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「コンタクト、オン。ジスパ」
『……何の用だ?』
「奇運アレキサンドライトの複製と幾つかの情報で大天使の複製を交換しないか? お前さんたちが手に入れてからで構わないし、信用商売として情報は小出しに出して行く用意がある。それで手に入れたカードは当然そっちのものだ。協力しろというなら当然、俺も貰うがな」
ゴンキル組と話をした後、十二月下旬にハメ組に話を持ち掛けた。
時間をかけたのはリアルでモラウと海洋探索についての話をする必要があるのと、ゴンキル組の練度を少しでも上げる為だ(プーハットやアベンガネ達も含む)。キルアはその後にハンター試験に挑む必要がある為、少しでも時間が欲しいというのもあった。
『論外だな。本物の方でもレートが合わん」
「そうか。君らには不可能な入手条件だから声を掛けたんだが仕方がない。一週間後にまた連絡をするし、その間は交渉を受け付けない。その時を楽しみにしておいてくれ」
最初の交渉は失敗を前提にしているから話が通るはずがない。
それはお互いに承知していて、ドア・イン・ザ・フェイスの要領で、本命の交渉まで時間が掛かる事を伺わせている。この段階で渡す情報は『ハメ組には無理だと確信できる条件』が奇運アレキサンドライトにはあると伝えるだけで良い。おそらく他の持ち主にも話をするだろうが、例えSランク複数枚でも応じないと言う結果が返って来るだけだろう。その全チームが聖騎士の首飾りを身に着けている事で、奪い難い事も把握するかもしれない。
「さて、その間に闇のヒスイを独占しておくか」
時間をかけた理由はもう一つあって、独占カードを用意して交渉権を得る為だ。
ハメ組では手に入れられないカードの他に幾つかの難しいカードがあれば話は変わって来る。俺はそれほどカードを持っていないし、プーハットも同様なので問題はない。仮に一日数個しか回収できなくとも、一週間あればほぼ間違いなく独占できるだろう。
(古来より翡翠が採れるところは決まっていると古事記にも書いてある。賢者のアクアマリンの隣であることも考えれば、連想ゲームでもあるな。そして何故ボマー組結成まではAランクでしかない闇のヒスイが見つかってないのか? それが……コレだ)
俺は『道標』のカードで表示された山岳地帯に来ていた。
翡翠が採れるという噂の谷川が流れており、遡れば渓谷へ行きつく様になっている。到着しても川を漁るなどせず、そのまま渓谷ではなくその近くにある落盤危険地帯へと踏み込んでいった。
(古代に翡翠が川で採れるとされているのは、砕けて散った岩が急流で磨かれて露出した物。それ以外に鉱物の発見が難しかった時代の名残だ。確か大国主の前身でもあるオオナムチが越の国で翡翠の産地を収める女王を妻にしたという伝承がある。越とは越前・越中・越後の事で、山岳地帯でもある。これが傍証の一つ目だな)
オオナムチの東出雲から越までのコースは山岳地帯で川も通る。
これらの事から、出現するのは川辺であってもその産出は山の方だろう。そしてこれまで幾多の念能力者が挑んで来なかったのは、例えオーラがあっても落盤で埋められてしまっては死んでしまうからだ。所詮はAランクで限度枚数も多いため、『いつか誰かが手に入れるだろうから交換で手に入れれば良い』ということになる。逆に命知らずのボマー組には『ならオレが行って来るぜ。お前も危険だが、何かあったらロープを引っ張ってくれ』くらいの感覚なのだろう。
(傍証の二つ目。このネタを下敷きにした漫画は結構多いんだよな。それも少女漫画の方に。富樫兄弟が読んでいた可能性もあるが、嫁さんの方が読んでて勧めた可能性もある)
概ね山岳地帯にある危険な地下を通ると、その奥へ宝石の渓谷があるネタだ。
先ほど述べた伝承を下敷きにして、ロマンチックにした上で、事件で扱われることでドラマチックに仕立て上げているともいえる。少女漫画の金字塔の一つである有閑倶楽部では、水晶渓谷の中に王位継承の王冠があったし……スケバン刑事やピグマリオの作者は短編で美しき復讐者の資金源として翡翠の大峡谷があるとしていた。どちらにも共通するのは、水の中にショートカットできる抜け道が隠れているという事だ。
