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「ネテロ会長が昏睡状態なのは知ってるか?」
「いや。だが、外来種の王に挑んだのは知ってる。命があるなら儲けものだなとは考えて居たぞ」
キルアの里帰りを見送って暫く、原作より早くキメラアント事件は終了した。
その結果はネテロ会長がギリギリ勝利したものの、昏睡状態で倒れているらしい。おそらくは『九十九の掌』を使って倒せず、『零』で倒し切ったのだろう。原作と違ってエネルギーが足りてないので外骨格を衝撃ダメージが貫通するし、人間の何倍もタフネスだが、それでもゼロを喰らったら死ぬレベルだったのだろう。また、コムギと『軍儀』をしてないので、読み合いで負け奥の手があるとは思わなかったのもあると思う。
「パリストン……あいつ、全方面に喧嘩売りやがった!」
「「は?」」
一連の話を報告してくれたのはハンゾーだが、驚くべきことが起きたらしい。
以前に『不用意に追い詰めたらパリストンは自爆する可能性がある』とは予想していたが、その流れ自体はあっていたが、規模が違うという事だろうか? それとも五大災厄でも持ち出したとか?
「NGLに飛行船を送って蟻の生き残りのついでに麻薬を回収するくらいはやると思ったが、他にも何かやってるのか?」
「わざと証拠を追跡させてやがる。しかも他の国の介入依頼に対してな」
「協会のハンターが追跡する中、程度の低い連中に隠蔽工作をさせて?」
「チームリーダーは腕利きだが、見られてるのを承知で放置してやがる」
そういえばハンゾーは自分の肉体を置いて情報収集が出来るんだったか。
おそらくは協専ハンターを調べて声を掛けている中、その能力でNGLに来た連中もついでに見張っていたのだろう。俺がミテネ連邦とヨルビアン大陸を往復していて、NGLでの調査情報を流しているのは知って居るからな。そんな場所に出掛けた段階で、声を掛けるのではなく能力での追跡に置き換えた可能性が高い。問題なのは、パリストンが何処までやる気か……だろう。
「察するにミテネ連邦にある国の複数の元首を暗殺して、回収した外来種に押し付け、連邦を大きくしつつそいつらを飼ってる他の国が権益を持って行くという流れかな? そして協会の幹部である十二支んたちはそれらを知らずに、パリストンの癒着を暴こうとしていると」
「それだけなら特には言わんさ。似たような事を他でもやってやがる」
「なん……だと」
背景的には旧ソヴィエト連邦や共産中国成立期の陰謀を想定していた。
大国であるV5の何処かが、一枚岩ではないミテネ連邦という島々をまとまった国にしつつ、制御下に置いて利益を吸い上げる構造である。NGLは行き過ぎた自然派主義だし、連邦に参加してない東ゴルドーは独裁国家である。それらをまとめて一つにおいてしまい、各種資源を優先的に持って行き、自分たちの息の掛かった企業に仕事を受注させる訳だ。相当な権益が舞い込むだろう。パリストンはネテロ暗殺や麻薬撲滅作戦のついでに、それらの依頼をこなしているのだと思っていた。
「協専ハンターの腕前や性格を調べてくれって依頼だったろ? それで各地を飛び回ってたんだがな。多かれ少なかれ、どこの国とも協会は接点がある。協専ハンターの中にはそう言う国に雇われて、色々してる連中も居るのさ。流石にNGLの話ほど大規模じゃないけどな」
「なるほど。協専ハンター全てに仕事を回すついでに、色々やったって事か」
ハンゾーへ依頼を出した頃にも予想したが、その時の範疇に収まらない。
その時はあくまでハンター協会の不正くらいで、パリストンがその中心に収まるくらいの予想でしかなかった。同じ流れであっても規模がまるで違い、パリストンはあくまで中心のキーでしかなくなるのだ。
「そう言う事だ。おそらく過去の依頼の中にも相当ヤバイのはあるぞ。
「なんともスケールの大きな自爆だな。各国の政権も巻き込む気とは」
必要悪を行う事で協会運営を円滑にやった。その結果が悪人呼ばわりである。
