インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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暗中に布石を

「なんであいつが……いや、それ以上にてめえが知ってやがる?」

 

「疑問に思ったキッカケは大男……ウヴォーギンの見事な死にざまだったかな」

 

「!?」

 

 パリストン=シーラ説に当然ながらフィンクスは噛みついて来た。

 

前世でもあまり有力な説では無かったはずだ。俺もそこまで信じているわけでもない。だが、重要なのはこの件で幻影旅団を騙す気が無いと伝えつつ、彼らに接触を続けることである。クルタ族の話を聞く必要性からも、決して避けては通れない道だ。

 

「クラピカが言うには能力の相性差もあって圧倒的な勝敗だったのに、仲間達を売ることもなく戦いの結果で殺されて当然とでも言わんばかりの姿だったらしい。だが違和感を覚えたのは死に顔がスッキリしているかの様な表情だった」

 

「……それがどうした。あいつは戦闘狂だからな」

 

 フィンクスの表情は半分肯定で半分否定というところだった。

 

普通ならばその様子からなにも伺えまい。そもそも何も語る気が無いのに、俺を煙に巻くように噛みついて居るようだ。もしかしたらフィンクスもそれなりに思う所があったのかもしれない。

 

「倒した筈のクラピカの方が、罪を重ねて苦しんでいるかのように。もし放置したら、クラピカもまた自分を裁く者を求めそうだったよ。要するに断罪者が現れて、悪を為したら裁かれることが嬉しいかの様に思えたんじゃないかと思う。半分ほどはな」

 

「そうかもしれねえが、残り半分はやっぱり戦闘……」

 

「残り半分は君らが盗賊になったキッカケだよ。おそらくね」

 

「……」

 

 ここでフィンクスの顔は何とも言えない表情になる。

 

過去を思い出して嫌な事を連想したのか、そのことを忘れてヒャッハーしていた自分が嫌になったのか。盗賊として生きてきた以上、今更なんだと自分を肯定しているかのようだ。だが残念ながら俺は愉悦部ではないので、ここで止る訳にはいかない。ここから語ることは吐き気を催すような内容だが、それでも語らねばならないのだ。まさに『お前が始めた物語だろ』というやつだろう。

 

「暫くしておかしいと思ったのは、うちの国のエイ=イ一家という一番のクソ共の顛末を聞いた時だ。捕まえた後も聞いたろ? 幹部の一部しか倒してないって。だが、俺たちはあの組が内部抗争に陥ったことで、外部のせいなのかそれともそいつに何かあったのかを調べる必要が出た。できれば知りたくは無かったがね」

 

「他所さまの事情に顔を突っ込むからだよ。てか、前に言ってたな」

 

 実に気まずい状況である。フィンクスの顔は険悪に籠ってるし俺もそうだ。

 

できれば耳を塞いでこの場から逃げ出したいが、話し始めた以上は止めるわけにはいかない。そしてここからある程度のスッキリさを確保する為には、話を終えて次の段階に進まなければならないのだ。

 

「エイ=イ一家は金持ち御用達のクソ業者だった。しかもそいつは十老頭にも尻尾を振ってて、王子に頭を下げ組織を拡大しマフィアたちに媚びを売る為に、うちの国の貧民も他所の国の子供も歯牙に掛けていた。スナッフビデオやポルノビデオを何百本も見る羽目になったよ。前に言ったろ、うちの国は情報が遅くてカタヅケンジャーはまだ新しい方だ……そして飴の代わりに……」

 

「それ以上何も言うんじゃねえ! お前に何が分かる!」

 

 実際にはカタヅケンジャーだけではないが、様々な手段を飴にしていた。

 

子供が欲しがりそうな物を幾つも用意して、おびき出したところを捕まえてハイエースする。もちろん隙だらけでかっさらえる奴は何も考えずに拐うし、場合によっては取引のお釣りに人足代わりの子供をいただいていくこともある。貧しい国はどこも貧しいからな。カキンだけの話ではないし、その子らを食い物にして売り物にしていたのだろう。

 

