食蜂操祈のお兄様   作:とんこつスープ

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今回も、アイテムのメンバー達との交流会です。

今回と次回でアイテム編は終わって、その後は当麻達の話を挟んでからエンデュミオン編になります。


二人の気持ち

 食事と星空観賞を終えた後、フレンダが突然思いついたように声を上げた。

 

「ねえねえ、せっかくこんな場所に来たんだし、ちょっとした肝試しってのはどうよ?」

 

「肝試し?」

 

麦野が怪訝そうにフレンダを見る。

 

「そう!さっき森の近くに古びた屋敷があったの見たでしょ?どう考えても、幽霊が出そうってわけよ!」

 

「おいおい、まさかそんなもんに興味があるのかい?」

 

結絆は呆れたように言ったが、フレンダは満面の笑みで頷いた。

 

「せっかくこんなメンバーが揃ってるんだし、ちょっとしたスリルも味わいたいってわけよ!」

 

「超意味がわかりません......」

 

絹旗はため息をついたが、結局全員がフレンダに付き合うことになった。

 

 

 

 屋敷は森の奥にひっそりと佇んでいた。

 

外壁は朽ちかけており、窓ガラスのいくつかは割れ、蔦が絡みついている。

 

明らかに長年放置されている建物だった。

 

「なんか、超雰囲気出てますね......」

 

絹旗が嫌そうに呟く。

 

「これ、本当に大丈夫?」

 

滝壺も少し不安そうに屋敷を見上げる。

 

「まあまあ、ただの古い屋敷だって。行くわよ!」

 

フレンダが意気揚々と先頭に立ち、屋敷の扉を押し開けた。

 

中は意外にも広く、廊下は長く続いていた。

 

床は木製で、歩くたびに軋む音が響く。

 

埃っぽい空気が漂い、しんとした静寂が辺りを包んでいる。

 

「うーん、確かに雰囲気は抜群だねえ」

 

結絆が周囲を見渡しながら言った。

 

「あれ?なんか聞こえない?」

 

麦野が警戒するように周囲を見回す。

 

「え?ちょ、ちょっと待ってください......」

 

絹旗が顔を強張らせたその瞬間——

 

バタンッ!!

 

背後で突然、重々しい音を立てて扉が閉まった。

 

「えっ!?」

 

全員が振り返るが、扉はびくとも動かない。

 

「ちょっと......これ、超シャレになってませんよ!」

 

絹旗が焦った様子で扉を叩くが、鍵がかかったように開かない。

 

「まさか、本当に幽霊の仕業ってわけ......?」

 

フレンダが震えながら結絆の腕を掴む。

 

「いや、そんなはずないよお。これは何かの仕掛けか、単に経年劣化で閉じ込められただけかもねえ」

 

結絆は冷静に言ったが、どこか楽しげな表情だった。

 

「おいおい、そんなに余裕ぶっこいてる場合?これ、本格的に出られなくなるんじゃないの?」

 

麦野が苛立たしげに言う。

 

「うん......早く何とかしよう」

 

滝壺が静かに結絆の袖を引いた。

 

「とにかく、他の出口を探すしかないねえ。じゃあ、みんなで手分けして探索しよっか」

 

結絆がそう提案すると、全員は改めて屋敷の奥へと進み始めた。

 

 

 

 幽霊がいるかどうかはともかく、奇妙な雰囲気が漂う屋敷の中、彼らは何か得体の知れないものに導かれるようにして、ゆっくりと歩みを進めていった。

 

屋敷の中を慎重に歩きながら、結絆達は薄暗い廊下を進んでいた。

 

「超気味が悪いですね......」

 

絹旗が小声で呟く。

 

屋敷の中は埃っぽく、時折、風が吹き抜ける音や床の軋む音が響く。

 

まるで誰かがこちらを見ているような錯覚を覚えるほど、不気味な雰囲気が漂っていた。

 

「なんか嫌な感じがするわね」

 

麦野が周囲を警戒するように言う。その言葉を聞いた瞬間——

 

「——!!」

 

どこからともなく、不気味な影がスッと現れ、急激に近づいてきた。

 

「なっ!?超ヤバいです!」

 

絹旗が叫んだ瞬間、突風が吹き荒れ、屋敷の古びた扉が激しく閉じた。

 

「——っ!」

 

気づけば、結絆とフレンダは別の部屋に閉じ込められ、麦野達とは完全に分断されていた。

 

「ちょ、ちょっと!なんでこうなるわけ!?」

 

