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「これが当該する軍艦の見取り図だ。最終局面投入前の図だから、現地改修されてる可能性があるがな」
「待て。そんなブツどこから手に入れた?」
「もちろん軍艦の持ち主だよヒンリギ」
海の不思議だな大作戦は図に当たり、話題となった。
エンターテイナーとしても学術的にも成功裏に終わり、管理している国家が文句を付けようとしたところで、『どうやら
「この件は極めて高度な問題で、無かったことになる。代わりに中に立ち入る権限と、防衛用として用意されている念のトラップが三つある事を教えてもらった」
「まさか、ソレを信じたわけじゃないよな? そうだとしたら手を引くぞ」
「切り札を見せる時は更に手札を持てという。最低でも五枚だな」
国家機密を素直に教えるわけがない。二つ知ったから三つあるとしただけだ。
世界に公開どころか他国に知られたくない本命の保護と、証拠隠滅の自爆装置は必ずあるだろう。だから最低でも五枚。ついでに言うと管理者たちの全員が制御できてないのは証明済みなので、上も知らない罠が幾つもあると見えるべきだ。あえていうならば、自爆装置に匹敵する様な物はないから『比較的安心』というべきだろう。
「それに
「なに? 冒険家どもで足りるなら、なんでオレたちを呼びつけた」
「今後を考えると死地を経験する兵隊は多い方が良いだろ?」
「例の件か……」
継承戦が起きることはもはや止めようがないレベルらしい。
その手前で幻影旅団が動くかどうかの話だし、盗んだら止るかも怪しい所だ。そもそも蟲中卵の儀式だって、新しい王の保護システムの一環だろうしな。『どうせ殺し合う運命なら、それを糧にして新たな王が死なないようにする』という苦渋の決断なんだろう。奇しくも必須となった犠牲者が増大したため、数合わせの王子も降りれなくなったというあたりだろうか。
「うちはさっさと降りるつもりだが、制約と誓約が強すぎる可能性がある。だから鍛えている訳だが保険レベルでしかない。だが、お前ん所は大変だぞ」
「能力者が王子に付いてないからな……。何とかならないか?」
「降りるつもりの王子ならハンター協会に依頼はできるぞ」
「理解はした。鍛えにゃならんということはな」
原作通りチョウライ王子には能力者は付いてないようだ。
思うにアレは意図的な者ではないだろうか? 調整家タイプの王子に戦力を持たせるよりも、兵隊は下で統一して置いて、本人には逃げに徹してもらう方が良いという方針なのではないだろうか? 迂闊に教えると護衛に欲しくなるだろうし、側近も政治ゲームで他所の民族から取り込んでるなら、特別な護衛に嫉妬するだろうしな。問題は、比較にならないほど強い私設兵なんだが。
「今回の件はV5の一角に貸しを作る形だから、どのみちブツは握れん。冒険家たちも国家レベルの案件となれば、ガワを見て満足する気になるだろう。ザクロだったか? そいつとうちのアベンガネの念獣に船の状態だけ調べさせる。その後に若い衆を入れる」
「お前さんも十分若いと思うが……要するに条件なんだな?」
「ああ。今までチームリーダーをやった連中や知識人は駄目だ」
国家機密の保管やら隔離をやってる危険地帯である。
そんな場所に冒険家たちも入りたいとは言わないだろうし、国家との取引なのでバレると困るから知識人も駄目。また俺やモラウのような場慣れたチームリーダーが居ると記録装置を持ち込まれるので、万年留守番だったナックルをリーダーに編成することになった。血を操れるザクロや、念獣のパターンを変えられるというアベンガネに序盤の安全を確認してもらい、後は入り口付近で適当にゴンやキルアに経験を積んでもらうつもりである。
