インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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余分で余計な提案

「俺です、迎撃に成功しました。戦果は八人以上の念能力者に対し、一人を確殺。二人に重傷を負わせました。主力だったノストラードは若頭だけではなく操作系能力者が既に殉職したらしく、これ以上の情報は抜き取る事ができなかった様です」

 

 真実のみで嘘を吐き通すことにする。

 

情報を抜いたのはリンチだが、その事を告げても旅団の抹殺対象にされるだけである。そこでオークション時に死んだヴェーゼの事を匂わせて終了する。詳細な報連相なんかしていないし、ノストラード一家がウヴォーギンを捕まえたのは本当だし、その時にリンチを付けて情報をついでに報告したのも嘘ではない。その上で、ノストラード一家の生き残りが今回の報告を受けて、ワザワザうちの功績を報告するとは思えなかった。

 

「死体の件ですが、申し上げ難い事に連中は流星街出身者が多い模様です。倒した大男も同様で、必要以上に晒すと危険だと判断しました。主犯を一騎打ちで倒したと通達するのがよろしいかと。ちょうど郊外の戦闘でしたので目撃者も居ないそうです」

 

 こちらは完全に嘘ではないし、死体を晒すと報復されるだろう。

 

何しろ幻影旅団は流星街を守る為に結成した自警団みたいなものである。仮に『オレたちはただの半グレだ! 流星街なんぞ知らん!』と本人たちが言ったとしても、住民の方で放ってはおくまい。

 

「……はい。後はお任せします。流星街やゾルディックにコネクションはありませんので」

 

 ここで襲撃事件はいったん様子見、流星街の上とマフィアが交渉するだろう。

 

こちらが被害者であるが付き合いもあるから先に手控える。次が無ければ追及もしないが、また襲って来るならば旅団はぶち殺す。禍根であるとイチャモンを付けるならば、そちらで止めてくれ……。そんな感じの交渉が始まる事だろう。もちろん、本当に攻めてきたらゾルディック家にでも依頼を発注するのだろう。

 

 

「何で……オレらを売らねえんだ?」

 

「あんたらに敬意はあっても害意はないと言わなかったか? 信じられないなら、悪いが最悪を想定しているとでも思ってくれ。ここで手打ちになって欲しいが絶対じゃない、お前たちと引き替えに見逃してもらいたいからな」

 

 頑丈な分だけ体力があるのか、隔離したフィンクスが尋ねて来た。

 

フェイタンの方は死にかけトンビで放っておけば死ぬだろう。男にマウス・トウ・マウスで人口呼吸をする気はないので、フィンクスが説得に応じなければ死亡確定である(生きていても記憶障害は残りそうだが)。

 

「いや、いい。殺せ、足手まといにゃなりたくない。嫌なら自分で始末をつける」

 

「……判った。なら鎖使いに条件付きで引き渡す。あいつが、復讐者がその条件を呑まなきゃ楽に死ねるだろうよ。その条件をあんたらが呑まないのも自由だ。大男は一騎打ちでの敗北後に『仲間は売らん』と言ってアッサリ死んだらしい」

 

 旅団をリスペクトしていると言っている建前上、話を受けるしかない。

 

クラピカが頷かなければ死、チェーンの課した制約をこいつらが受け入れなければ死、俺が責任を持ちたくないというよりは、クラピカの復讐に俺が口出す訳にはいかないからだ。そして、旅団が結成した理由を俺が告げ口する訳にもいかない。それに例え告げたとしてもクラピカが見逃す理由はないからな。

 

「クラピカ。二つ頼まれてくれないか? 俺も二つ代価を払う」

 

「お前が捕まえた旅団メンバーの事か?」

 

「いや、お前の鎖を二種類使って見せて欲しい。彼らの運命は無償で提供する」

 

 俺はサイフォンでコーヒーを用意してクラピカに勧めた。

 

目の前で抽出できるので毒ではないと判り易い。それと時間が丁度良いので、軽い小話の余興には十分だろう。香り高い豆はこの街のショップで手に入れたものだ。

 

「別に使って見せるだけならば構わないが?」

 

「全力でやると疲れないか? お前だから言うが俺は特質系なんだ。話せば長い上に陰鬱な身の上だからあまり話したくはないけれどね。だからおいそれと使ってくれとは色んな意味で言えない」