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「ここかな? 水よ、全ての流動体を司る水に告げる。汝が見た物を映し出せ」
候補地の一つで俺は画像を伝達する水を操った。
ゆっくりと確実に、渓流に流されないための力強さを維持したまま。少しずつ少しずつ、纏を何時間も維持する修行のつもりで遡っていく。圧力操作も出来るから、割りと簡単に移動させることはできた。得られる光景を簡単に地図として地面に描きながら、時には出発地点も変えて可能な範囲で調査して行く。
(あった……が。幾つかの経路があって不安だな。ということは、危険な道と安全な道があるという事か? うちの一つは行き限定、帰り限定もあるかもしれんが……おそらく難易度的にはそこまでではない。また闇のヒスイの
崩れかけた山岳地帯に光が差し込んで、そちらに進んだという設定だろう。
一応はどの道も大丈夫だとは思うのだが、念のためにルートを計算してから昼間のうちに挑むことにした。その日は念視されることも踏まえて夜を明かし、ルートを定めてから朝のうちに移動を始める。
(通れるな……翡翠らしきものはあるが、おそらく欠片だろう。今は拾わずに行こう)
圧力も弄って水流の勢いを殺して、水源を辿った。
この流れを越えるには念能力者くらいの体力が必要だし、それでなくとも水泳は総合体力を鍛えるには有用だとされている。普通ならば困難なのかもしれないが、普段から海洋で探索している俺には難しくもなんともない。これこそまさに、属人性で必須条件を殴り飛ばすというやつだろう。
「ほう……これか。いつか二人にも見せてやりたいな」
その光景は実に美しかった。燦然と輝く緑の宝石柱。
その全てが翡翠であり、移動させられない宝石なのだ。もし至高の玉座をフウゲツが手に入れることがあったとしても、彼女であれば『こちらの方が何倍も良い』と言ってくれそうな気がした。その上で、あまりにも仰々し過ぎる宝石の山に、幾つか目の問題が見つかったのだ。
(でか過ぎる。という事は適正サイズじゃないといかんのか。推測するに、これも光線の具合で採取できる時間に限りがあるんだろうな。まあ、俺には意味がないが)
一坪玉座とか宝石祭壇とか言えそうな光景だった。
だが、それだけに持って行って良いサイズの翡翠のサイズが分かり難い。つまり、翡翠だらけの中から上手く闇のヒスイを持ち運ばねばならないのだろう。先ほどの通り易い時間に条件があり、そして泳ぐ時間と太陽の傾きを考えれば、最適な時間は僅かな間なのだろう。ただボマー組だけしか挑んでない事や、能力によっては難しくない者にとってはそうでもない。
(今度はフルコピーじゃなく、光の反射を僅かずつ減らしていく。最後まで残るラインに闇のヒスイがある筈。あとは、それと同じサイズの物を手探りで判別するだけだ)
という訳で闇のヒスイを独占完了。また念の為に来る予定だが問題ないだろう。
これでハメ組と対話するに相応しい条件が揃った事になるし、やろうと思えばDランク以下のカードを量産できるという事もである。まあ、聖騎士の首飾りや一部のスペルカードを量産するくらいだけどな。
「妥協のカードがようやく出た。暗幕や宝籤も何枚かあるがな」
「よし、それでこいつを聖騎士の首飾りに変えて身に着け二つ目のアレキサンドライトに挑んでおいてくれ。一応は俺が管理しておくが、交渉時には余計に持たない方が良い。念には念を入れよう。パーティ結成とかはその頃だな」
そして隠し玉である、とある人物に闇のヒスイを預けておく。
先に言っておくがナックルじゃないぞ? あいつは確かにボマーを完封できるが(性格的にも慣れ慣れしく触ったら即座に殴りそうだし)、新しく専門家を呼ぶのは流儀に反するからな。もちろん浮気を疑われそうなカルトでもない。というかあいつは旅団には雇われてないのか、ゲームをしてないからな(名前を変えたら判らないけど)。
