インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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考察

(少し先行するか)

 

 第一の試験は訓練も兼ねて飛ばすことにした。

 

ヒソカはゆっくりしながら途中で試験官ごっこをするはずなので、先行組に紛れてた方が目を付けられない可能性が高いというのもある。イルミの方はそもそも無関心だし、キルアに関わらなければ問題ないだろう。

 

「よう、もしかしてお仲間か?」

 

「残念ながらカキン帝国に所属しております。よろしくお願いしますね」

 

 体幹を鍛えながら走っているとハンゾーが話しかけて来た。

 

血筋としてジャポン系であったことから興味が湧いたのか? カキンではなくジャポンに生まれたかったというのは本心なので、軽く微笑んでおいた。

 

「そうか。あんたが手練れというのは見ていて分かる。手を組まないか?」

 

「お互いに初見ですし、ここは出来るだけ敵対せず、困って居たら余裕の範囲で考慮するという所でいかがでしょう?」

 

「それでいい」

 上半身をブレさせず走る(十傑集走りが出来る)奴が素人な筈がない。

 

その事もあってハンゾーは俺に声を掛けて来たのだろう。腕利き同士で潰し合う必要はないし、自分が苦労してまで相手を助ける必要もない。暫くは付かず離れず、信用しないが敵対もしない、余裕の範囲で交渉して信用が積み上がった『将来に』連絡し合うというのが精々だろう。

 

「よう。この試験、判ってるな?」

 

「もちろんです。無駄にライバルを増やす必要はありませんしね。忠告があるとしたら、味見はしておいた方が良いと思いますよ」

 

 話し合いの機会は早く、第二の試験の目でハンゾーが再びやって来る。

 

試験内容はスシ、ジャポンの文化がカキンに流入しているなら当然ながら知っているだろうと踏んで、俺が余計な情報を喋らないように釘を刺しに来たのだろう。ただ、俺は俺で目的があるし、ついでに言うと心配性なのでやるべき事がある。『彼ら』がそれを見たら思いつく可能性は高かった。

 

(寄生虫は無し……。身の味は良くある白身だな)

 

「そうか、何カン……この人数で魚を大量に捕まえられるはずがないっ」

 

「聞いた事があるぜ。確か川魚には寄生虫が居るんだ。それを考えると」

 

 魚を三枚におろし、端を落とした身を天に透かし確認してから食ってみた。

 

試験官のメンチが口にした言葉自体が、実は重要なヒントだったのだ。『何カンでも持ってきても良い』という言葉は、参加者の数を考えれば魚をそのまま投入したら実現できないことになる。また、寄生虫対策を考えると、削ぎ切りにした薄い肉にして確認しないと危険であることに気が付く可能性が高い。既にクラピカとレオリオはそれぞれの見地で理解したようだ。

 

(流石というにしても気が付くのが早い……そうか、中忍試験と同じか)

 

 ナルトの中忍試験編で、第一の試練はカンニング推奨の試験だった。

 

全ての答えを知っており、スラスラ答えを書いている奴を見つけてその答えを盗むというのが試験内容の半分になる。おそらくだが俺やハンゾーの動きは答えを知っているからこそ、作業動線に淀みがない。迷いなく明確に動いている俺たちを知識人であると仮定して、ヒントが無いかを探っていたのだろう。

 

(ふふっ。そうでなくてはな。なら、少しばかりサービスするか)

 

 楽しく成って来たのでレパートリーを増やすことにした。

 

酢飯も味見してから、シャリを幾つか並べておいた。形状は基本形である扇の地紙と、細工寿司用の手毬寿司。ついでに押し寿司みたいなのも用意し、それぞれに切り身を載せ、余った身は間に真っ直ぐ包丁を入れて、切った場所にワサビを僅かに投入、ノリで巻いて忍び巻きを作って、一通り味見する。

 

「ニギリだけでは寂しいと思いましたので盛り込んでみました。お嬢様」

 

「グンカンにサイクだけじゃなくて、アブリにシノビまで? 誰が此処までやれって言ったのよ」

 

 正統派の握り寿司の脇に、焙り寿司と手巻き軍艦(握りで作る)。

 

更に手毬寿司の上に切れ込みを入れた切り身を載せ、細工寿司を用意しておいた。忍び巻きは本来、脂の強い魚にワサビをタップリ入れバランスを取る物だが、川魚の臭みを消す程度に僅かな量にすることで口飽きさせない程度にしておく。あくまで主役である握り寿司をメインに据えたレパートリーでしかない。

 

「なんでこんなに並べたの? 一番良い出来の一つで良いでしょうに」

 

