宇宙に行きたいアホと生塩ノア   作:かゆ、うま2世

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チャイルドアポロショック

「子供になっちゃった」

 

 

部室を作り替えて翌日。朝早くに集まったシロコとその場にいたチーちゃんも交えて行った、試作若返り装置の起動実験。最初は適当にぶっ壊したペンで試して、その次は髪をバッサリ切ったシロコで試して、その次は指に切り傷をつけた俺で試した

 

 

「ん……んー………?」

「いくつかな……?」

「この身長だと5歳だな」

 

 

よくよく考えればどっか切り落とさなくてもちっさい切り傷とかで良かったんだよな。危ない危ない

 

 

「んー、ペンもシロコも上手くいったのになー……連続稼働はダメってこと?」

「……その、もっと考えるべき問題があると思うけど…」

「なにおーう。これも元に戻るためなんだぞ」

 

 

5歳ごろに若返ってしまった身体を元に戻すには、そのまま歳を取る装置を作ってやれば解決する。ただまぁ、この身体で研究開発ってなるとかなり大変そうだけど

 

 

「元に戻るのも大切だけど……今のアポロの世話もどうにかしないと」

「世話って、変わったのは身体だけだよ?」

「だからだよ」

「う」

 

 

頬を指で突かれて言葉に詰まってしまった。この身体から見た皆はやっぱり大きくて、普段見上げられる側の俺が今は見上げる側だ。新鮮新鮮

 

 

「その身体がいつも通りに動くなんて思わない方が良い。……怪我は、小さい身体には響くよ」

「そりゃそうだけど、やるしかないじゃん」

「慣れるまでは大人しくしておくべき」

「ええー!」

 

 

ただまぁ、言われてることは至極真っ当で反論し辛い。というか俺自身も「いつもより身体が言う事聞かないな……」とは感じているわけで

 

 

「……い、いつまでこのまま?」

「わかんないけど………」

 

 

年取り装置が開発できるまではこのまま……わいわいやってるけど普通に大変なことだ

 

 

「私もヴェリタスがあるし、ずっと面倒見るわけにも……」

「私も……」

「わぁ…」

 

 

普段ですらアレなのに、子供の体で一人生活なんてできる気がしない。ノア……は最近怖いし。うーん、あの子も忙しいからあんまり頼りたくないんだけど……

 

 

「アポロおはよー!………あれ?ちっちゃくなっちゃったの?」

「ベストタイミーング!」

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「………………………」

 

 

早朝も早朝。まだほとんど人のいないミレニアム学園の一角にて、足を抱え込んで蹲るようにベンチに乗っている少女───生塩ノアがいた

 

 

「………………………」

 

 

そんな明らかに様子のおかしい生塩ノアを見つめるのは、このキヴォトスにおける二人目の先生であった

 

 

「の、ノア…?どうかしたの……?こんな朝早くから…」

「先生……」

 

 

普段とは全く様子の異なるノアの姿に、先生は思わず声をかけた。が、その反応は芳しくなく……とにかく元気がないことだけは確かだった

 

 

「………略奪愛って、どう思います?」

「テーマが重いなあ……」

 

 

いざ会話をしてみれば、一発目からヘビーなパンチを食らうこととなった。大人の精神を持つ先生といえど、このテーマは流石にヘビーである

 

 

「え、えーっと……多分アポロの事だよね…?略奪愛っていうのは、えっと……良くないんじゃない…?」

「先生」

「な、なに?」

 

 

なんとか理詰めで諭そうと試みるが、それも次の言葉で打ち砕かれた。何か嫌な予感を覚えながら答えると───ノアは自らを指差して告げたのだ

 

 

「……私、取られた側です」

「やばぁ……」

 

 

その目は据わっているし、明らかに正気ではない。この状態のノアにアポロを預けたらどんな化学反応が起こるか想像もつかない……というか考えたくもない

 

 

(でもこのまま放置するわけにもいかないよね……)

 

 

とりあえず事情だけでも聞くべきだと思い立ち、先生はノアの隣に腰かけた

 

