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「王子からの呼び出しとはな。また面倒なことになったものだ」
他のカキンマフィアより王子からの要請が通達された。
要請と名前は付いているが実質強制であり、現地で下される命令を聞くか聞かないかはともかく、出頭だけはしなければならない。これで聡明なツベッパ王子あたりが素材関連で話が聞きたいとかならむしろ嬉しいのだが、マフィア経由な時点でそんな都合の良い話では無かった。
「港湾関係者はシュウ=ウ一家の縄張りだったか」
「へい。人と物流を主にシノギにしてます。ブツ自体の確保はシャ=ア一家も噛んでますが」
特に触れ回ったわけでもないのに他のマフィアが俺の居所を特定した。
その事を考えれば、逆算して構成人員や資金力に定評のあるシュウ=ウ一家の情報網に引っかかってもおかしくはないだろう。それこそ組直系の人員ならばともかく、その辺りの管理人や警備員では『こういう奴が通ったら報告しろ』と言われたら守秘義務とかあってないようなものなのだろう。女の方は少し若いので判らなかったが、若頭の方は原作で見た顔だったので思い出しただけだけどな。
「ゆっくりで良い。素材関連の人員をうちの直系で固める準備をしておけ。カキンの近くに海底油田やガス田があるとは思えんが、一番入り込み易い」
「へい。どっちの組も警戒しときます」
警戒するほど稼ぎはないが、特訓するのに海が楽なので警戒しておく。
船で暗殺されて海底に沈められるとか笑い話にもならないし、何かの取引をするなら海に秘密の交通網を用意しておくのは悪くはないからだ。決してブラックラグーンとかを思い出してロマンを感じたわけではない。
「この後の予定はキャンセルして第三王子の別邸に訪問するアポを取る。シュウ=ウ一家の連中が嘘を吐くとは思えんしな。すまんがサンプルは研究者の方に回しておいてくれ」
「へい。では送ります」
海底で採取したサンプルを専用の容れ物や水槽に入れて管理。
王都に戻りながら各所へ連絡を入れた。ジェイ=ピ一家に話を入れるのは当然ながら、招待されたのでそちらに行くとシュウ=ウ一家に申し入れるのもまた当然の事だからだ。あの若頭……ヒンリギだったかな? が嘘を吐くとは思えないが、組同士の交流に関わるセオリーを外しても問題だからである。なお、王子の別邸というのは単純にシュウ=ウ一家が王子と上位王子から派遣された私設兵抜きで会談する場所の事で、正式な王家の持ち物ではない。
「御尊顔を拝し恐悦至極に存じます。王子殿下におかれましては拝謁の許可をいただき、謹んで御礼申し上げます」
「ジェイ=ピ一家の一子、ユキが挨拶に参っております」
「うむ。……形式はもういいぞ下がれ」
順番が逆だが、直接面会できる身分ではないことになっている。
父親も母親も二線者になった時点で王籍を抜いていあるし、地位も将軍職まで上り詰めているわけではない。軍人としては若いながら見どころのある幹部候補の佐官でしかなく、その子供である俺はその地位すら存在しないからだ。もちろんハンターライセンスを見せれば行動は出来ることになっているが、そんな特権は地元に居残る限り、使ったが最後ハブられることになるだろう。だからこそ、『取次ぎ』などという存在を介する建前になっていた。
「あんなのが居ては面倒だからな。直答を許す」
「感謝の極み。直言をお貸ししますことをお許しください」
目の上の者が『身分を気にしないでやる』という言葉自体がマウントだ。
許されたからと言って好き放題言ったらその時点で死が待っているのだが……。まあナスビー王と面会したこともあるので今更になって臆する程のことはない。チョウライ王子は政治向きの才能が高いが、それでもナスビー王ほどに腹芸に長けているわけでは無いからだ。単にプレッシャーが足りないとも言う。
「お前を呼んだのは他でもない。最近、ゲームを幾つか作っているそうだな? 同好の士が教えてくれてな。そこで私が友人たちに紹介してやろうと思ったのだ。良い物であればお前の会社に目を掛けてやろう」
(ゲームの利権をよこせと来たか。形の上では好意というのがまた面倒な)
俺の管理してる会社でゲームを開発している。
転生前の知識というか概念を元にボードゲームを作成したり、ブラゲ・ソシャゲに関して隆盛を迎える前に手を出して、『国外』で金を稼いで適当な所で損切りを行うことを提案していた。ボードゲームに関しては国内でも販売できるのでやっていたが、名作であるカタンの開拓者と機動戦士ガンダムを混ぜたガノタの開拓者や、ドミニオンと魔導王グランゾートを混ぜた月面開発を舞台とした
(そう言えばチョウライ王子はゲーマーだったか? それとも……そうか。新規産業の中で有望そうな物に投資を繰り返して、手元に金を還元しているのか)
おそらくだが、ニンテンドーみたいな会社に投資してるのだろう。