フレンダが焦りながら扉を叩く。

 

「麦野!絹旗!滝壺!聞こえるかい!?」

 

結絆も呼びかけるが、向こうからの応答はない。

 

「うーん......仕方ないねえ」

 

結絆は溜息をつき、後ろを振り返る。

 

そこには薄暗い廊下が奥へと続いていた。

 

「ど、どうするのよ!?こんな不気味な場所で二人きりって......絶対、ヤバいやつが出るってわけよ!」

 

フレンダの声には不安が滲んでいた。

 

そんな彼女を落ち着かせるように、結絆はそっとフレンダの手を握った。

 

「大丈夫だよお。俺がついてるからさあ、安心して」

 

「......っ」

 

フレンダは一瞬驚いたが、結絆の手の温もりを感じて、少しずつ表情が和らいだ。

 

「......しょうがないわね。こうなったら、アンタに頼るしかないってわけね」

 

「まあ、お手柔らかにねえ。じゃあ、二人でこの屋敷を探索して、出口を探そっか」

 

結絆が微笑みながら言うと、フレンダは少し頬を染めながら小さく頷いた。

 

「......わかった。絶対に置いていかないでよ?」

 

「もちろんだよお」

 

二人は手を繋いだまま、慎重に屋敷の奥へと足を踏み入れていった。

 

 

 

 薄暗い屋敷の中、結絆とフレンダは手を繋ぎながら慎重に歩を進めていた。

 

埃っぽい廊下を進むたびに、床がきしむ音が響く。

 

「......ねえ、結絆」

 

ふと、フレンダが話しかけてきた。

 

「ん?どうしたの?」

 

結絆が横目で彼女を見ると、フレンダは少し考え込むような表情をしていた。

 

「......アンタさ、私達アイテムのこと、どう思ってるわけ?」

 

その問いかけに、結絆は少し目を見開いたが、すぐに柔らかく微笑んだ。

 

「もちろん、大切な仲間だと思ってるよお」

 

結絆の率直な答えを聞いたフレンダの顔がぱっと明るくなった。

 

「そっか......なんか、嬉しいわけよ」

 

フレンダは頬をかきながら、照れくさそうに笑った。

 

「俺はねえ、みんなと一緒にいるのが楽しいんだよお。麦野はいつも強気だけど、頼れるリーダーだし、絹旗は変わってるところもあるけど超しっかり者で、滝壺は落ち着いてて癒やされる。それに、フレンダは......みんなを笑わせてくれるし、すごく気が利くからねえ」

 

「ちょ、ちょっと待って!アンタ、そんなこと普段から思ってたの!?なんか、改めて言われると恥ずかしいってわけよ!」

 

フレンダは顔を赤くしながら、少し足をバタつかせた。

 

「まあ、本当のことだからねえ」

 

結絆が軽く肩をすくめると、フレンダはふっと表情を和らげた。

 

「......私ね、結絆のこと頼りにしてるのよ」

 

真剣な瞳でそう告げられ、結絆は少し驚いたように瞬きをした。

 

「私、戦いとかになると、正直めちゃくちゃ不安になることもあるわけよ。でも、結絆が一緒にいると、なんだか安心するっていうか......」

 

フレンダは言葉を探しながら、小さく息を吐いた。

 

「結絆って、いつも冷静だし、何があっても私達を守ってくれるじゃない?だから、私は、結絆がそばにいてくれるだけで、結構安心できるわけなのよ」

 

結絆はそんなフレンダの言葉を聞きながら、静かに微笑んだ。

 

「......なら、これからもフレンダのこと、ちゃんと守ってあげるよお」

 

その言葉に、フレンダはさらに顔を赤くした。

 

「そ、そんなこと言われたら、ますます照れちゃう!」

 

結絆はくすっと笑いながら、繋いでいたフレンダの手を少しだけ強く握る。

 

「じゃあ、早くみんなと合流しないとねえ。アイテムの皆は俺にとって大事な仲間なんだからねえ」

 

「......うん!」

 

二人は改めて気を引き締め、暗い屋敷の中を進んでいった——。

 

 

 

 結絆とフレンダは暗い屋敷の中を慎重に進んでいた。

 

長い廊下の先に何かがあるのではないかという期待と不安が交錯する。

 

「......結絆、なんかイヤな雰囲気がするわけよ」

 

フレンダが不安げに呟くと、結絆は彼女の手を軽く握り、安心させるように微笑んだ。

 

「大丈夫だよお、俺がついてるからねえ」

 

