インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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旧交

「スープ餃子の唐揚げセット? またジャンクなものを食ってんな」

 

「社長だからな。現地法人の味を調査するのも仕事のうちだ」

 

 うちで経営している店の個室でレオリオと再会した。

 

当時使っていた他所向きの言葉と格好はあくまで変装だと告げ、レオリオにも勧めるが……。料理は基本のスープにメインの具を入れて、片手鍋で煮直すだけ。水餃子かワンタンが一般的で、文化圏に寄っては麺や雑炊を選ぶ奴も居る。それにサブで揚げ物をチョイスすれば、安価に山ほど食えるうちの看板商品である。

 

「社長と来たか。少しは分けて欲しいもんだね。って、餃子じゃねえよ」

 

「医者志望だっけ? 能力次第で高額で雇っても構わんが、最初は自分の才能を試した方が良い。うちは水産資源を調べるチームの健康管理とかの募集になる。来るなら金は弾むが患者を診たいなら診療所の方が良いだろうさ」

 

 食いしん坊ご用達のマイレージカードを渡すと一回だけ頼んで返して来た。

 

奢るのを断るでもなくそのままカードを持ち去る訳でもなく、サラっとやれる辺り実に気の良い男である。建前の方を先に話して誘導の方は後でするとしよう。

 

「まあな。オレはそっちの志望だから、箸にも棒にも掛からねえ時じゃねえと頼まねえぞ。その場合は邪魔だろ? つか……その能力も少し苦戦気味なんだよなあ。いや医者の勉強もあるからだけどよ」

 

「この間始めたばかりだろう。最初の数年は基本ばかりさ」

 

 慰めではなく天空闘技場で即覚えたゴンたちの方が異常なのだ。

 

俺はじっくり考えて能力を決めたというのもあるが、色々やり始めたのはかなり後の方だ。発だっていまだに試行錯誤しているし、基礎修業は応用も含めて練習は欠かさないようにしている。最も水操作をメインで使っている関係上、応用の方が得意になりつつあるのだが。

 

「最近になって気が付いたんだが。能力者の能力は先に基礎能力で加算と減算を先に行って、通った分が乗算されるんだ。基礎はやればやるだけ効果が出る。発は考え方次第さ」

 

「そんなもんかねえ。まっ良い発なんか思いもつかねえけどよ」

 

 話が長くなりそうだったので、ワンコ・ポテトフライを頼んだ。

 

これは揚げ物の中でもお得な商品で、長話の為に定期的にお代わりを補充してくれる。油の入れ替え時期に出る余分を使って、沢山作っては売り切りで処分するだけなのだが。

 

(実際、戦ってみて判ったが攻防力は重要だな。クラピカがビッグバンインパクトで殴られて無事だったのは、おそらくあまり貫通してなかったからだ)

 

 ウヴォーギン対クラピカで何故か負傷が少ないシーンがある。

 

強化系も100%発揮できるから、防御も得意になって治癒も得意。喰らったダメージの殆どを回復して驚愕されたという光景だ。念獣との戦いと比べておかしな話だが(念獣だって強化系は居る)、発は貫通したダメージを数倍にするとしたら理解できるのだ。仮に百倍である場合、貫通したのが百ダメージなら一万だが、一ダメージなら百に過ぎない。確か蚯蚓も一応は脱出に成功しているし、攻防力のシフトに成功してガード出来れば減らせるのだろう。

 

「発に関しては焦る必要はない。試験での光景を思い出すに、暗殺一家のキルアですら教えて貰ってなかったろう? おそらくだが、詰め込み教育で目覚めさせても、良い能力にならないんだ。特にレオリオが医者志望なら猶更な」

 

「あん? どういうことだ? 焦るのが良くないのは判るが」

 

 キルアが知らなかったのは記憶を消したか、意図的な教育を感じる。

 