「故郷に居る大切な人が楽しみにしているんです。どうせ後で作るならば、世界で一番の料理人に試してもらうべきじゃないでしょうか? せっかくチャンスあるんですから」

 

 カチョウとフウゲツに喜んで貰いたいので美味しさ・楽しさを追求した。

 

それに作り方を隠しきる様にして、他人を落としてなんとか合格する様な方法を二人が喜ぶとも思えない。だからここは正々堂々と、満足感で押し切ることにしたのだ。出逢いを好機と考えるのであれば、メンチとの出逢いはこれ以上ない程の相手ではないだろうか? まあ、目の良いゴンや隠れて確認できるキルアたちが眺めるチャンスを作ったとも言うが。

 

「危うくクソマズイのを提出するところだった。何処かで借りは返す」

 

「お役に立てて幸いです。ひとまず機会があれば良いですよ。無ければ後日、雇う事もあるでしょうしね。もちろんその時は正式な報酬をお支払いしますので」

 

 その後にハンゾーが礼を言いにやって来た。

 

どうやら原作通り、知識だけで味見をせずに出す所だったようだ。だが思い直して味見してみた所、無茶苦茶マズかったらしい。自分としては彼がここで落ちるのも惜しいと思っただけだし、何というか忍者に忠告一つ程度で伝手ができ、可能ならば王位継承編で味方になってくれたら嬉しいよね。という程度の物でしかなかった。

 

「今回は拍子抜けだったよなあ」

 

「そうかなあ。オレはドキドキしたけど」

 

(先に着いてたのか。早速運命が変わったな)

 

 当然ながら過程が変れば結果も変わる。

 

スシの試験でそこそこの人数が通ってしまったため、追加した卵の試験が起きなかったのだ。俺やハンゾーのスシが通り、形だけでなく味見込みで真似た者を中心として通過した結果であると言える。試験官であるメンチの言葉や皿などをちゃんと確認し、味を調えればちゃんと通れる試験だったのだろう。ただ、ここで重要なのは第三の試験が少し変わった事である。

 

(四名だけの試験だったのか、逆にもっと多くてトンパが入らなかったのかな? それが上手く機能したんだろう)

 

 第三の試験は塔を早く降る間に、試練が待つタイプだ。

 

失敗すると時間を掛ける罠があるが、実際には不和を巻き起こして、共に降りた者とちゃんとチームを組んで試練に挑めるかを見ている(個人向けの難易度の高い穴もあるけど)。ならば原作のように不和を齎す者が参加しないか、逆に切り捨てるなり意見を強制できる半数が居るなら割りと簡単なのだ。

 

(思ったよりも通過者が多いな。第二の試験での通過者が少なかったし、原作の描写を見るに予め調整しているのかな? 上で仕掛けを探す時にロックされてた場所もあったしなあ)

 

 おそらくだが、隠し扉にロック機能があったのだろう。

 

そして人数調整する意味で、簡単なルートや難し過ぎる場所を増減させているのではないかと思われた。ハンターの特性上は簡単過ぎる場所は無いにしても、個人的な戦闘力が高ければ突破し易い場所もあるはずだ。そう言う所を調整し、試験官の誰が赴くかを思案しているのだと思われた(ヒソカと殺し愛いをしに入った奴も居るし)。

 

「おや。先客? 君も使える(・・・)みたいだね」

 

「まあそうですね。ここは譲りますよ。よければどうぞ」

 

 ハンター試験編で二番目のピンチはイルミとの遭遇である。

 

第四の試験会場において先行逃げ切りでプレートを集め、俺も暫く穴掘って隠れて居ようと思ったのだが……バッティングしてしまったのだ。機嫌を損ねたら死、何かの計画に巻き込まれたら死という、遥か格上との邂逅は心臓に悪い。せめてもの救いは本人に戦う気が無く、非常にマイペースだということだろう。確保した一枚を置いて行くと見逃してくれそうだった。

 

「そう? 悪いね」

 

「いずれ機会があればまた」

 

 恐ろしい事に、俺が途中まで掘った穴をイルミは平然と使って眠った。

 

俺なら他人が用意した陣地なんか使いたくはないが、実力差的にも罠を張る時間が無いという意味でも安全だと判断したのだろう。あるいは俺がさっさと逃げなければ、即座に殺してヒソカに貢ぐプレートに変えた可能性も高い(ヒソxイル勢の意見)。

 

(多分、予定を変える気が無かったんだろうな。俺が残れば殺したし、そうでないから殺すまでも無かっただけ。念の使い手は相性次第だし、無理に敵対する必要が無いと思うけど……。でも、あの性格を考えるとシャルナークとの対比で切り札も読めて来るな)

 

