インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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あらゆる覚悟を決めろ

「なんで参加しねえんだ? 功績をかっさらわれちまうぞ」

 

「無関係な問題というのは見逃してこそ利益になるからだ」

 

 様子見だった一日目から見事に旅団が事件を起こした。

 

その後は空を飛ぶ気球を追い掛けてマフィアの兵隊が動員された。俺たちも要請には逆らえないので従うのだが、例によって『お前らはすっこんでろ』と功績を挙げにくい後方に配置されていた。

 

「あの数だぞ? チャカだけじゃねえ大物も用意してやがった」

 

「あの数の念能力者だぞ? しかもあの布陣で相手になる訳がないだろ。今はまともな戦力と合流する方が先だ」

 

 メンツと功績争いもあって、兵隊たちは我先に戦いを始めている。

 

せっかくスナイパーライフルもバズーカも用意してあるのに、数に任せて悪い意味での適当に使っているのでどうしようもない。前衛であるウヴォーギンではなく、後ろの方で見守っている他のメンバーに挑めば割りと危険はあったはずだ。まあ、その為に戦闘担当が何人か残ってるんだろうが。

 

「嘘……だろ。バズーカを止めやがった……」

 

「攻防力の比重を移した凝か堅でもしていたんじゃないか? 並の強化系でも9パラを止める位だ。極めてる奴ならあれくらい行きそうな気がするな。もし能力者が介入する機会を伺って居たら、攻撃や目にも必要だから、ただじゃ済まなかったはずだぞ」

 

 ウヴォーギンが頑丈過ぎて、念使いの防御力が誤解されることになる。

 

だが、シチュエーション的に現時点での戦いは、一般人との一方的な虐殺なのだ。攻防移動で防御力高めの凝を行ったり、堅でガードを最大値にして戦い続けたとしたら、あの不死身さは納得できる。どちらかと言えば今は問題ないと判断した、『ウヴォーギンの戦闘勘』の方が凄いというべきだろう。

 

「お互いに新参の待機組は暇でつまらないな。手を組まないか?」

 

「……どこの組の者だ? 話はそれからだ」

 

「あいつらにハンターが居れば組員の顔を調べられるのを承知で言っているのか? だがここは譲歩すべきだな。カキン・マフィアと答えておこう」

 

 戦闘を眺められる場所で、オーラの反応を見れば場所は判る。

 

思えば陰獣が真っ先に此処にきたのは、オーラの反応を手繰ったのではないだろうか? 『余計な首を突っ込むな』みたいなことを言ってたと思うが、予備戦力は重要だ。だから追跡や足止めくらいには使えそうな連中を見繕い、自分たちが先に出るが、そこで待って居ろくらいの言葉を投げたのではないだろうか(系列が違うから命令権が無いだけの可能性もある)。

 

「ちっ。臆病者め。ノストラード組だ。組むと言ってもあの強さだぞ?」

 

「相性次第じゃないか? 操作系で遠距離から操れるなら即終了だし、放出系で爆薬を転移させられるなら、凝をしてない時なら大怪我くらいは負わせられるだろうさ。というか、そもそも壁役のあいつよりも気球に残ってる奴の方を始末するべきだろう」

 

 向こうの頭らしき奴が悠長に話しかけて来るが、まだ陰獣は来てないのか?

 

そうなら本気の殺傷戦闘で勝てるのでは……と思ったが、入れ違いで戦闘が始まってしまった。もっと早くに来れたら運命が簡単に変わったのかもしれないが、戦闘が始めてからではないとお互いの配置が判らないので仕方がない。こいつらとは系列が完全に違うし、さっきまでは人間が密集してたからな。

 

「そうはいかんさ。連中が奪ったお宝を取り返さにゃならん。輸送担当の能力者が別に居るみたいだから、何処に運んだかもな」

 

「それなんだがあいつらも知らないと思うぞ。オークション前に大きな具現化系の反応を感じた。放出系じゃなかったし……おそらく、制約付きの強力な念空間で移送したんだ」

 

「それは本当なのか!? 系統の確認なんぞ、そんな事が可能なのか?」

 

「確証はない。だが、そこで死んでる連中は無駄死にだと思えるくらいには」

 

 話している間に兵隊たちは壊滅、陰獣たちが向かったのが判るくらいだ。

 

この話を陰獣に伝えることが出来れば、ハッタリであろうと向こうの知識で答え合わせをさせられただろう。梟の能力を誰かが思い出せば、それだけで話が変って来るものな。思えば……十老頭に挨拶させられた時に旅団の話が出来れば良かったのだろう。だが、そもそも発言権なんか無かったし、信じてもらえなかったに違いあるまい。

 

「フカシやがって。そんな事が出来る訳が……」

 

「その男とはハンター試験で出逢った。少なくとも無意味な嘘は吐かない」

 

「援護射撃助かるよクラピカ。だが、俺の事はもういい。『見た』感じ、仕掛け始めたんだろう? 集中力を保ってくれ」

 

 言い争いになりそうなところでクラピカがフォローしてくれた。

 