「ところで……あんな場所に何を保管してたんだ?」
「好奇心は猫を殺すからな、聞いてない。だが、想像は付くぞ。おそらく念能力者の脳みそだ。経験を考えると、ハンター協会所属で行方不明になった奴かな?」
「……らしいっちゃらしいが、今更か?」
「逆だ。心源流が体系化した今だからさ」
「ああ、なるほど。彼らレベルの……」
近年になって、能力者の数が安定化した。
一般人は知らないレベルの知識であろうとも、ネテロ会長がおおよその基礎を作り上げたのだ。それ以前よりもかなりの規模で能力者が増えているだろう。一年でここまで強くなったゴンとキルアは別格にしろ、今の彼らと同じ程度の能力者は山ほど居る。人類が既に倫理を無視した人体実験を体験済みであろうとも、コンスタントに強い能力者を捕まえて解剖とか、今でしかできないのだ(共犯者的にも)。
「ああ、それとな。ついでに言っておくとヨークシンで旅団を捕まえて色々聞き出したんだが……身内を殺したエイ=イの一部にしかお礼参りをしてないそうだ。誰かがモレナに味方して、ゴッソリ中身を入れ替えてるぞ。それと祭孤児たちの一部が、移民だのなんだの理由を付けて移動する間に姿を消している。俺から言えるのはここまでだ」
「ついでに言う内容じゃないだろ。つまり今までの常識が通じない可能性か」
「第四王子を裏切るくらいで済めば御の字だ。オウ=ケンイの仕込みならマシだが」
「流石にソレはないと信じたいが……注意はしておこう」
ヒンリギとの話の最後で、『これが伝えたかったんだ』と演技しておく。
俺はヨークシンで活躍したり、開拓民として移民を差配するシノギを始めている。人と物流の利ザヤで富を得ているシュウ=ウ組のヒンリギに、こんな環境でしか話を通せないという事は、かなり信憑性のある案件だと信じてはくれるだろう。ここでの話は継承戦で説得力を増すための布石でしかない。実際、シュウ=ウで握ってる情報と、うちで預かってる情報を照らし合わせたらかなりの齟齬が出る筈だ。その中には売られた奴も居れば、エイ=イに利用される奴もいるだろう。
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「という訳で、今回はゴンとキルアたちが主力だ。強くはないが厄介だ、全神経を研ぎ澄ませ。全力を出すのは多分、自爆装置でも動かない限りは要らん」
「自爆装置!?」
「自爆装置かよ」
予想通り二人の反応は対照的だった。
ゴンは面白そうだという印象であり、キルアは余計なことだと言わんばかりだ。共に子供の反応としては良くある事で、むしろ『逆だったかもしれねえ』という程度には不自然ではない。俺の後ろの方に居るこの国の軍人も、きっと苦笑いをしている筈だ。何しろ彼が動くのは、俺たちが下がった後の筈なのだから。
「ナックル。今回のチームリーダーはお前だぞ。余計な事はしなくて良いから、予想範囲からどれだけズレていたかだけ調べてくれば良い」
「わーってるよ大将」
一方、ナックルの方はリーゼントを何とかするので大変だった。
彼は頭が金魚鉢みたいになってる潜水服を愛用しているので、リーゼントを収めるのにいっぱいいっぱいだからだ。その様子はどうみても田舎のヤンキーが泳ぎに出掛ける用であり……実は彼がインテリゲンチャであるとは軍人さんも判るまい。彼にはボーナスとしてキャットカフェの定期券でも渡すことにしておこう。
「あの……海の中に潜るとか嘘ですよね? いえ、それだけならともかく、塩の塊の中で血を流せとか……鮫とか寄ってきたらどうするんですか?! っていうか、ショック死したらどうしてくれるんですか?!」
「安心しろ。周囲に漂う電磁波が鮫を寄せ付けない。傷は俺が治療する」
