インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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形の無い島編
欲望と願いはよく似ている


「判って居ると思うが『大天使の息吹』と『魔女の若返り薬』をくれぐれも頼む。最後の一枠に関しては君に進呈しよう」

 

「お言葉はありがたいのですが、我がチームだけの功績ではありません」

 

「辞退するというのかね? 私なりの感謝の気持ちでもあるのだが」

 

「五百億だけで構いません。そして、私はこの決断に誇りをもっております」

 

 バッテラにクリア可能になった事を告げに行くと当然ながら感謝された。

 

まずはツェズゲラに対して、五百億とは別の追加報酬が提示される。彼が居なければ為し得なかったことであり、他のチームが得た場合と違って報酬の減額も無し。また自分の考え無しな人材投入が色々な問題を引き起こしたと知って、バッテラはハメ組を諦めさせる捨て扶持なども持つと申し出たのだ。まあ、報奨金の額と『何をもってそれだけ稼いだのかが重要』であるツェズゲラが受ける筈もない。

 

「ユキ君はどう思うかね? 君でも良いし、なんだったら協力してくれたというもう一チームに声を掛けてもらっても良いのだが」

 

「失礼ながらゲームの存続が重要なのと、代替案は……よくある事ですが、ゲームと同時進行で行ったセカンド・プランで達成してしまいました。ただバッテラ氏は、気持ちに引きずられて目的が迷走しておられますので、少し整理しましょうか」

 

 俺に関しては微妙な所だった。双子が伸び伸びと暮らせることだからな。

 

移民ビジネスを立ち上げて、シイ=オ一家のシノギとして開拓民としてあちこちに送り出す計画にGOサインが出たのだ。実際に俺がトップに立てるかどうかはともかく、その過程でペーパーカンパニーと偽造戸籍は山ほど作れる。無理して潜伏場所を用意する必要はないし、それならグリードアイランドの存続に力を尽くした方がまだマシである。

 

「まずツェズゲラ氏ですがマネーハンターであり、どのような内容で金を得て、それを何に使うかという意義が重要です。これだけ混迷したグリードアイランドを制した事で十分という気持ちは判ります。また、氏が手がける事業も賞金の範疇で行うからこその意義なのでしょうしね」

 

「申し訳ありませんが、そう言う事です。お気持ちだけ戴いておきます」

 

「ふむ。ならばツェズゲラに関しては諦めよう。ユキ君はどうなのかね?」

 

「あの子たちは無事に念を収め、能力の開発中ですからね。後は陛下次第です」

 

 整形マシーンにも惹かれたが、覚えてなかった内容で失敗・破壊があった。

 

残念ながらファンブルして大変な事があるとか、壊れてもう治療できないとか言う事態になっても困る。それにこれが重要なのが……『支配者の祝福』で得られる土地って、今の段階では公表されてない上、あれがグリードアイランドの存続に関わる部分ではないとは言いきれないんだよな。全ての力を特殊な念空間と市民を永続化させるために必要と言われても不思議じゃない。ならセカンド・プランがあるなら止めておくべきだろう。

 

「さて最後のゴン君、キルア君、ビスケ師範の三人についての説明になります。まずゴン君はグリードアイランドを作ったジン・フリークス氏の息子です。自力でクリアできなかった事を考えれば、今度こそとゲームの存続を願うでしょう。キルア君は『ゾルディック家ではない、ただの少年である時間』を貴重に思っています。むしろ何も無い方が良いでしょう。ビスケ師範は宝石ハンターとのことで、まずは彼女に宝石の枠を渡すというのがサブ・プランになります」

 

「ゾルディックが手元に居たのか。いや、ゾルディックではない(・・・・)からこそ、か」

 

「ふむ。そう言われれば何となく納得できるところがあります」

 

 資産を処分したがってるバッテラ氏にも意味は通じたようだ。

 

キルアは年頃の少年である今を大切に思っており、純真で自分と同格のゴンと共にある事が何よりの喜びなのだ。バッテラも恋人と二人だけで静かに過ごす生活の為に、不要であると思っている三枠目を手放したがっているのだろう。もし彼が普通の資産家ならここまでグリードアイランドを買い取らないし、また三枠目に関しても自分が不要ならば他の富豪に何百億かで譲っただろう。