しかし、凝を怠らなかった結果、クラピカのオーラ量が変わって居るのに気が付いた。鎖自体は陰を掛けているみたいだから判らないが、直接見れば判る事もある。そして、この言葉自体がクラピカの援護に対するフォロー返しだ。

 

「そっちも車を何時でも動かせるようにしておいてくれ。一人拉致ったら逃げるぞ。それとこいつは尋問系の発が使える、功績はそっちが六でこっちが四ってのはどうだ?」

 

「七三なら良い。だが……本当に出来るのか……あんな奴を……」

 

「戦い方次第と言ったろ? 操作系が居るなら問題ないってな」

 

 という訳で遅れながらも介入に成功。周回遅れで無いだけマシだろう。

 

陰獣の戦いが始まり、あまり余裕はない。決着がついたところでクラピカがウヴォーギンを連れ去るだろうから、これ以上は余計な事をしなければ良い。

 

「連中も余った車で追い掛けて来るだろうから無線は使うなよ。リンチ、抜くべき情報は人数とそいつらの発だ。そこまで抜けたら、本当に奪えてないかどうかと連中の『今』のアジト、こっちは状況次第で幾らでも変わるからな。そこから先は任せて一度下がれ。七三ならそんなものだろう」

 

「はあ……コキ使ってくれるぜ。ま、命を懸ける程の報酬じゃないな」

 

 簡単な指示をしたところで撤収準備に入る。

 

リンチが素直に頷いているのは、これが『他所との契約』で『他所の戦い』だからだ。俺へ尋問系の発を使ったという非礼の見返りに協力させられ、そしてマフィアン・コミュニティのメンツの為に戦いに参加させられている。血が上り易いから戦いに参加したがったが、本来は無関係な話だから冷静さが取り戻したようだ。

 

(さて、ここまでは功績ドロボウだ。クラピカに便乗しただけで俺は何もやってないしな。原作情報を整合性がある範囲で利用しただけだし、凄いのは半年で旅団を倒せるレベルで鍛えたクラピカの思いだ)

 

 正直な話、俺は何もしていないので誇るべきところはない。

 

強力な念の発動を感知し調べる方法を編み出して、配置や時間など他の理由込みで整合性を付けたのは俺の努力である。だから恥ずべきほどではないが、これでは自分が誇るべき無いようにはならないだろう。ウヴォーギンは小便をして掴まる隙を作ったのも陰獣のお陰だし、情報を抜くのもリンチの手柄であって俺の手柄じゃないものな。連れて来た功績があるとしても、精々がさっきの戦いの見物料くらいだ。

 

「俺だ。ノストラード組が盗賊の一人を捕まえた。だがこっちに情報を抜く能力者が居る。向こうにも居る可能性が高い。尋問用のヤサに忍び込んで来るだろう。可能なら生き残りの陰獣を回してくれと報告してくれ、来てくれたら迎撃が出来るとな」

 

『了解しやした』

 

 幻影旅団は実に有能だ。無線を使うなと言っても意味は薄いだろう。

 

携帯でホテルに繋ぎ、そこから一時報告を上に送らせる。全体のマネジメントを行い、可能な限りスムーズに行かせる方が良いだろう。その上で、第一次襲撃メンバーを叩くのが俺の目的である。一人を倒すか、出来れば二人以上の迎撃。そこまでやれば満足できるだろう。集団戦で全員捕まえるか倒せれば完勝というところか。

 

「俺だ。尋問中に済まない。何処まで抜けた?」

 

『簡単な能力くらいだ。そこまでホイホイホイ詳しい事を抜けるかっての!』

 

「そうか。適当な奴に代わってくれ。ボーナスは弾むから適当に頼む」

 

『あいよ』

 

 判っている情報を元に作戦と重点目標を組み上げる。

 

メモ用紙を取り出し、連中の能力を含めた情報を電話越しに聞き出していった。今のところ原作と同じだが……その情報を脳裏に浮かべると、何となく理由が見えて来た。おそらく襲撃に必要なメンバーの能力と、残って居た方が良いメンバーの能力の差だろう。判り易いのは団長とその護衛に二名、ここにはヒソカは含まれないという条件だ。こういうのを考察するのが俺の趣味だし、整合性を見い出すのが俺の得意技と言える。

 

「襲撃組は判った。残りは……なるほど。やはり記憶を吸い出す奴がいたか。という事は条件次第で、記憶情報をブロックできるかもしれん。ここは念空間に仕舞える奴の捕獲を重点目標にすべきだな。次点で操作系の処理、残りも捕まえたいが後回しにして処理すべきだと報告するとしよう。それとホテルは別名義で抑え直した方がいいぞ」

 

「なあ。オレらは戦わなくて良いのか? 念使いの人数が居れば……」

 

「死にたいなら構わんぞ。戦闘担当を抑えるのは俺だからな」

 

 着いて来たNGL組が尋ねるが断って置こう。

 

