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「ちょっと顔を貸してくれるかい? 事情聴取と言うやつさ」
「やましいところが無ければすぐ終わる。めでたい席を汚す気は無い」
「そこの東屋でよろしければ構いませんよ」
ハルケンブルグにクラピカを預けた後、第一王子の私設兵がやって来た。
いちいち全員を覚えてはいられないが、危険な能力の持ち主くらいは概要を覚えて居る。それでなくとも『ベンジャミン王子の意向に逆らった』という理由で拘束されては構わないので、基本的には素直に応じることにする。
「話が早くて良いねぇ。令状持ってこいとか言われなくて助かるよ」
「まあ
「お互いか。何とも皮肉な返しだな。まあ良い」
捜査令状なんか簡単に用意できるし、濡れ衣も簡単に用意できる。
それが権力を握るという意味であり、第一王子の意向であるならば適当な理由を付けて処刑することも簡単だった。とはいえそれは一般人に対してであり、カキン・マフィアの上層部……それもトップの二線者には通じ難い。それぞれの組織とバックが邪魔をするので、強引に処刑するなど一回きりしか使えない罠であった。余所者であるハンター協会員も多い、こんなタイミングで切る筈もない。
「池の中の小屋か。東屋と言うにゃあ随分と洒落てるじゃねえか」
「俺の能力は水を使って圧力を変化させて防御やマジックハンド代わりにすることですからね。これも用心と言うやつです。ああ、もちろんここを王子殿下たちとの会合には使いませんよ。疑われても問題ですから」
笑いながら着席する男に俺も笑って握手をする。
もう一人の男は座らずに立ったままだが、周囲を警戒しているというよりは担当の問題なのだろう。温和に話すのが座っている男の役目で、威圧感を掛けつつ周囲を警戒するのが立っている男の役目。少なくとも、そう思わせているという訳だ。
「不用心ではないかね? 能力の説明だけでなく握手もだ」
「俺の能力は知られても問題ないタイプですからね。それと大前提として、武器や念で作り出した物を手にしてはならないというルールや、他人に説明しておいた方が良いというルールがあるんですよ。ああ、後は水の中に移った映像を移動させる使い方とか、水で水を押しのけて大量に動かす方法もあります。まあ、基本的に作業用と護衛用ですからね」
立っている男は色んな意味で苦い顔をしている。
私設兵同士、警備としての力をベラベラしゃべられたら王子の護衛に差し支えるという事が一つ。もう一つは確か、こいつは『他人の能力を推測して当てたら強くなる念獣』を作れた筈だ。俺の能力を先んじて教えられると、イザと言う時に無効化できないからだろう。
「……まーそこまでぶっちゃけられると対応に困るな。仕方ねえから本題に移るんだが、お前さん何を考えてる? 嫁さん以外にも王子に取り入ってるだろ」
「もちろんフウゲツ王子にも安全に継承戦を降りていただく事ですよ」
「あちこちに尻尾を振って情けないとは思わないのか?」
「それは継承戦のルールを知らない人なら思う話ですね」
おそらく、今回の話はベンジャミン王子からの圧力だろう。
カチョウを不幸にしたら許さないし、同時にフウゲツを担いで挑んで来るならば容赦はしない。そして逃げるとしても、他の王子を同じように担いで傀儡にして安全圏から差配する事など許さんということではないだろうか? その上で、こいつらは独自に判断しているから、その匙加減が簡単に変わってしまうのだ。
「ホウ。継承戦は秘中の秘の筈だが?」
「当時から生きておられる方はいっぱい居られますよ」
「そいつを言われちゃおしまいだな。ビヨンド・ネテロとかうさんくさい奴の他にも老人どもは知ってやがるだろうよ」
当然だがベンジャミン王子の陣営もある程度は知って居るだろう。
あくまで老人たちに聞いた程度であり、確信に至る部分は知らないだろうがそれでも概要くらいは掴んでいると思われる。ナスビー王の陣営以外は殆ど壊滅したはずだが、裏を返せば旧ナスビー陣営は生きているのだ。果報は寝て待て路線だったそうだからそれほど多くはないだろうが、宮中に数人は居たのではないかと思う(今生きているかは疑問だが)。
「悪いが答え合わせしてもらっても良いか?」
「外に漏れても問題ない範囲でしたら。全ての王子が念獣を与えられ、それらは王子を守り様々な力を与える。ただし王子同士には危害を与えることはない、あくまで王位継承者を守る仕組み。それを得る条件を知って
占いにあった『十二と1の王子』には抵触しない範囲で話した。
