インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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シノギ編
水際


「若。勝手な事をした連中の報告が上がって来やした。どうしやす?」

 

「追跡調査をやっておけ。馬鹿が自分で思いついた名案を試したのか、誰かにそそのかされたのか、それとも業者に強弁されて仕方なくやったのかで差は出る」

 

 カキン帝国に戻りハンター試験の合格を報告した。

 

そのご褒美としてカチョウやフウゲツとの面会は特になく、代わりといっては何だが正式に若頭に就任。シノギに関しての一次報告と処理を任されることになった。

 

「甘くありませんか?」

 

「他の組の仕業だったらモメますよ? まあ、これから大きくなるので将来に向けての訓練だと思ってください。人気次第で二号店・三号店を出していきますが、まずは屋台や移動販売で試してからですね」

 

 ちなみにこの案件は試験中に話した料理屋における不正である。

 

水餃子の中身が減らされてワンタンみたいになったり、ワンタンに至っては生地の中に肉を混ぜ込んで終了。揚げ物の肉は家畜だけではなく山の獣などの肉を混ぜ込んだりと、手抜きが多岐に渡る。この件で面倒なのは、『コストカットや味に関して自分で創意工夫した』と強弁できる範疇である事だ。中抜きなのかそれとも勝手に工夫したつもりなのか判り難いのが面倒である。

 

「将来に向けて……ですか。ひとまずその方向でやってみましょう。それとこれをご覧ください」

 

「ひとまず仮決定を下します。方針に沿って練りながら根回しですね」

 

 先ほどから色々言って来るのは親を支えている番頭格だ。

 

ジェイ=ピ一家は比較的に新しい組織で有能な人間は少なく、少数の精鋭が幅を利かせている。俺が組長である二線者の息子だからと言って、最初から全てを任せたりはしてくれないのだ。まずは俺が関わっている案件を任せて、その様子を見て権限を少しずつ増やしていく気なのだろう。テストされてるみたいだが、まさしくテストだし、組員の生活も関わっているので仕方あるまい。

 

「この後はどうされますか?」

 

「素材関連の方で少し海に潜ってみますよ。例の件で少し案がまとまりましてね。大っぴらにはできませんが、上手く行けば面白い事が出来ると思います」

 

 組長の息子を若頭として育ててる最中なので重要なのは回されない。

 

研修に丁度良い話が無くなったので、空いた俺の用事を番頭格が尋ねて来た。俺自体は料理屋だけではなくゲーム会社とか素材会社にも関わっているので、まずは素材ハンターとしての修行を兼ねてダイビングと修行である。

 

(しかし念空間の調整に失敗したのは痛かったな。断固とした意志が無いとこんなにもブレるのか。クロロが面倒な調整とかいった理由も判るな。それより若い俺が失敗するのも当然か)

 

 ハンター試験に戻りながら調整した念に齟齬が出た。

 

ボードゲームで基本セットで主に部屋を拡張し、エキスパンションで特殊能力を付与する流れだった。ここで設置型と携帯型に分けて、最初の選択肢で決定し、シーズン中は変更できないというルール自体は上手く行った。だが、その時にチラっと考えた、『携帯型の方は、エキスパンションと基本セットの扱いを逆にしたらどうだろう?』と考えた案が勝手に決定事項になってしまっているのだ。おそらく『スタートのカードを逆転させて始めるから、その方がしっくりする』と頭の何処かで考えてしまったせいだろう。

 

(もう一つの方は軽い制約を増やしただけだから良かったが、念空間の方は次の調整も踏まえて先に練って置こう。このまま問題部分だけを修正するか、それとも元に戻すか考察してみないとな)

 

 二つ目の水操作は特に制約が無かったので、自動操作に制約を付けた。

 

これは元から考慮していて、本格的に使う前に検討していたのだ。念空間と併用することを考えて負担を図っていて、思ったよりも負担が大きいので、仕方なく制約を作った形になる。よって、暫くは水操作の制約が上手く行くかを実地でデータを集めつつ、念空間の次回調整をどうするかを決め手、確信をもって修正せねばなるまい。