 ヒソカの性格診断で操作系は、理屈屋とマイペースだ。

 

間違いなくシャルナークとイルミという実例に適当な理屈をつけて、ゴン達が育てるために誘導しただけだろう。その上でイルミは俺や他の受験者を雑草程度にしか見ていない事から、自信というよりは確実に何とかできるだけの手段を用意しているから、気にする必要もないと考えているのではないかと思われた。この辺り、おそらくシャルナークなら『どうして此処に?』という雑談を始めて思考や発の情報を読み出すと思われる。

 

(あの針の中に、相手のオーラを抜き出すタイプが混ざってるかもね。操作系は先着順という原則も、発に使ってるオーラを抜き出されたらどうしようもない。自分に刺す場合は自分のオーラだから使い回せるし、貯蓄しているという描写もあったからその可能性が高い)

 

 同じ能力だと思われがちなシャルナークとイルミだが、切り札が多分違う。

 

マイペースなイルミは『相手が何をしても操作できる』事を前提として、突き刺したら終わりという操作系の最終系であると思われた。操作系でなければ工夫して刺し、操作系だったらオーラを抜き出して刺すだけ。むしろ先着順を過信しているだけ操作系の方がやり易いまである。逆にシャルナークは操作できない相手を『その場では』無理に操作しない方が楽と考える可能性が高い。

 

(ただのカンだけど、シャルナークはトロイの木馬じゃないかな。『針を突き刺した事のある相手』に対して残るプログラム。もう大丈夫だと油断している所で、遠距離から見守りつつ都合の良い所で露出させる。原作エピソードで見るべき部分は、自分を操作じゃなくて、オートモードに用意してあるプログラムの方だ)

 

 歩きながら行う考察に意味はない。だがアイデアにはなる。

 

勝手に相手を推測するな、状況を固定するなと言う者も居る。確かにそうだし後は現場で何とかするしかないが、未熟な自分は少しでも色々と考えて、その経験を自分の能力を磨くことに活かすしかないのだ。それこそイルミやシャルナークの切り札が考えている通りでなくたって良い、ここで考察して『こんな能力がある可能性』を考えることは無駄ではないだろう。俺は特にアイデアを利用するタイプなので損には成らない。

 

(操作系つながりでモラウは煙操作、形状は気を使わない代わりに色彩や粘度を操作してる。適当に作った念獣にプログラムで簡単な命令を与えているのも良い。カルトの場合は……同調かな? 完全同調で相手を操作するんじゃなくて、紙に『相手の動きをコピーするだけしかできない』という括りを逆用してるんだと思う)

 

 モラウもカルトも群体操作型なので自分の参考に出来る。

 

前者の応用性は抜群で、作中でも屈指の能力なのに、最大級まで発展していないから育ち切ってすらいない。逆にカルトは幅が狭い代わりに、『使用強度の差』を取り入れているのだと思われた。対象に張り付けた紙の振動をフルコピーして再現するのではなく、振動を同調させた上で、弱い変化にあえて抑えることで糸電話の糸にしているのだろう。おそらくだが系統を見抜いたのは、『オーラの特性を同調させた』のではないだろうか? 水見式の亜流で風なり音で再現すればいい。

 

(縛りを工夫して、フルコピーだけとノイズキャンセルだけか。それなら俺でも使えるな。画像加工も移動も単純しかできない代わりに、画面として投影する。伝奇物に出て来る水鏡の範囲が狭い版ってとこかな? たぶん光学迷彩の代わりも出来る。逆にコピーはせず、ノイズキャンセルを頑張れば、水中でクリアな視界も用意できるかもしれない)

 

 出逢ったイルミではなく、そこからの連想で思わぬアイデアに繋がった。

 

妄想の域だし三段論法みたいなものだけれど、アイデアソースとしては十分だろう。パクリは問題であるが、間違いかもしれない考察を元に、自分のアイデアとしてオマージュするのは問題ないと思うからだ。今回のアイデアもひとまず考察してみて、コストが重そうならば止めておけば良いし、成長後じゃないと実用化できないならば将来実行すれば良いのである。

 

(さて。気晴らしが終わった所で差し出した一枚の補充をしないとな)

 

 イルミから逃げるのに用意しておいた内の一枚を消費した。

 

念空間に自分のプレートは隠しているが、モブっぽい奴を狩って集めた三枚が二枚になってしまったのだから数が合わない。そこでもう一枚補充の為にまたハントに出掛けることにした。

 

「やあ。良ければ共闘かトレードをしません? こっちは二枚の予備と一枚のナンバー情報。あと一枚を補充するか、本命の一枚があれば良いのですけどね。もちろん第三者を交えて幅を広げるのもアリです」

