インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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星を求める者

「へー。こういうのが海の中にあるのね」

 

「中世の歴史が保存されていると思えば浪漫がありますね」

 

 久しぶりに訪れたカチョウとフウゲツにお宝を見せる。

 

海での修行と海洋資源調査の延長で、沈没船の引き上げをする事にした。そのサンプルとして単独行動で回収した金貨やアクセサリーを見せたわけだ。宝飾品は重さに比して価値はあるし、貴金属は腐らないので保存性が高い。まあ王子である二人にはお宝という程のものではないのだろうが。

 

「でも、こんなのを回収するためにユキにいが頭下げる意味はあったの?」

 

「私達が来れたのもチョウライ兄上の口添えがあったそうですけど……」

 

「その辺の借りはまとめて返すさ。今は頭を下げてでも余力を増やしておくべきところだ。それに、もしこのまま平和な時間が過ごせるなら星持ちのハンターに成れるから、その時点で舐められなくなる。名声的にも念能力的にもね」

 

 沈没船探索はその一環だが、あくまで一手に過ぎない。

 

海洋資源の探索を企業では無くハンターが、それも国のバックアップを採れそうな奴がやってるなんてことはない。他人と同じことをやっても印象が薄くなるし、規模が小さくなるので『色々と』間に合わない。

 

「星持ちのハンターねえ。そんなの簡単に成れるの?」

 

「簡単に成れたら価値は低く、難しいなら流石にユキ兄さまでも苦労するかと思います」

 

「星一つだけなら、何かのコレクションに例えると判り易いかな。業績の格(質と量)と、ハンターとして確かな方向性、そして大きな話題性が重要だ。沈没船の引き揚げはそのいずれも底上げしてくれる。今は修行を兼ねて手法を確立する時って訳さ」

 

 ハンターの業績ではなく、美術館の展示とすれば判り易いだろう。

 

展示する品の量が少なく、価値も低ければ格が低くなる。趣味が右往左往して何を見せたいのか分からない展示の何処に注目するのか? そして同じような展示があるならば、もちろん気になった場所に行くし、気にならなければ立ち寄らないだろう。後発の俺が手を出せるという意味では財宝としては微妙であるが、何度も繰り返す布石の一つとしては問題無いと言えた。

 

(好都合なことにカキンは閉鎖的な国家だからな。隠れてボーリングしたり、引き揚げて来た連中は要るだろうが、その規模はたかが知れている。基礎技術の問題と念があれば、カキン近隣の海域でならまだまだチャンスはあるだろう。その上で閉鎖的なカキンで同様の事をしたいならば、先駆者である俺を通すしかない。実際には……チョウライ王子とか他の王子が割って入るだろうけどな)

 

 重要な事はカキンが閉鎖的、かつ周囲を食って大きくなったという事だ。

 

カキンの歴史だけならともかく、大きく成る過程で喰って来た国家の歴史的なあれこれが沈んでいる可能性は否定しきれない。海洋資源に至ってはそのまま手つかずだ。何処の縄張りにもなって居ないので、ジェイ=ピ一家が先んじて、シャア=ア一家に資源を売り、シュウ=ウ一家に飯場人足・作業員)を任せるという流れで敵対することなく稼ぐことが出来るだろう(少なくとも父親や幹部はその可能性を認めているからこそ、事業を任せてくれている)。

 

「星一つならって事は、他にも条件があるんですか? トライスターとか」

 

「ああ。二つ目は弟子が星持ちになること。これは二人を鍛えて、うちが資金を提供して好きな事をしてもらう過程で抑えられる可能性がある。どうせ趣味に没頭するなら、気兼ねなくしてほしいからね。三つ目は複数分野での業績。これは先行してやってるから問題ない、ゲームや食事でも会社を興してるのは知ってるだろ?」

 

 ダブル以降は、成れたら良いなという願望や生涯目標でしかない。

 

たかが数年で実行するには無理があるし、天才とかが成し遂げた業績でも単独では無理だろう。カイトに転生して赤子の頃から鍛えてハンターとなり、ゴンやキルア……は駄目としてもポックルを弟子にして蟻討伐で原作よりも良い結果を残せば、或いは可能かもしれないレベルだろう(一歩間違えると、蟻が脅威では無かった扱いにもなるけど)。

 