まあ貴人が婚外子を作るのはよくある事なので、私生児を生ませているのは仮定の話としておかしくはない。その上で『念獣を与えられる条件』を譲っても良いとすら明言して見せた。もちろんそんな事をしたら我が子がターゲットになり、親子で殺し合う事になるだろう。ベンジャミン王子は基本的に家族思いだろうから、訳知り顔で功績として譲る話は出すべきでは無いだろう。
「……王子を狙えないのは知らなかったが、血を絶やさない為と言うなら理解できる範疇だ。要するにオレらみたいなのが重要って事だろ? 戦力を集めなきゃいけねえって訳だ。お前さんもかどうかは知らねえが」
「王族に手を掛けたら三族皆殺しですよ。そうそうは居ないでしょう」
「そんな上等なモンは居ねえなあ。殿下がオレらの親代わりだ」
「殿下がソレを素直に喜ぶわけではないのはご理解ください」
原作でもこんなことを言っていたような気がするが、謝肉祭関係者だろう。
おそらくは祭孤児と違って王族の血が入って居たり、その後に王侯貴族が気に入って連れ帰った連中に産ませた子供なのでは無いだろうか? もちろん無関係な孤児院などで引き取られた子供とか、単に家族が早くに無くなった可能性もあり得るが。いずれにせよベンジャミン王子は性格が極端に変化するだけで、身内が無駄に死ぬことを許容するタイプではあるまい。必要だと思ったら『自分を含めて』犠牲をいとわないだけで。
「てめえに言われたくはねえな。ただ、オレらはあの方の為に死ぬのが夢みたいなもんだとだけ覚えとけ。敵に回るなら容赦しねえぞ」
「そうするつもりです」
やっぱり、こいつはベンジャミンの息子なのではなかろうか?
鼻筋や顎回りが太いとか似てはいるし、こいつは座ってもう一人は警戒のためとはいえ立っている。原作でも曹長が居なくなってから王子の相談役をやって居たような気がするし、かなり気易い相手だろう。何時だってベンジャミンの為に命を懸ける覚悟はできているのだろうが、目を掛られてはいるし、周囲もそう思っているのではないだろうか? 既にそう言う子供が何人も居て引き取って居ると思えば、ベンジャミンがこれ以上の出生を語られない婚外子を望まないのは判らなくは無かった。
「後はそうだな……王子たちが念を使えるなら能力を教えてもらおうか」
「能力を使う必要性が無い人たちですから、持っていても知り様がありませんよ。それに継承戦が始まって本当にサバイバルだと発表されるまでは変更の可能性があります。そんな状態で御兄弟の情報を売るような奴を、ベンジャミン王子が許すとは思えませんね」
この問答はただの茶番でしかない。
こいつらは俺を揺さぶりたいだけだし、どの程度の野心を持っているか、本当にフウゲツも合わせて継承戦を離脱する気があるのか確認している程度だろう。その上で生き残れたら、妹たちの事を頼むと言う程度のベンジャミンの代弁なのであろう。もちろん駄目もとで情報を得られたらいう事は無いんだろう。事実、『余計な手間は掛けさせんなよ』と告げて適当に帰って行った。
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「ハンゾー。そっちの手応えはどうだ?」
「モモゼ王子は良い感じだったぜ。ビスケのエステに感心してた。あの様子だと降りるかはともかくとして、個人的にも雇うだろうな」
パーティの裏で腕利きハンターたちの招致合戦が行われていた。
第一王子私設兵たちの尋問から解放された俺は、手配しているハンターの紹介度合いを確認したというわけだ。継承戦をさっさと終わらせる為にも、長引く場合に戦力を集める為にも、人員の管理は重要だからな。
「マラヤーム王子の方にはメンチとポンズを送り込めたし、セヴァンチ王妃の所は何とかなりそうだな。『本人の意志に任せる』と逃げられたが、ここまでやって死ぬなら自業自得だろう」
「オレも居るから安心しときな。誰も死なせやしねえよ」
セヴァンチ王妃は念の事を教えたらアッサリと引き下がった。
ベンジャミン王子が念使いの私設兵を沢山抱えている事も示唆したので、一応は継承戦からは降りる方向性だ。ただし『もしかしたらいけるかも?』と考えているフシがあり、『降ろさせるつもりだが、本人の意志が固い間は無理』と時間稼ぎをするつもりだろう。説得できなかった俺が未熟とも言えるが原作よりも戦力を用意できたことで良しとしておこう。
「ワプル王子はどうなった? オイト王妃も微妙で困ったが」
「ポックルの奴が何とかってところだ。別口の連中に持っていかれた。玉石混合ってのもあるが、どこまで信用の置ける連中か次第だな」
