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「お、ソレなんのアイテム?」
「聖騎士の首飾り。殆どの攻撃スペルの他に呪いも弾いてくれるから便利だぞ」
あの後、適当なBランクを何枚かと山賊エリアのカードを総ざらいした。
気が付かないモンスターやイベントもあったかもしれないが、おそらく殆ど手に入れただろう。もちろんBランクのカードは堕落のスペルを使って聖騎士の首飾りに替え、速攻で身に着けたという訳である。キルアと再会したのはもちろん山賊のイベントを最後まで熟し、奇運アレキサンドライトを手に入れた訳だな。
「良いじゃん。そいつがあればアントキバで取られなかったのに」
「月例大会か? 確かそのうち賞品に出ると聞いたことがあるな。俺はコンボで手に入れたから知らんが、情報を売り損ねたとか言って悔しがってたぞ」
ゲームをする前に情報交換はしようと言っていたのでちゃんと教えておいた。
ただ、ゲームを体験する意味でも月例大会で手に入れる方がお勧めだろう。冬休みになったらカチョウとフウゲツを誘っていくつもりではあるが、さすがにゴンキル組には勝てる自信がない。
「へー。そんな事も可能なんだ」
「トランプで自分の欲しいカードと相手が欲しいカードの価値が同じじゃないだろ? 一部のスペルカードに価値を落す変換スペルがあると知って、必ず有用なカードが組み込まれてると思ったんだ。この聖騎士の首飾りはDランク、呪文もC。今のスペルカードが出回らない状態でも何とか手に入れられる。逆に言えば月齢大会で奪いに来る奴はまず居ないって話しさ。その場で即座に使う事も出来るからな」
「そりゃそうだ」
この時点で最低限の情報は渡して置いた。
即座に取りに行かないのを見ると、まだ修行中なのだろう。ビノールトの受け渡しやら何やらで、要領の良いキルアが抜け出して来たのではないだろうか? 俺が外に出るタイミングを伺っていると伝えているので、その方法を聞きに来たのかもしれない。
「ビノールトという奴はどうした? 外に出る方法として港で所長に金を払うか倒すかしないといけないから、そいつの戦闘力次第で金を調達する必要があるんだが」
「あー。その件な。ワリィ、止められなかった」
「はっ?」
要件はさっさと済ませておこうと話を切り出した時……。
キルアが申し訳なさそうな顔を浮かべた。素直な部分もあるとはいえ、暗殺一家で育ってポーカーフェイスを教え込まれている、あのキルアがである。何のことか一瞬戸惑ったのは仕方があるまい。この後で咄嗟に動けたのは常日頃から背中には気を付けて居るのと、他者の念傾向を調べる分岐技をレーダー代わりに使っていたからである。まあ、それが逆に話をややっこしくさせた可能性もゼロではないのだが。
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「そこのあんた! どんな企みをしてんだい? とっとと白状しな!」
「このお嬢さんは?」
「ビスケ。オレたちの師匠だよ」
俺の事を悪党だと思っている。そんな感じの表情が二人から伺えた。
ただし、キルアが『だからどうした。オレは何人も暗殺したことあるぜ』という程度なのに対し、ビスケの方は本気で睨んでいるという面倒な状況に陥ったのである。ゴンが居ないというのが修業中だと思い込むとか、完全に原作知識に引きずられた格好だろう。俺という異分子が行動している時点で、原作からズレてきているのだから、警戒していなかった俺が悪いとも言える。
(ここは『その歳で師匠枠とは、天才のお嬢さんだ。美しいだけじゃ無いのだな』とか『その可愛らしい見た目でか? 怪我をする前に君の様なお嬢さんはおうちに帰ってアイドルでも目指すんだな』とでもいうべきだろうか? というか、何でいきなり疑われているんだ?)
