インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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潜行

『すまないな。お前さんも知る例の件で手が離せないんだ』

 

「構わない。こっちも出て来れるなら力を借りたかった程度さ」

 

 本命の計画を隠しているので、上手く行かないこともある。

 

ヒンリギと話してみて予定が埋まっているのもそうだし、アベンガネに声を掛ける様な要件が無い。彼らは見学会が終わって、戦没遺構を使って陰謀やってる連中の尻尾を掴んでから、そいつらを叩き潰すのに力を借りる程度だろう。要するに有利に成った所で追撃要員を増やせるというアテに過ぎない。

 

『こちらも今向かうのは無理だな。別件で雇われて居て、気になって居たあの件をついでに確認しようと思っていたところだ。こちらにそれらしい海底遺跡が無いのが残念だがね』

 

「こちらの情報は暫くしたらニュースに出る。観光したいなら言ってくれ」

 

 ツェズゲラの方はグリードアイランドのリアルな場所が気になったらしい。

 

実際にはその北周辺を回遊するという、幻の巨大漁。島魚ジャコビニなんとかの行方を調査しているらしい。やはりグリードアイランドには海流が向かっていないとか、カキンとジャポンの間にある広大な領域に何も無いという情報をくれた(俺らも調べた事はあるが)。

 

「これ以上の援軍を探すのは不自然だな。逆に言えば、俺らが意図的に大規模な作戦に出るとは思われる要素が無いという事でもある」

 

「逆転の発想ってやつだな。んじゃま、行くか」

 

 海洋資源の探索中に、面白そうな案件を見つけたという態だ。

 

必要以上に援軍を集めるのもおかしいし、沈没船が空気なり海流の影響で動くというだけの事なので、それほど大事でもない。問題なのは沈没船が軍艦であり、戦没遺構であるというだけなのだから。本来ならば『あれは放っておいてよいのか?』というのを該当政府に問い合わせるのが筋であろう。偶然、俺たちプロフェッショナルが最新装備満載で居合わせた形になるのだが。

 

「序盤は隠を使わずに中間拠点を作る。キルアとゴンも同行して、水中での行動に慣れてくれ」

 

「はーい」

 

「ほいよ」

 

 港付近でゴンやキルアも水に慣れはしたが、海中作業というのは初めてだ。

 

水中に拠点を作ってそこで酸素ボンベの交換をやるとか、この世界の人間が持つ高い耐久性の限界まで冷たい水の中に潜るとかいう経験はないだろう。まあ普通は船上から空気をホースで送った方が速いからな。俺たちもまっとうな資源調査ならそうすることもある。

 

『圧力操作開始。このまま潜っていくぞ』

 

『『了解』』

 

 普通のダイバーならば少しずつ深度を下げて行かなければならない。

 

だが、俺の能力でその過程をすっ飛ばしていく。このお陰もあって普通の探索隊よりも、俺の組織したチームは行動半径が広く潜水時間が長い。ホースを使うなら潜水時間の限界が無くなるが、その分だけ距離が短くなるし相手(・・)に気取られる。だからこそ探検チームは長時間の作業以外ではホースは使わない。それこそこの世界には外来種ほどじゃなくても、水中に潜む魔物も居るからな。

 

『そろそろ、この辺りの海底だ。もっと深い場所に行く前に、ここで拠点を作る練習を行う。もちろんサブ拠点としても機能させるがな。二人は周囲から見え難く、守り易い場所を探してくれ』

 

『広くても良いんだね? なら問題ないよ』

 

『わーった。そういう場所な』

 

 俺は圧力操作で代行した深度対策を徐々に緩め、近くの場所を指さした。

 

その場所は遠くから見ても見え難い、ちょっとした窪みである。そこに蓋を作って中に予備のボンベを置いて置けば、イザという時にボンベを交換できる。いつもはもっと大きな容れ物を用意して、船上から空気も送ることもあるが、そこまでの物はやらない。あくまで予備拠点でしかないし、そもそもチラっと様子を眺めに行ければ十分なのだ。他者にバレるようなことをしてまで、長々とやる気はなかった。

 

(さて。ここで念空間の調整を確認しないとな。シーズンが変ったから常時携行型に変えたが、その前の調整を携行型で試してないからな)

 

 俺は周囲を警戒しながら念空間の扉を開いた。

 

