インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

10 / 79
タフ・ネゴシエイション

「どのような理由を挙げられてもグリードアイランドを譲る気はない」

 

「手持ちを譲って欲しいと言っているわけじゃないですよ。複数の出品がある場合に、その一つの競合を避けようというだけです」

 

 無理をすれば購入できるだけの資産を用意しバッテラにアポを取った。

 

当たり前だが一般人が行っても会う事すら難しいが、王子やマフィアを含むカキンの上流階級のいずれかの社会的身分を経由すれば、話が出来ない訳ではないからだ。グリードアイランドをオークションで購入するよりも、持っている人間でありこれからも購入する人間と話を付けた方が早いのは確かだ。

 

「私は私が欲しい物全てを入手する。そこに駆け引きの余地はなく、幾ら使ってでも手に入れるだろう。諦めたまえ」

 

「世界屈指の大富豪にドア・イン・ザ・フェイスは無理がありましたか。では流れを変えましょう。トランプはゲームに寄って、自分と相手の欲しいカードが一致しないことがあり、交渉も可能となります。例えば私はアイテムが欲しい訳じゃない。参加する権利が欲しいんですよ」

 

 バッテラは目的のために必死であり決して譲りはしない。

 

過大な要求を突きつけ、妥協案を呑ませるというドア・イン・ザ・フェイスは通用しなかった。人生経験でも資産でも全く比較にならない相手である、当然と言えば当然だが、俺の本命はここからの話であった。というか無理すれば購入できるだけで、本当にやったら黒字の事業を売る羽目になるからな。

 

「プレイ枠が欲しいというのかな? まあハンターならば私の行動を聞きつける機会はあるか。だが、その話を聞く必要はないと思うがね? いずれ来る募集の機会を待てば良いだけの事だ」

 

「その枠を予約し、ちょっとした話を聞くために情報を提供しましょう」

 

 おそらくだが、今までも存在した交渉なのだろう。バッテラは一蹴する。

 

俺としてもゴンとキルアの案をパクるつもりはない。『その先』を考えているし、そして、ゲームが終わった後の話も考慮している。ゲーマーであれば次善の策を考えることも、全て終わった後の話を考えることも重要だろう。

 

「グリードアイランドは特殊な力を前提としており、ハンターならばプレイも可能。そして説の一つとして、参加者全員の相互協力で成り立っていると言うのもある。ここまではよろしいかな?」

 

「公表すれば混乱するゆえに秘匿された技術だったな。知っているとも」

 

 グリードアイランドに費やされる能力は破格過ぎるし、報酬もおかしい。

 

だが、念で構成されておりゲームマスターだけではなくプレイヤーのオーラも利用しているならば判らなくもない話だ。そしてスペルカードなどを代用として、制約と誓約をかけまくれば、似たようなことが数人でも可能だろう。それが何十人と集まって来れば非常に強力な物になって来るに違いあるまい。

 

「重要なのは特殊空間で無ければ存在し得ないモノを作り出す実験場である可能性だ。近年になってネット環境に登場した、電子マネーや暗号資産の様な存在である可能性が高い。それが消費されるまでの間だけ実現し、現実で維持するためには非常に難しい条件でクリアする必要がある」

 

「荒唐無稽だが理解はできる。だがそんな説がどうしたというのかね?」

 

 ハンターを始めとした念能力者の実験場というなら意味が分かるのだ。

 

ブループラネットなら人造宝石を作りたい者が、一坪系は理想の自然環境を望む者が作ったのではないか? スペルカードはジョイント実験の過程で作られた物ではないか? そう考えれば色々辻褄が合うのだ。『ゴンを育てる為』というのはあくまでジンが見出した目標であり、他の連中が付き合う必要などないのだから。つまり、複数のデザイナー系能力者の念を発表し、維持する場所なのだろう。それならば全く問題無く機能する。

 

「失礼。理論的に突き詰めたいタイプでしてね。何が言いたいかというと、そう言う説が出る程に『ハンターから見れば理論的には可能なこと』なのですよ。当然ながら、貴方が欲するアイテムと同じことを出来る者もいる可能性があります。その辺りの事を専門家と相談したことは?」