 

そんな事を考えながら、快速艇に乗って少し離れた場所でダイビングの訓練を始めた。

 

(動作の固定は面倒だが、自動操作があるのは便利だな)

 

 アクアラングを背負って結構深い場所に潜って見た。

 

その際にかなりのペースで潜る事が出来たのだ。それは水を操作することでスピードもあるが、圧力を調整・対抗することにより、潜水病を弱めることに成功したからだ。ハンター世界の人間が丈夫である事を考えたら、ちょっとした深度ならば潜水病対策せずに潜れるのが大きかった。もし相手を引き摺り込むことがあればまず勝てるし、待ち構えられて居ても即座に対応できるという利点があるからだ。

 

(移動補助はもう十分だ。次は圧力操作を維持したまま、視界確保を試してみるか。この深度を維持するなら圧力操作は不要なんだが、イザという時に同時併用出来ないと困る)

 

 水操作に加えた制約と誓約で、色々な意味で負担が減った。

 

それは制約による効果もあるが、一部を自動操作に割り振ったことで脳の容量に負担が掛からなくなった影響だろう。鍛え方が足りないから消費オーラの低減も助かるが、咄嗟に行動する時に、一々演算しなくて済むから纏や同時併用が楽になったのである。もっともカストロと同じ末路にならなくて安心と言いたくても、火力が低いのでまだまだ先が長いけどな。

 

(カキン念法、水天眼の術!)

 

 素早く印を組んで自動操作の一つを発動。

 

ナルトの愛読者なら分かると思うが、九字印の連続性・言魂・音魂のいずれかが必要で、維持にも維持用の印・言葉・音のいずれかが必要であるとしたのだ。メリットは印なり音を発した時点で自動操作が発動し、印やメロディを維持するだけで維持し続けられること。欠点は水中だったら言葉や音楽は使えないから、組む為の印は予めバッティングしないように計算しておかないと、自分で自分の首を絞めることだ。

 

(上手く行ったな。水中でこれだけ視界が確保できるなら、系統を絞ってから、才能のある連中に覚えさせても良いかもしれん)

 

 今回の水操作で使ったのは、視界に入るノイズの除去だ。

 

お陰で水中だとなんだか先が見えない状況が明確に見える。俺は特質系だからこれには放出系を組み込んでないので(放出系の経験は空間把握に特化してる)、あくまで周囲の光景が見易くなり遠距離もマシになった程度だ。もし操作系か割と多いという放出系の才能を持つ奴が居たら、ダイバーとして育てても良いかもしれない。その辺だけ覚えさせておけば裏切られることもないし、継承戦編で使えるかもしれないしな。

 

(少し貝と岩を確保して行くか。……って、印を組みながらだと面倒だな。携帯型の念空間があって良かった)

 

 成功もあれば失敗もある。印の管理が指だけなので作業がし難い。

 

もちろん自分で念を操作すれば別なのだが、それでは脳の負担が増えてしまうし、実地訓練にはならないので実行する訳にはいかない。そこで同時併用の負担を確認し、扱い易さを試すために使っておいた携帯型の念空間に放り込んでおく。あまり大きくは出来なかったが、常時携帯型は出し入れが簡単なので助かるのだ(だからこそ負担があり、自動操作による軽減が必須であるとも言える)。

 

(しまったな。戦闘用だけなら問題ないと思って印の配列を見誤った。言葉やメロディに割り振る事も思いついたんだから、足や動作を含めて検証しておけば良かった。ともあれ、それも含めて要検証だな)

 

 水操作は戦闘も作業もこなせるように考えた発だ。

 

だから地上でも水中でも問題無く使えるし、負担を軽くするための自動制御も早い段階から考察していた(というよりもナルトを思い出せたから組み込みたくなった)。だが、実際に作業してみると面倒で成らないのだ。足の動きで術を掛ける陰陽道の反閇も覚えて居たのだから、これも組み込むべきだった。今更言っても遅いので、再調整を何度も行うか、さもなければ維持印だけでも足で可能なように調整が必要かもしれない。