 

「しかし、サブ・プランという事は何か良い案があるのだね?」

 

「これは提案なのですが、療養後にバッテラ氏もお二人で念を覚えてみませんか? 最低限の自衛能力になりますし、今の生活を考えたらお二人を同一人物と思う事はまずないでしょうね。その上で、グリードアイランド継続のための一手を打ちます」

 

「わ、私たちが!?」

 

「ふむ?」

 

 俺の考えたメイン・プランはバッテラが念能力者になる事だった。

 

別にゴンキルみたいに一気にやらなくとも、数年掛けて行えば良いだけだ。特に強さは必要はない。その辺のチンピラが襲ってきても対処できる程度の強さを持ち、仮に傭兵を雇った一団が現れても、グリードアイランドを設置している場所まで逃げ切れるだけの能力があれば良い。そうすれば彼らの新たな人生は何とでもなるだろう。

 

「強い能力などなくとも覚えてしまえば世界を歩けるでしょう。その上で護衛を用意するなり、観光することはあっても危険な場所にはいかない。それだけで人生を楽しむには十分です。後はそうですね、今のバッテラ氏の画像で人材育成し派遣する会社を幾つか用意しておきましょう。カモフラージュも用意し易いですし、グリードアイランドを設置すれば移動も容易い」

 

「私も賛成です。財産を処分しても狙う者は居るでしょうし、人生は楽しまねば」

 

「……彼女が起きてから相談させてもらおう」

 

 バッテラの強い願いと、何十年も重体だった女性。

 

この二人ならば念能力を収めるに十分な精神性を得られるだろう。体力を鍛えておかないと病気になる可能性もあるし、一挙両得なのだ。これからも俺やツェズゲラはバッテラとの使いは続くだろう。人の縁とはそういうものだし、我々が色々やって行く中でバッテラの助言が重要な事もあるだろう。もちろん彼が多大な功績を揚げてシングル・ハンターになる未来が無いでもないが、そこまでは流石に期待はしていない。

 

「能力に関しては君らの指導があれば可能なのだろう。だが、問題はグリードアイランドが続くというところなのだろう?」

 

「私はこのカードを使おうと思います。もちろん相応の準備をしてですが」

 

「まさか……それを実用する気なのか?!」

 

 掲げたこの案は基本的に全チームに利益の有る事だ。

 

俺は元よりゴンも自分でクリアしたいだろうし、キルアだってミルキにグリードアイランドの話をする事が出来る。ツェズゲラから視ても自前の人材育成を行うならばグリードアイランドは悪い選択肢ではないし、移動手段としても優れているからな。

 

「各チームのみんな、良く集まってくれた。いよいよこのゲームをクリアする」

 

「ここで予想され得る重要な問題を上げておく。おそらく百枚目の入手条件はグリードアイランドに関するディープな謎かけか、さもなければ百問のクイズになるだろう」

 

 事前に『交信』をした者たちにツェズゲラと俺が説明を始める。

 

ゴンたち『一坪の海岸線』をクリアした者たちだけではなく、ハメ組やらその他のチームにも声を掛けてある。中にはボマー組や旅団組に殺されて居たはずの者たちも居るだろう。もちろんカチョウとフウゲツが来れる日を選んでおり、前日は美肌温泉に浸かりながら楽しく過ごしていたわけだ。

 

「そこで九十九枚をコンプした我がチームは百枚目に五十億の賞金を出す。無論、私たちが一番詳しいと自負している。だが、この中にはゲームへ真剣に取り組んだ物も居るだろう。万が一を考慮して、予め買取を提案しておこう」

 

「副賞として俺の方から高給な職の斡旋や、爆弾の解除を添えておくよ」

 

 ゴンキル組の報酬はグリードアイランドにしたから報酬を出せる。

 

その上で自分で正解したという事実を持って、ツェズゲラは満額の賞金を受け取るという栄誉を得る訳だ。もちろん俺は複数のグリードアイランドを受け取る契約になっているし、その内の貸出枠でツェズゲラのチームを呼び出せる契約にしていた。もちろんバッテラが念を覚えて参加するのも自由だ。

