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「は? 行き先が分かってるですって → 新人」
「そうだ。パリストンが最後に逃げ込む場所は予想がつく。だが、ルートは好きなように変え、必要なら戻って来るだろう。だから今は協会に対する追及を黙々と処理していくべきだ」
会長になって即座に辞任したキルアから十二支んに推薦された。
そこで俺は幹部入りを形式上断り、代わりにパリストンの移動経路に関しての流れと、ハンター協会が取るべき対応に関して提言した。それを見てどう判断するかは十二支ん自身が判断してくれるだろう。
「実際に協専がやったことも多々あるだろう。だが、確実に便乗している内容もあるはずだ。特に国家が押し付けて来るやつや、どうでも良い犯罪なんか特にな。その時に重要なのは金や暴力で黙らせることではなく、ただ冷静に『違う事は違う』と対応することだけだ。下手な取引も止めておいた方が良い」
「ワシはその意見に賛同する。今は無用な混乱を起こすべきではない」
「で、でも。パリストンさえ捕まえてしまえば → 辰」
俺の意見はともかく、ボトバイの話は否定できない。
彼が流れに乗った時点で、ほぼ決定したようなものだ。ネテロ会長は昏睡しているだけなので、治療が終わればなんとかなる可能性はある。気力・体力の枯渇であり元に戻るとは限らないが、会長が目覚めれば統制が発揮されると考えれば、余計な波風を立てない方が良いのも確かなのだ。ひとまずは会長を拘束したがるV5の目から隠しつつ、風評被害を中心に何とかするべきだろう。
「言っておくがパリストンを捕まえても黒幕を捕まえないと意味が無いぞ。加えて言えば現状の整理が付くだけでしかない。協専ハンターの多くが路頭に迷うのを見過ごすのか? 間違いなく犯罪者予備軍になるぞ」
「そういう事なら私も同調しよう。犯罪で最も重要なのは新たに起こさない事だ」
「うぐぐぐ……」
ミザイストムまで乗って来れば本決まりも同然である。
あの一件で利用された立場の人達であるが、チードルと違って姿かたちと立場を流用されただけだ。それだけならば誰でもその可能性はあり得たわけで、あえて地雷原でタップダンスしたがるチードルとは立ち位置が違う。まあ、犯罪を暴く為に共犯となっている可能性も高いんだけどな。
「わ、判ったわ。そう言う事なら聞くけど、黒幕と行先って?」
「既にネテロ会長から聞いている者も居るかもしれないが、会長にはビヨンドと言う息子がいる。ずっと陰に隠れて知られて居なかったが、俺の国であるカキンでは暗躍していたから知って居る者も多い。うちの連中が手前の新大陸狙いで満足しているのに対し、奴は明確に暗黒大陸行きを狙っていたからな。どういう手段で引っ張るのかと思ったが、奴がパリストンと組んでいるなら納得は出来る。世界の敵に名乗りを上げて、暗黒大陸に逃げ込む気だ」
蟻編後の流れも違うので、会長のビデオレターが公表されてない可能性もある。
そこで多少の含みも持たせつつ、カキンの準王族たる上位のマフィア(二線者)としての情報を提供して置いた。時期的にそろそろ新大陸進出の話を始めると思うので、その裏付けはその内にやってくれるだろう。その上で十二支んが俺をどうするのかは別に構わない。拘束されることは無いだろうし、新十二支んとして選出されるならば双方を取り持つだけである。
「ふん。ということはカキンはパリストンととも結託しているという訳ね」
「否定はしない。だが、『王は独りで啼く』という言葉を忘れてはいけない。危うい国であるカキン帝国は拡張せねば、いつ滅びてもおかしくないからだ。今は戦争という時代では無いし、そんな事をすれば確定で多くの人が死ぬだろう。だから戦争よりも新大陸を目指し、暗黒大陸で死ぬ可能性が高い移民に対し、専門家に頼ろうとした我が陛下の事を俺は笑いたくはない。継承戦とかいうクソな制約と誓約を作った、カキンという国に文句の一つも付けたくはあるがな」
俺は皮肉に対し、国王の判断を説いた。
それは美談では無いし、また泣き言でもない。ナスビー=ホイコーロという王は、為政者として為すべき事を成したのだ。陰謀を是とし、戦争ではなく移民という進出を選んだ。そこに発展はあるかもしれない、後退もあるかもしれない。だが、座して滅びを待つよりは良いと『より良い未来を目指した』という決断を笑う事など出来ないだろう。少なくとも俺は笑いたくはない。
「ともあれ陛下の指向性はいま語った通りだ。このまま移民が始まるとして、その大事業では多くの専門家を求めるだろう。その行き先が同じであるならば、そして大混乱が巻き起こるのであれば、手を組めるんじゃないか? おそらくは自然な流れで協会の名声も取り戻せると思うぞ」
「つまりあんたを十二支んに入れて手柄を寄こせって? 厚かましくない?」
「必要ならな。だがボトバイ師たちの伝手なら時間が掛かるが可能だろう」
「可能ではあるな。だが時間も労力も惜しいじゃろうよ」
ビヨンドの発表があってから動くより、今から動く方が良い。