 

「構わんが……。いや、待て。その言い方だと逃げ出すのに使ったのか?」

 

「まあそう言う事ですね。いやあ、世界は広いものです」

 

 途中でハンゾーの気配があったので声を掛けた。

 

彼ならば完全に隠れられると思うので、俺だと気が付いて気配だけ匂わせたのだろう。罠かもしれないが原作の性格上はそんなこともなさそうなので、安心して声を掛けられたのもある。こういってはなんだけどNINJAはともかく、影の忍者には向いてない性格だよね。

 

「確か三兄弟と四人組が居ましたよね? どちらかと組んで残りを潰すとかどうでしょう。後々の事を考えたら、性格が良い方をあえて残す方がオススメですけど」

 

「可愛い顔してエグイ事言うな。ま、その方が確実ではある」

 

 適当な石に数字を四つ書き記してハンゾーの方に放る。

 

俺のナンバーを除き、危険情報であるギタラクル(イルミ)の番号と彼に渡した一枚。そして俺が確保したモブっぽい二人の番号である。合わせて向こうが確保している一枚~二枚の情報があれば、トレードすることは割と簡単だろう(三兄弟は続き番号だし特定し易い)。

 

「じゃあオレは向こうに行くからお前さんは向こうで良いか?」

 

「構いませんよ。何処かで落ち合いましょう」

 

 相談しながら何度か石を投げて情報のやり取り。

 

ハンゾーの予備番号に加えてターゲットナンバーも教えてもらったので、俺のターゲットも付け加えて情報交換を重ねた。その後にお互いのナンバーがターゲットではないと確認し、改めて自分のナンバーを紹介し合うという段取りを踏む。もちろん俺もハンゾーも途中で出逢っているから相手のナンバーを覚えて居るのだが、そこは『信用できる交渉を重ねた』という段階を経る様式美というやつである。

 

その後はハンゾーの方が早くクラピカ達を見つけて、色々あったが四つ目の試験を終えたのである(ヒソカとの因縁とか多少心配したけど、天空闘技場で出逢うだろうし気にしないことにした)。




 という訳でサクサク試験は進みます。念もあるし多少はね。

●スシ試験
 改めて料理知識込みで考察すると、発言自体がヒントなんですよね。
沢山の受験者が乱獲してるのに数を持って来ても良いと口にしている。
焼き魚にするならともかく、生で出すなら寄生虫は怖い。
試験官は胃をオーラでガードするにしても、味見前提なら注意は必須でしょう。
少なくとも隠れて暮らしている民族だったクラピカと、医者志望のレオリオは気が付く可能性が高いと考えました。

ハンゾーとの縁はカキンにジャポン系の民族も居て、ジェイ=ピー家を捏造した時点で考えていました。探索系の味方が居れば便利ですしね。

●第三の試験スルー
 原作をなぞるだけではつまらないのと、トンパが混ざらなければ原作組は楽勝だよねってことで。主人公? 念があるので今更な感じ。

●第四の試験
ナルトの中忍試験と後のGI編を元にに、プレートをトレードする方向で終了。原作四人組に腕利き二人が加わったら苦労する筈もありません。

●念能力の考察
 やりたかったことの一つですが、ヨークシンまで引っ張ると長いのでここで強引に出しました。

・イルミの切り札
 クラピカのイルカが抜き出すネタと、念をためておく針と合わせた考察。先着順という常識を覆す方向で考えてみました。もちろん、確証はないです。

・シャルナークの切り札
 自動操作はあくまで見せる方の手札で、携帯は自作とか二本目の針とか、天空闘技場の共闘説・死ぬ時の戦いから考えてみました。複数の携帯・PCで指示は誰が出しても良いとか、針を抜いて安心した相手を後から操作するとか、トロイの木馬やる方が性格的にありそうなので。
(イルミは極める方向、シャルナークは時間を掛ける方向とか)

・カルトの能力
 同調能力を使って、糸電話・動作の追跡と周斬撃・水見式ならぬ風見式。そう考えると一つの線で繋がると思えたからです。なお、自分が水に画像コピーとかノイズキャンセル・レンズとして使うための、呼び水でもります。

・ヒソxイル
 イルミはサイコパスで倫理観ないけど、それはそれとして感情がある。
ハブられても仕方ないし気にもしないけど、それはそれとして程よく構ってくれる人が居たら悪い気はしない(でも殺す時は躊躇なく殺す)。だから殺人に忌避感ないというか戦闘大好きで殺し愛い大好きなヒソカとは相性良いんじゃないですかね(男同士の愛であるかは別にして)。


次回は第五の試験を終えて、カキンに戻って色々する話になります。
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