「……ああ、お前は気付いてしまったんだな。それとも団長か誰かが説明したのか? カタヅケンジャーファンの子供に対して『カタヅケンジャー参上!』と刻んで殺してた話。それを見た瞬間に頭が沸騰したよ。『ぶち殺すぞヒューマン』とか『この国はもう滅んだ方が良い』、それが俺の頭に浮かんだ言葉だよ」

 

「はっ! どうだかな。それとも同情する気か、流星街の住民の気持ち……」

 

「俺は作られた人間だ。同胞を守ろうと思えるお前たちが心底羨ましい」

 

「……」

 

 俺たちは軽蔑の目を向け合った。ゴミの中に居るゴミが互いを嫌悪している。

 

争いは同じレベルの人間でしか発生しないというが、この場における争いはゴミ溜めの中であがきながら、その外に理想郷があるとは全く信じられない者たちの嫌悪だった。結局、幻影旅団も自分たちの先に良い未来があるとはまったく思っていないんだろう。せめて故郷の流星街の者が出来るだけ幸せに、いや、幸せじゃないにしてもこれ以上なにも奪われないようにと思えるのが彼らで、カチョウとフウゲツ以外は心底どうでも良いと思うのが俺と言う差であろう。

 

「そしてお前たちかどうか分からないが、吹替の上映会を見たという者が流星街に沢山いると知った。旅団の後期メンバーの何人かはその出身なんじゃないか? そう思うと何となく旅団結成の理由に気が付いた。あえて、何かは言わんよ。理念が薄れるからな。ただ、その過去があるとして、一つ疑問が生じる」

 

「……疑問だと?」

 

「クルタ族の虐殺」

 

 流星街を守るために悪名を広める。その事を決して語ってはいけない。

 

フィンクスだって気まずいだろうが、口にしたが最後、その呪文の効力は失われてしまうのだ。人々にとって幻影旅団に悪のイメージがあり、それが流星街を拠点にしている。その報復対象に幻影旅団も気まぐれに協力することがある。そう思わせて置かねば意味が無いのだ。

 

「あの一族は自分達を守るために排他的だ。モメる事もあるだろう、協力関係にある誰かを守るため、互いに殺し合う事もあるだろうさ。だが、疑問に思う。俺が推測する通りの結成理由だったとして、幻影旅団のメンバーが念能力者としての守り手を殺すことはあっても、拷問までして老若男女を殺戮するとは思えん。だが、エイ=イ一家みたいな連中が実行し、その戦果を奪う事はあるんじゃないか? 念能力を進化させるために」

 

「……その質問、答える意味はねえだろ」

 

 フィンクスは返答しなかった。だが、否定では無く『必要が無い』だ。

 

おそらく緋の目という『世界の美色』を奪って独占する事に意味があったのだろう。そして幻影旅団の悪名を広めるために、『虐殺したのは幻影旅団』という噂を広めたのではないだろうか? 少なくとも積極的に否定することはできない。そんなことをすれば悪名を維持なんて出来ないのだからだ。ゆえに目の前にいるフィンクスも否定などしない。

 

「一つ一つは大したことのない違和感だ。だが、それらが並んでいくと気味悪い程に形になって行く。そして決定的だったのは、クラピカから聞いたんだよ。一族が最後に知り合った仲が良い人物はシーラという少女で、助けたお礼に恐竜ハンターの本をくれたそうだよ。そしてクルタ族虐殺の発見者は少女とだけ判って居る。仮に推測が正しいのだとすれば、選択肢を間違えて二度も救えなかったんだ、しかも目の前でね」

 

「そいつがシーラがパリストンって奴で、今回の黒幕って理由か? 確証は?」

 

「ヨークシンで得られた情報を元に、君らの団長の能力条件を推測してみた」

 

「……ちっ。気色悪いぜ、お前」

 

 フィンクスが証拠を尋ねるのは当然なので、傍証を用意して見た。

 