しかし、その言葉が終わるや否や、廊下の奥から黒い影がいくつも現れた。

 

「な、なにアレ!?」

 

フレンダが叫ぶ。

 

影は次第に形を成し、鎌を持った死神のような存在となっていた。

 

黒いローブに包まれた不気味な姿が、じりじりとこちらに近づいてくる。

 

「ひっ......!」

 

フレンダは思わず後ずさる。

 

しかし、死神達は無言のまま、その鎌を振り上げ、二人に襲いかかろうとした。

 

「フレンダ、目を閉じてなよお」

 

結絆は静かにそう言いながら、一歩前に出た。

 

彼の周囲の空気が一瞬にして変わる。

 

圧倒的な威圧感が屋敷全体を覆い尽くした。

 

「失せろ!」

 

その声は静かでありながら、確実に相手を威圧する響きを持っていた。

 

死神達はその場で動きを止めた。

 

まるで何か見えない力に押さえつけられているかのように、わずかに震えている。

 

「......おまえら、さっさと帰れ」

 

結絆が一歩足を踏み出すと、それだけで死神達は一斉に後退した。

 

まるでこの場にいること自体が恐ろしいとでも言わんばかりに、次の瞬間には一目散に闇の中へと消えていった。

 

フレンダはしばらくの間、ぽかんと口を開けていたが、やがて我に返った。

 

「......え、ええ!?結絆、なんでそんなことできるの!?ていうか、あの死神達、めちゃくちゃビビって逃げてったわけよ!?」

 

「んー?ただちょっと、圧をかけただけだよお」

 

結絆は何でもないことのように肩をすくめた。

 

「普通はそんなことできないっての!」

 

フレンダは結絆の腕を軽く叩きながら、まだ驚きが抜けきらない様子だった。

 

「でも、助かったわけよ。アンタがいてくれて、本当によかった......」

 

彼女は安堵の表情を浮かべ、結絆の手を握り返した。

 

「さ、そろそろ行こうかあ」

 

結絆はそう言いながら、再び歩みを進める。

 

フレンダは少しの間、結絆の背中を見つめていたが、やがて彼の後に続いた。

 

二人は再び屋敷の奥へと歩き出す。

 

 

 

 死神達が姿を消した後、結絆とフレンダは屋敷の奥へと慎重に進んでいった。

 

「はぁ、はぁ......。なんかもう、めちゃくちゃ怖かったってわけよ......」

 

フレンダは結絆の腕をしっかりと掴んでいた。

 

彼女の手は少し震えている。

 

「まあ、無事でよかったねえ」

 

結絆は落ち着いた様子でそう言いながら、フレンダの頭を軽く撫でた。

 

「んっ......!べ、別に撫でられる筋合いはないわけよ!」

 

そう言いつつも、フレンダは少し頬を染めながらも安心した様子だった。

 

そんなやり取りをしながら廊下を進んでいくと、突如、遠くの方から声が聞こえてきた。

 

「おい!そっちにいるのか!?」

 

「麦野!?」

 

フレンダが反応すると、暗闇の向こうから麦野、絹旗、滝壺の三人が姿を現した。

 

「無事だったみたいね......!どこ行ってたのよ!」

 

麦野が眉をひそめながら駆け寄ってくる。

 

「ちょっとねえ、死神に襲われたりしたけどお、なんとかなったよお」

 

「し、死神ですか!?」

 

絹旗が驚いた声を上げる。

 

「まあ、結絆が一瞬で撃退してくれたわけよ」

 

フレンダは安堵したように結絆の腕にぎゅっとしがみついた。

 

その様子を見た麦野は、ニヤリと口元を歪めた。

 

「へぇ~......フレンダ、ずいぶん怯えちゃってんじゃないの?結絆に抱きついて離れようとしないじゃん」

 

「なっ......!?ち、違うわけよ!こ、これはあくまで、その......!」

 

フレンダは顔を真っ赤にしながら、慌てて結絆から少し離れようとするが、足が震えていてうまく動けない。

 

「いやいや、もう遅いっての。こりゃ結絆におんぶしてもらうしかないんじゃない?」

 

麦野はからかうように言いながら、楽しそうに笑う。

 

「くっ......!もう、麦野の意地悪!」

 

フレンダは恥ずかしさのあまり顔を覆った。

 

「まあまあ、フレンダも怖い思いしたんだし、今日は大目に見てやろうよお」

 

結絆は苦笑しながらフレンダの背中を軽く叩いた。

 

