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「若。格はスイートですがワンフロアをカードで全て押さえました。それと数日前から別の階にナックル・バインの名前で、現金を用いて大部屋にて宿泊しております」
「ご苦労様。お前たちは適当な宿を抑え、この金で数日後に移ってくれ」
「はっ」
予定が決まっているのだから、うちの組員は先に動いている。
続き間を全て押さえる事が可能な場所か、さもなければロイヤルスイートがワンフロア全てになる場所を頼んでおいた。それとは別名義で、かつ現金による宿泊をさせておいた感じだな。予定の額よりも少し多い現金を追加し、差分は部下たちの慰労に充てることにした。
「待てよ。オレは特に部屋なんか要らねえぜ? 師匠について買い物したら、適当な場所で遊んでるからよ」
「ああ。すまないが名前を借りたんだ。カチコミの可能性があるからな」
襲撃を避けるためには同じ階を全て押さえるのは基本だ。
それとは別の階に別名義と別のタイミング、そして現金で宿泊しておけば狙われるのを避け易くなる。ビルごと爆破でもされたら同じだけどな。それとナックルの名前を出したのには理由がある。
「ナックルへの連絡はあったか?」
「NGLのカイト殿より報告作業は順調だと」
「それは良かった」
モラウの名前は探索チームの共同者として登録してあるし、想像できる。
だが、弟子のナックルにまで注目はされてない可能性があった。仮に潜ってる所を見張っていたとしても、基本的にナックルはお留守番である。知り合いならば直ぐに気が付くし、他人が類推するには少し遠い名前であろう。
「カイトってのは残して来た奴の事だよな?」
「ああ。水産資源で何があったかをそっちの上に報告させている。ジャイロ殿なのかその下か、それとも表の代表かは知らないけどな」
リンチはカイトをNGLに置いて来た理由を知らない。
行動許可を取る援助の代わりに協力する約束だったからな。戦力的には惜しい所だが、大型生物探索の為に協力してくれていたので仕方がない。既にカキンで行動する許可は出せる筈だし、適当な所で俺名義で適当な名目を付けて依頼を出す気だった。NGLに残って顔繋ぎをしているのも、先々でNGL内の探索をする為の信用稼ぎである。おそらくは往復以外には何もしていないフリで、周辺地形を暗記しているだろう。
「この後は一度解散してマフィアの顔役に顔を出す。モラウ師たちは伝手で機材を購入するなり人員を探して船に戻るはずだが、お前さんらはどうする?」
「上からは着いて行けと言われてるよ。よくやり口を見とけとな」
なお、カイトと入れ替わりで数人付いてきている。
NGL組はメンツが入れ替わってるが着いて来た。強面なので都合が良いから帯同を許しているが……要するに、提出したプランを採用するかどうかの為に、マフィアの連中がどんな奴らかを見物に来たのだろう。実際、念能力者でなければ駄目なのか、それともどうにかなるのかを考慮する為と思われる。
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「おい、そこの田舎者。そこに並んで順番を待て」
「アポイントメントを取っている筈だが?」
「ああ? そんな話は聞いてねえなあ」
マフィアの上に挨拶に行くと受付でもない場所で呼び止められた。
誰も並んでいない場所に並ぶなんて理屈はなく、そもそも予約を入れてあるのでただの嫌がらせである。親しい中でもパンチ(牽制)ありなマフィア連中だ、見慣れない奴には話が通っていてもマウントしながら嫌味を放つのが何時もの事なのだろう。
「そうか。アイジエン大陸の支配人に顔を出しておけと言われて、その場で予約したんだが、もう『役目』を果たした扱いなら帰らせてもらおう。次の予定があるからな」
アイジエン大陸の支配人というのは十老頭の一人の別名だ。
彼らは様々な肩書でマフィアたちを従えたり、表舞台でも影響力を発揮する。国家内でまとまっている事になっているカキン・マフィアも、大陸全土の裏社会を束ねている奴には逆らえない。系列が違うから盃を交わしてない客分扱いなので、従う義理も無ければ何かを要求する権利もない。だが、力関係から従わざるを得ない、厄介者であった。
「ちっ。思い出したよ、随分と若いんで見間違えた」
「新参の一家だが跡目だ。カキン代表として挨拶しに来た。そこの女はシュウ=ウ一家の兵隊で、見届け人になる」
当たり前だが、こいつらは手前の理屈と立場で嫌味を言っている。
十老頭のメンツを立てて不要な挨拶に来た立場の人間を追い返せない。それはここの連中を束ねている別の十老頭が、もう一人のメンツを潰したことになるからだ。もちろん挨拶が通れば、カキン・マフィアはアイジエン大陸支配人の言うことを聞く格下扱いであることを証明することになる。そういう力関係の見せ方をするお披露目会合なので、下が勝手をするわけにはいかないのだ。