「それでも能力を使えってのは、否定しないんですね……やだなあ」
「偵察向きの能力者を連れて来る話で、決めたのはヒンリギだ。諦めろ」
ザクロはヘタレだが、能力は有用だ。特に細分化させられるのが良い。
無数の血を簡単な使い魔に変えて、指示したことを守らせるくらいの使い方だが、指示の仕方次第ではモラウの煙よりも使い易い。もちろんこの状態からバックレる可能性もあるが、継承戦が始まりそうな状態で、カチョウ・フウゲツの両王子が継承戦を降り、うちの組が協力体制を築くかもしれないという点で逃げることが許されるはずもない。まあ、継承戦が殺し合いになった時点で協力体制もクソもないのだが。
「オレの役目は詳細の把握だけで良いという事だが……倒してしまっても良いのだろう?」
「出来るなら構わん。お前の事だから無駄には戦わないのだろうしな」
「報酬次第だが、事前の取り決め通りなら規定に従うよ」
「ならお前の好きにすると良い。その判断を信じるだけだ」
アベンガネは水陸両用の念獣を用意して偵察にあたる予定だった。
途中の護衛が必要なら魚類固定だったらしいが、軍艦の中を調べるという話で、イモリみたいな爬虫類タイプを選ぶことにしたらしい。だが、彼が言う『倒す』というのは文字通りにガードモンスターを倒すという事ではない。切り札の中に、念で作られたトラップがまたあったら除念してしまうということだろう。まあ、海の中だと条件がまた変わるので、除念ではなく別の使い方なのかもしれないが。どのみち帯同だけで一億ジェニー、除念したら貢献度次第という大仕事である。
「今回、ユキ殿は入られないのですな」
「お国との契約もありますが、あの軍艦は戦没して時間が経過し、しかもこんな無茶な移動を繰り返して居ます。あの三人を連れて帰らないといけませんのでね。俺の能力は三人を守るために温存しないといけませんから」
お目付け役の軍人さんはいかにもと言った感じだが、いかにも過ぎる。
軍艦の中に同行するのはこの国の学者やら探検家と言う事になっているのだが……別に、そいつらが軍人で無いという理由は無いしな。いちおうの知識はあるとこっちのチームも保証したわけだが、そんなものは覚えさせれば済む話だ。軍人だってインテリ系の奴は居ないとおかしいし、証拠隠滅をしたい連中の話を鵜呑みに出来る筈がない。要するに、お目付け役はポーズでしかなかった。
(……ナックルの髪に機材が無いか注意を入れただけだから、今のところこちらを舐めているのか、最後に全部消すつもりだろうな。その上でしらばっくれるつもりだろう。だからこちらも最低人数に絞ってるし、向こうの要請を受けて俺やモラウも参加してない訳だが……残りの切り札は何だろうな。モラウが手配をしてくれてるはずだが)
保管庫代わりの沈没船と、NGLの線を切れた段階でもはや探検は終了だ。
だからこの国が心配しなくても何もする気はないが、だからと言って何もしない訳ではない。言っている意味が分からないと思うが、軍艦の中に対して何もする気はないが、ゴンとキルアとナックルを守るために念を使ってはいると言えば判り易いだろうか。
(俺が画像の伝達でモラウが指示出し。それだけ出来れば現場で何とかするだろう。ナックルはただの喧嘩を含めて戦闘経験が豊富だからな)
遠方の操作には高い放出系の才能が必要だが、別に操らなければ良い。
俺は映像を移動させる水を二つ用意し、写した物だけを写す水鏡を用意していて渡している。それをカメラ代わりにして写すことで保存してるわけだが、同じようにモラウが煙をダイバースーツなり荷物の中に入れる手はずになっていた。水鏡と一緒でシンプルな同調操作なら簡単だからな。映像を把握した後で、簡単なサインを送るという手はずになっている。