この世界にも日本に似たジャポンという島国はあるし、歴史や文化は同じではないが、修正力なのかおおよそ同じような部分もある(もちろんそうでない部分も多いが)。つまり、『これは当たる可能性がある』という会社・産業に積極的に投資することで、資産を増やしているのだろう。傍目からは遊びに無駄な金を費やしている様に見えるが、長い目で見ればむしろ得をしているのだ。ゲームだから目立っているだけで、おそらくは他の分野にも手を出している筈。
「数ならぬ身に対してありがたい仰せであります。後ほど名工に作らせた、王子殿下に相応しい物を新作ともども献上いたします」
「うむ、任せた。もう下がって良いぞ」
一方的に用件だけ伝えてチョウライ王子は下がってしまった。
要するに気になる話があったから顔を繋いで起き、自分なり部下が試して売れそうだと思ったら投資して儲ける気なのだろう。特に上場していないので方針も儲けも俺の好きに出来るが、これからはチョウライ王子にも出資に対する見返りという形で上納せねばならないのかもしれない。カチョウとフウゲツがうちのケツモチみたいなものなのだが、まったく気にしている様子はなかった。
(新興だから舐められているというのもあるが……。カキンの体質的に男の王子優先で女は考慮してないって事なんだろうな。思えばカミーラ王子にも『本来は』組織は無かったはずだし)
マフィアは基本的に男の王子にしか着いていない。
おそらく儀式的な問題で男子ではないと上手く回せないから、保護し戦力を与えているのだろう。女系の場合は血筋が確実に保存され一方で、カキンは正妃優先でタネは考慮されておらず不倫扱いで二線者の血筋を入れることもある為、女系である有利差が無いのだ。よって近代社会に合わせて女子にも継承権を認めているが、おそらくは継承戦の為の数合わせであろう。うちがカチョウ・フウゲツに着いているのは、単にジャポン系の王子が居ないためである(存在し無くなったシイ=オ一家はマラヤーム王子に着いていた)。
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「アガリを要求して悪いな。だが、これで過去の件は水に流す。それと王子が気に入ればそちらに手を出す代わりに、少し融通してやれと言う話だ。何が欲しい?」
「正式にはオヤジの了承待ちだが、改造し易い船が欲しいな」
「ははっ。正直者は得をする。それでいい」
当たり前だが、俺の管理する会社でも組長の許可が必要だ。
チョウライ王子とモメずに伝手を繋げるチャンスかもしれないとしても、勝手に許可を出す訳にはいかない。あくまで『良い話だとは思います』と俺の方から提案しつつ説得し、父親が許可を出さなければならない。というか、もしカチョウとフウゲツのどちらかが男だったら、間違いなく内輪もめを起こすからな。だからこの話を通すことは本来あり得ないし、前向きな検討をする事自体も論外の筈だった。
(ただ二人に関わらず女の王子は立場が弱い。しかも下位だからなおさらだ。上位の王子との顔繋ぎが出来るならば少々の利益はくれてやれというだろう)
シュウ=ウ一家の言う問題は、言いがかりのような物だ。
本来は話を聞く必要はないし、抗争が起きてからルール通りに争って手打ちをすれば良い話だ。その場合は敗北した分だけ利権を喰われるが、それでも無条件で応じたという弱気を見せるよりは舐められないのだ。ただ、カチョウたちの立場があまりにも低く、どのみちジェイ=ピ一家は新参ゆえに力が弱いので仕方がない所がある。
「若頭のヒンリギだ。これから何度か顔を合わせることになる。よろしくな」
「こちらこそ」
向こうの組長や番頭役との話が終わり、向こうの若頭が挨拶に来た。
形の上では出向いた方が下扱いだが、今回はシュウ=ウ一家の敷地内なのであまり関係ない。それに向こうの組長や番頭格に挨拶した後だから、周囲の部下連中に舐められるとしたら俺の方だろう。あえて言うならば、いじめっ子が舎弟たちに対し『こいつは俺の子分だから虐めるなよ』と扱ってるだけに過ぎない。戦国大名で同盟相手は従属扱いではないが、代わりに保護も利益も回さないのと同じであろう。
「船を要求したんだってな? これからも海洋探査は続けるのか?」
「そのつもりだ。国の内側では稼ぎ難いからな。ああ、密輸はしないから安心してくれ。人間の方も売る気はないからあっちとも関わる気もない」
国内は縄張りがあるので面倒だと改めて実感させられた。
素材収集にしても国内はシャア=ア一家が関わっているし、密輸は物流なのでもちろんシュウ=ウ一家、そして富裕層向けの商品……奴隷も含むは、エイ=イ一家が扱っているので面倒事になるのだ。そういえば流星街からの人間って、どこが扱ってるんだろう(多分エイ=イ一家だとは思うが)。
「そうか。……なら、イルカやシャチを捕まえられないか?」