ゆえにパリストンは『僕を悪だと呼ぶなら結構、その役を演じて見せましょう』という行動に出るのは判って居た。だが、その規模がまるでおかしく、『どうせ悪人になるならば、世界の敵になって見せますよ。ついでに過去の事件も全部解決しちゃいますね。いやー。大変だなあ(みんなが)』とスッキリした顔で言いそうである。
「やりたい流れは理解していても、どうやるかまるで見当がつかなかったんだ。だがこれで漸くつかめた。パリストンは可能な限りの犯罪を暴いて、『世界の敵』として暗黒大陸の手前まで逃げ込む気だ」
「捕まえられるものなら、捕まえて御覧なさいってか? メンヘラじゃねえか」
「メンヘラでヤンデレの壮大な構ってちゃんだな。つける薬が無い」
パリストンの策略は理不尽さを押し付けているようで、別の物が隠れている。
用意された陰謀に対する回答を解いても駄目、解かなくても駄目。またそれらに至るまでに、パリストンの目的は果たされているという訳だ。今回で言うと、暗黒大陸へビヨンドたちを含めた多くの人々を連れて行くという目的が隠れている。ビヨンドもカキン帝国もこの事を知ったら苦笑するだろうが、おそらくは渋々火消しに回って追い掛けることにするだろう。
(話が大き過ぎてパリストンの懐に収まらない可能性もあるな。その場合はネテロ会長が疑われて、息子であるビヨンドへの追及が収まるか? そこで親子でリターンを独占しようとしている話にすれば捕まえられそうだが、そんな嘘をついてビヨンドを捕まえる理由も無い)
今回の件に関しては色々と手詰まりだ。特に何か出来るわけでもない。
あえて言うならば『関与する気が無い』のと、『関与しようがない』のでは意味が違う。会長選に関しては俺は候補者でも何でもなく、シングル認定が通ったとしても圏内には遥か遠いのだから工作する意味が無い。ビヨンドを事前に捕まえても暗黒大陸行きは起きそうだし、パリストンに至っては猶更だ。ただ、この流れを事前に知って居ること自体は少し意味が違ってくる。
(何か行動するとしたらカキンだ。今のうちにBW号へバックドアを仕掛ける? ハンゾーに頼むしかないが、暗殺用と思われて心証を悪くしそうだ。何かするとしてもツェリードニヒ関連のみ。ハンゾーに限らず、カキンの連中に対して、隔意はあっても害意は持たないと見せておくべきだろう)
俺は今回の会長選を、正式に『他山の石』とすることにした。
この言葉は『反面教師』とか『対岸の火事』と違って、他所の問題が巡り巡って自分の評価を高めるという意味である。パリストンが問題を起こしてカキンに飛び火するとして、俺は陰謀を企まないという姿勢を、ハンゾーであったり王室やマフィア達に見せておくのだ。その上で火消しに協力する姿勢を見せれば良いだろう。
「それでどうするんだ? 厄介なことになるぞ」
「どうもしない。知って居ても対処し様が無いし、告げ口しても揉み消されるだけだ。いや……返って利用されかねんな。それに俺の利益にならんし、あえて言うならカキンの王子が要請した犯罪の揉み消しがあるなら、それを暴けるように細工しておくだけだ。求めて悪事を働く気は無い」
V5に伝えたら事前に止めてくれるだろうが、俺たちも消されてしまう。
ならばとカキン帝国に伝えてもカキンは自分たちの犯罪関与だけ何とかして、後はだんまりを決め込むだろう。その結果で俺が利益を得るかもしれないが、シュウ=ウ一家やシャ=ア一家の方が大きな得をするだろう。彼らにはむしろ、地元のシノギを守るためにメンバーの多くを残して欲しいものである。何処かの腹黒エルフの逸話を何度も使い回してしまうが、この話を事前に止めても利益にはならないのだ。
「十二支んは?」
「とっくに共犯を持ちかけられるか、利用されて頭をカンカンにしているよ。言っても聞くものか」
前に予想した通り、ボトバイとミザイストムは最初に転んでいるだろう。