 

「さて、ここからは俺から説明しよう。こいつらの発の中に、『ボマーと言いながら相手に触る』という条件と『接触してボマーを捕まえたと言えば解除される』という条件がある。心当たりのある人は後で触ってくれ」

 

「職はともかく、とんだ副賞だよ、コノヤロー!」

 

 ツェズゲラが下がって代わりにゲンスルーたちが引き出された。

 

交信での説明では時間が足りないので、無関係ながらも念のためにやって来た者も居るだろう。もちろんハメ組は物凄く睨んでおり、バッテラからの捨扶持と百枚目を手に入れたら五十億という条件でようやく納得した形である。そして最低限の説明をしたところで、俺は無数のコピー用紙を取り出したのだ。

 

「最後にこれはお願いと言うか、みんなで次期以降、もっとマシになったグリードアイランドに関する意見収集を1000通募集したい。『第二期以降での実装』という前文句ないし『第一期からの改善要求』という形でアンケートに答えて欲しい」

 

「アンケートは判るが1000も? まさか『気まぐれ魔人』を使うのか!?」

 

「ああ、なるほど。グリードアイランドの改善要求なら1000はありそうだ」

 

 三つ目のカード枠に関して、俺の回答がコレだ。

 

このカードは1000の希望を聞く代わりに、叶えるのはその中から魔人が選んだ3つになる。普通の人間ならとうてい1000もの願いなど思いつく筈がない。もちろん願いの水増しなど出来ないし、『金貨を百何枚』『金貨を百万と一枚……』みたいな適当に並べることも駄目なのだ。だが、グリードアイランドの改善点ならば1000くらいは余裕で出来るだろという考えである。パッチとかバグ取りを運営の代わりにやるようなものだけどな。

 

「この件で重要な事を告げよう。第二期以降と銘打ったのは、そうすればこのゲームが確実に続くという事だ。この愛すべきクソゲーをもっとマシにして、今度は五百億なんてギスギスした案件抜きで遊ぶんだ。修行のために来ても良いし、自分の為に背を延ばしたり体重を落としに来るのも良いだろう。そしてもう一つ、コンプリートはこのアンケートが1000に到達した時点で行う! それまでは謎かけやクイズに関する予備期間としよう!」

 

「おお! そいつは良い。さっさと回答して予習しねえとな!」

 

「お前の頭で大丈夫か? むしろカンに掛けて速攻の方が良いかもな」

 

 紙をみんなに渡しながら、俺は『黄金天秤』をゲインしておいた。

 

解答用紙から要望書に清書するためのテーブルも用意し、同じような要望があれば黄金天秤で良くなる方を参照しておく。この天秤は良い方を総合的に見て判断してくれるのでありがたいのだ。場合によっては、気が付かないだけでまったく同じ結果になる無効票も弾いてくれるだろう。一応は気を付けているが、万が一と言う事もあるからな。そこまでやって気まぐれ魔人が『私の力を越えている』とか神龍みたいなことを言ったら諦めるとしよう。

 

「結局、ツェズゲラさんが持ってちゃったね」

 

「そりゃ仕方ないぜ。仕事だし一番真面目にやり込んでたようなもんだしな。それよか、最後のアレはなんなんだっつーの!」

 

 その後はツェズゲラのチームが城へ、ゴンキル組と共に俺たちは残った。

 

もちろんそれだけでは惜しいので、最後まで居たメンツに声を掛けてちょっとしたお遊びをしたという訳だな。体力にあふれて直ぐに強くなりたいゴンは特に気にした風もなく、キルアの方は突然始まったイベントに少しばかり腹を立てたという感じである。

 

「悪い悪い。現役ハンター最年少組の実力を見せてやりたくてな。それに二人とも、今の実力がどのくらいか知りたいって言ってたじゃないか」

 

「それにしたって総掛かりはねーよ! 危うく何人か殺す所だったじゃねえか」

 

「アハハ、オレは楽しかったけどねっ」

 