「はぁ......とにかく、これで超全員揃いましたね。早くこの屋敷から超出ましょう」

 

絹旗が呆れたようにため息をつきながら言う。

 

「そうだねえ。じゃあ、行こうかあ」

 

結絆はみんなを促しながら、先頭に立って歩き始めた。

 

こうして、五人は再び合流し、屋敷からの脱出を目指すのだった。

 

 

 

 結絆達は、屋敷の中を慎重に進んでいた。

 

だが、突然、背後から異様な気配が迫ってきた。

 

振り向いた瞬間、巨大な幽霊が天井を突き破るように現れ、結絆達に向かって襲いかかってきた。

 

「な、何よ、あれ......!?でかすぎるっての!!」

 

フレンダが叫び、麦野達も一斉に身構えた。

 

幽霊の目は不気味に光り、長い腕を伸ばして結絆達を捕まえようとする。

 

「走るよお!!」

 

結絆が叫ぶと、全員が一斉に駆け出した。

 

屋敷の中を縦横無尽に逃げ回るが、幽霊の動きも速く、どこまでも追いかけてくる。

 

滝壺が転びそうになったのを絹旗が支え、麦野が壁をぶち破って強引に道を作る。

 

「くそっ、こんなのお化け屋敷のレベル超えてるだろ!」

 

「とにかく出口に向かうしかないっしょ!」

 

必死に逃げる中、結絆は一瞬立ち止まり、手をかざした。

 

その瞬間、幽霊の動きがピタリと止まる。

 

「やっぱりな......こいつ、ただの霊じゃなくて作られたものだよお」

 

結絆の能力が働いたことで、幽霊の正体が暴かれた。

 

それはこの屋敷に仕掛けられた一種の幻であり、結絆の力で干渉できるものだった。

 

結絆が指を鳴らすと、幽霊は霧散し、屋敷の壁が崩れ始めた。

 

「みんな、今のうちに外に出るよお!」

 

結絆の指示に従い、全員が屋敷の出口へと急ぐ。

 

扉を勢いよく開け、外へと飛び出した瞬間、屋敷全体が崩れ去った。

 

「ぜぇ、ぜぇ......い、生きてる......?」

 

フレンダが肩で息をしながら確認すると、絹旗もぐったりと座り込む。

 

「全く、超ひどい目に遭いました......!」

 

麦野も息を整えながら苦笑した。

 

「はぁ......もうホラー系はごめんだわ」

 

滝壺は静かに結絆を見つめた。

 

「結絆、ありがとう」

 

「んー?まあ、俺も肝試しは好きだけどお、さすがに今回のはやりすぎだったねえ」

 

結絆はそう言って肩をすくめる。

 

そして、全員の疲れきった表情を見て、次の提案をした。

 

「そうだねえ、こんなときは、温泉にでも行こうかあ」

 

「温泉?」

 

「そうだよお。ちょうど近くに火山地帯があるし、天然の温泉があるはずだよお」

 

その言葉に、フレンダが目を輝かせた。

 

「それ、最高じゃん!疲れた体を癒せるっしょ!」

 

「賛成です。さすがに超疲れましたし......」

 

「いいわね。ホラーの後の温泉って、なんか映画みたいじゃん?」

 

こうして、結絆達は屋敷の恐怖から解放され、温泉へと向かうことになった。

 

 

 

 火山地帯に広がる温泉地に到着した結絆達は、荒々しい岩肌と立ち上る湯気に囲まれながら、温泉の熱気に身を包まれた。

 

先ほどまでの幽霊騒動の疲れを癒すには、これ以上ない場所だった。

 

「ふぅ~、やっぱり温泉は最高だねえ」と、結絆は湯に浸かりながら大きく息をついた。

 

しばらくして、湯船の端でくつろいでいた結絆の隣に、フレンダが音もなく寄ってきた。

 

そして、ふわりと結絆の腕に抱き着きながら、小さな声で囁いた。

 

「今日は色々助けてくれて、ありがとね。結絆がいなかったら、きっともっと大変なことになってたかも」

 

その言葉に、結絆は苦笑しながらも、「ま、仲間を助けるのは当然だからねえ」と、優しく返した。

 

だが、その光景を見ていた絹旗が、ふいに眉をひそめた。

 

「むぅ......フレンダだけズルいですね。私だって結絆には超感謝してますし」

 

そう言うと、絹旗は結絆の反対側に移動し、同じように腕に抱き着いた。

 

こうして、結絆は左右からフレンダと絹旗に挟まれる形となった。

 