(俺も見に行きたいところだが、監視されて居る身ではどうしようもあるまい。モラウに任せるとして、これで蟻編対策は十分か。今ならばまだ護衛軍が生まれて居ない時間の筈だし、ジャイロが無事な以上は餌が足りてない可能性が高い)
パリストンが居るので餌は居るとしても限界はある。
その上で原作よりも餌の数が多くなく、これからゴンとキルアをカイトに付けて周回させれば問題は無いだろう。フィンクスとフェイタンからも蟻は居たが、師団長も弱いそうだしな。おそらくはネテロ会長が抱いた感想が変化して、『あいつ、ワシと同じくらいじゃね?』という感じで勝負を挑みに行くのではないかと思われた。もちろんこれ以上は誰も死なず、蟻が全く強化されなければ蟻編もそこで終了である。
『ユキ。悪い知らせだ。馬鹿が証拠隠滅に動きやがった。ゴンたちはヨコヌキをして出るとか言ってるぞ』
『功績稼ぎのつもりか、それとも操られたか。予定通りにはいかんもんだな』
暫くしてモラウから連絡が入った。今ごろは軍人たちも動いているだろう。
俺は暫く気にしない風を装い、浮かんでいる軍艦が揺らいだ辺りで行動に出る。お目付け役にハンドサインで『動くぞ』と伝えると、ゴーグルを着けたままだが蒼い顔で頷いていた。おそらくこの軍人さんには高精度の通信機でも持たされていたのかもな。
『まずは艦を安定させる。次にゴンたちが飛び出た穴の残骸を跳ね除けるぞ。ああ、水が出来るだけ軍艦の中に勢いよく向かわない様にもしないとな』
『やってくれ。ああも傾いていたんじゃ、いつ別の方向に流れてくか判らねえ』
水を操作する水を用意して、海流の流れに載せる。
あくまでバランスを取る為、意図した通りに力を加えるだけだ。その後にガゴンと装甲板が歪んだ時、可能な限り圧力を操作して水の勢いを抑えた。ゆっくり水が入って行くならば、ゴンたちは自力で出て来れるからである。もちろん既に完全浸水している可能性もあるので、その時は破片が外に向かって移動し易くなるだろう。
『自壊装置に手を掛けたことは大目に見ましょう。お互いにここでは何も見なかった。アレは自然の流れでそうなった。それで良いですか?』
『は、はい。ここには何も居りませんでした』
『いけませんな。それでは何か居た様ではないですか』
『そうですな。ははは』
こちらの話を聞いてなかったのかボロを出した。
おそらくはこの国の軍部も馬鹿が外来種を飼っていたことまでは突き止めたのだろう。あるいは判った上で、自国の利益の為に動かせると思ったのかもしれない。そういえば薔薇の手配とか妙に手際が良かったしな。押し付けるにしろ、どこかが提供する必要はあったはずだ。その辺を考えると、実に判り易い背景であった。
『お帰り二人とも。面白かったか?』
『アトラクションとしちゃな』
『ドキドキはしたよ。間に合わないかと思った』
『後で話を聞かせてくれ。終わったらカイトに会わせよう』
こうして形のない島を巡る一件は終わった。
NGLに連絡を付け、ジャイロと交渉して協会にも話を通すことにする。向こうで麻薬関連の証拠を隠滅している間に、ネテロ会長たちが動くだろう。
という訳で海洋探索のお話は終りです。
軍艦の中にはいって弱めの念獣を倒し、強めの念獣とか、軍人さんと戦闘。
ゴンとキルアの経験値が、そこそこの美尾田でしょう……で終了。
時間をかけた割りにあっけない終わりですが、そもそも探検はオマケ。
予備の手札が無くなり蟻編への追加がないとか、パリストンが別の隠し札を使うとか、その辺の背景を匂わせて終わりになります。
●継承戦への布石2
ヒンリギにエイ=イ一家に問題があるのと、シュウ=ウ一家に裏切る者がいる可能性とか、その辺を仕込んでいる感じですね。あとは継承戦では降りるつもりで、下位王子連合を組む気が無いという意思表示になります。