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「君がユキ君だとは思うが、後ろのは?」
「交渉予定のチームさ。俺が戻らなかったら彼らに遺品が渡るだけの事だな。ああ、そうそう。声を掛けているのはみんな奇運アレキサンドライトをゲットしているチームばかりだ。安心して欲しい」
「っ!?」
一坪の海岸線には人数条件があるので調整役が必要だった。
アレキサンドライトを持っているチームに限定したのは、ハメ組を脅すための意味もある。これで俺を裏切って殺すようなら二度と彼らは交渉に応じないだろう。そして俺が生きて戻ったらカードの交換に色を付けることになっているし、どちらでも良い様な契約を交わしている。もちろん、ハメ組が俺を殺さずにちゃんと返してくれればそれで良いのだ(殺される気も無いけどな)。あと、戻って来たキルアの姿を誤魔化すためでもある。
「裏切り対策か……念の入った事だな」
「俺たちは他人だし保険を掛けるのは当然だろう? バッテラの場合は富豪だから一方的に騙すと外聞があるだろうが、君たちはそうでもないし、また俺の事を君たちも疑って居て当然。ならば双方に利があり、裏切れない状態で何度も交渉を重ね、その果てに信用を積み上げるしかない」
もちろん信頼を前提とする者には、保険を掛けるやり方を好まない者も居る。
だが今回はゲンスルーに思い留まらせるためにやって居るのと、ハメ組に裏切りの可能性は何処にでもある事を示唆する為でもある。ちょっと前なら不満がたまっているだけだろうが、俺の扱いを含めてモメ始めているところだろう。だから彼らからの全幅の信頼なんか諦めているし、ゲンスルーが混ざっているのだから最初からそのつもりもなかった。
「ただ、このやり方が不快なのも理解できる。そこで闇のヒスイを先行して渡して置こう。また、彼らが自主的に一坪の海岸線に挑戦するのは三月以降だ。君らが誘うか、諦めない限りは参加しない様に交渉してある。腐っても交渉というのは先約が優先だからな」
「……ゲームクリアを優先、次に君が勝利することが次点と」
「
まず最初にバッテラとの契約、次に話を持ち掛けたハメ組優先。
その事を理解させておいて、暗に『派閥が割れて個別に頼んできても知らんぞ』という部分も宣告しておく。ここで言っておけば『お前らは裏切り者であって交渉相手ではない』と言える訳だ。
「理解はした。バッテラ氏が焦っているという事もな」
「そう言う事なら時間が惜しい。速く行こう。それとも条件とやらが?」
「それもあるがもっと重要な案件がある。プーハット。ボマーは居たか?」
「いんや。今のところそれらしい奴らは居ないぜ」
ジスパだけではなくニッケスが話しかけて来た。
そこで俺は隠れて様子を伺っているプーハットに確認の声を掛けた。信用のおけない相手との交渉に警戒を兼ねた野伏を置くのは鉄則だし、その上でボマー対策をするのもまた当然だ。ついでに闇のヒスイを預けていたはずのプーハットが所持していないことで、俺のチームに他のメンバーがいることを伺わせる。ここで明かす意味は脅かしというのもあるが、アレキサンドライト持ちのチームから視線を逸らす事も兼ねていた。
「あえて『一坪の密林』から話始めよう。とあるデザイナーが出不精で、何でも通販で購入しゴミも捨てなかった。その様子を見た別のデザイナーは『まるでゴミ屋敷か密林みたいだな』と言ったんだ。それを聞いた本人は『宅配は密林社に頼んでるから一坪の密林と呼んでくれ』と開き直ったそうだ。それが着想の始まりだったとして、密林でも密猟ないし動物の保護の依頼と考えた。つまり一坪密林の条件は、すべての町を自分の足で回って、同じ人物に宅配を届けるというものだ」
「つまり……届けるのは貴族か森の長老から依頼を受けると?」
「今回は長老だった。聖域の復活とソロでの防衛が後半になる」
逸話を順番に語ると他の者でも想像はつくようだ。
実際にここまで話す必要はないが、ちゃんと筋道を立てた方が説明し易い。その上でキーワードとなる長老の話をしたことで、興味のある者は長老の名前くらいは確認し、後のクイズが楽になるだろう。ちなみにツェズゲラは『クイズ形式にすることで、暴力で手に入れた者は揃えられない仕様だろう』と告げると、厳めしい顔でハメ組を利用する件に許可をくれた。
