして文句を言うが、麦野たちはすでに笑いをこらえきれずにいた。
「いやぁ、フレンダが食われるところ、超見てみたかった気もしますね。」
「絹旗、それ冗談じゃ済まないやつ......。」
滝壺がのんびりとフレンダの肩をぽんぽんと叩く。
「でも、もう大丈夫。結絆がいるし。」
「そうそう、俺がいれば、まあ何があっても平気だよお。」
結絆が笑いながら肩をすくめると、フレンダは渋々ため息をついた。
「......ったく、もうちょっと優しく助けてほしいんだけど。でもまあ、助けてくれてありがとね!」
南国の太陽が再び降り注ぎ、海は静けさを取り戻した。
こうして、フレンダの危機は幕を閉じたのだった。
鏡の国の青く澄んだ空の下、結絆は白い砂浜に腰を下ろしながら、目の前の麦野達に向かって口を開いた。
「この世界をもっと自由に移動するためにさあ、空飛ぶ船を作りたいんだよねえ」
唐突な提案に、フレンダが目を丸くした。
「空飛ぶ船!? そんなの本当に作れるの?」
「うん。書庫で読んだ本に合ったんだけど、そこからアイデアを得てねえ。鏡の国には現実世界にはない特殊な素材があるんだよお。特に、海底洞窟に眠っている金属は、不思議な性質を持ってるらしいんだよお」
結絆の言葉を聞いて、絹旗が腕を組んだ。
「超興味深いですね。要するに、その金属を使えば空飛ぶ船ができるってことですか?」
「そういうこと。けど、採掘するにはちょっと手間がかかるんだよねえ。だから、みんなに手伝ってほしいんだ」
麦野はニヤリと笑いながら肩をすくめた。
「まあ、面白そうだし協力してやってもいいわよ。せっかくここまで来たんだし、ちょっとした冒険ってのも悪くないわね」
「ありがとうねえ。じゃあ早速、海底洞窟に行ってみようか」
結絆はそう言いながら手をかざし、周囲の水を操るように波を静めた。
「俺の力で、水中でも呼吸ができるようにしておいたから、安心して潜れるよお」
滝壺が静かに頷いた。
「それなら、酸素の心配はないね」
こうして、結絆たちは鏡の国の海へと足を踏み入れたのだった。
透き通った海の中に身を沈めると、そこは幻想的な光景だった。
魚たちが色とりどりの群れを成し、巨大なサンゴ礁がゆらゆらと揺れている。
そして、その奥に見えたのは、漆黒の裂け目のような海底洞窟だった。
「ここが目的の場所か......」
麦野が低く呟く。フレンダは少し不安そうに洞窟を覗き込んだ。
「なんか、すごく不気味な雰囲気なんだけど......本当に大丈夫?」
「まあ、何かあっても俺が守るからさあ、大丈夫だよお」
結絆は笑いながら、先頭に立って洞窟の奥へと進んでいった。
天井には光を発するクラゲのような生物が漂い、ぼんやりとした青白い光が道を照らしている。
「目的の金属は、もっと奥のほうにあるみたいだねえ」
絹旗が壁に手を当てながら分析した。
「超硬い岩盤ですね。でも、適切に崩せば採掘はできそうです」
「なら、手っ取り早くいくわよ」
麦野が手を前に突き出し、圧縮した電子のビームを放つと、洞窟の一部が崩れ、奥の通路が開けた。
すると、その先に銀色に輝く鉱石が散りばめられている場所が広がっていた。
「これが目的の金属ですか......超綺麗ですね」
絹旗が手を伸ばして鉱石の一つを取り出すと、軽くて硬い質感を持っていることがわかった。
「確かに、これなら船の素材に適してるかもね」
麦野も興味深げに鉱石を手に取る。
フレンダは何かを考えるようにしていたが、やがてぽつりと呟いた。
「......これで、本当に空飛ぶ船ができたら、私達は鏡の国をもっと自由に冒険できるってわけなのよね!」
「そうだよお。俺たちの可能性を広げるための第一歩ってところかなあ」
結絆は微笑みながら、採掘を続けるメンバーたちを見つめた。
こうして、鏡の国での新たな冒険が始まるのだった。
鏡の国の白砂の浜辺に、巨大な船の骨組みが姿を現していた。
結絆と麦野たちが採取してきた特殊な金属が、太陽の光を浴びて淡く輝いている。
「へえ、本当にこんな金属があったんだな」と麦野は感心したように船の骨格に触れた。
「見た目は普通の金属だけど、触ると妙に温かいな」
「それがこの金属の特徴だよお。周囲のエネルギーを吸収して、自己修復までしちゃう優れものだねえ」
結絆は、そう説明する。
「まあ、こんな材料があるなら、飛ぶ船を作るって話も超納得ですね」
結絆は自身の能力の応用で、金属を操る能力者の能力を使い、金属を自在に操って船の外殻を形成していった。