彼らもリンチと一緒で借りて来たようなものだし、死んだら責任問題になりかねない。それだけの報酬を十老頭経由でもらえるとしても、十老頭は死ぬ可能性が高いし、心象というのは別物だ。仲間を殺されて気分は良くないし、そもそもカキンやNGLに残ってたら死ななかったはずなのだ。連れ出した俺に対して心象が良くなる筈もない。

 

「そうだな。もし気になるなら無線機を始めとしたちょっとした荷物をあちこちに置いてくれ。後はこっちで利用する」

 

「それくらいなら……なあ?」

 

「それ以上は旅団が来ないでも報酬をくれるなら……かな」

 

 こうして簡単な作戦を組み上げておく。

 

メモ用紙に作戦を描きつつ、やるべきことを見定めた。マフィアの残存戦力を宛ててシズクとシャルナークを抑えてもらおう。狭い場所ならフランクリンはフォローに回るだろうし、戦うのは戦闘組だけだ。この内の誰かを倒し、迎撃自体は成功させるというのが理想的だろう。フランクリンが本気になってビルを壊したり、シャルナーク達が突破して来たら? そこまで責任は持てまい。だって一人でも格上だものな。

 

(……いや、待てよ? 格上相手に勝つ気でいる? 馬鹿か、俺は! ここは考え方を変えるべきだ。奴らの奪還計画は通るし、邪魔もされると考えるべきだ。その上で最大限の成果を上げるべきだな。つまり、狙うべきは偽りの退却戦。連中を分断して狙える奴を討つ!)

 

 今更ながらに自分が思い上がっていたことに気が付いた。

 

こちらが遥かに強いとか、ゲームでリセットできるわけではないのだ。少なくとも、戦闘に入った段階で相手も全力を出すだろうし、戦えば生死に限らず遺恨も残る。恨みがあって命懸けのクラピカならばともかく、俺の覚悟なんて大したことはない。組の下っ端が念を教えても大した事が無いのと同じで、まともな成果すら挙げられない可能性はあった。ならば、もっと確実に、もっと真剣に戦うべきだろう。

 

(格上との戦い……それも複数前提。これはフル・オプションで行かないと失礼だな。そもそも勝てるかも判らん)

 

 ナックルとの戦いは流儀というか、お互いの生存が重要だった。

 

戦闘を目的としていない汎用系の能力で、戦闘を前提にした連中に勝てという時点で無茶なのだ。ここは撃退を目指して必要な人物の生き残りが優先、駄目だと判断したら即撤退くらいが確実だろう。そんな状態で、やってはいけない戦術手段とか考慮はしていられまい。あえていうならば、制約と誓約の問題で武器や念空間越しの奇襲が出来ないくらいである。

 

(念能力者の戦いに道具を使うのもどうかと思うが、場を整える為にはそれも止む無しだな。遠慮は無し、同情も無し、ここまで来たらこっちも全力で戦うだけだ。戦うのを嫌がるなら最初から出て来なきゃいい)

 

 戦いに向けてまずは覚悟を決める事にした。

 

転生前は読者だったこともあって、ファン意識もあれば、旅団の過去編に思う事もある。特にカキンは情報の流入が古くて、カタヅケンジャーが入って来たのもずっと後からだったからな。だが、ヨークシン編に介入すると決めた以上、真剣に戦わないと嘘だろう。向こうは容赦なく殺しに来るのだから、本気で戦わなければ馬鹿なだけである。

 

そして、ノストラードの方からクラピカを経由して情報と作戦共有があったのを皮切りに、この日の第二戦が決まった。それは俺たちにとって本当の戦いの始まりだろう。




 という訳で旅団との戦闘開始。
クラピカたちと合流するところから。というかここまで機会がないです。
そこから暫くは、原作を覚えてる → 状況証拠を重ねるにシフト。
周囲が話を聞いてくれる段階になって、自分の為の戦いを始める感じですね。

●ウヴォーギンの強さ
 真面目な話、堅過ぎなので基本値が蟻に準じて高いのと後は凝・堅かと
あの戦闘時に最初は念使い居なかったでしょうし、防御中で十分勝てる。

蚯蚓の不意打ちが決まったあたりから、適宜に流して配分したならば
不意打ちパンチが少しだけ効いたのも、その後に山犬とかが貫通したとか
その辺の理屈が分かるのです。30・70 → 50・50てな感じで。

●マフィアの連携の無さ
 真面目な話、梟が持って行った話とか、陰獣が一斉に動けとか
そもそも前衛のタンクに攻撃を集中するとか、変な話ですよね。
お宝が持ってないなら、遠慮なく後衛から潰していけば良い話で
陰獣が勢ぞろいしてるなら、最強のタンクを先に潰すのも判る。
でも、割りと前衛向きの四人で戦闘重視なのは山犬くらいなので

まあ、作中の都合であるのは仕方がない所ですし
十老頭同士が決して連携取ってる訳でもなく、知らせる義理も無い。
SSでも様々なご都合を通す以上、この辺りは全部通して居ます。

●なんで最後にグダグダしてるの?
 元読者として勝ち筋を妄想するのと、当事者に成った差ですかね。
あとは勝てると、のぼせ上った頭よりも、冷静になって方針固めたいからになります。
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