「じゃあ『一坪の海岸線』もそれに似た条件ということか?」
「そう考え、幾つか可能性を考慮し、『海神の聖域』『海賊の隠れ家』としての洞穴、『御来光の丘』『塩湧き温泉』などの各地の逸話に関わる可能性を推敲してみた。その中で一坪の密林と類似性、および対局性を考慮すると海賊の隠れ家がこれに当たるだろう。それが前半、残り半分は海賊退治に相応しい人数だろう。こう考えたからこそ、君たちに真っ先に声を掛けた理由になる」
後は簡単で、人数が居ないとクリアできないという言葉を公表するだけだ。
この条件ならば今まで見つけられて居ないと理解し、俺の言葉に信憑性が湧くという訳である。そしてこれは俺がもたらす情報を無視できなくなると同時に、ゲンスルーがハメ組を殺す訳には行かなくなった瞬間である。少なくとも一坪の海岸線を手に入れた後となり、今後にバッテラとの交渉話をするならば、俺がその話を受けるまでにという期限付きになるだろう。それはかなり難しいので、俺一人になったところを殺しに来る可能性が高くなるわけだ。
「納得は出来る。だが、その条件だと海賊と戦うのか?」
「ニムゲームって知ってるか? 海賊や航海士が好きだった十枚前後のコインを三枚まで互いに引き合い、最後の一枚を取る奴が負けるゲームなんだが……。これには後番の方が有利な必勝法があるんだ。デザイナーがそこまで知って居ると考えるならば、何らかのゲームと戦いの組み合わせだろう。純粋な戦闘は無いと思うが、念を鍛えていた方が確実ではあるだろうな」
俺が解説を終えると一同は納得と安堵の顔を浮かべていた。
戦闘のために能力を鍛えたような奴とは戦えない。だがゲームなりクイズがあって、戦闘を避ける事も出来るならばハメ組でも突破できる可能性がある。それと同時に話を聞いていた他のチームの連中にとっても、即座にハメ組が突破できないという事になる。俺が一カ月ほど優先期間を設けると言ったことに、おそらく全員が納得した事だろう。
「君たちに声を掛け、優先権を与え、闇のヒスイも先行して渡す。判ってくれるとは思うが、『あえて君たちに声を掛けた』ということで条件を婉曲的に説明していたんだ。俺がここで呪文を唱えさせてもらうが、信用できないという者は居るか?」
「……問題ない。最初から言って欲しかったがね」
「これで条件は整った! アカンパニー、オン! ソウフラビへ!」
他のパーティ込みで、適度に十五人以上を選んで同行を唱えた。
唱えるのはもはや俺以外でも良かったのだが、ハメ組とその伏兵だけを連れていかれても困る。加えて言うならばキルアを入れることで、戦闘力に保証がある人間を一人は入れておきたかったというのもあった。俺が動かないと明言している間に、戦闘力が欲しければゴンキル組を入れるだろう。それが破滅へのカウントダウンとも知らずに。
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「二人とも大丈夫だったかい?」
「
「あの人厳しかったよね~。それで一坪の海岸線はどうなったの?」
「どうしたもこうしたも海賊にボロ負けしたさ。まあ計画通りというやつだ」
弁武大というのは師匠枠としての偽名で、今回はビスケの事だ。
一坪の海岸線に関して、負けフラグは早々に回収しておくに限ると適当に戦ってみた。もちろん実に即落ちニコマだった訳だが……。ちゃんと勝利したのは俺とキルアを除けばジスパくらいだ(キルアにはあえて勝たせた)。ハメ組は元から弱い上に全力で来ているわけでは無かったので、その辺は仕方がない所だ。試合終了した後は、改めて一カ月の優先順位と、その間にどう試合するのかをもう一度確かめて解散した。もちろん他のチームも難易度を理解して笑顔で分かれたとも。
「それは良かった。ところでどんな勝負だったんです?」
「スポーツを十五人で八勝。ボクシングで神字を描いたリングの上で戦い、拳を転移させる奴が居て面白かったよ。ただ、月はそれを真似たら駄目だからね。一日に一回だろうが何日かに一回だろうが、遠距離を飛べる事を目指した方が良い」
心配したがるフウゲツを右膝に乗せて簡単な解説をしてやった。