その時、俺はレオリオが水を飲んでるコップを軽く爪で弾いた。すると途中で音色が変ったような気がする。もちろん水やテーブルに吸収されて変化したのではない。レオリオのオーラと水を同調させ、放出系らしき反応ではないかと思った程度である。他人のオーラと同調させるのは難しいが、見抜き方さえ覚えれば判るのは、花粉や陽炎と同じである(おそらく似たようなことをカルトもやっている)。

 

「レオリオは放出系か。結構多いタイプだが、使い勝手も応用性も良い系統になるな。さて医者では無く漫画に例えるが、とある漫画描きの話で編集者がこう言っている。爆発的にヒットし易いのは考えずに描く漫画家で、狙ってヒットさせ易いのは考えて描く漫画家だと。強い要望は特殊性を導き、練られた考えは有用性を生むということになるな」

 

「漫画での例えねえ……判る様な判らんような」

 

 レオリオは俺の言葉を否定しなかった。やはり放出系らしい。

 

念能力者としての意識が希薄で、戦う気のない彼は系統を知られることに忌避感がない。せっかくなのでこのまま話してしまうが、以前から描いていた勧める発とかは、そのままで構うまい。

 

「今のは最初の例えさ。強烈な思いは奇跡の様なことがある。ただし、不便で扱い難く場合によっては一年に一度とか、極端な例だと一生に一度だ。逆に自分を鍛えた果てに欲する能力というのは、強くはないが良く考えられた能力であることが多い。半端に教えると危険なのは短期的にも長期的にも意味がない……お前さんなら試験に通るだけの医術を身に着けてしまうとかな」

 

「ああ、そう言う話なら判らなくもないぜ。奇跡の様な能力が欲しかった時もあるが、今は要らねえ。ましてや医者に成れるだけじゃ意味がねえんだ」

 

 レオリオはコップを握り締めると水を呷った。

 

おそらくは過去の思い出を追憶しているのだろう。確か彼も家族か友人だかが死んでいる筈だ。詳細は憶えてなくとも、死をキッカケにした強烈な目的があったのを覚えて居る(それと同時に試験の時に言い訳にしなかったシーンも)。ひとまずここでは、焦り過ぎは良くない事を伝えたことで、一段階目の誘導は成功したと言っても良いだろう。

 

「それに念能力はどの系統でも自分がやりたい方向に目覚めるんだ。何をしたいかという目標を点として、そこに至りたいという思いを燃にするという表の基本は間違っちゃいない。その上で、放出系は無茶苦茶応用性に優れてるからな。正直羨ましいくらいだぞ」

 

「マジで? そんなに使えるわけ? どんな感じで使えるんだ?」

 

「後で良いという理由もすぐに判る。リストにしたらとても長いぞ」

 

 現段階ではどんな発にするかは誘導しない。彼に協力的だと伝われば良い。

 

正直な話、友人に成って協力関係になりたいならば嵌めるべきではない。ビジネスパートナーとして使うにせよ、心証を損ねるのは悪手だからな。その上で彼の適正に合わせて念の知識を重ね合わせてリストを軽く描いて行く。最初に放出系の特性を幾つか並べ、80%の操作と強化が両隣、特殊は微妙で変化が60%と基本の六性図を描いて行けば大体の構図が完成する。

 

「俺はてっきり、オーラを飛ばすだけの系統かと思ってたけどな」

 

「それが判り易い考えだし基本だから間違ってはいないよ。だが、円を思い出してくれ。オーラを飛ばすという事は、空間を把握するということ。把握した空間に対して接し方に、どんな関与をするのか自分で判断できるってことだ。少し難しいが、ワープしたり隠し部屋を作る事も出来る」

 

 まずは放出系の特性を解説。

 

特性は『オーラのプラス移動(攻撃・放射)』、『オーラのマイナス移動(吸収)』、『位置の移動(ワープ)』、『空間を把握する』、『念空間を管理する』、『念獣を管理する』。この言葉は便宜的なものでしかないし、オーラの吸収も傷や病の吸収として治療に使えなくもない。もちろんそんな事をしたら自分が傷付くけどな。

 

「ワープだって? そんな夢みてえな事が出来んのかよ」

 

