インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

43 / 79
同じ流れだとしても

「人気取りの全方位外交?」

 

「今のところ……と言う前提だけどな」

 

 久しぶりに出逢ったハンゾーは、来る前に軽く情報を漁ったそうだ。

 

仕事が早いというか、合流するまでのついでと言おうか、何処かの魔法学校ならニンジャ寮に三十点と評価したいほどである。島にあるミテネ連邦に来ると直ぐには協会に行けないので、最低限の感触を掴んで来たらしい。

 

「パリストン・ヒルは腕利きで事務仕事に関わらず、人の数倍出来る男だという。複数の分野で名前を挙げたトリプルハンターと言われても遜色のない男で、調べただけでも確かにキレ者だな。世評じゃあ次の会長選で勝つための仕込みと思われている」

 

「……察するに、何か違和感があったんだな? だから今のところ、と」

 

「そちらの情報を聞く前の、先入観の無い判断として聞いといてくれ」

 

 ハンゾーは俺から詳細を聞く前に仮説を立てた。

 

俺がワザワザ調査を依頼する程の相手という前提だけでも、この行動は確かにおかしいという符号だろう。俺から追加情報を得てないから確信は持っていないが、幾つも重なっていけば本当に怪しいと断定する物と思われた。要するにハンゾーもまた、俺と同じで一つ二つの情報では確定しないタイプと言う事だ。これが行動となると即座に動く当たり、忍者というのは伊達ではないのだろう。

 

「現段階じゃあ次の会長選なんぞ何時あるのか分からないほどの段階だ。そりゃネテロ会長が出撃しないと成らない相手ってのは凄いだろうさ。だが、そこに会長に何かある確信を持っているなら怪しいという事になるが、もっと怪しいのは現会長が死んだとして、次の会長に一番近いのはパリストンってことだな。ここで疑惑を持たれてまで無理にするべきじゃないだろ? 放っておいても十年以内に要請が来ると思うぜ」

 

「良いカンしてるよ。協専ハンターを抑えてるから、まず彼になるだろうな」

 

「なるほど。お前さんが依頼して来た理由が分かったよ。不審過ぎる」

 

 要するにパリストンは行動すべきではないタイミングで行動して居るのだ。

 

俺の件だけならまだカキンとの取引とか、戦没遺構の話で口止めとしてそこの国が手を回した可能性もあるかもしれない。だが、全方位に良い顔をしても大して利益にはならないのだ。何しろ協会の会長は基本的に互選であり、会長候補同士で絞られた時に降りる降りないで話が付けられる位だ。もちろん原作で起きたことを詳細には覚えてないので、細かいルールは違う可能性もあるが、それだってあからさまに行動する理由にはならない。

 

「こっちのメンバーには別件で既に伝えてあるんだが、パリストンのプロファイルは愉快犯。手段と目的が入れ違って居る男で、過程を楽しむためには何でもやる男だ。だからこそ、今回の件ではおかしいという事になるな」

 

「会長に成る気は無いのに会長選の準備? 胡散臭いってもんじゃねえな」

 

「むしろ、会長選で問題を起こすためにやっているとしか思えない」

 

 会長に成る気もないのに、懸命な努力をしている? 実に胡散臭い。

 

確か『好きな物を傷つけたい』とか言う頭おかしい趣味嗜好をしている。だから大好きな会長で遊んでいるし、ちょっと間違えたら死ぬようなことをして、原作では実際に死んだ。『死ぬような目に合わせたが、死んで欲しくなかった』という心境らしい。翻って今回の件も、ハンター協会に問題を引き起こす為だとしたら、まあ判らないでもなかった。

 

「もう少し突っ込んで調べてみるか? どこまでやるかは料金次第になるが」

 

「どうしたものかな。深淵を覗く者は、深淵から覗かれているともいうし、これ以上調査すればパリストンは行動に出るだろう。さて……」

 

 会長が死んだり重症になったとして選挙時に何かするのだろう。

 

途中でV5に戦力借りて占拠するとか、逆に不審抱かせてハンターが持つ権利に疑問を持たせるとかだろうか? パっと考え付くのはそのくらいだ。理由なんか『愛する協会を台無しにしたい』くらいでもやってしまうのがパリストンだとして、他にも理由があって一番都合良く愉しめる方法が今回の一件だったと考えるのがしっくりくる。では何がついでであり、こちらはどうすべきなのだろうか?

 

(原作知識としてはビヨンドと手を組んで暗黒大陸進出の為。そこに他のV5も絡んで、カキンを先行させてデータを取ろうとしているくらいと考えてみようか。他にもネテロ会長が抑え込んでる連中とか、バルサ諸島の何処かの国がミテネ連邦のパワーバランスを崩して戦争を引き起こすとかその辺だろうか?)