 こういうと何だが、ゴンキル組の経験値は原作以下である。

 

ヨークシンで幻影旅団に捕まった経験が無く、またボマー組と命を懸けて戦ったわけでもない。彼らと今後にかかわりが無いなら別に構わないのだが、アルカ編が起きる可能性があるので、戦闘経験なりとも積ませておこうと思ったわけである。この後でナックルやシュートとも戦えば、試合としての経験値は十分だろう。後はプレッシャーを伴う死合いをどこでさせるかどうかだ。

 

「まあ、理由が無い訳じゃないさ。一つはビスケ師からの依頼だな」

 

「ビスケが? そう言われたらなんとなく判るけどさ」

 

「あの人数で戦わせてくれってか? 復活したビノールトとか、ゲンスルーたちボマー組だけでよかったんじゃやねーの? ったくダリィったら」

 

 ビスケは現在、カチョウとフウゲツの面倒を見ている。

 

ゴレイヌも交えて二人の修行に付き合う代わりに、ゴンとキルアの能力を見極めて修行をさせてやってくれという話だった。この後に続くもう一つの流れに向かって、二人の実力では少々厳しいのではないかという見解だったからである(特にキルア)

 

「まずゴンは決断が早いのは良いが、全体を俯瞰して見ることが出来てない。囲まれた時の処理だけじゃなく状況の把握もだな。逆にキルアは良く見ている代わりにプレッシャーに弱い。勝てる状況なら何人来ようが難なく処理できるが、追い詰められると下がってから判断しようとする逃げ腰が問題だな。最終的に二人は分断されたわけだ」

 

「あーうん。言われてみればそうかも。途中までは何とか行けてたんだけどね」

 

「しゃーねーだろ。つか、ボマー組全員だったしよ」

 

 二人の戦いは最終的に参加したボマー組の加入で終わった。

 

ゲンスルーたちは『法の外にあるグリードアイランド内の殺人を問えるのか?』という問題もあって、減刑代わりに二人と戦う事になった訳だ。その代りに少々の怪我でも文句は言わない約束だったが、大怪我を避けるために確実にキルアから囲みに入ったことが敗因だった。ゴンの方はあの性格である、一人ずつ倒しながら怪我なんか無視という戦法だったため、時間稼ぎし易かったのもあった。

 

「問題はもう一つの用事なんだ。前に言ったろ、カイトに紹介するって」

 

「あ、そうだね! 忘れてた!」

 

 

 ゴンらしいというか、サッパリ忘れていたようだ。

 

まあ彼らからすればグリードアイランドをクリアする過程でジンの情報を得るつもりだったのだろう。それゆえにするべきことは思いっ切りグリードアイランドを愉しみ、その果てに情報も得る筈だったと言える。生憎と俺の介入でツェズゲラが順当に勝利してしまったという訳だ。その埋め合わせとしてカイトに会わせるという約束をしていたというわけだ。




 という訳でグリードアイランド編完結です。
30日に交信予定の次回は、能力の進化に関する考察と、ゴンキル組の経験詰みに関する話の予定です。

●三枚目の枠に関して
『気まぐれ魔人』を選び、「第二期実装し、その中で●●を」x1000。
自分一人だとパッチ宛て無理ですが、クリア前なら山ほど人が居ます。
あとは似た内容のお願いを、黄金天秤で弾きながら挙げれば良いでしょう。
それでも足りなければ、アイテムを増やせば良いだけなので。
もちろん私が知らないだけで他のSSで似たような提案があるかもしれませんが、被ったとしてもその辺は勘弁してください。

●バッテラたちも念能力者に
 強烈な願いで行動したし、何年も願われながら重篤だった。
可能性としては念能力者になりそうじゃないですか? まあならなくてもOKです。あくまで提案の一つですね。

●乱取り稽古とボマー組の扱い
 ゴンキル組の戦闘経験が無いので埋め合わせてみました。
またゲンスルーたちの行為って、どこまで証拠があるんでしょうかね?
まあクラピカにお願いすれば拘束するのは簡単なので、何か約束して放逐じゃないかな。蟻には相性悪いので使わないでしょうしね。
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