 

「……取られたんです、アポロ君が」

「と、取られ……」

「帰りが遅いと思って、何回も電話して、やっと出たと思ったら、あんな、あんな声、あんなの絶対やることやってるに決まってます。──して────して───が───────」

「わー!わーーー!」

 

 

普段のノアとはまるで違う、早口で聞き取りづらい話し方。コンプライアンスに引っかかってしまうようなヤバめの単語まで出てきたので、先生はすかさず大声でかき消した

 

 

「……幼馴染なんです。アポロ君のことを0からずーっと見てきたんです。なのに、なのに…」

「それでこんな朝からここに……?」

「部屋だとアポロ君の匂いがして」

「わぁ…」

 

 

思っていたよりも重症な匂いに、先生は目眩を覚えた。相手はあの星空アポロ、多分ノアの想像するようなことにはなっていないはずだが……

 

 

「…………そういう先生は、何でこんな時間に?」

「……あー、ええっと」

 

 

なんとかノアの気を逸らそうと話を振れば、思わぬカウンターを食らった。なぜここにいるのか、そう問われてしまえば、当然答えはあるのだけど

 

 

「その、シロコの様子を見ようと思って」

「はい」

「シロコに会うと、アポロにも会うなと思って」

「……あぁ」

「また、あの時みたいな感じで、ええっと、あんな感じ…」

「宇宙人」

「ひいいあっ!?」

 

 

星空アポロと先生の、厳密に言えば初対面ではない初対面の時。アポロにとてつもない勢いで詰められたあの出来事がフラッシュバックして、先生は変な声を上げてしまう

 

 

「……トラウマになってるんですね。だからこんな時間に来るなんて変なことを」

「う、うん。そう……だね」

「何というか……お互い、大変ですね」

「本当に……」

 

 

早朝の爽やかな雰囲気は、一瞬にして凍り付いてしまった。そのまま二人の間に沈黙が流れ、ふと先生が顔を上げて────

 

 

「───え」

 

 

その視線の先には、一之瀬アスナに抱えられた、星空アポロによく似た5歳ほどの子供の姿────

 

 

 

 

 

 

「────あばばばばばばばっ!?」

 

 

生塩ノアの脳がそれに耐えられるはずもなく、追加で脳破壊が行われてしまう。その結果として、彼女はまたその場で蹲ってしまった

 

 

(───アポロは16!年齢はわかんないけど明らかにおかしい!あの子はアポロの子供じゃない!)

 

 

対して先生は、なんと冷静だった。いや、普通に考えればわかることだが、それでも生塩ノアよりは冷静だった。そして彼女は思考を動かす

 

 

(アポロの子供じゃない……けどアポロによく似た子供………つまり───あの子はアポロのクローン!知らない間にアポロ軍団計画が進んで……?)

 

 

その結論に辿り着いた瞬間、先生の脳内で全ての線が繋がった。そしてそれはそのまま想像へと繋がり───

 

 

『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』『宇宙人!』

 

 

「ぎゃあああああっ!?」

 

 

幻聴が、先生を襲い始めたのであった

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

なんやかんやアスナに預けられた俺は、恐らくする必要のない抱っこで他のC&Cの元へと連れられたのだ

 

 

「うん、うん……この感じは、確かにアポロ先輩ですね」

「ひゃめてよトキ」

「ふふ、すみません。思わず……」

 

 

何だかやたらと頰を触られる。ぶっちゃけ気持ちはわからなくもない。俺も子供になったノアを見たりしたら同じことする自信ある

 

 

「本当に子供になってしまったんだな…」

「ね!可愛いよね!」

「あんまり抱えなくても………」

 

 

皆の視線は物珍しさ一色だ。まぁ、普通の反応ではあるけど

 

 

「───ハッ!随分とチビになったもんだなぁ?」

「5歳児にマウント取るのどうかと思うよ」

「部長とアポロ、そんなに変わんなくない?」

「あらら……」

 

 