 

 ここで系統を告げる意味は、普通は話さない事だからだ。

 

それを打ち明けるだけでも意味があるし、特質系になり易い条件として考察が幾つかある。流星街やカキン王室の様な特殊な環境であるか、念獣などに全てを任せて本人の素質では無い場合などである。話がそれたが問題になるのは、念を奪うクロロが特質系なのもあるだろう。

 

「一つ目は治癒能力。重病人が居てね。一回で治るなら良いんだが、無理そうなんで俺なり他の人間が能力に組み込むべきかを判断する材料にしたい」

 

「理解した。時期次第だが報酬もそこまでは必要ない」

 

「そうはいかん。わらしべ長者をしらないのか? 三角トレードなんだよ」

 

 信義の問題であり、後々問題になるので先に告げておく。

 

確かに人助けではあるし、役に立たない可能性もある。だが、それで俺の方にグリードアイランド参加枠という報酬が入る以上は、安価で済ませる訳にはいかないのだ。少なくともゴンやキルアを袖にする以上は。

 

「報酬だが、上からの報酬であるオークション品を事前に購入できる権利を譲ろう。もちろん資金は俺持ちで、緋の目に予約を入れてある」

 

「っ!? そうかお前も聞ける余地があったな」

 

「否定はせん」

 

 マフィアン・コミュニティ上層部からの報酬は実に渋い。

 

昔、『オプーナーを買う権利をやろう』というミームがあったが、オークションに出る品を購入して良いと言うものだ。十老頭たちへの忠誠心を見せる行為でもあるので、十億ほど払っておいた。高額だが原作の二十九億払って偽物というオチを考えたら遥かに安い。ついでに代理人経由で二億は使うつもりだったのが浮いたのもある。それに万が一、バッテラの恋人が治癒出来たらそんな価格では済まないだろう。

 

「競り合いで高騰しないとしても……高額過ぎないか?」

 

「これから話をする呼び水になるし、そもそも人の事情に首を突っ込む事への詫びさ。そのくらいはしないと俺の気が済まない。クラピカが俺の事情にとやかく嘴を突っ込む場合はそれなりの覚悟を決めてもらう。俺がお前にそう思うんだ、お前が俺に対して怒りを覚えると判断するのは当然だろう?」

 

 クラピカは喉を鳴らさない。報酬ではなく遺品の話だからだ。

 

詫び料として通貨扱いなら激怒するだろうが、人様の事情に首を突っ込んだ詫びならば許容範囲ということだろう。それにこれから始まる面倒事に関して、ハードルが上がるということでもある。

 

「そう言う事なら判った。二つ目は?」

 

「先に報酬の話をしよう。これはおそらく、第三の頼みに派生する。クラピカがこれから緋の目を集めていく過程で、絶対に最後まで判らない場所の情報だ。厄介極まりない相手で、おそらく二年か三年したら俺の敵になる」

 

「カキン王室……いや、王子の個人所有か」

 

「そうだ」

 

 どうやらダルなんとかさんから話を聞いて居た様で助かる。

 

カキン・マフィアは身内で争う救えない連中だが、それでも平時は秩序と融和があるし、更に王族殺しは重罪だ。しかし、継承戦で殺し合う事になる間柄であれば、表向きの実行犯を用意したり、あるいは諸共に死んだりそもそも行方不明にすることがあるのだ。

 

「その証拠はあるのか? 仮にも王子……まさか人体収集家か」

 

「そうだ。その王子はあんたのボスが十倍は可愛く見えるよ。信憑性に関してはアンダーグラウンドに人体収集家がコレクションを見せびらかす場所があるから、数年内に勝手に自慢する筈だ。おそらくは継承戦が発表された前後だろうな」

 

 そのアングラサイトを作ったのは、収集家を旅団が狩る為と言ってやりたい。

 

だが、それは自己満足だ。被害者だからと言って他に被害者を作って良いわけがない。その為に幻影旅団が人殺しを重ねたのであれば同罪であるし、仮に真犯人が居て別の組織から奪う事で、盗賊の極意を進化させるための『世界級のお宝』であり『人体収集サイトの価値をでっちあげる為』であったとしても俺が口出しして良いはずがないだろう。もし告げて良いとしたら、原作で見た『皆殺しとかアホの発想だな 世紀末かよ』という言葉をフィンクスがクラピカ関係者の前でした時だろう。