「レオリオがしたいとは思えんが、苦労すれば可能だぞ。考え方としては糸を結んで取り寄せるとか、ペットに頼んだりドローンを操縦するのと変わらん。場所さえ完全に把握できれば難しくはない。ただ、レオリオの場合はまだこっちの方が好みだと思うけどな」

 

「うおっ!? ビールが出て来た?」

 

 説明しながら携帯型の念空間からビ-ル瓶を取り出す。日本と違ってキンキンに冷えたビールである必要がない国も多いので、レオリオは特に注文を付けなかった。もちろん冷たいビールに慣れたらそれはそれで好きになるんだろうけどな。

 

「俺の場合は念で空間を作って隠し技にしている。レオリオだから話したが、あんまり喋るなよ? 今はワープさせるよりも、お前さんなら手術道具をしまう方が合うだろうと説明しただけだ。もちろん道具なんか予め用意して置けるから、単独ではそこまで意味はない。死にかけた病人に体力を移すとか、病巣を取り除く方がまだ有用だな」

 

「そ、そんな事もできるんだな。……確かに、こりゃアイデアが重要だわ」

 

 俺の説明にレオリオが嘆息した。ワープや念空間への興味が薄れたのだろう。

 

ナイフを投げても良い、銃を討っても良い、殴りに行っても良い、オーラで攻撃しても良い。その反対に、他人を回復させる力を放つとか、他人の体力を奪う力を放つことも出来る。苦労するがワープや念空間の作成だって出来る。だが、そんなものは念の一面でしかない。アイデア次第で無限に広がるのが念なのだ。

 

「しかも隣が有用な強化系と操作だからな。生命力や自己治癒を強化したり、体を操って麻酔にしたり。そんな応用もレオリオの知識次第で出来るだろうな。俺だったら効率が悪いと思って諦める、変化や具現化系だって思いつくかもしれない。だから、おそらくはキルアに念を教えてなかったんだ」

 

「勘弁してくれよ。ただでさえ俺は勉強中なんだぞ」

 

「だからこそ今は医者の勉強を頑張れよ。念は基礎だけで良い」

 

 改めて俺は急かさないことにした。サラっと体力回復とか誘導はしたが。

 

もし将来にレオリオが医療系の発を覚えてくれれば契約する理由になるし、もし彼が困ることになって俺に頼ってくる可能性もある。一番あり得るのは旅団がらみだとは思うが、伝手を太くして、もしかしたらクラピカとも似たような話をしてくれるとありがたいとは思う。もちろん模範解答をくれというなら今直ぐにでもピッタリの能力を考えるけどな。

 

(あ……今更ながらに思いついたが……ノヴのマンション。もしかして出入り口の全くない、独立した個室しか作れない制約なんじゃないか? それでコストを思い切り安くして、それぞれの部屋をワープさせる二つ目の発で扉を作れば良いんだ。放出系なら難しくないもんな)

 

 今まで、属人的な条件で拡張したのだと思った。

 

だが、レオリオに対する模範解答として『現場の手術室』と『拠点に置いた手術道具置き場』の二つを用意して、ワープするという方法ならばノヴのマンションも簡単だと気が付いたのだ。それこそ『生物は移動できない』とか言うルールを手術室にあるテーブルに着ければ、そこに手術道具を転送するのは簡単だしな。そして、その発展形としてノヴは『シンプルな念空間同士をワープで繋いだ』ではないかとアイデアに至ったのである。悔しいので後日、再調整で使える部分があれば自分も組み入れることにしよう。

 

「難しい話はおいて置いて、あれからどうしたんだ? 最初に言ったが俺の方は変装を解いて、カキンに戻って色々な事業に手を染めたが」

 

「おう。キルアの故郷のククルーマウンテンまで入った話はしたっけ? あそこで体力付けながら待っててよう……」

 

 流れで話すべき順番が前後してしまったが、仕方がない所だ。

 

