インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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ヨークシン編
数手先の見通し


「死刑囚に向いた死刑囚は無し……か。まあそんなものだろうな」

 

 ドリームオークションに日程を調整しつつ、様々な仕事を並行してやっている。

 

バッテラが求めるであろう治療なり停滞させられる能力者を募集している。表向きは水産資源確保や海底遺跡の調査に向けて、必要な人材を確保するという流れだ。実際にそういう奴が居たら、ありがたくメンバーに入れさせてもらうのも確かだがな。

 

(育てるなら余程に才能と傾向が合致してないと駄目だな。ツベッパ王子なら十分だが、説得するためのピースが欠け過ぎている。せめて趣味志向が判ればなんとかなるんだが)

 

 最も確実な方法は能力者を育てる事だが時間がない。

 

原作で念獣が薬品開発系だったので、ツベッパ王子は念を教えたら薬品開発系になるだろうし、間に合う可能性もある。後は思考を誘導してしまえば上手く調整は出来るだろう。だが、そこに二つの問題がある。今は間違いなく念の事を否定するし、誰かを助ける為には使用することはない。少なくとも取引できる材料を見つけると同時に、念の凄さを印象付ける必要があるだろう。

 

(同じ能力を開発しているなら、クラピカに繋ぎを取って治癒能力でも見せつけるか? やろうと思えば可能だが、そこまでのステップが果てしないな。やはり別の方法を考えるとして、本来の目的を忘れないようにしないと)

 

 原作でクラピカの事をツベッパ王子が気に入ったのは極限環境だからだ。

 

日常生活で関心を持たせる為には、理由を付けて治癒能力を見せ、ツベッパ王子なら『自分も覚えられるのでは?』と案を組み立てさせなければならない。ただクラピカと会う理由が無く、そこまで行く道筋が長く、そして話をする段階でカチョウとフウゲツを彼女の下に組み入れる位のことは必要だろう(ソレをやると他の王子と組めない)。二人を守り、楽しい人生を共に送るという目的から離れ過ぎてしまうのだ。

 

(グリードアイランドをクリアに協力するだけじゃなく、バッテラたちも助ければ進化条件としての『偉大な業績』としては十分だろう。だからバッテラには協力する、それは寄り道じゃない。クリアすればグリードアイランドも貰えるしな。だが俺自身が治癒を覚えるかどうかは微妙なんだよな)

 

 俺は共通の制約と誓約を作り、進歩条件と進化条件を設けた。

 

原作主人公たちでも不可能だったトゥルーエンドを導ければ、星付きハンターになることに匹敵するトロフィー足り得るだろう。だが、その為に自分の能力を調整したいとは思えない。治癒は強化系とされており、もし強化を組み入れるとしても、特質系では狙った特殊能力を組み込むしか出来ないのだ。系統が違うから、治癒能力の強化幅が足りないだろう。むしろ、ボードゲームにありがちな『一回休み』から停滞部屋の方がまだマッチしていると思えた。

 

 

「NGLに行くんだってな? ブツを運んでもらっても良いか?」

 

「密輸か? お前さんが俺を嵌めるとは思えんが……NGLでは禁制品なだけの一般的な代物で、シュウ=ウ一家のメンツがやるなら良いぞ。どうせヨークシンに顔を出す旅程だからな」

 

 色々な仕事をこなしながら考察する中、ヒンリギがやって来た。

 

シュウ=ウ一家は物流を担当しており、そして独裁国家であるカキンと問題国家であるNGLはお得意様の一つである。どちらも他にチャンネルはあるのだろうが、何かの拍子に密輸で互いの産物を行き来させることはあった。

 

「なるほどドリームオークションのついでか。俺の予定が空かないから頼んでるんだが……道中でバトる可能性は?」

 

「ゼロじゃないがむしろヨークシンでだな。嘘か誠か旅団が狙ってるとよ」

 

「なんだいつものガセじゃないか」

 

 幻影旅団は裏社会のカリスマで、十老頭は目障りだから期待されていた。

 

カキン・マフィアに限らず『今年こそ旅団がオークションを食う』なんて冗談が独り歩きするくらいだ。実際には旅団と縁が深い流星街と持ちつもたれつなので、情報網の広い十老頭はそういう噂を笑って見ていたのだろう。絶対に当たる占いがありながら途中まで旅団を全く警戒していなかったのは、おそらくはそんな背景があるに違いない。

 

「空いてるならリンチを貸してくれ。いつぞやの約束があったろ? もし本当に抗争が起きたら最初は眺めてみてるつもりだが、絶対に出撃要請が来る」

 