「お、おお?」

 

結絆が戸惑っていると、少し離れた場所にいた麦野と滝壺が、その様子を見ながらヒソヒソと話し始めた。

 

「......なんか、いい雰囲気になってない?」

 

「うん。恋愛ドラマみたい」

 

滝壺も静かに頷いた。

 

そんな二人のやり取りには気づかず、フレンダと絹旗はお互いに負けじと結絆に密着しながら温泉の熱を感じていた。

 

温泉の湯気が立ち込める中、結絆は頭をかきながら「モテる男も楽じゃないねえ」と呟いたのだった。

 

 

 

 温泉で体の芯まで温まった結絆達は、スターカッターへと戻り、それぞれ寝る準備を整えた。

 

船内の居住スペースには広々としたベッドが並び、ふかふかの布団が心地よさそうに敷かれている。

 

「さてと、今日はよく動いたし、さっさと寝るか」

 

結絆が伸びをしながらそう言うと、麦野がニヤリと笑いながらフレンダと絹旗の背を押した。

 

「ほらほら、せっかくなんだから、あんた達二人は結絆と一緒に寝たら?」

 

「へっ!?な、なんでそうなるの!?」

 

フレンダが顔を赤らめる。

 

「そ、そんなの超恥ずかしいです!」

 

絹旗も目を逸らしながら言うが、麦野は意地悪く肩をすくめた。

 

「さっき温泉であんなにベタベタしてたんだから、今さら恥ずかしがることないでしょ?」

 

「うっ......!」

 

フレンダと絹旗は顔を見合わせるが、麦野に押される形で結局結絆の隣に寝ることになった。

 

 

 

 ベッドの上で、結絆はリラックスした様子で布団をかぶる。

 

「別に気にしないで寝ればいいよお?俺は特に気にしてないからねえ」

 

「そ、そう言われても......」

 

フレンダと絹旗は、結絆のすぐ隣に横になりながら、心臓の鼓動がやたらとうるさく感じてしまう。

 

(や、やばい......ドキドキして眠れない......)

 

(結絆の超近くで寝るなんて......意識しないほうが無理です......!)

 

二人は何度も寝返りを打つが、落ち着かない様子だった。

 

そんな中、結絆はあくびをしながら、「おやすみ~」と言ってすぐに寝息を立て始めた。

 

「......結絆って私達の事、全然意識してないの?」とフレンダが小声で言うと、絹旗も同じく小声で答える。

 

「超鈍感ですね......」

 

それでも、心地よい疲労と温泉の余韻がじわじわと効いてきたのか、やがてフレンダと絹旗も静かに眠りについたのだった。

 

 

 

 スターカッターの船内に静寂が満ちていた。

 

火山地帯の温泉で疲れを癒した結絆達は、それぞれの寝床につき、安らかな眠りについていた。

 

しかし、夜半ばを過ぎた頃、一つの寝床で小さな動きがあった。

 

「......ねえ、絹旗。起きてる?」

 

フレンダが小声で囁くと、隣にいた絹旗も薄目を開けた。

 

「......何ですか?こんな夜中に......」

 

「いや、その......結絆、寝てるよね?」

 

フレンダがそっと結絆の寝顔を指差す。

 

穏やかな寝息を立てる彼の顔を見て、絹旗も少しだけ頬を染めた。

 

「超寝てますね。何がしたいんですか?」

 

「その......ほら、お礼のキスとか?」

 

フレンダの言葉に絹旗の目が見開いた。

 

「は!?ば、馬鹿ですか!?そんなこと......!」

 

「でも、昼間助けてもらったし......今なら、バレないし......」

 

フレンダはそっと結絆の顔に近づく。

 

その頬に優しく唇を落とすと、ドキドキが止まらなくなった。

 

「......こ、こういうのは、私だって......!」

 

絹旗も負けじと結絆の反対側から頬に軽くキスをする。

 

その直後だった。

 

「......ん?」

 

結絆が微かに唸り、まぶたが開いた。

 

「......ふぁ、あれえ......?なんでフレンダと絹旗が俺の顔の近くにいるのかなあ?」

 

「えっ!?ち、違うの!これは、その......!」

 

「誤解ですよ!!何もしてないですし!!」

 

二人は顔を真っ赤にして取り乱し、結絆の目を誤魔化すようにあたふたと動き回る。

 

「んー......?まあ、いいけど......」

 

結絆は寝ぼけたまま呟き、再び目を閉じた。

 

フレンダと絹旗は胸をなでおろしながらも、互いの顔を見て再び赤くなる。

 

(......これ、バレてないよね?)