 

「まさか……そんな事が……可能なのか? ツェズゲラは一度も……」

 

「一般的には秘匿です。貴方も弱みを握られたくないから話してないと?」

 

 原作を見れば分かるが『秘密 x 秘密』の弊害による連絡不足である。

 

ツェズゲラは念能力の事を詳しくは話して居ないだろうし、そもそもゴン達ですら思いつく『離脱(リーブ)』によるプレイヤー解放案を提案してない。無駄な連中に貴重な時間を使うつもりもないし、プレイヤーを再補充するのは彼であり労力が見合わないからだ。しかもライバルを増やす行為なので、話す気もないだろう。

 

「話すべきじゃないのかもしれませんが……。私があのゲームを手に入れたいのは遊びやゲームデザイナーとしての為だけじゃありません。好きな子が立場的に外に出れない子してね。だがグリードアイランドがあれば出れるし、何度も顔を変えるアイテムがあれば誘拐を懸念する必要性も存在しなくなる。貴方が何を手に入れたいのか判りませんが、内容によっては可能な筈ですよ」

 

 いきなり信用しろと言っても無理がある。

 

そこで俺が先にカードを切る事にした。どうせ俺がカチョウとフウゲツの紐付きであることは、アポの段階で調べて判っているだろう。何かあれば抗議することも圧力をかけて辞めさせることも出来るし……もしかしたら俺が幾つものゲームを手がけていると知って、参考意見を聞くために会う気になったのかもしれない。

 

「いや……貴重性としては最大級の物だ。難しいはず……」

 

「では次善の案を用意すべきですね。言いたくありませんがカキンでは身内で争う風習がある。タイムリミットがあるんです。もちろん、それに対する案は並大抵ではないから、次善の案を用意しています。グリードアイランドもその一つ。仲間を増やすこともその一つ。もし、お急ぎなら貴方の側だけでも時間稼ぎをするべきだ」

 

 原作を知ってるとは言えないし、パラレルワールドの可能性もある。

 

だから治療目的や若返りの薬が必要であるなどとは言わない。あくまで、『バッテラなら調べられるであろうこちらの情報』を元に、俺が彼に近い理由を持っている『同志』であることを理解させてやれば良い。ゴンやキルアの案を真似るのではなく、同志として延命策に協力するだけだ。その報酬として参加枠と、終わった後でゲームを貰えば良い。

 

「タイムリミット!? ああ、ああ! そうだ。いつ問題が起きても不思議じゃない……なんで私はグリードアイランドだけに縋っていたのだ?!」

 

「それだけ難しい事なのですね。必要なアイテムに対して、それに近い効果を、難しいならば副次的に叶える効果や時間稼ぎを目的とする手もあります。例えばバッテラ氏は高齢で病も考えられる。ならば治療能力は無理でも、治療可能な期間を延ばす方法を探されてはいかがですか?」

 

 あくまでバッテラが高齢だからという理由で病を口にした。

 

年齢に関しては複数のアイテムを持ち帰れるならば、案の一つに入れてもおかしくはないだろう。この手の話はぼかしても通る話があるし、逆に『離脱(リーブ)を使って枠を開けろ』とか、『PK対策で戦闘役を雇え』という案はいくら何でも論理の飛躍が過ぎる。俺は考察できてもおかしくない範疇で、そしてバッテラならば頭の中で組み上げられる様に話を進めていった。

 

「ツェズゲラを始めとしたハンターたちから情報を集める。可能ならば……」

 

「もちろん俺も協力しますよ。グリードアイランド入手は貴方のクリア後でも良い、参加枠はその前に欲しいですがね。それまでは同志です、何でしたら俺の仲間の伝手も尋ねてみましょう。信用できないと言うならば、ダミー情報も含めてリストを作ってください。個別に対応しますよ」

 

 バッテラは俺の情報を知ってるので、裏切る気が無いと理解できる。

 