まずは何の問題もない場所であり、予備のボンベの追加を幾つかしかいれてない。それほど大きな場所ではないのであくまで荷物を入れる場所にしかしていなかった。重要なのはここから、船の上で始めたため凍結室を設置できたが、以前の再調整では『水中で始める時は凍結室を設置できない』という事になっている。基本項目に『シーズン中はルールとスコア固定』というのがあるから問題ないはずだが、それがズレているかを確認せねばならない。

 

(氷の塊が出て来た……ということは。水中でも機能しているということだな。念のためにもまた使って見るべきだが、これで最終手段が用意できそうだ)

 

 そして凍結室を開いてみると、そこにはロッカーサイズの氷があった。

 

常時携行型は部屋の数と大きさに問題があり、最大まで並べてもロッカールームくらいであり、今回はそこまで部屋数増加を狙ってないのでこんなものだ。もしさっきの部屋と共通の扉を用意して居たら、ロッカー二つ分の氷になっていただろう。もちろんこんな物をここで使う必要はないので、BW号から脱出する時に氷の船を用意するための検証である。

 

(氷の船が作れれば、船が駄目になっても対処が可能になるとして……。第三の念空間、船型エキスパンションというのはアリなのか? 見失ったら解除できなくなりそうで怖いが……)

 

 仮に暗黒大陸行きと継承戦が決まり、BW号に乗るとした場合が不安だった。

 

それまでにフウゲツの降嫁も可能ならばやっておくとして、ダメなら二線者にする儀式と、他の王子との契約で脱出が可能になるか試したいところだ。それが駄目なら幻影旅団に三種の神器を渡すことで、儀式を崩壊させるつもりでいるが……。その時はBW号が無事か怪しい所である。少なくともネオンの占い込みで幾つもの保険を掛けた上で、そのアイデアに行くべきだろう。何も用意せずに儀式ぶちこわしは危険である。

 

(儀式の崩壊はフォースプランくらいの優先度になるが……その場合は俺が蜘蛛に加入するのと、団長継承戦を辞退する二線者をあちらでも用意する必要性が出てくるかもしれんな。予備の予備でしかないが、計画だけは立てておこう)

 

 三種の神器を盗ませる計画を用意はしている。だが、問題はないのか?

 

その保証はないのでネオンというかノストラードファミリーに定期的に占いを頼んでいた。それほど重要ではない経過観察なので、こちらに占いを伝える重要性はないと説明してはある。だが、そこで何か大きな変化が出た時が問題なのだ。果たして、王室から三種の神器が失われた場合に危険ではないのか?

 

(継承戦に関わる王子の数。そして女子も王子と名前を付ける事。そこからは『数多くの継承者による殺し合いをする』という制約が必要なのだろう。もしかしたら沢山居た方が良いという誓約ではなく、代を重ねるにつれ数が増えていくという制約かもしれない。どちらにせよハッキリしているのは、偶発的な病や事故に戦争というものを無視しているかどうかだ。もしかしたら、二線者をバックアップにしてる可能性はある)

 

 女子も王子だが戦力が少ないのは、おそらくワザとだろう。

 

継承者の水増しをした上で、さっさと討ち取って次代に継承させる訳だ。ここで問題なのだが、代が重なるごとに生贄が増える必要があるというルールが紛れ込んだとしよう。その場合は女子を王子に数えても水増しする『必要性』が出て来るし、そうなった場合の滅亡する危険性はさらに膨れ上がる。もし古代からカキンが続いて居た場合、十四代程度では足りないのだ。

 

(これまで直系の血筋が全く絶えて居ないというのは無理がある。ならば一度か二度は絶えて、バックアップの親族に継承された可能性が高い。そこから再び累代を重ねてきたのだとしたら、今のシステムに合致する。ならばここで継承戦が崩壊しても問題ない代わりに、俺たちを含めた二線者の子孫がやり直す事になるだろう)

 

 問題は儀式中断で済むのか、悪夢が再び起こるのか……である。

 

仮に二線者の誰かを王子として計算した場合、最初は一人、次は二人と犠牲者が増えていくだろう。仮に俺が勝ち残って王扱いに成ったとしても、子供の代で殺し合わせる必要がある。やらなければ魂の強制徴収とか、ナニカの犠牲者が出るような感じで関連する人が死ぬ可能性もあった。

 

(その場合は俺が蜘蛛の一員になって提供するとか言えば良い。蜘蛛から抜けるというか、団長候補から抜けるという理由で二線者ルールを用意することはできる。そもそも『盗賊の極意』が団長が持つべき能力として継承される場合、俺の様な部外者は候補じゃない方が良いからな。そこまで関われば、カキンの血筋では無く、幻影旅団と流星街が継承者扱いになるだろう)