その時はボトバイが静観でミザイストムが積極的に暴く感じだと思ったが、この感じなら逆になるだろう。協会を守るべくボトバイが火消しに回ろうとするが、ミザイストムはこの流れを静観して可能な限りの犯罪の痕跡を追う可能性が高い。そのくらいの差でしかないと思われる。
「ハンゾー。すまないがここからは本業の一環として、護衛を鍛える方向で頼む。ただし、今のまま気が付かないフリで適当にスケジュールを組んでくれ。途中退出不可の会長選が始まる可能性があるが、それを俺たちは知らないことにする。会長選がどの形式になるかは分からないからな」
「中断前提で本業に勤しむとはな。ま、しないよりは良いさ」
継承戦の方も本決まりになって居るので、それに合わせてと見せる。
下位王子とは軽い連携を組んでいて、俺たちはベタ降りだが、中には『行けそうなら行き、駄目なら降る』という連中も居る(正しくはその支援部族)。彼らの私設兵を簡単に鍛えて訓練し、見どころのある奴は念能力を覚える為のトレーニングも施すつもりだ。俺はその流れを提供して他の王子を敵に回さないようにしつつ、水産資源関連も同時進行でやっておき、会長選でコンクラーベになった時は『時間の無駄だ』という態度を取る心算である。
「それと、パリストンの不祥事が明るみになって、それ以外の罪をあいつが着て大騒ぎになった場合、逃走補助にゾルディックを雇う可能性がある。もしかしたら協専ハンターと有志の武闘派を派遣する流れになる可能性もあるから、使えそうな連中には『護衛業の仕事を斡旋するつもりだから無視してくれ』と、後から伝えてくれ。パリストンは普通選挙をしない場合は手駒以外を捨てる可能性もある」
「はいよ。俺もせっかく調べた調査を無駄にはしたくないからな」
要するに、会長選に関しては擬態の為に利用すると言って良いだろう。
行動できることもあるが、出来るだけ事件には関わらずにいて、上が吹っ飛ぶのを待ってから対処に出た方が遥かに楽な筈だ。他にもBW号の詳細な地図を手に入れても間違いなく製造現場で誤魔化しているし、ではそれを把握しようかとしても、流石に各勢力とも警戒しているだろう。それならば疑われないようにチャンスがあっても関わらないようにしていて、対処能力だけ見せつけつつ、王位継承問題からは離れていく路線である姿を見せておいた方が良いと思われる。
「俺はパドキア入りして北部から水中用ドローンによる海底調査と通信ケーブルの事業を、電動自動車の事業共々本格化する。前々からプランは発表しているから違和感はないはずだ。おそらくはパリストンがこちらを巻き込んでククルーマウンテン付近またはヨルビアンにある協会本部の周囲で騒乱を起こすと思うが、仮に近くに居ても放置して良い。自分と仲間を守る事を優先してくれ」
「まあ報告書を届ける依頼が無けりゃ、無理にカキンからは動かんさ」
「「会長選に呼びつけられない限り」」
こうして俺たちはパリストンの起こす祭を無視して準備を始めた。
水中用ドローンと電気自動車に共用できるバッテリーを主軸に生産し、石油を使わない環境に優しい触れ込みで事業展開を行う。業界人からは『海の物とも山の物とも判らぬ電気自動車など』と笑われるだろうが、海洋資源の調査と暗黒大陸行く前の事前調査を兼ねれば採算は取れるからな。そしてそれらは継承戦やキルアの問題に関する布石であり、着々とその日を迎えることにした。
と言うわけで原作と違ってゴンではなくネテロ会長が昏睡です。
パリストンはチードルがちょっかい掛けて来たので受けて立った模様。
感覚的には何処かの太った少佐が、『狂ってる? 今さら何を言ってる?』みたいな返しをしてるような感じですね。
●パリストンは何をやるの?
ある事ある事、ハンター協会関係ない犯罪込みで『僕がやりました』と演出。V5の犯罪とかも色々と明るみに出す感じですね。それで暗黒大利機(の手前)まで逃げ込んで、ハンターだろうが軍人だろうが、みんな引き連れて逃避行の予定。
主人公はそれに重要部分が巻き込まれないようにしつつ、「俺は何も知らなかった。あー偶然だな~。損害も大きいな(主にキルア)」としらばっくれる感じですね。