「図星だから何も言えないみたいだね! 今から吐かせてやるから覚悟しな!」
「すまないが模範解答をくれないか? 戦いを挑まれる理由が分からない」
考えをまとめる前に矢継ぎ早に言葉と闘気を浴びせられて戸惑うばかりだ。
思えばそれが狙いだったのかもしれない。俺の性格を計り、本当にキルアやゴンと近づけても良いのか? それだけなら別に放っておくだろうが、今は二人を育てて居る最中であり、オカン・モードなのも影響しているだろう。そしてビノールトが自首する事を彼女の強さに対して申し出たならば、面倒を見るべきなのはビスケであろう。それを利用する気マンマンのマフィアの幹部が一人? どう見ても役満です。
「あんた喧嘩を売るなら買うだわさ! というか無関係ならさっきのオーラは何さ! どんな薄汚い計画を考えているか知らないけど、あたしの目の黒いうちは容赦しないよ!」
「……友人がクルタ族というだけで『薄汚い』呼ばわりされたと苦笑していたのを思い出すよ。俺はカキン・マフィアに所属しているが、それだけで罵倒されることかな? いや、カキンの常識は世間の非常識ともいうから百歩譲ろう。身内で殺し合う継承戦の為にどんなクソな事が行われるか知ったら、俺も否定はできないからな。ただ、探知用の発に対してそこまで言われる筋合いはないと思うがね。変化系のお嬢さん」
やはり探知用のオーラを問題視されたらしい。
もちろん俺がカキンの準王族だから、血の臭いをさせていてもおかしくはない。というかカルトや犬の……チャンピオン(だっけ?)が他人の系統を確認する発を使っていたはずだが、やはりアレも人によっては喧嘩を売る事なのだろう。そう思えば迂闊なのは俺だし、知識だけで体験ではないという欠点が出たという事かもしれない。次から使う時はもっと気を付けることにしよう。とはいえ記憶に引っかかるワードを使ってくれたので、そこから反撃しておくとしよう。
「あんたあたしの能力を……」
「これでも何時襲われるか判らない身でね。それとヨークシンで幻影旅団とやりあったばかりで報復が怖いんだ。用心するのは当然の事だろう? それともこれからゲーム内で大規模な虐殺が行われることを予想して、それを放置していることを問題視しているのか? それに関しては先が見える奴なら誰でも想像し、黙認する事だろう? 例えばツェズゲラも、ひょっとしたら君も」
「むかちーん! あたしはあんたとは違うだわさ!」
他人の能力系統をバラすのは怒らせるリスクがある。
だが、話を聞く気のない相手に一定以上の長さの言葉を吹き込むには必要な事だった。幻影旅団と戦ったのは本当だし、もしボノレノフが身内扱いだったら報復を受ける可能性もある(シズクとコルトピは流星街出身だがボノは微妙だと思うが)。そしてハメ組に限らず、その内に虐殺が起きると想像するのはそう難しい事では無いだろう。というか……ビスケも想像していたからこそ、この反応なのだろう(情報が足りないから手を出さないだけで)。
「図星か?」
「どうやら言葉だけでは足りないようだね。弟子に見せたくはないけど、少し本気で攻める必要があるようさね」
「び、ビスケ!?」
売り言葉に買い言葉、突如として正体を現し始めるビスケ。
驚くキルアの言葉を耳にして、俺は賭けに勝ったことを確信した。ハッキリ言うと、俺を足止めしたり脅かして証言を取るだけなら本性を出す必要はないからな。弟子であるキルアが急展開に驚くほどの状態ならば、ビスケが最初からここまでやる気はなかったことが伺われる。変化系は嘘つきで気まぐれとはヒソカの系統判断評であるが、キルアとの会話を伺い俺との話をする間に気が変ったのだろう。本来はちょっと用心して確認するつもりだったんだろうな。
「それがビスケの能力……変身かよ」
「違うぞキルア。これは具現化系の特質系寄りに分類される、変換タイプだ。普通は若干の身体構造を入れ替え、機械の体に換えたり(変えではない)、服を鎧にする能力なんだがな。ここまで変換するという事は、それが君の願いに直結しているという事なんだろう。華奢な少女で戦えないから望んだのか……あるいはその逆に、鍛えた体よりも少女時代を懐かしんでいたのか。そのくらいの願いで無ければ身につかない奇跡だ」
ビスケから聞いていたのか、俺が変化系のお嬢さんと言ったからか。
実にキルアは良い反応をしてくれる。普段はポーカーフェイスを装っているが、本当に驚いてるときは地が出るんだよな。そういえば『キルアは良いよね。関係ないから』というあのシーンは実に悲しそうだったこと思い出す。悔しさもあるのだろうが、親友だと思っていたゴンにそこまで言われたことがただ悲しかったのだろう。
「ふん。口では何ともでも言える。ならどうするって?」