「そりゃそういう力関係だからな。だがマジで来るのか?」

 

「ハンター内の噂だからな。まあ外れても約束は果たしたことにするよ」

 

 十老頭にはカキン・マフィアが逆らえないほどの組織力の差がある。

 

旅団と戦う事に成ったら兵隊の提供を求められるだろう。そうなったら場所が遠いカキン者のつらいところだ。間違いなく『念能力者を貸せ』と言われるに違いない。その場合は俺とリンチが顔を出して、お茶を濁しながら包囲網の一角で油を売るなり、真面目に戦って情報を抜くのも手だろう。まあ、俺は原作と同じ流れかは別にして、抗争が起きると思ってるのだが。

 

 俺たちはそんな会話を繰り広げて仕事の話を片付けた。

 

幻影旅団の襲撃などあって欲しくないような、あって欲しいような……と思うのがカキン・マフィアの日常だった。久しぶりに笑えるジョークを飛ばし合ったような気分で、NGL沖での資源調査の移動予定を進めるのだった。

 

「なんだ、このヘンテコなのは」

 

「神字だよ。特定の念能力を強化する働きがある。これは俺やモラウ師のような操作系用で、内側が専用の。向こうのは今探している能力者用で、時間が掛かるから少しずつやってるところだ」

 

 調査船にリンチがやって来た。場所は貨物室になる。

 

そこへバリバリの文明製品を積み込み、ココム違反ならぬNGLでの禁忌を冒す代物を積み込む予定だ。笑えないのはNGLのメンターであるジャイロたちの主導であるということなのだが。向こうのお偉いさん用の衣装の中に、ジャケットやワンピースとかも混ざっているのは、きっとリンチの趣味だろう。なお、積み上げた板に書かれた神字の中には、具現化系で念空間に調整したのもある。その辺は秘密だけどな。

 

「神字で思い出したがシュートのは神字で大きくできるのか? でかい獲物を捉えられたら楽そうなんだが」

 

「難しいだろう。高速で動かしたり操れる範囲を拡げたりは可能だと思う」

 

「そう都合よくは行かんか」

 

「だと思う」

 

 念能力は本人の精神性が大きく影響している。

 

シュートの能力は小動物を抵抗の余地なく捕獲するための能力ではないのだ。危険な動物の牙や爪を一時的に無くし、安全に捕獲する為の物であろう。封印を繰り返えせば対象の全身を捕縛できるようにはなっているが、一撃で対象物を完全封印するという暴力的なまでの力を望んで居ない様に見える。だから、その精神をそのまま拡張しても決して大型生物を一撃で封印できない。

 

(発の貸し出しを中継する契約とか作らなかったのは、その辺もあるんだよな。妄想としてはメレオロンの能力をモラウに貸し出せば無敵のコンボが出来る。だが、それを絶対にモラウは認めないし、議会型ジョイントにしたとしても使わんだろう)

 

 念の貸し出し・レンタル、その仲介とかは思ったより簡単にできる。

 

念空間内で契約し、その旨を予め説明しないとならない = 騙し討ち不可。さらに複数の貸し出しの組み合わせの中から、複数名の議論の果てにジャッジメントするとか言う過程を経たら多分可能だろう。だが考えてみて欲しい。ネテロ会長にジャジャン拳を貸し出したとして使うか? そんな事をやるならば、最初から薔薇を王の元に送りつけるだろう(やるような性格なら、その前に死んでるとも思うが)。

 

「積み込みは済んだな?一度出航したら早々に陸地には戻れん。みんな今のうちに用事を済ませておいてくれ。もちろん、飛行機で移動して後から合流というのも任せる」

 

「「了解」」」

 

 シュウ=ウ一家のリストと実際の荷物を確認して作業終了。

 

ガチ犯罪品があったら冤罪とかされかねないが、NGLご禁制だけの場合は没収・追放だけで済むから問題ない。上同士の話がすんでない場合は、『察してくれ』以上の交渉はする気はないので、後は定期チェックと食料の補充くらいになるだろう。

 

(こちらも先々を見据えておくか。計画を完全に遂行するのは無理でも、道筋を想定しているかでかなり変わって来る)

 

 俺は想定を何度も検証し、最後をアドリブで調整するタイプだ。

 

だから想像できて推敲出来る事には強いが、その場で何かすることが上手い方ではない。それに加えて今回は船旅であり、海洋調査以外に身動きは取れないので猶更だった。

 

(これからグリードアイランド編までに出逢う可能性があって、スカウトしたいと思える能力者は五人。言うまでもなくクラピカ、ゴレイヌ。暗殺ないし護衛としてカルト。バッテラの望みに役立つならば、ビノールトとアベンガネもだ)