「え~。そこまで期待されてんの!? プレッシャーなんだけど!」

 

「はは。その辺は可能なら成れたら良いなってくらいさ。まずは二人が暴漢に襲われても倒せるくらいに、次に誰かの私設兵が襲ってきても何とか生き残れるようにで構わない。その上で、二人が音楽や花で愉しみたいなら俺は幾らでも応援するよってだけさ」

 

 正直な話、組員を鍛えるのは頭打ちである。

 

普通の組員たちは何処までいっても他人だし、カチョウやフウゲツほどの気概も無いからペースが遅い。もちろん二人だって王宮で永遠に暮らせるならそこまで必死にならないだろうが、継承戦がありえると伝えてからは、私設兵に隠れて特訓を繰り返して来た。もちろん纏を覚える過程でオーラが出て来るからこそ、最近は会えないのだろう。

 

「それでユキ兄さまはどのくらいで星を採れる可能性があるのですか?」

 

「早ければ来年の秋。逆に言えば二年以上掛けたら望みはガクンと減るな。国家プロジェクトと思われて俺の手腕じゃないとみなされそうだからね。そうなったら時間を掛けて別のモノをハントしないと駄目かな」

 

 シングルを簡単に取れるとは思えない。だからこそ掴みが必要だ。

 

沈没船を引き揚げて、よく似た色々なモノを引き揚げる。当然ながら水産資源も調査して、それらをまとめた海域のレポートや海流のレポートを学会に提出する。それら全てを俺が手掛け、カチョウとフウゲツが後援する文化財団に丸投げしておけば、ハンター協会も馬鹿じゃない。俺が本当にハントしたいもの……カチョウとフウゲツの安全であると理解してくれるだろう。

 

(あとはネテロ会長次第だな。あの人が死ななければ継承戦が無くなるか? それがベストだが、無理ならむしろ船の方が敵対人数を絞れる。そして会長選の動乱が起きれば星を得られるチャンスも増える。逆に言えば、そのタイミングがタイムリミットだ)

 

 そう、二年というのは成果を上げる期間だけではない。

 

同時にネテロ会長がどうにかなるまでの期間である。当初は蟻編に介入して何とかできないかどうかを考えていた。だが、予想以上にカキンでの継承戦に対する備えが強いのだ。ネテロ会長が死ねば暗黒大陸行きの中で、死ななければ国の中で起きるだけであると推測される状態だ。この状態で他所の組と揉めて戦力を減らしたくないし、無理に介入する理由を思いつけるはずもなかった。

 

「こいつをイルカに変えれば良いのか?」

 

「そうだ。俺の指示した場所に移動するか、大型水棲生物に食われるまで無事でいてくれれば良い。海中拠点設置や引き揚げそのものにはまた別の機材を使う」

 

 沈没船引き揚げは一度では済まず、複数の段階を経る。

 

俺が発見した沈没船が無事だったのは、カキン帝国の領海であったことに加えて、近くで大型水棲生物が見かけられたからだ。俺が見つけて居れば倒してしまっていたのだが、そんなに都合が良くは行かなかった。

 

「そこまでする必要があるのか? いつでも行けるんだろう?」

 

「俺が居ないと出来ない手法じゃ成果には成り難いからな。あくまで短期間で行えた理由にしかならん。誰でも手順を作って実行し、何かあればやり切る代わりに俺の力で代用するだけの事だ。もちろん、誰かに漁夫の利を喰われるならさっさと片付けるがな」

 

 ハンター協会は海洋調査に対しては、財宝を成果としては認めない。

 

財宝ハンターとしては話は別だが、それで星を取るのは余程に稼がないと無理だろう。では仮に大量の物資を転移可能な人間が居たとして……ノヴとモラウに匹敵する連中が手を組んで、海の中の財宝を片っ端から引き揚げたらもらえるかというと、それは違う気がするのだ。そこに文化的背景も歴史や財宝に明ける情熱も感じられず、ただ単にお宝を得る作業を見出したに過ぎないからだ。

 

「そこまで俺も暇じゃないぞ? 一度だと思えば受けたんだ」

 

「……大型水棲生物。八割くらいは死ぬと思うが、生きてたらやるぞ」

 

「そう言う事なら仕方ないな」

 

 嫌そうな顔をしたヒンリギだが、取引を持ち掛けると掌を返した。

 