彼からすれば俺が陥れて金をせびる必要はないと想像できるだろう。カチョウとフウゲツの事を知らなければ、マフィアが金をせびる為に上手い事を言っているだけだと思うかもしれない。だが、アポを取ってまで交渉を持ちかけて来る奴のことは調べているだろう。だから、信用される可能性が高いと踏んでいた。実際に、入手だけならばクリア後でも良いからな。

 

「おおよその見当で言えば昏睡状態になった家人の治療だろうな」

 

「あー、まあ。そう言うのを何とかする能力も無い訳じゃねえけどな」

 

 バッテラと契約して数枠と希望リストを得たが、治療能力はレアである。

 

自己治癒するくらいなら先に敵を倒せば良いし、自己治癒すらしないのに他者治癒なんて個人主義のハンターが考える筈もない。だから最初から『私は他人を癒したいのです』って、ハンターとしては奇特な聖人しか治療系を作ろうとしないのだ。仮に俺に余裕があっても、カチョウとフウゲツの為に作るかと言われたら少し怪しい。大切な者は遠ざけることで守るべきだからだ。

 

「一から育てるのでなければ、このままグリードアイランドに頼るとして、体調を小康状態で落ち着かせる能力を探す方が楽だとは思う。病を呪いに変えてから除念という手なら探せるだろうけど、おそらくそれでは払えない」

 

「良く知ってるじゃねえか。除念は万能じゃねえ」

 

 治療以外を探し、除念も無理だという俺の案にモラウは頷いた。

 

この件で一番顔が広く経験もあるのは彼であり、他のメンバーに相談するのは躊躇われるが、彼の見解は聞いておきたかったのだ。話せばナックルあたりは涙を流して協力して貰えると思うが、監視と中継ぎを兼ねて訪れることもあるリンチと殴り合う事もある為、いつ情報が漏れるか分からないからな。

 

「しかしよお。そんなに都合よくスゲー能力を用意できるもんなのか?」

 

「念空間の中限定にすると驚くほどやり易くなる。例えばカイトのクレイジーピエロは本人も選ぶことが出来ないから、強化系や放出系に匹敵する程の出力が出せる。同じように俺の隠して居る方の能力も、俺が使う水操作以上の出力で圧力室を用意できるからな。これが数十・数百人のジョイントで、幾重もの制約を掛ければ可能だろう」

 

 他人に頼る気のないモラウはグリードアイランドに懐疑的だ。

 

これがカイトならば経験者なので『ああ、それならできる』と返してくれるだろう。もっとも似たような能力を作るという話になると『あれを再現する気か? 間違いなく手に余るぞ』と忠告してくれるとは思うが。

 

「お前さんの携帯型で死ぬほど頑張って拡げて連れ込むってのはどうよ?」

 

「おそらく何重の意味で無理だろうな。正規の手段でログインしないと効果が適用されないし、不正な人物はBAN……排除されるはずだ。そして重篤な人間を蘇生させるほどの能力は、入手難易度が最大級だろうし、入手に王手をかけている連中は懸賞金の為に手放さない。そうだな……まだ停滞室なり体力回復室を組み込む方が早いだろう」

 

 魔法のような手段ゆえに、間違いなく何十もの制約が存在する筈だ。

 

制限枚数もそうだし、大天使の息吹を存在させる条件の方もそうだろう。そこから内部対立でバッテラに雇われた者同士が争っているのは、もはやバッテラの自業自得としか思えない。もし彼がリスクを覚悟して条件をツェズゲラと相談して貢献枚数x幾らで報酬を決めて居たらもっと簡単だったろう。一坪海岸線のような例を除けば、まず手に入れることは可能なのだから。

 

「なら俺たちの方で『ダイバーが昏睡状態に陥った時用の人員』を探し、それとは別に一時契約で凄腕のプロを雇う気があるってところで良いか?」

 

「ああ、その路線で探す方が堅実だろうな。チームの看板はその為でもある」

 

 水産資源やら海中の遺跡を探すスペシャルチームを結成した。

 