得られる情報からクロロの『盗賊の極意』と、あるかもしれない『人格をコントロールするノート』の二つがあると言うメモだ。ノートの方は幻影旅団と言う十二人のメンバーが居て、倒した奴が入れてしまうというコントロールできない部分があり、それが団員を補充するルールになっているし、進歩条件・進化条件はこちらに書いてあって団長から団長に盗賊の極意が継承されるというもの。そしてもう一つはクロロが語ったルールの他、考察組が語り合った内容を記してある。

 

「仮に推測が正しい場合、行為に二つの意味がある。大事なモノを傷つけて来たから、それを趣味だとして偽り続けるしかないという思い。そして、ソレを乗り越えて自分の仕業なんか小さい物だと証明して欲しいという思いだ」

 

「だからパリストンを止めるのに協力しろってか」

 

「一応はね。もう一つあるが俺は関与すべきじゃない」

 

「当たり前だろ。それをどうするかはオレらのすることだ」

 

 フィンクスはシーラとは呼ばなかった。ただ否定はしてない。

 

仮にシーラと無関係だと断定していた場合、『お礼参り』をするのは当然のことで、右腕を失った借りを返しに行かねば嘘だと思っていたのは確かだ。だが、それが『止める』と穏当な言い方をしている段階で、半ば認めた様な物だ。とりあえず倒すのではなく陰謀を止める、それが無理なら被害を抑える。そこまでは引き受けてくれるという事だろう。それ以上は難しいだろうし、もう一つの要件……クロロの思考がブレていっている話に関しては、納得はしているが介入はするなと言う事だろう。

 

「勇者の末裔? ウソくせええ」

 

「それが一番判り易い言葉ってことさ。『世界の敵を暗殺する者』。その事を理解してれば、おそらく君の父親も祖父も何も言わない筈だ」

 

 以前にモラウと話していたヨタ話を無事戻って来たキルアに語った。

 

ヨークシンでマチに話したことをフィンクスに説明した時はある程度の洗練が出来た様に、キルアに関してもまあ同じようなものだ。胡散臭いとは思いつつも、自らの役目が『金を貰って暗殺する裏稼業』ではなく、『世界の為に暗殺する勇者』だと捉え直せば反発を覚えてはいないようだ。まあ、蟻を殺して回ってたと言えなくも無いしな。

 

「そして名前はゴンやナニカとの出会いで変化した。『Kill,A』であり『Kell(竜骨).A』、ジャポン式なら『斬る亜』であり『着る亜』かな。要するに『途方もない事をする誰か、即ち阿房』を殺す存在であり、同時に共に在る存在になったと言える。まあ、こじつけではあるが」

 

「うわっ。スゲー。明らかに嘘なのにそれっぽく聞こえて来る」

 

 作者が何処まで意図的だったのかは分からないが、言葉遊びではある。

 

そして紙に『Iill().M』『入る身』『居る魅』、『Mill(工場).K』『見る鬼』と続けて記載。そこから『魅る軌』と書いて大きなバツをつけ、『魅る無』に変更する。そこから左に枝分かれさせて、『Kell.A』。右に枝分かれさせてかなり下の方に『Nan.I.(数えられない私).K』『無に加』、その左で『Kell.A』の真っ直ぐ下に『Al().K』『在る過』『有る嘉=禍』と記載した。最後に『Kall().T』『狩る徒』『駆る途』と書いて締めくくる。

 

「そしてお前のお母さんはジャポンから逃げ出して流星街に逃げ込んだ呪術師の一族で、獣のように子供産む姫扱いされて嫌だったから。そこから助けてくれたお前の父親に惚れている。そう考えるとかなり辻褄が合うんだ。お前のお母さんがそう言う呪術師だったから活性化した、確率は低かったが子供が多かったので当たってしまった。イルミは教育が行き過ぎて人形となり、ミルキは気が付いて封じられ、お前さんは一族後継者だから該当しないってな」

 

「……嘘だろコレ? あんのクソ婆が?」

 

「説得用だな。お前の」

 

「わーったよ。殺さねえ」

 

 キルアは母親の事を理解できない毒親だと思っていた。

 

