インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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義理x義理

「デートの邪魔をして悪いね。さっそく二人で楽しもうか❤」

 

「浮気をする気はないからな。軽く踊る程度で済ませたいところだ」

 

 ヒソカの研ぎ澄まされたオーラは実に無駄がない。

 

必要分だけの錬を行い、しかも濃密な脅し用のオーラと、隠して張り巡らせるオーラの密度が違う。これで全力では無いというのだからどれだけ恐ろしい相手か判ろうものだ。

 

「まずはダイヤのナインを愉しんで欲しいな」

 

「何を言ってるんだ。正しくは『そのカードを中心にしたトラップ空間』だろう?」

 

 カードにオーラを這わせる『周』による投擲攻撃。

 

鋭い一撃でありながら、そこには何本ものオーラが粘着していた。俺の言葉にヒソカがニヤリと笑った瞬間、八枚のトランプが手元から飛んでいったかと思うと先行するダイヤの9に集約していく。しかもそのカード自体が腕を跳ね上げる挙動でバンジーガムにより手元に引き戻され、鎖鎌の様に周囲を切り刻んでいる。

 

「うーん。卒ないね。目の付け所は悪くない」

 

「タネが割れてしまえば分かり易いからな。ビデオで見たが、カストロという男は実に惜しかった。あれだけの人材が正しい方向で腕を磨くか、もっと頭のおかしい方向に舵を切れば面白かったろうに」

 

 俺の対処法が面白くなかったのかヒソカはおしゃべりを続ける。

 

目の付け所は悪くないが、面白くもない。何かリアクションを見せて欲しかったというところだろう。だが、残念。お前が水を抜いたせいで暫く余分な意識を割く余裕がないのだ。

 

「カストロ? 誰だっけ」

 

「お前が今、オーラを歪めて写してる奴だよ。普通なら文字が精々だというのに、器用な真似をするな。信じられんレベルの()だな」

 

 とぼけて見せるヒソカは変化系のオーラでカストロの顔を作って居た。

 

だが真に見るべきはその速さと全体におけるオーラが連動していないという事だ。つまり彼はそのくらいの変化系のオーラであれば、特に意識もせずに実行できるということになる。右手に込めたオーラを左手に移して殴るくらいのことは一瞬でやってのけるだろう。強化系の隣にある変化系だからこその動きなのだろうが、きっとビスケもこういう使い方はできまい。

 

露出(バレ)ちゃった。でも昔の対戦相手(オトコ)の事を言われるのはあんまり好きじゃないんだよねえ」

 

「その真摯さをクロロ達にちゃんと説明しろ。そうすればいつでも踊ってくれるぞ」

 

「純愛を判ってくれるのは嬉しいねぇ。でも、ボクはハードなのも好きなのさ♠」

 

「旅団を相手にソレとは、戦いと書いてプレイと呼ぶ男は一味違うな」

 

 なんというかヒソカは決まったルールを守る男である。

 

最初にルールを提示しておけば、その範囲で楽しむことを許容する男なのだ。この辺りが『言った事だけは守る。言われてない事は効率で考える』というイルミと似ているようで似ていない所だろう。

 

「まあいいさ。お互いに本命を待たせての御遊びだ。一撃一問と行こうか」

 

「クイックドロウ? いいよ、戦いは真剣な方が面白い」

 

 お互いに対峙して最低限の動きで牽制攻撃を行っている。

 

ヒソカはトランプのカードを投げて斬撃を、俺は水を飛ばして水圧を放つ。共にそれはオマケみたいなものであり、ヒソカは周囲にガムを何本か張り付け、俺は水の幕を何枚か張り付け合って居る。それぞれに準備を終わらせたところで、本命の一撃を浴びせに掛かった。

 

「よし! 今だ! 奴を穿て! 水天弓の術!」

 

「何がヨシなの? そもそもそこからじゃないでしょ?」

 

 俺が印を組んでヒソカを指さして水を飛ばした。

 