 

 蟻編でNGLが選ばれたのは、情報遮断やら政情不安もあるだろう。

 

パリストンの友人(・・)たちから持ち込まれた幾つかの要望があって、その多くに合致したのがミテネ連邦と、そこに含まれない東ゴルドーだったと思う方が判り易い。だが、別件に関してはもはやあまり意味を為さないだろう。もし協会に泥を塗りたかったら、協専なりゾルディック家でも使って政情をついでの様に荒らす程度だと思われる。つまり、収束するのはやはり暗黒大陸と会長・協会なのだ。

 

(蟻編はおそらく原作の縮小再生産の形で集約される。協会が忙しくなり雲行きが怪しくなって、ネテロ会長に増援が送られそうにないからな。そしてパリストンが色々やってる行動が、結果的に暗黒大陸行きになるのかもしれん。……ただ重要なのはそこじゃない。この件を止めるべきか、それとも放置して利用するか、あるいは離れて見て居るべきか……)

 

 ネテロ会長の武道家気質とパリストンの工作で同じ結果になりそうだ。

 

俺がやった工作は波風立てない小さなものでしかない。パリストンが愉快犯的に大きな流れにしたらかき消されてしまう。まして肝心のネテロ会長が『オレより強い相手に挑みに行く』をやっているのだから、止めようがないというか止め甲斐がない。蟻編の中盤でモラウとノヴが初めて出て来た時に、危機的状況下なのに楽観というか『勝つ気でやるのがハンター』とか言ってて読者が驚いた時期なので仕方がないくらいだ。

 

「やはりパリストンへの調査と介入は止めておこう。俺に得るモノが無い上に、迂闊に触ると気が付かれて噛みつかれそうだ。代わりに頼みたいことがある」

 

「オレの本業は護衛業なんだがね」

 

 現時点でパリストンの邪魔をする為には行動してないから敵対はしない。

 

あくまでNGLを助けるというか、蟻に餌を与えない程度の動きしかしてないつもりだった。だが、これ以上行動するとパリストンが何かしてくる可能性は高いのだ。『そっちがそう来るなら、全力でお相手しますよ』とか笑みを浮かべる未来しか見えない。そうなると脛に傷を持つカキン帝国の善良ならざる人民としては手が出ないのだ。ならばパリストンが協会に混乱を引き起こすとして見守っておくか、それに便乗した方が良いだろう。

 

「おそらくだがこの先、一時的に協会の機能がマヒする公算が高い。そうなると手綱が緩むし、パリストンが狙っての事なら締め付けもしないだろう。そこで使えそうな人材及び、関わって来そうな人間の人物像を見ておいてくれ。雇用できる奴は雇用するし、暗黒大陸行きが解禁されるかは別にして、開拓人員は居て悪くはない」

 

「スパイをするよりは本業に近いが、そんな問題が起きんのか?」

 

「起こすさ。パリストンなら意図的にやる」

 

 俺のシングル推薦は自意識過剰で、実際にはパリストンの前フリだった。

 

原作を知ってるならそう考えるのが自然だし、方法は判らないが何かしらのキッカケで大爆破するのだろう。それこそ俺が疑義を呈して自分の名誉といずれ実力で手に入れるシングルの価値を守ろうとした以上に、誰かが幾つもの疑義を抱えてパリストンの陰謀を暴こうと突きつける可能性はあるのだ。八方美人はそれに向けた調整の一つで、別に成功しても構わない策程度と考えておこう。協会の会長に成れたら命令を下して辞任し、追い詰められたら自爆するだけなのだから。

 

「協専ハンターっていつから出来て、いつから暮らしてるんだろうな? それを支援するのがハンター協会からの依頼な訳だが、突然ハンターライセンスの効力停止とか、協会会員というだけで仕事を回せなくなったらどうなる? 志を持って協会に尽くしてる連中はやることを変えるだけだろうがな」

 

「大樹に寄り掛かって生きてる連中は大混乱するだろうな。ま、理解はしたよ」

 

 俺は俺の目的のためにカキンが揺らいで良いと思ってるが、対策はしている。

 

もし継承戦でカキンの王族が全滅しても、帝国は二線者を中心に再興するだろう。仮に儀式の完全途絶で帝国滅亡の危機だったとしても、人民の一部は残るだろう。その時に『カキン帝国出身者? そんな奴に信用がある訳ないだろう。流星街と変わらん』とか言われる可能性はある訳だ。だから移民ビジネスに手を出しているし、開拓団にカキン帝国以外の人間も入れている。ハメ組で行き場の無くなった奴もそうだし、若返ったバッテラ夫妻もその一つかもしれない。

 

(この世界には人類領域ですら危険がまだまだ多い。だから協専ハンターが食っていける訳だし、念能力者がソレをやっても重宝される。マフィアの中には普通に同胞団をベースとしている所もあるだろうな。ひとまず目指すべきはそこだ。カキン同胞団じゃなく、有志による互助組織)

 

 某RPGの腹黒エルフも言ったが、事件を事前に止めても利益にならない。

 