 

「……大概の事は約束しよう。もちろん第三の共闘案件も含めてだ」

 

「今から話す内容を聞いて、やっぱり嫌だと断っても先ほどの報酬は渡す。それだけ今のお前には失礼な申し出だからな。テーブルを蹴って出て言っても非礼だとは思わん」

 

 ここでサラリーマンよろしく名刺の裏にメモをしてテーブルに置いた。

 

クラピカはそれを観もせずに胸の内ポケットに入れたが、本心では今すぐ見たいだろう。それをしないのは、俺がここまで段取りをしたことに起因する。これだけ前置きをする以上は、彼にとって受け入れがたい内容なのは間違いないからだ。

 

「あの二人に約束を順守させて解き放つ気か!」

 

「そうだ。断っても構わない、あの二人が約束を守らず死んでも構わないし、目的を果たせずに死んでも構わない。最低でも二年は必要だから、延長が無理なら殺しても構わない。どちらにせよ俺は先ほどの報酬を払う。迷うレベルならば追加で情報なり報酬を用意しよう」

 

 流石にクラピカは理解が早くて助かる。

 

この時点で彼が許せない内容は、ソレ以外ないものな。俺はさっさとこの話を終わらせたかった。これから旅団との第二戦もあり得るのだ。いつまでも抱えているのではなく、不良在庫として処分するなり、人的資産として投入するべきだろう。

 

「……内容による。くだらない話ならここで終わりだ」

 

「外来種を捕まえてビオトープを作ろうとする馬鹿が居るらしい。俺は海洋資源を探索しているが、ヨルビアンの南からバルサ諸島に掛けて、自然界では小型の筈の生き物のパーツが人間大で見つかった。おそらくは証拠造りで実際にはNGLへの持ち込み、ゴルドーや流星街での実戦投入が目的だろう。予想される危険度はBランク、良くも悪くも小国なら滅びるレベルだな」

 

 俺があの二人の処分に迷った一番の理由はこれだ。

 

どうせ手加減しても気に入らなきゃ殺しに来るし、報復でも殺しに来る。何なら交渉を持ちかけても駄目だろう。原作通りに進んでパクノダ経由で結成当時の思いを振り返るまでは、旅団メンバーは恐れられるための演技が身に付き過ぎて話の通じない半グレ状態だものな。

 

「……少し考えさせてくれ」

 

「今すぐここで結論を出す必要はない。向こうの戦力を考えたら長くても二日以内に決着は着くだろう。矢面に立ってるのはノストラードだ、何だったらそっちで交換材料にしても良いしな。この仮アジトに置いて行くから好きにしてくれて構わない。それこそ怒りに任せるなり、もっと厳しい条件を付けるなりな」

 

 足手まといになりたくないから死ぬ。だから人質の価値はない。

 

だが、それを言い張れるのは俺が他人だからだ。ウヴォーギンの反応からして復讐されて死ぬならそれはそれで本望なところがあるだろう。その上でクラピカが苦渋の決断で、仲間を救いたいから復讐心は捨てる。と言えば、俺と違って応じる可能性はあった。とはいえ余分で余計な考えだ。蟻編が無くなる名案だと思えばこそ提案したに過ぎない。




 今回はフィラーというか閑話休題というかオマケ回です。
途中で字の分に書いてますが『あれ? これって蟻編終わらない?』と
コンボイ司令官が『私に良い考えがある!』と迷案を出した感じ。
原作知識を使うのが好きな人も嫌いな人も居ますが、どうせ使うならと思いたちました。

このアイデアが頭から離れなかったので、アンケートにします。
どのみちヨークシン編までしか書いてなくて、これから書き溜めなので
生きていても彼らは出ることはありません。アンケ次第でナレ死します。

・女王の漂着物
 後三カ月先ですが、パーツ自体はもっと前の筈なので。

・身重の石
 教えたら一族再興できそうな気もしますが……セクハラになりそうなので。
あと、復讐とか考えているだけで、そこまでやって子供を増やしたくないでしょうしね。

フィンクスとフェイタンはどうなる?

  • クラピカが殺した
  • ユキが約束通り殺した
  • 迷ってる間に自殺した
  • 渋々、約束を受け入れてNGLへ
  • 除念待ちしながらNGLへ
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