そのまま服を引っぺがされて傷の確認を始めるのだが、浮気のチェックに見えるのが不思議である。そのうちに自分が付けたキスマークとカチョウが付けたソレを区別し始めそうな気がしてくるのは、勝手に俺がフウゲツを重いと判断しているせいかもしれない。少しはのびのびと育てるべきだったのかもしれないな。
「スポーツで? なら私はテニスかバトミントン!」
「テニスはともかくバトミントンはあったかな? まあ、俺たちが呼ばれるのはギリギリ一カ月後か、二人が帰った後だと思うよ」
そして今度はカチョウが対抗する様に左膝に乗って来た。
流石に二人いると重いのだが、それを顔に出す訳にはいかない。平然と受け止めて見せる必要はあるだろう。それに修行と思えば何でもない事だし、体や念の修行だけではなく、男としての修行だと思えばこのくらいは何でもあるまい。
「そーなの? ちぇーっ。活躍できると思ったのになー」
「どうして彼らはそう愚かなのです? ライバルも居るのに」
「彼らにとっては身内もライバルなのさ。キルアたちは彼らをハメ組と呼ぶのでそれに習うとして、その中には様々な意見がある。彼らの中には俺を信用している奴、胡散臭いから排除するべきだと思う奴、そもそも攻撃してしまうべきだと思う奴もいる。皆殺しにして全てを奪いたいと思って居るボマーから見れば、ハメ組は弱すぎるが俺は要警戒でありながら力を借りねばならないという微妙さ加減だ」
ボマーの話になった所で二人の反応が固くなった。
俺の話を中断する気はないが、ゲンスルーを許せないと思う程に俺の事を考えてくれているらしい。実にありがたく、そして嬉しい事だ。自分が彼女たちを思うように、彼女たちも俺の事を思ってくれるのが嬉しくない訳が無い。俺は微笑みながら二人の背中に手を添えて、軽く力を入れて見せた。
「ボマーは俺と同じくらいの力量だが、近距離戦と時限式に割り振ってるから相性差で間違いなく勝てる。だが、ハメ組に潜伏することで安全圏に籠っているとも言えるな。だが、それが彼をして意見をコントロール出来ない理由なんだ。だから俺の能力を探りたいし力を借りたいが、迂闊に主張出来ない。するとしても彼らが海賊たちに破れ続けた後だろう。後は、その前にキルア達を誘うかどうかの差だな」
「それで私たちが帰る前か、それとも帰った後か決められない訳ね」
「キルア君やゴン君たちを誘うのは子供だから幾らでも騙せると……浅はかな」
「付け加えるとゴンはデザイナーの息子だ。むしろ全力を引き出すだろうよ」
念能力者の強さは年齢よりも、決断と修行の繰り返しで決まると言っても良い。
様々な経験を踏まえ、色んな局面で『こうするべきだ』と決断し、それに足りないモノがあれば修行して付け足していく。場合によっては仲間こそが最強の武器とも言えるが、ハメ組はロクに修行もせず流されるままに協力者を求めている。騙して終わるとか、ちょっとした見返りで済むと考えるのはどう考えても浅はかな考えでしかない。ビスケだって着いているしな、まず騙されることはないだろう。
「明日からはどうされますか?」
「まだ修行を付けてくれるならそれを優先で、俺はカードの情報を集める」
「3Dカメラとレインボーキャンディーだっけ? 私の能力で人形作る為だよね」
「それもあるが思い出写真館で写しておきたい光景があるんだ。ついでにノーナンバーで良いから服や布もカード化しておきたいな」
二人の修行に関してはビスケ次第な所もある。
彼女は美容関係の念獣を使えるし、本体の印象もあって二人からの嫉妬心なく、かつ尊敬の目で見られる師匠枠になってくれるだろう。だが、彼女にとってあくまでゴンキルを鍛えるついでであり、同年代の後輩と比べてどれだけ差があるのかを比べるための指針でしかない。おそらく初心者であることを踏まえて、ゴンキルから見て隣り合う放出系や具現化系の経験などを見せて参考にさせるだろう。まあ、ビスケが駄目ならゴレイヌを探して来て頼むだけなのだが。
「最後にもう一つ。彼らを本当に助ける意味はあるのですか?」
「私達に偽名まで使って安全確保してるのに肝心のコーコが危険じゃあ……」
「無かったら作れば良いんだよ。それが王者の考え方というモノだ。彼らが居ればカキンの戦力を水増しできる。それはマフィアの力が激減している今ならば相対的に影響力は大きくなる。その上で滅びたシイ=オ一家を再興し、移民ビジネスという形で海岸線伝いに勢力を広げていく。カキンより来る同胞団、さしずめ華僑とでもいうべきか。その仮初の