 

「ひとまずやりたいことはやった。俺はデータをまとめておくから、次のポイントに移動しておけ。何度か繰り返して帰還する」

 

「へい。若」

 

 ともあれ実地で試すことはできたし、水産物や岩のサンプルも採れた。

 

ひとまず満足して、潜る場所を変えながら訓練とサンプル採集を繰り返すことにしたのだ。念の応用に関して経験を積む必要があるし、そもそも基礎修業の一環として大量の水を操ったり高速で動かすには海でやった方が情報を隠蔽できるというのもあったからだ。水産資源や推定の地質調査に関しては、何か見つかったら御の字でしかない。

 

本来であれば、それで終わっていた話だった。

 

 

(見たこと無い様な、見たような気がする奴だな。念のために……)

 

「おい、そこのガキ。てめえん所の若頭はどいつだ!」

 

「はっ?」

 

 港に戻って快速艇から降りると何人かが近づいて来た。

 

うちの組の連中だけではないので警戒して圧力対策の自動制御を発動させたままにしていおいたが、先頭に居る女がいきなり殴り掛かって来やがった。胸倉掴むような仕草でボディーブローとか、他所の組にやって良い挨拶じゃあないんですがねえ? まあ俺が若いので舐められているんだろう。

 

「あー何で……?」

 

「俺がその若頭だ。……こいつ、殺しても構わないか?」

 

「すまないが無礼打ちは勘弁してくれ。下っ端が下っ端とじゃれるつもりだったんだろう。舐めた詫びは後で入れさせる」

 

 キョトンとする女を尻目に、その後ろにいる奴に声を掛けた。

 

個人的にはアイアンクローか何かで何時でも即死させられる態勢でいたかったが、向こうの若頭らしき男が先に詫びたのでそれ以上追及する訳にもいかない。というか、マジで下っ端同士のいさかいで済ませる気だったんだろうな。真っ先に俺が降りて来るとは思って居なかったからこうなっただけの話で、本来は大きな揉め事をするにはルールがあるのだ。

 

「そうだな。外との抗争があった時にコイツを貸してくれるなら貸し借りなしで良い。どうせうちが矢面に立たされるんだろう? 尋問役は貴重だからな」

 

「判った。そん時は確かにそうなるし、うちも手を貸した実績が作れる」

 

 揉める気はないので、今後におき得る展開に備えておくことにした。

 

ヨークシン編でマフィアの戦力確保に巻き込まれる可能性はあるし、それ以前に国境を接する他のマフィアと縄張り抗争は普通にある話だからだ。そうなった時、カキンマフィアは結束する約束になっているし、そうなったら新興のジェイ=ピ一家が矢面に立って貢献を果たすのは間違いがない。ならば兵隊を集める伝手をこちらから断る理由はなかったからだ。

 

「何で……なんでだ?! 今聴けなかったのに……」

 

「あえていうなら対象の不適正かな? それとお前の動作と表情が不自然だった。そこから察するに情報を抜き出す特殊能力か、操作系だろう? その手の能力は俺は効かないんだよ。色んな意味で教育不足だな」

 

 凝は怠らなかったのでオーラを纏っていた事と表情の変化が判った。

 

その表情は『いつもなら成功している筈なのに』という疑問と、何かをされたと察する驚愕が伺えた。水圧を操る為の水を纏ったままであったこともあり、操作するにしても特殊能力で抜き出すにしても、命中したのが俺ではなく水だったので『対象が適正ではない』事になったのだと思われる。もちろんその説明をしてやる理由はないので、黙っておくけどな。

 

「教育不足か。その通りだから何も言えんが、今回はお前の始めた商売がうちのシノギに掛かってるから忠告に来た。そうだな、あえて言うならお互いさまってところでどうだ?」

 

「そちらの縄張りに手を出したと? 俺が用意した商売は、あくまで『こちら側』で済ませていたと思うがね。まあ、話はゆっくり聴こう。モメるか利益交渉かはその後だ」

 