「そこは嘘でも水族館と言っておけよ。……機材を狙った位置に運べるか? 出来るならば大助かりだから協力する。出来ないなら無理をするほどじゃない」
ヒンリギは少し迷って驚くべき申し出をして来た。
念能力者にとって自分の系統を知られることはセンシティヴな事だ。性格なども図れるが、それ以上の能力を他人に知られるのは嫌がる。それこそマフィアだと抗争もよくあるしな。ただ抗争の為だと思えば、歩み寄った理由も判る。部下が俺に能力で殴り掛かったのは問題だし、その時に知られた尋問用の能力を、他のマフィアに知られたくはないのだ。情報というのは色んな意味で貴重だからな。その辺も踏まえて、歩み寄るから余計な事は言うなという事なのだろう。
「可能だが……良く判るな」
「能力を覚える時に心源流等の知識はあらかた覚えた。夢見るまで覚えておく必要がある系統もな」
動物大好き兄ちゃんだからイルカを要求したのか? そんな筈は無い。
もちろん大のイルカ好きなだけの可能性もあるが、十中八・九は具現化系だろう。その上で具現化系の中には、一から作り出す奴と、元の存在に別の存在を被せる奴がいる。クラピカは前者、こいつは後者というわけだ。まあパラレルワールドの可能性もあるからどちらとも言えないが、どっちでも現物を用意できるし、いずれ来る暗黒大陸行きを考えたら、イルカを自由に操れることは大きなポイントになり得た。
「お前も同じ系統なのかもしれんが、凄いな。流派の師範並みの知識だぞ。だが面白いことをやるなら一枚噛ませろよ。五分とは言わん、海で何が出来るかを知りたいからな」
「なに、沈没船の引き上げ実験だよ。もちろん『墓』には手を出さない」
少なくとも継承戦までは敵対する気もないので話だけはしておく。
念空間に関しては見せてないので、俺の何処に具現化系の要素が見えたのかは分からないが、その辺も探ってはおくことにした(水操作に具現化系が混ざってしまったのは後日知ることになる)。とりあえず水産資源の調査と念修業のついでに行う探検に関しては特に話しても困らないというのもあるだろう。ちなみに『墓』というのは過去の継承戦でも使っていた場合の話である。
「沈没船? ロマンは感じるがお前さんが出張る事か?」
「ハンターのライセンスを取ってね。あれは星を得るのに条件があるんだ。星一つは一分野での輝かしい業績、星三つなら複数分野での功績ってね。海洋分野はどこも遅れているからチャンスがある」
実際に星持ちになりたいわけではないは進化条件にしていた。
最初は狙ってやるほどの事ではなかったのだが、修行のために水に潜って色々やってると、圧力操作や念空間を含めた応用を駆使すると案外行けそうなんだよな。その上で水操作を使って無理に空気を下に輸送するよりも、ボンベやら何やら普通に運んだ方が楽なので話をしたわけである。
こうして財宝を売ることが決まった場合に関しては、シュウ=ウ一家を介して換金することを条件にヒンリギの力を借りる事にしたのである。
という訳でカキンマフィアたちにマウントを取られてます。
シュウ=ウ一家が顔出し、シャア=ア一家は顔出してないだけ。エイ=イ一家は別件で大変なだけです。
●マフィア同士の確執・上下関係に関して
本来ならばクラピカの様に煽り合いで舐められないようにするのが正解。
下手に出たらズルズルつけあがって来るし、同じ親(王家)の直系でも向こうが兄貴分の家、こっちが弟分の家と素直に認めるべきではありません。まあ、新参者で抗争やら何やらで実績も功績も無い状態で何を言っても無駄なのですが、身内同士の抗争するほどの体力がないのもあります。
●チョウライ王子の諮問
パルプンテ=ゲームに絡めましたが、それだけではないと思ったので。
実際には色々な分野に金を出して、投資の収益を上げてるんじゃないですかね。シュウ=ウ一家も一番金持ってるそうですし、そういう体質である方があり得ます。ツベッパ王子が奢侈とか欠点挙げてますが、単純に王族として相応しい立場を取りつつ、稼いだ金で経済回してるのかと(ツベッパは潔癖症かつ女性だから格下扱いでしょうし)
・ゲーム会社
ドイツ年間ゲーム大賞みたいなのがあると仮定して、似たようなのあるけど、転生前のアニメを混ぜることで別の物を作ってる感じですね。
・男と女の王子の差
ケツモチとして戦力を確保しているかどうか、子供を作り易いかどうかの差で判断しました。完全に同じ血統という意味ならFSSのアマテラス家みたいに女性の方が確実なのですが、不倫込みで最終的に血統が保てればよいなら男の方が確実なのですよね。
●沈没船
ロマンもありますが、シングルを取れる可能性が上がるからです。
一度や二度では駄目でしょうけど、歴史の考察とか込みでやったら?
念の進化条件=大幅レベルアップとして輝かしい業績を入れているので、ダメもとで狙っていて、継承戦編の後も生きている場合はいつか取るつもりでいる感じですね。