インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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雪待月の四行詩

「どうせ傷をつけるならば、意匠を入れて可愛らしくしては駄目なのか?」

 

「申し訳ありませんが伝統に則っております。ご要望は判りますが受け入れる訳にはいきません」

 

 十二月に入って結婚式の為に儀式が始まる。

 

それに合わせてカチョウの顔へ傷を刻むのだが、俺の要望はあえなく否定されてしまった。幼少期ではなくある程度大きくなっているので、ティアラの様にするとか何かしらの模様状にするとかやり様があったと思うのだが……。どうもキチンとしたルールがあるらしい。

 

(もしかして『集合知』が重要なのか? 過去から繰り返され、誰もが思い描く傷だからこそ、王としては疵となり得ると……なるほど。迂闊に整形マシーンを使おうと思わなくて正解だったな)

 

 二線者の傷は区別だとは思ったが、念に関しても重要なのだろう。

 

おそらくは念獣として襲い掛かる対象として選ばない相手と判断しているのかもしれない。だからこそ何かの模様であるとか、偶々付いた傷では駄目なのだろう。明らかに『王の候補としては辞退しました。王位継承者ではなくなりました』という意味合いとして存在していると思われる。継承戦で争われる念獣なり聖獣も、もしかしたらその傷で判断しているのかもしれない。

 

(仮に集合知が重要ならただ傷をつけても駄目だな。儀式官がやる必要があるかは別にして、降伏の証として宣言し、皆の前……場合によっては念獣を操る王子の前で行う必要がある。だが、これは良い情報だ。エネルギーが足るならば、降伏しても問題ないということだからな)

 

 この情報はフウゲツの離脱を導くために重要な情報かもしれない。

 

俺自身は傷の形にこだわりはないし、カチョウやフウゲツならばどんな外見に変わろうと愛せるだろう。ならばこの情報はキーとして組み入れ、どのタイミングで実行するかを見定めておく必要があるかもしれない。例えばベンジャミンの暴走時の前に降りて居れば、拘束もされないし、そのまま放置される可能性すらあった。逆算になるがこの情報から考えれば、アイデアは幾らでも湧いて出る。

 

『ユキ。ちょっと良いかしら? うちのボスからよ』

 

「……その様子だと重要そうだな。直ぐに行こう」

 

 王城からの帰りにセンリツからの連絡が入った。

 

継承戦に関して彼女は原作通りに協力してくれることになったのだが、おそらくは『ネオンの占い』に大きな変化があったのだろう。カキン内で行動しはじめて最初の大きな変化だった。

 

「時にクラピカの方は?」

 

『まだよ。やっぱりショックだったみたい。復讐とはいえ人を殺したものね』

 

 残念なことにクラピカの方は原作と大違いだった。

 

継承戦に協力してくれるとカキン入りしてくれているが、パリストンの暴露以降はダウナー状態が多くなった。原作でもレオリオの電話に出ずに緋の目と共に佇んでいたが、アレを更に酷くした感じだ。放心して話が通じないこともあった。復讐であろうとも殺人に忌避感があるような人間である。『もしかしたら無関係な人間を殺したかもしれない』と考えれば、おのずとそうなるのかもしれない。

 

『雪待月のとある日が満願の日。

 

 あなたは願いを叶え人生に花を添えるだろう。

 

 だけれど十二と1の王子の門出を祝ってはいけない。

 

 ハネムーンの前に海に還ってしまうから』

 

 

『乙女に緋を刻む初夜は無頼の集う無礼講。

 

 あなたは贈り物を送り合うプレゼント交換を始めるだろう。

 

 それは月の下で雲に掛かった地雷原の舞踏会。

 

 夜通し独楽たちと踊ると良い、どうせその日は来るのだから』

 

 

『ハネムーンの準備に忙しい日々が続く中で一息を吐く。

 

 思い出の島で宴を催すのも良いだろう。

 

 だけれど招待客には注意しなければならない。

 