麦野は自身の能力で金属の強度を高める熱処理を施し、フレンダと絹旗と滝壺は内部の動力装置の組み立てを担当していた。
「で、肝心の推進力はどうするの?」
麦野は、疑問に思ったことを尋ねる。
「空気中のエネルギーを集めて、それを推進力に変換する装置を搭載するつもりだよお。風力と魔力の融合みたいな感じだねえ」
「またスケールのデカい話ね......」
麦野は、呆れながらも楽しそうに笑った。
フレンダは甲板のデザインにこだわりを見せ、「ここに大砲をつけたらどう?」と提案した。
「大砲なんて超つける意味があるんですか?」
絹旗が、呆れたようにツッコミを入れる。
「だって、空飛ぶ船なんだから、ロマンが必要でしょ!」
「まあ、武装もあった方がいいかもねえ」
結絆は笑いながら、フレンダの意見を取り入れて魔術を応用した防御システムを取り入れることを決めた。
数日かけて、船は完成に近づいていった。
その船体は滑らかな流線形を描き、エネルギーの流れを感じさせる装飾が施されている。
艦内には広々とした居住空間や展望デッキも用意されていた。
「やっぱり、こういうのってワクワクするよね!」
フレンダが満足そうに頷く。
「これが私達の船か......悪くないわね」
麦野も感慨深げに船を見上げた。
「じゃあ、最終調整をして、試運転と行こうかねえ!」
結絆は嬉しそうに言った。
こうして、鏡の国に新たな空飛ぶ船が誕生したのだった。
結絆は完成したばかりの船を前にして、その船体にゆっくりと手を触れた。
船は黒と赤を基調とした精悍なデザインで、後方には大きな羽のような構造が備え付けられている。
その名も「スターカッター」。
結絆が船体に触れた瞬間、船が鈍く光り始めた。
船の表面を流れる赤い光がまるで血管のように脈動し、内部に生命が宿っているかのような感覚を覚える。
「......おや、反応したねえ」
結絆は興味深そうに呟いた。
その場にいた麦野、フレンダ、絹旗、滝壺も目を見張る。
「まさか、こいつ......意志を持ってるのかしら?」
麦野が腕を組みながら言う。
「それに近いねえ。周囲の自然エネルギーを取り込むことで、まるで生き物のように自己修復する機能を組み込んだからねえ。その影響で、ある程度の自己認識も持っているみたいだよお」
「生き物みたいな船って、超すごいじゃないですか」
絹旗が、船体を軽く叩きながら言った。
「つまり、この船は結絆を主って認識してるってこと?」
フレンダが、船体の赤い光を見つめながら尋ねる。
「そういうことみたいだねえ。俺が触れたことで、スターカッターは俺を主として認識したんだろうねえ」
「結絆の船か......まあ、アンタなら安心して乗れそうではあるけどね」
麦野はそう言って、スターカッターのデッキへと足を踏み入れる。
「さて、せっかくだし、こいつの性能を試しに行こうかねえ」
結絆はそう言って、スターカッターの舵を握った。
「まずは、火山地帯に向かうとしようかあ」
スターカッターはゆっくりと宙に浮かび上がり、その巨大な羽が光を帯びる。
次の瞬間、船は一気に加速し、空を切り裂くように飛び立った。
「うおおっ、すごい加速!」
フレンダは、驚きながら外の景色を見る。
「超速いですね......これならどこへでも行けそうです」
絹旗も目を輝かせた。
「火山地帯って、けっこうヤバい場所じゃないの?」
麦野が疑わしげに尋ねる。
「まあ、普通の人間なら近づけないような場所だけどねえ。でも、スターカッターなら溶岩や熱風も問題なく耐えられるように作ったから大丈夫だよお」
スターカッターはあっという間に鏡の世界の火山地帯へと到着した。
眼下には真っ赤に燃え盛る溶岩が流れ、黒煙が空へと立ち上る。
「うわぁ......ここ、本当にやばくない?」
フレンダが若干怯えた様子で言う。
「でも、結絆の船があれば大丈夫そう?」
滝壺が淡々と呟く。
「その通りだねえ。さあ、この熱気あふれる火山地帯で、スターカッターの耐久性を試してみようかねえ」
結絆の言葉に、仲間たちは期待と興奮を胸に抱きながら、未知の冒険へと乗り出していった。
結絆達が、空を飛ぶ船を作りました。
とあるの世界は殺し合いの展開が多いですが、異世界の話を挟むと緩和されるので、日常編を書くのが結構楽しいです。
後は、異世界の話を書くときは、時間軸を気にしなくてよくなるのがいいですね。