誘導の方は上手く行ったと思うので、その辺のアドリブは上手くできたと思っておこう。レオリオが飛びつくような条件など出せないし、もしゴンが借金を返せなかったら頼むと言われた場合は、捨てたと思える金までを渡すだろう。昔から友人で居たいやつとは金の貸し借りをするなと言うし、捨て金までと決めた上で、キルアが仕事をするから依頼をよこせと言ったら……まあ考慮するぐらいである(ゴンがさせないだろうけど)。

 

「なるほどな。おそらくだがその扉には、構造を把握させるための仕掛けがあるな。人間はレールと車輪があれば素人でも二トンは動かせる。念使いならばその数倍行けるだろうから、修業を兼ねて重い荷物に挑ませ、頑固に押し切っても良し構造を把握して楽に動かしても良しってところだと思う」

 

「だと思うだろ? これが無茶苦茶な重さだったんだぜ」

 

 そんな感じでククルーマウンテン編の話を小耳に入れておいた。

 

もちろんレオリオにだってプライバシーの概念はあると思うし、喋ったら殺されそうな話は控えている筈だ。実際に話してくれるのは面白いエピソードばかりで、参考になる話はまるでないしな。

 

「それで9月1日に再会しようって話になったんだ。お前もどうだ?」

 

「そうしたいところなんだがな。生憎と実家の絡みで任侠の所に顔出しが要るんだ。下っ端組織とはいえこれでも二代目だからな」

 

 言いながら俺は人差し指で自分の頭を指さした。

 

物を観察したり、アイデアを貸したり、そんなレベルで良ければ協力するという話である。それ以上は気やす過ぎるし、試験編でもそれほど仲が良いわけでもなかったからな。あくまで『キルアの問題で共に声を上げた仲間』として気に掛けて居るレベルだ。レオリオにだって知識だから話したが、医者の伝手を紹介しようとは告げてない。そういう意味では気軽に誘ってくれるレオリオは気の良い男だ。

 

「任侠ってことはマフィアがらみか? そりゃその歳で商売してるわけだぜ」

 

「その分、何もしてない奴に儲けをもってかれるからな。1日だって他所の組が上納した品を、欲しいなら買って良いってばかげたオークションだよ」

 

 結局、この日はここで分かれた。

 

俺は1日に向けて代理人を手配し、出点リストのうち何が欲しいか、予算は何処までかを簡単に決めておいた。うちの組員が参加するかは自主性に任せたが、予算の規模を聞いて青ざめた様子を見ると安いので何百万・何千万という段階で萎えたらしい。まあ、本当に欲しい物があれば予算のワクを上げるし、カチョウやフウゲツが頼んでたら自分で行きかねなかったけどな。




 という訳でレオリオとの会話プラス誘導と考察。

彼が医療系の発を覚えてくれれば助かりますし、三日か一週間保たせてくれればバッテラさん達も救われるはず(傭兵がゲンスルー倒して終わるので)。

●キルアのオーラ知識
 あれは意図的な物でしょう。余計な事を覚えさせたら駄目みたいな。
歩法と爪と各種訓練だけで何とかしてたので、余計なことをせずとも十分。
お菓子を具現化するとか取り寄せるとか覚えても困るし、ダブルみたいな例もありますからね(キルアなら上手く使いそうだけど)

●レオリオ向きの発
 普通に切開無しで手術とか、オーラを飛ばして回復するベホイミ見たな回復とか、傷を自分が受け取るとかかな? もちろん手術室を念空間に作って、自分の家の棚から道具や薬を取り寄せるでも良いですけど。あと、地味に操作系で麻酔や、強化と操作を混ぜてスピード種々で患者の体力が無くても速攻で終わる手術とかが良いかもですね。

●ノヴのマンション考察2
 無茶苦茶コストの低い念空間を作り並べます。
それぞれの空間は出入り口が無く、また空間同士が重なったら壊れます。
この状態で、念空間と繋げる第二の発があれば、割と簡単に大きくできそうな気がします。デメリットは仲間が自分で出難い事。後は迂闊に増やすと、空間把握できずに壊れるとかですかね?

とりあえず、次回は作中内の9月1日になります。
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