 鍵持つ者には入り口は勝手口でもあるのだから』

 

 

『とっておきの贈り物はあと一枚。

 

 それは末拡がる未来の切符。

 

 誰に贈るかは慎重に、誰にとってもジョーカー。

 

 意味も使い方も一つには定まらないハートの万華鏡』

 

「雪待月は月をベースにした一年表記による古い11月のことで、今の12月からやや後ろにずれるんだったか。その上で最初の詩は前回の終わりとほぼ(・・)同じだな。大願が満願になってるということは二人ともに助けることは無理……いや見通しは立ったという事か。カチョウとの結婚を暗示しているのは判る」

 

「逆に言えば前回の危険はまだ続いているという事ね」

 

 屋敷の中で情報を遮断できる場所でセンリツと相談を始める。

 

ネオンの占いは週単位で表示される四行詩が四つ。途中で死ぬ場合は途切れ、そしてやってはいけないことが明示される。死にたくなければそれを避ければ良いのだが、この場合はベンジャミン王子の子供の存在を周知するのが問題なのだろう。大願から満願にやや下がっているのは、もうフウゲツを継承戦から降ろせない事、しかし願いが叶って助けることは可能なレベルであると思われた。

 

「二週目は結婚式当日の話かな。プレゼント交換と言う割りには四つ目と違って物をイメージさせる表記がない。ハンターや幻影旅団など知り合いを集めて情報交換をしろということか? 雲は旅団だろうし……独楽? 駒か狛、私設兵もやって来るという事か。先の忠告がありながらということは、何処かで大きな戦いが起きるのは避けられんということだろう」

 

「……最初の一文、これって当日にはクラピカを立ち直させろってことじゃ」

 

「可能性はあるな。少し残酷だが現実を突きつけて旅団と交流させろと」

 

「頭が痛いわね……」

 

 センリツはクラピカが緋の目を集めている事は知って居る。

 

だから二週目で彼の心を切り刻むことになっても、その不調に一定の解決をもたらさねばならないと指摘した。俺が手を出して居なかったら文字通り初夜の事だろうが、そうではないので彼女が言うように結婚式の日には立ち直らせておけということだろう。翻ってクラピカがキーになる日が訪れるのかもしれない。仮に旅団を会場に呼ぶなら、釘を刺す必要もあるしな。その意味ではクラピカは重要だ。また交流のあるハンターとして紹介することで、他の王子の護衛に雇わせることも出来るだろうしな。

 

「三つ目はグリードアイランドなのは間違いがない。だが、これはどういうことだ? プレイヤーとして招待する奴には注意しろということか? 確かに旅団のメンツを呼んだら危険なのは判るがそんなものは指輪を回収して上書きしてしまえば済む話だ」

 

「そこは判らないわね。私はあのゲームやってないもの」

 

 三つ目からが悩ましい解釈作業の始まりだった。

 

注意を促されているが、単純に警戒をするだけなら問題はない。旅団のメンツが中に入りっぱなしで出て来ないなら別として、一度外に出るなら要件が終わった所で指輪を回収すれば良いだけの事だ。今のところはフィンクスの腕を治療し、フェイタンともどもリハビリに充てる程度。それこそフェイタンは自分で何とかするだろうし、フィンクスも腕を直せば指輪は返してくれるだろう。そもそもグリードアイランドを使いたいなら、買って来るなりどこかで奪うなりすれば良いのだから。

 

「いや……待てよ。これはグリードアイランドを逆の意味で使えって事かもしれん。俺は今までフウゲツの脱出ルートに使ってはならないって事だけ注意していたんだ。船に移動を禁じる結界があったら危険だからな。だが、それは別の王子にも使えるし、同時に旅団を始めとして援軍をグリードアイランド経由で呼べるって事でもある」

 

「そうなの? というかフウゲツ王子を避難させちゃ駄目って事?」

 

「魂と言うか念能力と密接につながった精神を奪われる可能性がある」

 