やはりフウゲツもカチョウも俺が危険であることは理解していたのだろう。
相性が良くともそれは一対一の話だし、フルで使えたら楽勝である第三の発『乱れ雪月花』が今のシーズンだと特殊効果が減ってるからな(念空間作成時のルールは、シーズン中固定。今は浮遊部屋と圧力室が使えない)。とはいえ、俺も進化条件になりそうだからとか、お人よしだから助けてるわけでもないのだ。
「ええと……ジェイ=ピ一家と一緒に立ち上げられて全滅したっていう?」
「その当主に雪兄さまが別の名前……雪哥哥として? それってまさか……」
「一人に二人の姫を降嫁させるのが問題なら、俺が二人分をこなせば良いだけさ。フウゲツとの間に生まれた子供にセヴァンチ妃を擁立した民族と婚礼させるか、最初から二代目はあちらの民族から選んだ若頭を選ぶという契約でも良いな。重要なのは……カキンがそろそろ限界というのもある。流民・難民の類では無く、ちゃんとした移民で仕事も俺が用意できるなら……陛下はソレを許可してくれるだろう」
この案は色々と無理があるが、重要なのは『未来の余地』が増えることだ。
カキン・マフィアの中で二枠分の発言権など許されるはずもない。だから当然、セヴァンチ妃の所属する中華系民族から派遣された若頭が実権を握るだろう。俺の役目はフウゲツと子供を作るのと、カキンの外へ移民を送り込んでも問題無く歓迎される現地法人造りでしかない。まさしく虚名、だが、その虚名で出来ることもあるのだ。フウゲツとの婚姻であり、カキンの名前では出来ない様々な会社の設立である。もちろん移民排斥運動だって起きるだろうが、だからこそハメ組の連中に仕事を与える価値があるという訳だ。
「え? あの。あの、もしかして……」
「えへへ。じゃあ頑張って人形作って、雪にいにも変身できるようにしないとね」
「そう言う事だ。あくまで陛下が許可されるとか、上の王子が婚外子を作って継承戦の穴埋めが出来るかにもよる。だが、継承戦で死ぬかもしれない可能性を見過ごすよりも、僅かな危険であるボマーとの戦いを選びたいんだ。他ならぬフウゲツの為にね」
ハメ組を助ける理由など無かった。だが、フウゲツの為になるなら良い。
準王家の再興や大規模な移民など普通はホイホイできるものではないが、カキンの性質上そういうのは必要なのだ。だからこそ原作での継承戦はBW号で暗黒大陸を目指したし、そこで死ぬことも前提にして色々と予定を組んでいる。ならば大規模な移民はそこでの災厄を補う事でも出来るだろうし、万が一、全滅という事があれば準王家を元にしてカキンを再興するすべを残しておく必要はあるだろう。
「フウゲツ姫。道のりは遠いですが……その時にはプロポーズを受けていただけますか?」
「はい。よろこんで……」
こうして新たな目標を手に入れた俺は、ひとまずグリードアイランドをハッピーエンドに終わらせることを目指したのである。
という訳でサクサクとフラグを立てては踏んでおきます。
一坪の海岸線というか、GIを巡る話は面倒くさいので次回でだいたい終わります。
●ニムゲーム
十枚前後のコインを場に並べ、選考から順番に最大三枚で取っていく。
最後の一枚を取る羽目になった者が撒けというルールですが、後攻必勝。
海賊や航海士が好きだったゲームで、おそらく作者も知ってるでしょう。
だからこそ、あのゲームの数々は、負け前提で何度も挑んで情報収集。
海賊側の対応を見ながら、勝てるまで勝負を繰り返すものなのかと。
ちなみにキルアは埋伏の毒というか、彼を見込んでゴンを誘うとレイザーが本気出すトラップです。
●ハメ組を助ける理由はOMC
なかったら作れば良いという事で、オーダーメイドででっちあげ。
新しい一家というか、滅びた一家を再興して主人公が仮当主に就きます。
そのお嫁さんがフウゲツで、代わりに実権とか跡目は中華系民族に渡すという計画ですね。もちろん駄目なら駄目だった時のことです。
フィンクスとフェイタンはどうなる?
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ユキが約束通り殺した
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