「降参する。そこまでの願いであるならば、君の本心は純真なのだろう? ならば我々が戦う理由はない。守りたい子がいるから殺される訳にはいかないし、グリードアイランドを譲ってもらって籠の中の鳥であるあの子に自由を知ってもらいたいからゲームから離れろと言う言葉にも従えない。だが、情報だろうがカードだろうが渡そうじゃないか。それで勘弁してくれないか?」
ビスケはすっかり毒気を抜かれた表情でブックという言葉を見逃した。
やはり本気モードであっても心を揺さぶられるのには弱いのだろう。ここから『やっぱりむかつくから一発殴るわさ』とやられる可能性はあるが、山場は越えたと思いたいところだ。
「……さっき言ってた、これから起きる虐殺について話しな」
「それで良ければ喜んで」
一番の懸案事項に自分から首を突っ込んでくれるとはありがたい。
これで彼女が見過ごすようなら俺だけが気にすることもない。遥かに格上のハンターが断念するレベルの不可能ミッションだからだ。逆にアイデアを思いつくならば協力すれば良い。クリアで先を越されるかもしれないが、バッテラの為のトゥルーエンドだけではなく、グリードアイランド編を含めた真のエンディングに辿り着けるだろうから。
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「事件を起こすのはボマーって奴だね?」
「ああ。木を隠すなら森の中、人を隠すなら群衆の中。数十人でスペルカードを独占しているあの連中が一番怪しい。そう思ったが、当て物のコツは証拠や証言が幾つも揃ってからやるものだ。だから俺は先にボマーの発を特定することにした。正確には、制約と誓約の条件を推測する事だな」
「それに当てはまる奴が居たって訳か」
「ああ。しかも連中の古参の中にな」
それから場所を変え、ゴンやビノールトの居るエリアで話し合いだ。
囲まれているようでいたたまれないが、爆弾魔に関してはかなり知られて居るので迷う必要もない。向こうから降ってくれたので言葉のバットで撃ち返すだけの作業だ。後は違和感なく情報を並べ、ビスケがその答えに納得してくれれば良いだけの事である。
「表ルールで五つ程度、裏を含めればもう二つくらい。そのくらいないとまず無理な能力だろう。その筆頭はジョイント型、もう一人か二人。強力な実戦用能力もあるならば二人以上なのは確定だろうな。そして、自らは古参の席に座って安全圏から徐々に内部へ爆弾を仕掛け、アリバイ兼ボマーの名前は外に居る仲間がゲーム内情報を集めながらやってるんだろう」
俺はまず、右手と左手で自分の別の部位を触った。
直接戦闘用ではない爆弾設置に関して、接触する必要があるのはかなり大きなルールだ。確かノストラードファミリーに口づけで相手を操る操作系が居たと思うが、戦闘中にはまず不可能な能力である。それこそウボォーギンに使ったらキスしてる最中に舌ごと食われるだろう。そしてこれは裏ルールで、触った場所に設置できる、ランダムではないから手足を切り落として済ませられない場所に仕掛けられるという裏ルールになる。
「更にボマーという単語をキーワードとする可能性を考え保留した。そこまでやればかなりの制限になる。何しろ真犯人が自分で話を振るんだから、コッソリやる訳には行かないからな。だからこれに関しては半々で次の段階に進んだ。まあ、最終的にソレを頻繁にやっていた奴が居たことで半分くらいは特定できたわけだが」
「なるほど……でも良くそこまで思いつけたね?」
「俺は念空間を作るのにその倍以上のルールがある。問題ない」
この辺の当て物は、チャットで同背後を特定する時のテクニックだ。
話している時に違和感を抱き、あるいは『もしかして●●さんと〇〇って同じ人物?』と思ったとしても、その時点で話すべきではない。話し方は意図的に変えられるので、誤字の特徴の方とか、打ち込みタイミングの統一性、あるいはログイン時間の不自然性などである。仮に項目を十くらい作って、半分以上当って居たらまず本人であろう。そう言う感じでファクターをいくつか用意し、当てはまる条件を並べて特定したと簡単に説明した。
「……あんたの話し方の違和感に漸く気が付いた。嘘は言ってないけど全部は話してない。そうだね? 例えばそうだね、特定したのは制約と誓約だけじゃない。犯人もだ」
「あ、そっか! そりゃそうなるよな!」
「それを連中に信じさせられないのが問題なんだ」
真実だけで嘘を吐くことは可能。ビスケは噓つきの変化系だから直ぐ判るか。
俺は肩をすくめながら自分で何度も考えた案を話す事にした。もちろんゲンスルーであると特定した事ではない。ハメ組にゲンスルーがボマーだと説明しても絶対に納得してはもらえないという話の説明である。
「そりゃまあ、制約と誓約の特定からして推測ってんじゃあ信じてもらえないわさ。しかも外部班が居るんじゃ、アリバイを作るなんて拍子抜けするくらいに簡単だわね」