オイト王妃の方も頑なに逃げられてしまった。
言葉は濁していたが継承戦を辞退する気は無さそうだ。こういう対応が続くと、もしかして俺の方が信用されてないのではないかと思わなくもない。その上でこちらが推薦するハンターは逢ってみてからということでやはりお茶を濁されている。そんな中で何とかポックルは潜り込めたようだ。幻獣ハンターだし、気難しい相手には相性が良いのかもしれない。もし生き残ったら、新大陸での活動に援助は惜しまないつもりで行こう。
「確認するが入り込んでる連中の調査はしなくて良いんだな?」
「ああ。現時点で資料を見る限りは言う程の問題は無い。というよりも、資料が偽物だったり姿自体を誤魔化されたら確認が難しいし、ソレが出来る腕利きだったら調べる方が危険だ。王妃を説得して、さっさとターゲットから外す方が安全だろうよ。何かの意図をもって入り込んでいるんだとしたら、王子の暗殺か船内での窃盗かの二択だからな。ワプル王子やオイト王妃の所には害はなくなる」
なお、別口の連中というのは幻影旅団の筈だ。
ワザワザ顔を確認はしていないが、『女の腕利き』ということでマチかパクノダだろう。もしカルトだったらワプルの性癖がぐちゃぐちゃになりそうだが、まだ子供なので問題は無い(というか旅団に加入しているのかも知らん)。全員が警護役に向いているわけではないが、数人が一階に居れば、後は彼らの方で何とかなるだろう。
(問題はクロロが安パイのツベッパの所に行ったか、それとも穴馬でタイソンのところに行ったかだな。シャルナークが居ないから最初から護衛に参加してない可能性もあるが……。フィンクスの治療が終わったら確認してみるか。それとも知らないフリをして、援護射撃でもするべきなのか……悩ましい所だ)
さっきまでクラピカがダウナーだったので手配は俺の方でやって置いた。
バショウが死んでいる以外は、全体的に護衛の数は増やしている。旅団メンバーは最終的な信用が置けるとは思えないが、王子たちを暗殺するよりも、お宝に近づく方を優先するだろう。その意味でカモフラージュとして護衛自体はするのではないかと思われた。とりあえず人死にが出ないかどうかに関しては、可能な限りの努力はしたつもりだった。
「なら後は残りの二人んところだな。全然だめなのか?」
「ああ。タイソン王子は王妃の制御下に無いし、カチョウの結婚式に顔を出しても無いからどうしようもない。直接に話が出来れば、グリードアイランドに彼女(?)にとって重要なアイテムがあると教えることも出来たんだが……。サレサレ王子の方は王妃の段階で駄目だな。まるで信用されてない。事件が起きたら顔を合わせるかもしれんから、その時に説得のチャンスがあるかどうかだな」
タイソン王子は性自認の問題ではないかと思う。
その上で本人の幸せ優先なのか、思いついた宗教重視なのかも判別が付かない。重要なのは俺の干渉は受けてくれないという事で、唯一、原作よりも戦力の保証が出来ていない所になる。まあ旅団が接触してると思うので、最低限のガードくらいは期待しておきたいところだ。もちろん暗殺者を飼ってるスィンコスィンコ妃とサレサレ王子の陣営はどうしようもない。まだ交渉に応じるチョウライ陣営の方がマシなくらいだった。
「それ以上の王子は自前で戦力もあるし、現時点での干渉は終了だ。あとは王子たちが私設兵をハンター試験に送って、どれだけ裏試験に合格するかどうかってところだろう。そこまで面倒は見切れんよ」
こうして事前段階での戦力準備は終了した。
クラピカの調子次第で試験に送り込む可能性もあるが、干渉は此処までだろう。今直ぐショーダウンしてカードを見せ合うと言う訳ではないので、カードゲームの様な読み合いはしばらく続くと思われた。
と言う訳で念能力者を各王子に配布と言う段階です。
原作よりも人員を送り込んで、護衛の層を厚くしています。
助ける必要はあんまりないですが、目覚めは悪いし、イザと言う時の戦力は必要ですしね。
●原作と違ところ
イズナビ。クラピカと一緒にハルケンルグの所へ?
バショウ。死亡
追加。ポックル・ポンズ・メンチ。旅団やジャイロとかは不明だが居ると思われる。
だいたいこんな感じですね。
タイソン王子が不安ですが、仮に性同一性障害とかならカチョウの結婚式に出て来ないでしょうし、主人公に反感も持つでしょう。サレサレ王子に関しては、もうどうしようもないというところで。
という訳で、概ね原作よりも手に入る戦力をマシマシ。
旅団が下で暴れずに、上層で暴れる可能性が増えては居ますけどね。