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『独占している闇のヒスイに加えて奇運アレキサンドライトの本体でどうだ? もちろん情報次第でもある。オレたちが既に所持していたり目途を付けている場所のは駄目だ』
「その条件なら他チームにもヒスイを流す。代わりに一坪海岸の情報を渡そう」
『どういう事だ? また取りに行けば良いだろ。なのに一坪海岸の情報だと!?』
「もう、俺もアレキサンドライトには挑めない。そういうタイプなんだよ」
キルアが現実に戻り、一月に入って今度はハメ組の方から連絡して来た。
向こうが一応は折れた形でこちらを揺さぶろうとしたので、情報を与えるという約束を守ると同時にこちらも揺さぶる事にした。ハメ組は全員が一団扱いみたいなもんだしな。まず挑むことも出来ないし、反感を買ってるので交渉が難しい。おそらく奇運アレキサンドライトの話しを他のチームに持って行って、『ふっかけられたんだ。そっちはどうだ? 流石に大天使は無理だが』と声を掛け、『話にならないね。ザマア』くらいで返されたのだと思われる。
「俺はこのゲームのデザイナーを調べて、連中がやって来そうな厄介案件をシミュレーションして来た。だからアレキサンドライトをゲットできたし、もう出来ないと理解している。そしてあんたらでは手に入らないと確信できるのはその為だ」
『そうか……それで一坪海岸線の情報も……』
「一坪海岸線は本体をそっち、こっちは複製。返事は一週間後で良いぞ」
『……すまない。一度検討させてくれ』
当たり前だが交信の呪文で相談できるはずもない。
この機会だから乗るべきだという意見もあれば、嘘くさいとか、『取引せずに奇襲で奪うべきだ』と主張している奴だって居るだろう。そうするとそいつに『交渉を反故にしたら、次に他のチームが交渉してくれなくなる』とか、そういう面倒くさいゴタゴタが始まる。それが『ハメ組が殺されなくてもクリアできない』と考察される理由の一つだ。
(ハメ組は年内に殺されて居たはず。大天使もカード化されてないことを考えると、ゲンスルーは爆殺を中断したな。調べてみないと判らんが、残り二人もカードの独占が狙えるカードを探しにシフトし始めてるか、俺を探してるのかな? まあ良い、これでキルアが戻るまでの時間を稼げる)
この一週間でボマー組が何もしてないとは思えない。
俺の位置を特定しようとしたり、アレキサンドライトの独自入手を残り二人のボマーが探し回っているとかもあり得る。おそらくはこちらからの連絡を待たずにスペルカードで闇のヒスイの独占を確認。仲間内をゲンスルーがせっついて動かしたというところだろう。奴らに同行しているはずのアベンガネがこちらに連絡をよこして居ない様に、ゲンスルーもそこまで頻繁に連絡は出来ないだろう。
「という訳で俺は一度プーハットにヒスイを渡して、現実に戻ってお姫さまたちを連れて来る。ビスケに一月中は大丈夫だろうと伝えておいてくれ」
「了解、ボス」
この時点で闇のヒスイはプーハットに渡して彼は行動を停止する。
どのみち修行で時間が取られているし、出歩くと呪文攻撃やら肉弾戦で面倒くさくなる。『磁力』の呪文を確保して置いて、俺が再びインした時の他、戦いを挑まれたら彼を含めた護衛できる誰かの元へ飛べば良い。ハンター試験が終わるまで戻れないキルアと違って、俺は双子の都合次第で直ぐにまたINできるからな。しかしフリーポケットに入っているカードはすべて破壊されるのに、ゲンスルーたちはバッテラ城に三人で行った時、独占カードをどうしてたのか気になる所だ。
(カチョウとフウゲツは戦力には成らないし、冬休み+@が終わったら戻すつもりだが、俺が連れ回す事で誤解させることはできる。プーハット合わせての四人で打ち止めだと思うだろう。ボマー組にこちらの戦力シフトを悟らせないことは可能だ)
あの日、ビスケが思いついた作戦はそう目新しい物ではない。