 

 前三者は言うまでもないが、残り二人は割りと可能性が存在する。

 

贖罪するつもりがあるビノールトは体調管理を簡単にできる上に、医療チームならば病人を助けることで更生出来るだろう。特に相手のDNAや健康状態を前提とした発を作る気がある奴が居れば、コンボで素晴らしい医療チームが出来る(ビノールト自身が特質系説だけではなく、強化系説もある)。そして、可能性は低いがアベンガネも役に立つ可能性があるだろう。

 

(アベンガネ……具現化系の筈だが……そもそも、奴は『何を見せて』認められたんだ? 奴はウイッチドクターの可能性がある)

 

 誰もが除念師として認識しているが、除念師は己を隠している。

 

グリードアイランドのプレイヤーとして名乗りを上げて登録されるために、アベンガネはどんな発を見せたのだろうか? 少なくとも除念して見せたとは思えない。それがゲーム内で役に立つとは思えないし、ゲームではなく現実であると『森と会話して』気が付いた可能性はある。だが、登録時にそんな話をするはずがない。ハメ組に入ったことを考えても、他者と協力するタイプである可能性が高かった。

 

(状況に応じて複数の念獣を召喚できると説明し、その内の一つを見せた可能性が高い。もし自分の体力や植物の活力を他人に付与し、賦活させられるならばピッタリだ。単純な自己治癒はガンを活性化させる可能性もあるが、体力を貸すだけなら問題は無いからな。クラピカと話す機会があれば、他人に施せるかを聞いてビノールトの能力と組み合わせても良いが……)

 

 アベンガネは狭い世界に絞り、確実に極めていく特化型だ。

 

それを考えたら具現化系であり、かつ自分以外を経由することで、特質系ではないが特殊性を持たせるタイプと思われる。それを考えれば除念以外の能力も具現化系で作った念獣である可能性も高い。もちろん変換系で、植物をオーラ増幅する祭器に置き換えるタイプかもしれない。それでも最初の能力確認時に、それとなく話してみるのはアリだろう(バッテラの恋人が病気ではなく、念による呪いの可能性も合わせて)。

 

「おい。NGLの連中に一報入れたら妙な注文を付けてきやがった」

 

「……無農薬野菜で販売や食堂の計画書を用意しろ? こっちの組織を知ってるぞというアピールと、他所にフロント企業を作りたいってことだろうな。判った、俺が出来るから計画書を作っておく」

 

 リンチが戻って来て殴り書きのメモを寄こして来た。

 

ザっと確認して暗号ではない事を見て取ると、大まかな未来予想図を描いて見せた。いつものルートを使わずに、俺が近くに行くからシュウ=ウ一家が任せて来た訳だが……。『勝手な事をするのは構わんが、俺たちは知ってるぞ』と一言添えたのだろう。もちろんスパイと連絡要員をおいて置く為だろうから、カキン以外の国に大都市で適当な計画を練っておくことにしよう(無農薬野菜を買える庶民なんかおらんし)。




 という訳で新章というか、ヨークシン編突入です。

●『今年こそ旅団が食う』
 原作のシュウ=ウ一家の反応的に、よほど割り喰ってたのかと。
十老頭が占いもらってるのにA級賞金首たちを心配してないんですよね。
その辺りを含めると、よくある都市伝説並にあったことにしました。

●神字
 船をもらったのは元からの予定です。
神字の欠点として、ほぼ設置型専用で、持ち歩き出来ない。
でも、大型船で運ぶなら問題無く、床板ごと変えれば調整も可能。

神字でやれないことがあるなんて設定はありませんが、念だとあり得そう
妄想として言ってるネテロ会長なら嫌がりそうというのもありえそう。
「嫌じゃ嫌じゃ。そんな技なんか使いとうない」とは言わんでしょうが
しれっと忘れたフリして、無ければヤバイ薔薇を仕方なく使うレベルで。

●ビノールト強化系説と死刑囚スカウト案
 ゲームでは特質系だったそうですが、ドッグマンを見てると味覚強化?
そんな可能性もあるので説としています。医療チームには有用ですしね。

●アベンガネとリザーブ案
 設定が固まって行く過程上、仕方がない事ですが発を見せる会がある。
その上で、呪いを除念されたら嫌だから、除念師は狙われるから隠れる。
それらを踏まえると、アベンアネは除念の光景を見せてないでしょう。
なので、別の念獣を作って誤魔化した可能性はあるかと。
もちろん祭器作成や、ツボネさんみたいな変形の可能性はありますけどね。
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