あまりにも早くネルくんが沈んでしまった。哀れ、5歳の俺になら身長マウント取れると思ったら大間違い。やっと同じぐらいになっただけだぞ

 

 

「………で、ええっと。結局何で俺はここに連れてこられたの?」

「アポロが戻るまで、私たちでお世話しようと思って!……嫌だった?」

「嫌じゃないけど………」

 

 

口ごもったところで部屋の扉が開いた。入ってきたのは白と黒の二つの陰

 

 

 

 

「────アポロが子供になったと聞きました!!!!」

「ヒマリ、声を抑えてちょうだい」

 

 

リオと、ヒマリ。ノアの上司とチヒロの上司……でいいんだっけか。リオはミレニアム学園内でも結構なお偉いさんであり、ヒマリ……ええっと、全なんちゃらみたいな称号を持ったすごい人である

 

 

「ヒマリにリオちゃん会長じゃん。どしたの」

「小さくなったあなたを見に来ました!!!!」

「……声が大きくてごめんなさい。私もヒマリと同じよ」

 

 

ヒマリはいつになくテンションマックス。リオは会長らしくちゃんとしていた

 

 

「ふむ、ふむ───子供になっても、溢れ出る才能に翳りは見えませんね。生まれた時から、あなたは星空アポロであったと……ふふ、大満足です」

「わわわわわ」

 

 

アスナから俺を受け取ったヒマリは、品定めをするような目付きで俺をジロジロと見つめる。視線がくすぐったくて俺は身を捩った

 

 

「……ふふふ、可愛らしい」

 

 

そのまま俺の頭を撫で始めてしまった。今のヒマリはかなり珍しい状況に興奮しているのかもしれないが、子供がえりしてしまった俺には少しきついものがあるぞ!中身はそのままだからね!

 

 

「完全な若返り……何があったのかしら」

「えーっと、こちらとしても想定外というか」

 

 

若返り研究については、この場で知っているのは俺とアスナのみだ。知っている人間を不用意に増やすべきでない以上、良い感じにぼかして回答する他ない

 

 

「……まぁ、いいわ。助けが必要なら、私に何でも言って。協力を惜しむことはしないわ。私も、セミナーも……きっと、他の部活もね」

「リオちゃん会長……!」

 

 

すごいぞ、いつになくリオちゃん会長が輝いて見える。頼りになりすぎる。すごい、すごいぞ……!

 

 

「元に戻るまでのあなたの保護は、C&Cに一任する気でいるのだけど……」

「アポロ、いいよね?」

「ん、まぁ……」

 

 

5人もメイドがいれば、まぁ子供の体でも余裕で生活できるだろうし。俺としても願ったり叶ったりだ。あとはさっさと年取り装置を開発して元に戻るだけ────

 

 

「アポロ先輩、スマホが鳴っておりますが」

「あら?」

 

 

何やら凄い勢いのメッセージ着信。これは一体誰からの………?

 

 

 

『アポロ』

『何かあった?』

『あったよね』

『大丈夫』

『すぐ行くから』

『そこで待ってて』

 

「ええと……アヤメ…?アポロ先輩、この方は─────」

 

 

次の瞬間───ガチャリ、と扉が開いた

 

 

 

 

「────助けにきたよー、アーポロ」

 

 

そこには、俺の知り合いの七稜アヤメが立っていて───

 

 

「ねぇ、アポロ」

 

 

耳元で響く聞き慣れた声と、聞き慣れない気迫がすぐ後ろにあって

 

 

 

 

「この人、だれ?」

 

 

何かやばいものに、俺は挟まれているらしい

 

 





星空アポロ
子供になっちゃった人。ペン→自分の順で試そうとしたところ、シロコが2番目の枠を無理矢理奪った

七稜アヤメ
アポロの危機を感じ取り爆速で現れた。アポロとの付き合いは古い

一之瀬アスナ
アヤメって誰?

各務チヒロ
アヤメって誰?

砂狼シロコ
アヤメって誰?

生塩ノア
チャイルドアポロで頭がいっぱい

プレナパテス
クローンアポロで頭がいっぱい
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