有益な情報を小出しにハメ組に提供し、俺の信頼性を高めつつ時間を出来るだけ長く引っ張る。その上で『こいつ、もしかしてバッテラと繋がってるが、ツェズゲラでなくても良いと思っているのか?』くらいに思ってもらえば良いのだ。まあ、そう言う話が出なければアベンガネに頼むことになってるわけだが。重要なのは『ハメ組をまだ殺さない方が良いのではないのか』とか『俺もついでに殺せるチャンスを狙う』のどちらかをゲンスルーに思わせる位である。
(しかしビスケも悪辣だよな。俺が嫌がってる金の積み上げや、中立役をハメ組から提案させるとかな。もちろん俺は断る気だが……誰かがバッテラに頼んだらどうする気なんだ、まったく)
原作を読んで居る者は知ってるが、報酬の受け渡しにセーフティーが無い。
やろうと思えば報酬を渡す側も受け取る側も相手を裏切ることが可能である。富豪であるバッテラは世間体と言うモノがあるが、少人数ならば抹殺できる。だからバッテラが裏切れない様に、雇った連中がバッテラを裏切れない様に、『カード受け渡し役であり、金を配布する係』の雇用(ハンター協会とか)を匂わせれば良いのだ。実際にそれをやったら運営に金で報酬を買った扱いされそうなので、俺はしたくないのだがな。
(その話が実現可能な内はハメ組をゲンスルーは殺せない。俺が臆病風に吹かれて、ボマー組が受け取れない様に仕組む可能性を消せるまでは、な)
それですべての優先度が変る可能性が高い。
ハメ組を殺さない方が良いし、俺より先に殺したら報酬を奪えなくなる。そうゲンスルーが認識すれば問題ないだろう。奴が思いつかなくとも、その話自他はアベンガネ辺りから切り出させる事も可能だし、俺自身が否定気味に話すことも可能だ。ツェズゲラの様に自分の功績を金で判断しているから、ハンタ-協会を使いたくないような背景が無いからだ。少なくともグリードアイランドが欲しいくらいでは、信じないだろう。
(時間稼ぎに加えて、頻繁に俺が現実と行き来していること、プーハットと組んでいる事はこの時点で仕込める。条件はまだ半分くらいか)
おそらくだが一坪海岸線で一カ月の時間を稼げるだろう。
レイザーが本気を出さなければメンバーを交代すれば良いが、そもそもハメ組は実力が低過ぎる。おそらく俺経由で人を探すか、他のチームに声を掛けるかするだろう(アレキサンドライトを持ち、俺よりも要求水準の低い奴らに)。それらの条件を考察するのは簡単でも、話し合いで結論を出すまでに間違いなく一カ月は掛かる。その間に俺との交渉をするつもりだろうから、時間に関してはもう少し。足りてないのは信用度とこちらの戦力というところだろうか? いずれにせよ、決戦は二月から三月になると思われる。
という訳で原作をオマージュして時間稼ぎ回です。
ゴンキルがまだ修行中なので仕方ないですよね。
●闇のヒスイ
ネタ的にやりたかっただけで、ここまで難しくないと思います。
岩盤の下を泳ぐのはショートカットで、落盤の中を円で進むくらいかな。
●追加戦士の条件
ナックルやシュートを呼んで来たら楽勝なのですがやりません。
呼ぶとしてもバッテラの所で協力したクラピカとセンリツが許容限界?
まあ二人も忙しいので今回とは思いますが
●入手条件と情報の駆け引き
ゲンスルーが『まだ惜しい』と思えば殺さないでしょうし、殺しても情報の後になるかと。なので情報を小出しにして、持ってないカードを用意します。他にもう数枚容易出来れば、ハメ組を殺すのは最後で良いになると思うのですよね。
あとは時間を稼いでいる間に主人公の社会的信用度を上げつつ、自分でクリアする気が無いのを悟らせるだけです。なお、中立公正な金の受け渡し役に関しては、ビスケのコネで幾らでも呼べるでしょう。その為に何億か掛かりそうですけど、代わりに安全確実に取引できるコースが生まれます。というか、実際にそうすべきだと思うのですよね。これだけはカー^ドの1チーム集中案を言い出せなくとも、追加条件として言える筈なのですから。なのでその事を想像させつつ(吹き込みつつ)、主人公は出来るだけやりたくないと思わせる作戦です。
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