だからパリストンがハンター協会を揺らがせるならば、それに便乗するだけだ。協専ハンターを警備に付け、なんだったらチームリーダーや開拓団のリーダーに据えても良い。これからはカキン帝国者以外も必要になって行くし、協会だけではなくカキン帝国でも信用崩壊が起きれば、無関係な人間による保証は重要だろう。使い捨ての人員だけなら流星街もあるだろうが、そこを利用してもお互いに反感が出来るだけだ。やるなら国籍に関わらず、実力で判断できる組織造りだな。

 

(パリストンが何処までやるか判らんが、自分が関わった悪事だけでなく知り得る悪事も全部バラす可能性はある。何だったら暴君を暗殺する相談を受けておいて、ゾルディック家に勝手に依頼しても良いな。会長なら増援が来なきゃ、自費で原作通りゼノ達に依頼するから連鎖させられる)

 

 もしこのままなら、会長は原作とは別ルートで同じ事をするだろう。

 

原作では護衛軍が強すぎる上に三体も居るから引き剥がすために雇ったが、今回はモラウのように多様性のあるアシストが居ないからというところか? 歴史の修正作用と言うよりは、『ネテロ会長の理想とする戦闘の為の前準備』が決まっているからだろう。そうなると予想したというか、添う流れが変わる様にパリストンが協会を混乱させる可能性はある。どうせ暗黒大陸行きの依頼を叶えるための過程だし、その方が会長が喜ぶからである。

 

(これから半年~一年の間にやれることはツェリードニヒ対策くらいだと思っていたが、なかなか面白く成って来たじゃないか。仮にパリストンがゾルディック家に依頼すると仮定して、キルアに本拠が手薄になる事を告げるべきか? しかし下手をすると唆した俺が狙われるんだよな。どうしたものか)

 

 蟻編が小さく終わる様に介入したため、することが無くなって居た。

 

アルカ/ナニカに関することは元から大きく関わる気は無かった。何しろゾルディック家のインナーミッションだし、下手に口を出して反感を買うとそれだけで殺されかねないからだ。かといって護衛を頼めるような信用できるハンターに関しては既に接触可能な範囲で接触している。ツェリードニヒの犯罪情報を仕入れてハルケンブルグの耳に入れる位しかやりようがないと思っていたのだ。だが、パリストンが逆転裁判をしたいなら話が変って来る。

 

(理性的に考えるなら教えるべきじゃない、数年後なら確実にアルカとナニカを連れ出せる筈だ。だが、それは本当に良い事なのか?キルアが勝手に想像して、イルミと母親が動かせる人間しかいない時期に戻ってしまう可能性もゼロじゃないしな。最低限は教えて、インナーミッションに挑ませるべきか)

 

 無理に原作と同じ時期にする必要は全くない。だが、避けるべきだろうか?

 

今ならば誰もキルアが大きく成長しているとは思ってもいないだろう。将来の方が確実にイルミを出し抜けるはずだが、その時には『キルアならば出来て当然』と身内の欲目全開で考え、それがキルアへの障害になり得る可能性はあり得た。またキルアの方も焦りと余裕がバランスよく成立しており、原作のようにゴンさん化の悪影響が無ければかなり良い状態だろう。それを考えたらもシルバとゼノがゾルディック家を制している今の方が、可能性が高いのではないだろうか。

 

(俺が利用する必要はないが、だからと言ってそれは冷た過ぎる気がしないでもない。それに後からカチョウやフウゲツが知った時、自分たちと同じ身の上だったアルカとナニカの事を知って、何も思わないのか? やはり暴走しない程度に教えておくべきだろう)

 

 他人など別に気にもしないが、双子と自分くらいは満足していたかった。

 

カチョウとフウゲツにガッカリされるような事はしたくないし、自分が満足できない生き方も真っ平ごめんだ。転生した以上は未練など多くはないが、だからこそ自分が気分良くなるために行動するとしよう。『自由人を気取った御曹司で、誰かを心配している』事に関してキルアに共感することが多い。それこそ蟻を殺すだけなら楽に倒せるミッションで、命懸けの勝負を挑むネテロ会長とはその辺の思い入れが全く違ったというのもあるだろう。




 と言う訳でもう少しで会長に何かあった時の会議になります。
原作と異なる様に介入しても、元の流れに戻す人が居たら同じになる。
変えたかったらそいつを何とかしなくちゃならないが、そいつは平然と自●テロを起こしかねない奴だったという感じですね。

●前回の件
 他でもやってた。自意識過剰でハズカシーって感じです。
主人公が先を読めてるのは、原作とかパリストンの性格知ってるとか。
彼ならば『私がみなさんお待ちかねのパブリックエネミーです!』
とか言いかねないと判ってるからですね。
ボドパイは静観、ミザイストムはこの機に乗じて、チードルは動いて自滅しそう。

●主人公は何を得たの?
 この先、カキンが駄目になっても良い様に、組織を太くして自分の手から放して、そこに別名義で入り込む為ですかね。後はキルアがアルカ/ナニカを奪還し易いようにする調整。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。