だが、こうして理屈をつけて説明されると、どうして狂信的なまでに父親に尽くそうとするのか、正統後継者である自分にこだわろうとするのかが理解できてしまう。俺の推理はかなり伝奇ロマンによった妄想でしかないが、それでも今まで考えもしなかったバックボーンを想像してしまったのだろう。とりあえずはキルアがブチきれて母親を殺さなければ後はどうでも良い。仮に逃げ出したキルアがアルカ/ナニカと近親相姦しても、カチョウやフウゲツとやってる俺が言える立場じゃないしな。

 

「いいか。俺の推測が当たっているかは関係ない。一本筋が通って居る考えを維持できるなら、お前の父親は何も言わない筈だ。お前の家系は余計な人死にを出さない暗殺稼業、仕事であって無駄な殺しはしない。それ以外では家族を大事にしているから、殺すべきアルカを殺さない、ナニカを家族だと思ってないから軟禁している。その上で、お前の母親を人間扱いしている父親は、おそらくインナーミッションで手を出さんだろう」

 

「ズルイ言い方だよな。オヤジもお前も」

 

「それが大人になるって事さ。少年」

 

 制御できないなら殺さないといけない。

 

おそらく本質はそこだろう。アルカ/ナニカにルールがあって、被害が出ないならば殺すほどの事ではない。だが、何かのきっかけ……キルアのお願いで、大量に死者が出て、親しい家族も執事も故郷の人々も皆殺しになるなら殺さないといけない。そして異質だからアルカとナニカの違いに気が付いた段階で踏み込まず、理解することも無ければ共にあろうともしてないのだ。

 

「さて、話は変わって最後の援助が二つある。ジャポンで電気自動車が商品化された。俺がパドキアに作った会社でも安価に生産してるから、脱出に使いたいなら使え。もう一つはハンター協会が揺らぐ大きな裁判か選挙があって、おそらくお前の家族にも依頼が来る」

 

「マジで!? そりゃありがてえな利用できるじゃん」

 

「そうだ。その予測を告げて勝負を挑め。まず乗って来る」

 

 此処で重要なのは、ズルをするけどズルはしないという事だ。

 

そのままだと意味は分からないかもしれないが、勝つための仕込みはするけれど、不測の事態を利用して汚く勝つことはしないという意味である。嘘をついてゾルディック家の不在時に仕掛けたらそれは汚いズルだ、ずる賢いだけで実力は保証されてない。だが、正面突破に際して電気自動車を使って電気補充することは問題ない。エネルギー吸収というのは立派な能力だし、電気自動車をパドキアのインフラにする手腕を味方に付けられるならばそれはそれで、有用な力であるのだから。

 

「なんかそこまで力借りて悪ぃな」

 

「構わんさ。それにナニカの方を傷つけるな、それで気分が悪くなるような終わり方をするなと注文を付けたのは俺だ。そうだな、あえていうならNGLで行動していた幻影旅団が蟻の護衛軍と戦って大怪我を負った。リハビリに少し戦ってやってくれ。お前とゴンの経験にもなる」

 

 これで戦力に関しては原作以上で用意できる。

 

会長選挙になるのか、それともパリストンの逆転裁判になるのかは分からない。だが、蟻編に続いて先行して手を打てたことは大きい。その過程で幻影旅団に色々と吹き込むことも出来たので、継承戦編ではそれなりの協力体制を築けるだろう。念空間にも新しい調整を施したので、今のところは順調に事態は進行していた。




 と言う訳で、考察を交えつつ話を収束していく回です。

●考察
幻影旅団とシーラ、パリストンと協会、そしてキルアとアルカ/ナニカ。
半部以上は推測というか妄想ですが、まあ理由にはなりますので。
原作では断言されて居ない事なので、フィンクスは肯定も否定もしない、でもその態度が表している。としています。

なおビデオを何百本も見るとか、クソな世界の会話をするのはブラックラグーンのオマージュです。双子が殺人鬼にならなくて良かった(主人公が死んだらなりそうだけど)。

と言う訳で事前準備=蟻編の終わりはそろそろ終了。
次回で蟻編が正式に終わり、アルカ/ナニカ編を背景で進行しつつ、選挙編(?)が本格的に始まる予定です。

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