 

 厄ネタの押し付けになるが、幻影旅団の場合は自業自得なので構わない。

 

また、カキンが滅びて国民が流民になった場合、やはり流星街に関わることになるだろうからそこはバランスが取れているような気がする。初期メンバーが大切な割りに死地に向かわせているクロロに遠慮をする必要もないだろう。俺はあくまでカチョウとフウゲツだけが大事であり、子供が生まれたらその子たちも含まれるだけの話なのだ。そうであるならば、積極的に巻き込むべきであって遠慮するべきではないだろう。

 

『ユキ~全部終わったよー』

 

『おっと済まない。少し考え事に夢中になっていたようだ』

 

 俺が今後の計画を考えている間に、拠点化をやってくれたらしい。

 

まあ指示を出したのはゴンとキルアだけだったが、慣れた仲間が他にも居るからな。それにこの深度まで来れば、俺が能力を維持する理由もあまりない。もっと目的地の近くまで行ってフィルターを用意するとか、それに隠も掛けて見つからない様に接近する時くらいだろう。あるいはもっと深い位置まで潜り、圧力操作が無ければ滞在できないような場所に移動した時だろう。

 

『ではゴンとキルアは凝で周囲の変化を見る事に慣れてくれ。この辺りには何も無い筈だから、遠くを見るとか、むしろ近くの小さな生き物に目を向ける感じでな』

 

『闇の中で気配を探りつつ、周囲を見る感じか』

 

『んー。森の中に潜むような感じなのかな』

 

 俺の説明を二人は自分なりの方法で咀嚼した。

 

水は振動が伝わり難い部分もあれば、伝わりやすい部分もある。全体を見ることが重要でもあるし、かといって近場を軽視して良いわけでもない。それは森の中に佇み、陰に住まうのと似ているようで違っている。その違いをそれぞれのやり方に合わせて掴み、差を修正して行く必要があるのだ。

 

『なあ。気が付いたか?』

 

『ああ。大型の水棲生物を見ない。危険の兆候なのか、それとも何か撒いたのかもな』

 

 海の中には様々な危険がある。その一つが大型水棲生物だ。

 

小さいものでもシャチや鮫が居り、大きい物だと鯨だったり魔物だったりする。中には念能力を使う個体も居るのだが……。今回はそれらを見ないのだ。もちろん縄張りの問題で全く居ないエリアもあるだろうが、この辺りでそんな話を聞いたことはない。それなりに大きな生物を遠目に眺め、向こうもこちらを警戒しているというのはよくあった事なのだ。おそらくは邪魔だから遠ざけられたか、餌として捕まえられたのではないかと思う。

 

『海水を念空間に保存しておくとして、全員で本命の方向を探索しよう。次の拠点ポイントを見つけたら、一度船に戻るぞ』

 

『『了解』』

 

 俺たちは船に残ってるナックルたちに連絡を入れつつ作業を続行した。

 

上から投下されるカモフラージュ用の障壁やら酸素ボンベの予備を回収し、それを設置して移動できる場所を増やしていくためだ。そして四方に散って本命の場所を隠れてみることのできる場所を探していくのだった。




 という訳で海洋探索回が着々と進みます。
本当の探検ではこんなにサクサク進まず、同じことの繰り返しでしょうが
そこは作劇的に今回で準備終了、次回で挑む感じになります。

●アリバイ工作
 援軍として来てほしいのは確かなので連絡だけ取ったけど……。
そんな感じで偶発的な探索を演出しております。
まあ海に潜って確かめるだけなので、メンバーが居るわけでもなし。
極論を言うと、主人公・モラウ・シュートだけでも何とかなりそうです。

●継承戦への潜行
 この辺から徐々に仕込みを入れていく感じですね。
というか蟻編が無いので、今回の話が終わったら次は選挙/アルカ編?
その辺に関わらないなら別件でハンターらしい話をしてから、継承戦もどきに移ることになるので。

とりあえず、「全員王子」は継承毎に+1人の参加者が必要になってしまい、足りなくて犠牲者が出たので、でっちあげたんじゃないかと思います。そして継承者が一人になるけど強力な念獣が付くから大丈夫! という事があったとしても、古代から続くのは無理筋だし、また継承して居たら14代では少なすぎる。だから途中で曰く付きの回で途切れて、王朝を構成する別の王族に移ったんじゃないかと思います。日本で言うと壬申の乱とか、南北朝とかその辺。
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