「秘密のビデオ屋とかいう裏情報を覗くアイテムとか、死者に送れる手紙があるそうだが、まず使ってもらえないだろう。それにおそらく、あれは本人が集めた情報で『死者ならばこう返すだろう』『あいつの秘密はこうに違いない』という無意識の情報を統合するものだからな。証拠性もない。だから俺はあえて助ける義理はないと判断したんだ」
継承戦編でクラピカがダウジングで情報を精査していた。
あれの詳細は覚えて居ないが、おそらく同じ系統の能力だろう。人間と言う者は思わぬほどの情報を入手し、それを処理して生きている。実はヒントを掴んで居ながら見逃すなんてことは珍しくないし、それらを統合して、冷静に判断できるならば当て物は意外と難しくないのである。それこそ詐欺師の話とか奇術師の技には、タネも前フリもあるからな。
「んー。でもさあ結局、その人たちの自業自得でしょ?」
「まあそうだな。俺が首を突っ込むほどでもないし、放置した方が楽だと判断した」
「なら何でユキはそんなに面白くなさそうな顔をしてるの?」
「なん……だと」
此処に来て初めて話を聞くだけだったゴンが尋ねて来た。
野生児であり自分なりの考え方が強いゴンは、こういう時にビックリするくらいに冷徹だ。キルアの様に人死にが当たり前だと思っているわけではなく、ちゃんとした倫理観があるのに関与しないことが多い。おそらくは『猛獣が居るエリアで狩りをするときは注意』という看板を無視した狩人が何人も死んだのを見て来たのだろう。だからこそ、俺はこんな質問をされるとは思っても見なかったし……そして、俺がそこまで悔しがっているとは思わず、気が付いた時には指を自分の頬に当てていた。
「あー~……。何というか、いや、言い難いというか、引用は違うんだがな。どうせ勝負するなら『完璧に勝つ、だろゴン』という気分かな。俺にとってグリードアイランドはもうクリアしたも同然だったんだ」
「なるほどね。それでたくさん人が死んじゃったら負けみたいだって思ったんだ」
「そう言う事だな」
もし生前の気分で言うならば、Sランククリアだけどノーミスではない。だ。
可能な限りのことをやったし、難しい問題を途中からかかわった癖に魔法使いのように解決して見せた。だが、決して人死にが無くなるわけではない。ハメ組が死ぬことは織り込み済みで、転生者が他に居ても誰もが投げ捨てる条件だから見て見ぬふりをしたに過ぎない。ここに来る途中でも、ビスケも匙を投げたら仕方ない。と思い込もうとしたのだ。
「でも信じてくれないんじゃ無理だよね~」
「そうだな。それが一番難しくてな」
「ちょっと待った! さっき何気に凄いこと言わなかった? もうクリアしたも同然って」
「ああ、そうだな。このゲームを作ったジンたちのプロフィールを完成させた段階で、ほぼ条件は見出して居る。後はパズルみたいなもんだ」
以前にツェズゲラへ渡したレポートをもう少し詳しくした内容を話してみた。
原作で判明した一坪海岸の人数条件があり、その逆で一坪密林は一人である前提であろう。その上で他に条件があるとして、関連するカードを集めて居たら緩くなる可能性があるかないかだな(例えば一坪海岸は20名スタートで、条件を揃えると減るみたいな考察。一坪密林の場合は慣れた動物=ゲットしたモンスターカード数)。大天使のスペルカードであったり、もちろん奇運アレキサンドライトの初期でしか難しい情報だったりする。
「……あんた、自身ではクリアする気ないんでしょ?」
「バッテラ氏が願いを叶えることで、譲ってもらう契約だからな。サービス終了になる場合にのみ、欲しいカードはあると思うが」
「それならもしかして、これもしかするわよ。多分助けられる」
「ならやって見ねえとな。どうせ死んだ身なんだろ。助ければラッキーさ」
こうして状況は思わぬ局面へと移行した。
誰もが匙を投げるハメ組を助けるという自己満足である。だが、これを成し遂げられれば……俺はグリードアイランド攻略を、俺の中では偉業として誇れるだろう。何しろまず無理な事なのだから。
という訳で予定は変更されました。
「転生者が居るのだから原作と変わるでしょ」というのと
「他の人間には難しい事をやった方が格好良いから」という理由で目指します。
ハメ組が死んだら? まあ事故で。
●キルアは何を悪いと思ってるのか
自分がどうでも良いと思って放置してて、それが相手を騙したことになり
ビスケがいきなりブン殴って洗いざらい吐かせる! とか言えばまあ。
ビスケもこのタイミング以外では、そこまで気にしないでしょう。ヒソカ放置してたし。
●ハメ組を助けよう!
無理ですが、それだけに何とか出来たら、進化の為の条件で良いんじゃないですかね。それだけでは足りなくとも、カチョウとの結婚もやるからセーフセーフ。名実ともに主人公が強くなる前フリとも言います。
フィンクスとフェイタンはどうなる?
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