「なあ。あいつら何で絡んできやがったんだ?」
「貫目の重さって知ってるか? あいつらはおそらく系列組織の若頭や、更に下の組長だ。上に頼んでも十老頭に逢わせてもらえすらしない。シュウ=ウ一家でもヒンリギとオウ、さらに言えば副組長じゃあ扱いが違うだろ? それなのに若造の俺が面会できるとなれば嫉妬もするさ。やり込めたら格が上がるが、俺は客だから、嘘ではないが本当ではない程度の事しか言えなかった」
武器を預ける場所でリンチが尋ねて来たので答えておいた。
もし俺がシュウ=ウ一家の若頭で、ヒンリギの上でも会えない。同じ若頭なのにどうして差があるかと言えば、新参の一家とはいえ次期組長でありカキンでは貴族扱いされる方の二線者だからだ。工場で例えるとあいつらは『二次下請けの重役』と『三次下請けの社長』くらいの扱いなのに、俺の方は『重要なパーツやプログラムを売ってくれるお得意さん』扱いな訳だ。ネオンのパパが十老頭と会話してたら腹を立てると言う方が判り易いか。
「馬鹿馬鹿しい。そんな面倒なことするならさっさと案内するか、断れと上に提案すりゃあ良いのに。本当に旅団来ねえかな」
「誰が聞いているか判らん。余計な事は言うな。後で調べはするがな」
ちなみにNGLの連中は武器を預けるか迷ったようだ。
即座に預けた奴を護衛として連れ、迷った奴は外でぶらつかせた。それで内外の情報を見れるだろうし、後は身内で適当に話し合ってもらおう。
「ここが会場だ。案内してやるから余計な口は効くな」
「努力はする」
やがてさっきの連中に案内されてパーティ会場へ。
主催者であるヨルビアン大陸西側の長の他、何人かの十老頭や直系の連中が暇つぶしをしている。そこへ俺みたいな新参が挨拶をしたり、約束していた謝礼を払ったり、逆に詫びを入れるために来ている感じだな。基本的には厳選した貫目を持つ連中に対し、十老頭が上である事を認識させ、直系の連中に『お前らが兄貴分だから、よくしてやれや』と引き立ててやるという感じである。
「……バルサの支配人とベゲロセの支配人には初めてお目に掛かります。田舎者ゆえご寛恕願えれば幸いです」
「お貴族さまに挨拶してもらえるとはお前も出世したもんじゃないか」
「ぬかせ」
なお面会したのは、目的のヨルビアン大陸西側の支配人ではない模様。
地球の感覚的に言うと西ヨーロッパのドンに挨拶に行ったら、東南アジアを根城にする海賊の頭目と、オーストラリアを支配する顔役に出逢ったようなものである。挨拶しないわけにはいかず、かといって何かの非礼を働いたら即アウト。本来は若頭ごときが出逢える相手ではないので当然である。
「僭越ながらお尋ねして構いませんでしょうか?」
「貴様! 御老公がたに無礼な!」
「良い。何を聞きたい?」
「主催たる西ヨルビアンの支配人はどちらに居られますでしょうか? かねてより御願いしていた、ご挨拶に伺いたいと思いまして」
俺が口を開くと順番に顔色を変えた。
案内して来た連中の顔は真っ赤になってやがて青へ、笑顔を浮かべていた十老頭は目を細めて鼻白む。挨拶の順番というのは重要で、下から上の順番で挨拶しに行く場合と、上から下に順に挨拶しに行く場合がある。もちろん十老頭は動く必要は全くない。常にくつろいでおり、縁のある連中の挨拶を一方的に受けるだけ。つまり……この場合は、下から順に挨拶をさせられた(お前は格下にされた)というチクリである。
「あいつならもう直ぐ来る。それとオレたちはこいつらに話がある」
「お目汚し失礼いたしました。御両所にはシノギの話でお世話になるかもしれません。またのご縁がありましたらよしなに」
今回の件は案内してきた馬鹿たちの張った罠である。
俺が西ヨルビアンの支配人である十老頭を知らない場合は、挨拶に来た相手の顔を知らない迂闊者ということになる。そして案内された相手を知らなければ、やはり物知らずの愚か者だろう。連中からしてみれば『近い方から回った』『その場に居られ無かったので、別の方の元に案内した』だから『全員に挨拶すれば良い』という事なのだろう。もちろん十老頭なんてVIPの顔を調べてない訳が無いし、バルサ諸島やベゲロゼ連合みたいな海洋国の顔役を知らない筈は無かった(逆に言えば、連中は俺のシノギを調べてすらない)。
「マジでくだらねえな。来て損したぜ」
「お前さんは居ること自体に意味があるから不貞腐れるな。だが、これで別室を取ってある理由が分かっただろう? 戻ったらあっちに移ってくれ」
「部屋自体は気に入ってたんだけどな」
その後はようやく予定通りに西ヨルビアンの支配人と面会。
下手に出過ぎないが、かといって立てない訳ではない。互いに敬意は払うし、上に立つのは常にあちら。もし今後に何かあっても命令を聞く必要はないが、要請としては断る訳には絶対に行かない程度の実力差がある。要するに盃を交わしてないだけで、こちらが子分格なのは間違いがないからだ。カキン・マフィア全体でようやく十老頭直下レベル、十老頭たちは単にカキンの王であり裏社会も束ねているホイコーロ家のメンツを立てているというだけになる。