 

(......た、多分です......よね?)

 

結局、二人はしばらくドキドキが収まらず、朝までほとんど眠れなかった。

 

スターカッターの中に朝日が差し込み、昨晩の出来事がまるで夢だったかのような静けさが広がっていた。

 

結絆はゆっくりと目を開け、隣で寝ているフレンダと絹旗の姿を確認する。

 

「んん......もう朝かあ......」

 

大きく伸びをすると、ふたりも目を覚まし始めた。

 

フレンダはまだ少し眠たそうに目をこすり、絹旗は小さなあくびを漏らす。

 

「おはよお、フレンダ、絹旗」

 

「......お、おはよう......」

 

「おはようございます......」

 

どこかぎこちない返事をするふたりだったが、昨晩のことがバレていないと思い、ホッと胸をなでおろしていた。

 

そのとき、スターカッターの通路から麦野が顔を出し、大きなあくびをしながら近づいてきた。

 

「おはよ、結絆。......で?昨晩はなんかあったの?」

 

麦野はニヤニヤしながら結絆を見つめてくる。

 

「昨日はよく眠れたよお」

 

そう答える結絆に、フレンダと絹旗はさらに安心した表情を浮かべた。

 

(よかった......気づかれてない......!)

 

(バレてないですよね......?)

 

そんなふたりの内心を見透かしていたかのように、結絆は突然ふたりの耳元にそっと口を寄せ、囁いた。

 

「......昨晩のキス、しっかり覚えているよお」

 

「っ!!?」

 

フレンダと絹旗は瞬時に顔を真っ赤にし、声にならない悲鳴をあげる。

 

「な、ななななな......!」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!?」

 

そんな彼女達の反応を見て、結絆はクスッと笑い、軽く肩をすくめる。

 

「ふふっ、嬉しかったよお。二人とも、かわいかったし」

 

「~~っ!!」

 

フレンダと絹旗はさらに顔を赤くしながら、布団の中に顔を埋めてしまった。

 

それを見ていた麦野と滝壺は、やれやれと肩をすくめつつも、どこか楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 朝食を食べ終えた後、結絆はのんびりとスターカッターのデッキでくつろいでいた。

 

そんな彼の元に、フレンダと絹旗がそわそわした様子でやってきた。

 

「ねえ、結絆。ちょっといい?」

 

フレンダが声をかけ、絹旗も「超大事な話があるんです」と真剣な表情で言う。

 

結絆は二人の様子を見て、「なるほどねえ......」と呟きながら立ち上がった。

 

「ちょっと、三人で話したいんだけど......」

 

フレンダが遠慮がちに言うと、結絆は「ふふ、了解だよお」と言って、二人と共にスターカッターの甲板から少し離れた静かな場所へと移動した。

 

しばらく沈黙が続き、やがてフレンダが意を決したように結絆を見つめる。

 

「結絆、私......アンタのこと、好き」

 

続けて絹旗も、少し顔を赤らめながら真っ直ぐな瞳で結絆を見つめる。

 

「私も......超好きです」

 

二人の告白に、結絆は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに柔らかい笑みを浮かべた。

 

「......そっかあ。でも、俺にはもう付き合ってる人が何人もいるけど......それでもいいのかい?」

 

結絆の問いに、フレンダと絹旗は一瞬顔を見合わせた後、強く頷いた。

 

「それでもいい。だって、結絆は結絆だし」

 

「私も、超気にしません。」

 

二人のまっすぐな言葉を聞いた結絆は、一瞬だけ目を伏せ、次に顔を上げると優しい笑顔を浮かべた。

 

「......ありがとう。じゃあ、これからよろしくねえ」

 

そう言って、結絆はフレンダと絹旗、それぞれの頭を優しく撫でた。

 

二人は顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに結絆を見つめる。

 

その様子を少し離れたところから見ていた麦野と滝壺は、何やら意味ありげに顔を見合わせた。

 

「......これで、面倒事が一つ減ったわね」

 

麦野がため息混じりに言うと、滝壺は小さく頷きながら「結絆ならなんとかすると思う」と静かに微笑んだ。

 

こうして、フレンダと絹旗は結絆の新たな恋人となり、新しい関係が始まったのだった。




フレンダと絹旗も、ヒロインになりました。

アイテムのメンバーは気に入ってるので、これからもそこそこ出てきます。

次回で、アイテム編はおしまいです。
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