だが、そこに今は不要な人員を募集してはいけないという理屈はないのだ。将来の不安とメンバーの健康リスクを考えれば、体力回復なり健康状態を安定させる能力者を雇っていてもおかしくない。そしてイザ重篤な状態になった時に、治療はできずとも小康状態に持ち込めるような凄腕の人材と法外な金で契約しておくのはアリだろう。その辺の話を婉曲的にした所、バッテラは一も二も無く頷いたからな。

 

「しかし停滞室に回復室とかどうやって作るのかすら思いつかんが……自分達にも必要なら作ってやっても良いって事だろ? どうしてそこまで入れ込む? 嬢ちゃんたちの為か?」

 

「それもあるが『状況を一変させる魔法のような一手』というのが好きなんだ。しいて言うならマジカルハントと言う所か」

 

 もしかしたら俺の介入でゴンたちがカードは得られないかもしれない。

 

だが、そこに微塵の躊躇もない。苦労して手に入れたカードで、ゴンはジンではなくカイトに出逢うからだ。何だったら俺の方で紹介しても良いくらいだ。だが、それ以上に重要なのは『ゴンがグリードアイランドを楽しめるかどうか』という過程の方だと言える。むしろ一から十までGI編でレクチャーする方が失礼であると言えるだろう。

 

「ひとまずバッテラに関してはそんな所として、もう直ぐヨークシンでドリームオークションがある。せっかくだからゴルドーなりNGLの近海で海洋調査をして良いか聞いてみるか」

 

「良いじゃあねえか。あの辺は簡単にゃあ入れてくれねえからな」

 

 そしてもう一つ布石を打っておくことにした。

 

NGLやゴルドー近海で活動しておくことで、必要に成ったら海から駆けつける事が可能な体制を作っておくのだ。無理に原作に介入するつもりはないが、頼まれたら救援に駆けつけるくらいはしても良いだろう。万が一だが、女王蟻を俺たちが水際で見つけたらお互いの不運だと思っておこう。原作を見る限り……誰かがNGL内に置いて行ったと思うけどな。




 という訳でヨークシンの後では無く前にバッテラと交渉。

社会的身分でお話希望 → 購入ではなく参加枠 → 延命しとけば?
「自前で百数十億、ダメなら他の奴と組んで三百億用意するよ」
なんて交渉してもバッテラ氏は頷かないし、病人抱えている様子も見せないでしょうけど、同病相憐れむ相手なら交渉に応じるかと(枠だけ、クリア後前提で)。


●グリードアイランドの考察
・色んな発を思いついたので作ってみたい
・カリカリにチューンした発は何処まで行けるのか試したい
・誰も作った事のない人工物を作りたい
その他もろもろ。

おおよそですが、こんな望みを持つ集団が作ったんじゃないですかね?
もちろんジンなら『ゴンが修行し易い場所を作る』というサブがある。
その上で一番得する奴が、それだけ負担を背負ってゲームマスターして
それでも足りない所にレイザーとか死刑囚の傭兵が居る感じで。

なお、ゴンがクリアしたらサ終する説がありますが……。
上記の説が正しい場合、クリエイターたちのモチベーション次第かと。
新しい宝石や地形に挑戦したり、かつての作品を消したくないなら続行。
みなさんが思うように、レギュレーションを修正してまた再開かな?

●治療目的の発と、駄目だから延命策
 これは世界背景、能力者の意欲的に難しいですね。
だから延命策として、体力の賦活なり、停滞した空間での保存とか案。
それなら強化系とか具現化系に、そういうことを別目的でしたい人はいると思うので。(生物飼育とか、薬品保存で)

●ゴンは放置
 カイトが原作のGI編終了後に居るのはカキンですからね。
なら今の流れなら普通に紹介できるでしょう。だから見守るだけで十分。
枠は抑えているので、「バッテラにクリアさせる援軍チーム」を作るかは不明みたいな感じです。

●NGL沖で活動
 蟻編に手を出す気はないけど、小心者なので保証枠。
「あー無関係だったな。損だけどスッキリしたから良いや」って感じです。

●自前の発
 水産関係の成功とか、ナックル戦とか、バッテラと交渉成功を踏まえて
そろそろまた調整を入れて、失敗を修正するか、受け入れて修正するかですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。