単純に生物が好きだとか、生命体の謎に興味があるとかではないだろう。それだけの数の大型生物の死体を観察し、生きている個体を連れて帰れば、彼が再現できるレパートリーが増えるからだろう。ボートや魚雷艇が海獣になるとか、怪獣映画でしか見ることはできない。それが自分の手駒になるわけだ。

 

「だが互いに縛られることになるぞ。そこのところはどうするんだ?」

 

「ドリームチームって物を夢見たことはないか? 護衛なら護衛向きの、暗殺なら暗殺向きの能力者を、自分が請け負う任務に応じたドリームチームだ。手下に着いた能力者はそれで貴重だし、確かにありがたいが、別に理想の姿じゃない。おそらくだが何度か繰り返せば、チャンスがやって来る」

 

 実の所、ヒンリギを借りること自体は問題ない。

 

カキンは暗黒大陸に行くことを秘密裏に目的としている。その為に大型船の着手をしているわけだし、暗黒大陸に行くとして大型水棲生物以上の戦力はないだろう。おそらく今回の話を上に伝えれば、協力してやれと言うはずだ。もちろん必須の人材になって居たら、法外な金や権利を要求するのだろうが、そうしないためにも手法の確立は重要なのだ。

 

「誰がやっても成功する手法を俺は確立する。だが、そこにお前が居てくれれば労力は半分、ドリームチームが揃えば二割未満でやって見せる。協力してくれないか?」

 

「……他の組の奴を口説くなよ。本気になるじゃねえか」

 

「安心しろ。俺は力でメンツを取り返さない。星を手に入れるんだ」

 

 本当の意味で水産資源の調査で手に入れるのは、その過程だ。

 

様々な手法を確立し、大型水棲生物の様な脅威を調べ上げて対処し、海流や起伏の様な海の中の難所を調べあげ、船体ごと引き揚げることで船が沈んだ理由を調べていく。それらを様々な人間たちと手を組んで実行し、居なくても達成できるが、ドリームチームなら容易く実行してしまう態勢を作るつもりでいた。

 

(もちろん俺だって最初からこの事を考えていたわけじゃない)

 

 能力が偶々有用だったし、偶々ヒンリギと知己も得た。

 

苦労したし、苦労して集めたシノギも食われた。だが、そこに成果があるならば活かさねば嘘だろう。面白い成果が出たなら負わねば嘘だろう。禍福はあざなえる縄のごとし、塞翁が馬とも言う。ここは愉しんでいくとしよう。

 

(水操作に混じってた具現化系をどうするかとか、三つ目の発をどうするかとかも考察が必要だが、今は修行という名のバカンスを愉しんで行こうじゃないか。そして、星を堕とす)

 

 ククルーマウンテン編や天空闘技場編に手を出す気はない。

 

しばらくはカキンの海で色々やる事になるだろう。そこで四大行の修業を行い、その後に備えるとしよう。何しろその辺りの話が終われば、ヨークシン編だからな。




 という訳でカチョウやフウゲツを口説く話です。ヒンリギも口説いてますが。

●二年で星が採れるか?
 正攻法だと無理目な目標ですが、その為に色々巻き込めばあるいは?
「早ければ秋」というのはとある小説のネタです。そこにネテロ会長が死ぬ蟻編を絡めてみました。

・海にどんな脅威が隠れているか? その歴史。
・大型水棲生物や、海流・暗礁などの問題にどう対処するか?
・念能力者と専門家が居れば何とかなるけど、重要なのは一般人でも可能な事!
・そうしたら海洋という舞台で色々できるよ!(暗黒大陸もね!)
 という感じの一連の成果を上げる予定ですね。会長選から暗黒大陸行きのあれこれもあって、可能性が高い部類だと思います。

「お前が居れば苦労は半分だ。協力してくれないか?」
 ヒンリギに対する口説き文句です。いまいちピント来ないかもしれませんが……。主人公や若頭たちが十三人居たら、幻影旅団にも手が届くだろ? と言ってるような感じですね。実際に、水を操れる人間と、器物を生物に変えられる人間が居たら大抵の水中作業は楽勝何ですが。

なお、ヒンリギさんは本人も言ってるようにしょっちゅうはいません。
次回は別の人がチームに加わるかと。
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