俺の指摘をボトバイが補強した。原作でもあった話だが、十二支んの伝手ならば普通にカキン帝国への接触が可能なのだ。だが他の国家を経由してカキンに渡りをつけるのと、カキン内部の人物に手引きを頼むのでは話が全く違う。利用されないようにする手段は彼ら自身がするだろう。ならば時間という有限な資産と、伝手を頼る事で弱みを見せてしまうという労力をどう考えるかでしかない。だが、現在の協会はただでさえ大変なのだ。V5の追及を考えれば、今から対処しておくべきだろう。
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「背景としての話は分かった。だが重要なのは確実に渡航出来るかなのでは? 陰謀うんぬんを除くとして、船が沈んだら困るどころの話ではありませんよね。渡航したいかなど十二支ん入り以前の話です」
「ノヴ師の指摘も確かに。仮想新大陸までなら割りと簡単なのがネックです」
「まっ。パリストンだって沈む船で行きたかねえよな~」
俺と同じく十二支ん候補としてノヴも会議に参加している。
ネテロ会長と共にNGLで活躍した人物であり、会長選でも最終候補として残った。事務も出来るし能力も破格であり、暗黒大陸行きを考えたら外せない人物である。おそらくは今回の一件で発言力を増やし、文句なしの十二支ん入りと次回の会長筆頭候補くらいは確実だろう。ちなみに言葉をかぶせて補強したのはサイユウで、不真面目そうな顔だが、パリストンと繋がっている様子は伺えない。ただの感想だろうか怪しい所だ。
「NGLに投入されたキメラアント他の怪しげな外来種たちは、ビヨンドなりパリストン傘下の腕利きが回収したものと思われる。ただ、黒幕を論拠とするわけにはいかないので、モラウ師らのシーハンターの意見書をまとめておいた。俺の事業でも電信化を目指しているが……おそらくはノヴ師ならばギリギリ届くのでは?」
「可能と言えば可能だ。しかし、それでは距離専用だな。幾らも運べない」
俺はグリードアイランドの事は伏せて資料を配り始めた。
制作者であるジンが嫌われている以前に、あんなものはあくまで保険に過ぎない。まもなく降嫁するカチョウはともかくフウゲツが使ったら、魂を抜かれた原作の再現をするだけだ。よってそういう手段は全て終わった時の脱出用でしかない。まずはシーハンターの中で仮想新大陸方面へ船を出した者の情報を提供して置いた。
「資料にある通り、大型船ならばかなり安全に渡航できると言われている。現在カキンでは超大型の豪華客船を用意しているが、専門の大型船による物資輸送を考慮中だ。ノヴ師の能力はハンター協会全員の生存を担保する生命線になり得る」
「褒めてもらっても何も出ませんよ?」
「褒めてはいないさ。ただの事実だ」
眼鏡を押し上げて牽制の視線を飛ばして来るが微笑み返しておいた。
牽制合戦を会議でやる意味はない。特に興味のない十二支ん入りのライバル関係など不要である。幹部会メンバー入りも会長の座も、まとめて彼に提供して構わない。とりあえず彼をダシにすることで、カキンが用意する物理的なプラン以外にも、保険足り得る能力者は居ると説明しておく。もちろん資料には、ノヴ以外でも可能なように中継ポイントを設置する案を用意している。
「これからもカキンで用意するプランは流させていただこう。どうせ国王陛下は主導権など欲していない。二十万人の新国民が確実に辿り着けるならば機密も利益も安い物だろうよ」
「はん? それだとお前ん所は何が欲しいんだよ? 信じられねえなあ」
「仮想新大陸に根差した新国家の樹立」
転生してからようやくナスビー国王の気持ちに理解が出来た。
おそらくはカキン帝国はもはや限界なのだろう。継承戦と言う馬鹿なシステムがあるし、治水率が全国でも最底辺という段階で終わって居る。何かの弾みで滅びてもおかしくない国家を二つに割って、古くて大きい方は『王家と関係ないから滅びない可能性がある』と区切り、新しい国家を新大陸に建設しようとしていたのではないだろうか? その結果、間違えて滅びたとしても、古い方の大部分が失われるよりは安い物だ。
「無茶を言ってV6に加入しそうな勢いのカキンはここまで。制裁などせずとも他の国の牽制下に収まり、戦争を吹っ掛けられない程度にまとまる国として残す。そして自分たちは新たな国として立ち上げるんだ。衆目の危険視も、新大陸での危険も覚悟している。パリストンやビヨンドごときの口車など今更さ」
「だからハンター協会に計画を牛耳られても構わないと?」
「そういう事です。諸氏の御力を拝借したい」
例えメビウス湖内の世界より危険であっても滅びるよりは良い。
例えV5から実験用のマウス扱いされて新大陸を目指すとしても、それでも良いとカキン国王としてのナスビー王は考えているのだろう。継承戦と言うクソなシステムは許せないが、陛下に対してはそこまで嫌悪感は無い。まあ、もしフウゲツが継承戦から降りれなくなったら……残りの連中にはみんな仲良く死んでもらう必要があるのだが、そこから目を背けるよりは、まずは安全に渡航出来る計画を用意。そして国宝を盗み出して儀式を台無しにする用意をするとしよう。
と言う訳でビヨンドの発表よりも先に内部情報をリーク。
原作よりも早く仮想大陸行きの計画を練り始めます。
そして主人公の提言もあり、原作よりも補給船が増える感じですね。
ついでに言うとノヴも無事なので、かなり安全なルートになるでしょう。
まあ、継承戦にはまったく関係ないのですが。