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「……そうか。それは残念だ、機会があればいずれまた」
それからホテルのスイートから大部屋へ移動。
スイートでは部下たちが代わりに過ごし、贅沢な生活と引き替えに襲撃されるかもしれないという状態で数日を過ごす。もちろん適度に過ごしたら、身代わりは終了して既に借りている近くの宿に移動する手はずになっていた。要するに生活臭を残したりベッドメイク担当者に『確かにここで過ごしておられました』という証言をさせる為だ。
(結局、ハンゾーもポックルも駄目。ゴンとレオリオからそれなりの予定が帰って来ただけか。まあ、そこは仕方ないな)
こちらに来てから同期のハンターの内、一部にメールを送った。
内容としては『今、ヨークシンに居るが近くに居たら会わないか?』というものを、キルアの件で抗議したメンツに送ったのだ。もちろん最終的にはクラピカに繋がる様にした流れだが、念の習得に問題があるポックルは論外、ハンゾーは自分の目的のために近くに居ないのでそれは仕方がない。なお、開封履歴のある最新メールだったので、開封した事だけは判っている。
(ゴンは自分の目的のために巻き込まないだろうし、資金稼ぎの序盤だろうから挨拶くらいだろうな。結局、原作通り暇なのはレオリオだけか。こっちに拘束し過ぎると原作を壊すし、どうしたものか)
連絡線を繋げばよいだけだが、俺は直ぐに答えを出せないでいた。
レオリオは気の良い男なので、バッテラの事情を話せば協力してくれるだろう。ただ、それで引きつけ過ぎるとゴンに対して協力しない可能性もある。この段階でゴンが資金集めに忙しくないから逢おうというならば問題ないのだが。
(いや、待てよ。ククルーマウンテン編で一緒だったのにどうして今は別行動なんだ? ……いかんな。原作の細かい所を忘れてるな。旅団の襲撃も金額が高額になる後半なのか? それとも忘れてるだけで初日から? ……仕方ないな。その辺りはファジーに考えておくか。問題のレオリオだが……)
物心ついてから数えてもかなり長い年月が経った。
好きだったハンターxハンターの原作も全部を覚えてなどいないし、同じくらい覚えてるのも同じくらい好きだったFSSとガイバーくらいだ。次点のバスタードやトリニティブラッドなんか流れくらいしか覚えてはいない。オークション会場襲撃メンバーは相性良い相手が殆どだから気にしていなかったが、シズクだけは相性が致命的に悪いので、ここは対策しておこう。
(そうだな。原作をあまり気にしても仕方がないし、どうせ発の習得もまだだろうから、他の三人を優先して構わないくらいで勧誘しておくか。本当にうちに就職を考えていても、どうせ将来は継承戦編だしな)
致命的な記憶ミスのおかげで、一周回って冷静になる事が出来た。
どうせ継承戦編を壊す為に何とかするつもりなのだし、気にする意味がない事を思い出したのだ。既にNGLにはちょっかい掛けているし、旅団メンバーの中でも相性良い奴と悪い奴がいるから、出会い方次第で殺しも殺されもしかねないからな。
(オークションの方は、最初の数字は部下か代理人に一億か二億くらい使わせて様子を見る。レオリオに関しては医療関係と発の話をして終わりだ。後はクラピカと線がつながるのを待とう)
バッテラに勝ってグリードアイランドを買うよりかなりお安い。
そう考えたら部下に任せて一億ジェニーちょっとか、代理人に任せて二億ジェニーくらいは安い物だ。その後に同じことを続けて、俺はレオリオと愉快に話をすれば良い。その時に医療チームに入ってくれるならば、学習環境やオーラの習熟込みで協力するだけの話である。
という訳でヨークシンのドリーム・オークション手前です。
なかなか本国から出てこないカキン・マフィアなら十老頭に挨拶必須かと。
そこで「誰が先に挨拶した?」が重要になると古事記でも言っています(本当)。
●部屋は複数・別名義で
傭兵物の小説・漫画だと基本ですよね。
カキンマフィアは王族直営なので、ちょっとだけリッチです。
●十老頭の名前
特に決まってないみたいなので、呼称は複数あり使い分けとしました。
カキン・マフィアは国家ぐるみなので、それを従えるための大陸支配人。
盃躱してないけど、お前、支配人に逆らうんか? みたいな流れですね。
まあ、パトレイバーの極東支配人とか好きなだけですが。
貫目の重さというのは、例えば王国で貴族でもない大使が
他の国で信用されるのか? されないよね。せめて子爵待遇とか男爵必要。
今回は主人公が順王族なので、その辺の工場長レベルの若頭・親分より格上扱いなだけです。
●記憶が薄れているがゆえのミス
何処かで入れたいなと思ったんで入れました。
ついでに『原作壊すのマズイ?』問題も一緒に御方付け。
やはり転生した以上は、好き勝手に生きてみたいものです。