 どうやらそこの馬鹿な女にも、一応の理論武装はあったようだ。

 

若頭の話を聞く限り、俺が用意した商売の一つ……おそらくは飯屋が向こうの領域を荒らしたのだろう。潜り込ませた人員を捕まえたという可能性もゼロではないが、それは以前に様子を見ろと指示している。客を奪い過ぎたか、中立地帯で移動販売したから『俺たちの場所でもあるぞ。やり過ぎるな』と言いに来たのだろう。その上で念能力者を送りつけて来たのは、俺の対応を見たかったからだろうと思われた(でなければ船から降りる時なんか狙わない)。

 

「話が早い……と言いたいところなんだがな。うちのケツモチがお前さんが抱えている他の商売に関心があるそうだ。寄こすなら考えてやれとさ」

 

「……雲の上の方にお会いするのは荷が重いのですがね」

 

「お前が言うか? どちらにせよ話は伝えたからな」

 

 王子様の諮問であると聞いた以上は、こちらも下手に出る必要がある。

 

頭が痛い話だが、王族が出張って来るならばあちらの事情も考慮せねばなるまい。ケツモチ出て来る案件で向こう有利の和解を要求されるのか、それとも単に関心があって話を聞く為に呼びつけたいかのどちらかであろう。どちらにせよ、断る訳にはいかないのであるが。




 という訳で新章というか、ククルーマウンテンや闘技場に行かないので地元の話。ゾルディック家の代わりにカキンの人々他が出てきます。試験編で話たメンチとかポンズは出てきません。原作との差異の為に判り易かったから描写した程度です。ヒロインは双子が居ますし、ハーレムにする必要はないですしね。

●ジェイ=ピ一家のシノギ
 近年になって発展してきた内容がほとんどです。
縄張り争いにならない様に気を付けてますが、それはそれとして『新しい商売? うちにも噛ませろよ』というのはタダなので。

その中でも食事系・素材調査系・ゲーム関連は主人公がらみ。正しくは新参の若頭(でも偉い)に対する教育用で、古参から見ると隔離用かつベンチャー扱いですね(もちろん他にもベンチャーしてるけど)。

●調整の失敗
 まあ一発で成功したらクロロの立つ瀬がないというか、あそこまでの才能がない主人公が、失敗経験なしに成功するはずもないので。

●『水操作』
 二つ目の発。基本に関しては特に名前は無く、また制約と誓約もない。
あくまで共通ルールとしての誓約と、分岐した自動操作に関してのみ制約と誓約が存在する。これは応用性が広い発には、余計な縛りが無い方が良いという判断である。

・カキン念法
 ナルトの水遁と魔界都市の阿修羅念法からの着想した自動操作制御法。
九字印・言魂(呪文)・音魂(メロディ)によって発動し、維持にも個別に必要になる。例えば指先から超水圧の剣を作る場合、発動に九字印を幾つか切った後、人差し指と中指による剣印が必要であるとか、音楽だったら曲の中に定期的に指定した音階が入っている必要があるというもの。もちろん、全てを網羅して記憶しつつ、同時に併用する場合はバッティングに気を付ける必要がある。

例:基本的には応用系に対して、名前を付けて自動操作にしているだけ
・アクア。水圧砲。念弾と比べて威力は低い
・エルアクア。超水圧砲。威力はそこそこ
・メイルシュトロ-ム。水圧砲の広範囲版。威力は同じなので相対的に低い
・水防殻。耐水圧で操作系対策でもある
・如意棒。水圧で固めた棒。伸びる
・龍王剣。水圧で固めた刃。ウォターカッターだが思ったよりも切れない
・龍天弓。一点集中のウォターカッター。出力が足りない

・水天眼。水中視界を僅かに良くする
・水鏡。送り込んだ水の周辺画像を、他の水に映し出す
この2つは操作系を元に、変化系の新しいタイプの合わせ技の心算あったが、具現化系が混ざってしまっている。主人公はまだ気が付いてはいない。

●最後に出てきた人たち
 他所の組の人たち。丸判りなので次回で判明します。
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