 俺が真っ先に思いつくのは、原作での脱出行の末路だった。

 

特に今はセンリツが目の前に居るのだから想像が及び易い。フウゲツがグリードアイランドにログインした瞬間に魂が抜かれる瞬間を思い描けるほどだ。しかし、俺がそれを常に警戒しているからここで指摘していないのだろう(あるいは二線者の傷を刻んだ時点で問題ないのかもしれんが)。そこからの波及で王子の誰か……例えばツェリードニヒをハメる事もできるかもしれない。また港を使えば港だが、離脱(リーブ)のカードを使うとログインした仕様を逆手にとってメンバーを招集することも出来るだろう(同じ仕様か検証は必要だが)。

 

「そんな風に考えると辻褄が合う。というか四つ目の詩。ここにあと一枚とあるが、俺は複数手に入れたグリードアイランドのうち二つ残しているんだ。いくつかはキルアとかに贈ったんだが……最大で8人プレイできる。合わせて16人と考えれば旅団全員と俺たちでも問題ない。逆に誰かに贈るとして、そいつのとこでナニカをしてログインしてから抜ける手もある。密室が成立しなくなるトリックが行えるんだ。単純にチョウライ王子に贈っても良いけどな」

 

「……そう言う事。色んな使い方が出来るのね」

 

(流石にツェリードニヒを嵌め殺す案はここでは言えんが)

 

 全部解決してから脱出路として念の為に用意することも出来る。

 

再びログインして離脱を使った時に危険だが、船が沈んでも脱出できるのだ(フウゲツが安全になった後という前提で)。指輪の上書きをしてしまえば問題が無くなるので、もしそのルートを使うならば注意は必要なのだが、万が一の時に安心できる。

 

「仮に旅団に贈るとしても一枚だけの方が良いか。その上で俺の方の一枚にゴンやキルアたちの他にヒソカを紛れ込ませても良い。確かに神秘数の末広がりの未来である八が示す通りだ。誰に贈るのか、どう使うかは重要だな。それに……一月はハンター試験もある」

 

「……」

 

 センリツはそれ以上は何も口にしなかった。

 

グリードアイランドを知らない彼女にはアイデアを出すことが出来ないからだろう。あるいはフウゲツに使うべきではないというアイデアを、俺が誰かに使う気なのかと疑っているのかもしれない。まあツェリードニヒを嵌めれるような都合の良い案なんかそうそう思いつかないので、実質的にこの案は御蔵入りだろうけどな。

 

(惜しいな。ツェリードニヒさえ始末出来ればハルケンブルグをベンジャミンに宛ててゲームセットなんだが……。あんな難物を口説く方法なんて……。いや、無くはないのか? えらくリスキーで普通ならばすべきじゃない方法だが……在る。いや、説得する本人が一番難物だな。やはりモレナ達を利用した方が早いか)

 

 こうして俺の十二月はネオンの占いによって明示された。

 

原作知識とこの占いの組み合わせは実に凶悪だ。作者が早々にネオンから奪い、制約と誓約をクロロが破ったことで失わさせた意味が分かろうというものであった。




 と言う訳で継承戦タイムに本格突入です。

●二線者の傷に関して
 色んな意味でマーカーなのだと思います。
王位継承候補から外れるという意味であり、念獣のターゲットから外れる。
同時に継承者が不慮の事故で全滅した時は、補欠になるマーカーかと。

●クラピカ
 リタイヤ中!
原作では継承戦の頃には復活してますが、この話では旅団じゃないかも!
そんな話が持ち上がってしまい、でも殺してしまった。と大ショック。
まあ、どう考えてもクルタ族の戦闘メンバーは殺してると思うので
ウヴォー他数名なら自業自得だと思うのですよね。

●ネオンの占い
 原作知識と重ね合わせると凶悪です。
これから何が起きるか判ってますし、12月中の指針として使えます。
ただし、未来を変更する行為であるのと、使い方次第ではあります。
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