今までに何度かやった動作だが、二つの変更がある。一つ目は正面からヒソカに向かって飛ばして居ない事、組んでいた印のほとんどが嘘っぱちで言葉で発動するタイプだったというだけだ。そして放ったのは水圧砲ではなく、可能な限り圧力を掛けられる量に水を絞り、一点集中で穿つウォーターカッターである。ヒソカはバンジーガムで真横に移動しながら、通路の壁に張った別のガムで緩やかに軌道変更しつつ空を飛ぶかのような異次元の機動で交わしていた。

 

「じゃっ。こっちも一発大きなの行こうかな❤」

 

「オーラの綾取りか。複雑でありながら強固。まったく見事というしかない」

 

 ここでヒソカは張り巡らせたオーラの数々を手繰ってベンチやら植木を集めた。

 

パチンコのような動きでありつつ、同時に絡め合って重い物を移動させる計算も同時に行っている。だが恐ろしいのはそんな小手先の演算ではなく、バンジーガムの強度と粘度に割り振ったバランスである。どんなに重量を掛けても切れることなく、そして速やかにこちらへ弾き飛ばしている。そして先ほどの『流』を見る限り、この先の展開も見えて来た。

 

「BANG!!」

 

「散弾か。やってくれる」

 

 ヒソカは指先で銃の形を作ると、簡単な合図をキッカケにバンジーガムを解除。

 

集められた様々な物体が、手前勝手にあちこちへ飛んでいった。一か所に飛ぶなら避けようもあるが、こうもバラバラでは避けようもない。そして『重量xスピード』という物理法則がこれ以上なく厄介であった。

 

「水に、この泡に! 可能な限りの圧力を掛ける!」

 

「最低限の防御。そうするしかないよねえ♠ そして、そこが君の終点だ♦」

 

 俺は体を出来るだけ斜めにしてジャンプし、足元に水を集中させた。

 

そして足の向こうにある水に圧力を掛けることで防御幕を作り、色んな物体がぶつかっていくのに何とか耐える。堅で守りもするが限界もあるし、例え攻防移動で防御全開にしても限界はある。ヒソカが追い打ちを狙っている以上は、硬で一点集中の防御もできなかった(そもそも沢山の物体が有り過ぎるのもある。

 

「まったく。最後はグランドピアノの投擲か。闘技場の床を飛ばしたのを見たが、どれだけ基本を忠実に鍛えているんだか」

 

「そりゃ基礎って大事でしょ? だからこそ応用に没頭できるんだし❤」

 

 ヒソカは解除したオーラを集中させて、この辺で一番大きなピアノを投げていた。

 

最低限のスイングながら強烈な速度で飛ばされたソレに、俺は自分に向かって水を放つことで強引に移動するしかなかった。ヒソカのガムでの移動に対して、水圧砲を使った緊急回避なのでダメージレースとしてはこちらの敗北であろう。

 

「続きを話す前に負け分を支払っておくか。クロロはお前のやったことはグレーゾ-ンだと思っていて、他のメンツによる投票次第では真面目に戦ってくれる。挑発するのも番外戦も構わないが、やり過ぎるとお前が楽しくない方法であえて戦おうとするだろうよ。タイマンと言いつつフォローを用意するとか、邪魔だからと言って仲間を殺して歩いたら、特定の行動を行ったらクロロもお前も自動で死ぬようなつまらないトラップ用意するとかな」

 

「要するに楽しみたかったら『プロレス』しろってこと?」

 

「台本のあるコミックである必要は無いがな」

 

 旅団への義理もあるがヒソカに対する義理もあるのでギリギリの話をした。

 

原作の戦いが実際にどうであったか転生した今では確認しようがない。それこそタイマンではあるが、盗賊の極意が『近くに能力を借りた仲間が居たらジョイントになる進化』になっているとかグレーゾーンの内容だって可能性はあるのだ。もっとも作者はシグルイをヒントにしたそうで、『やるからには必ず勝てる戦い』で粛清に近い形で挑んだらしいので、あの状況に持ち込まれて居るなら、共闘説だろうがタイマン説だろうがあまり意味はない。

 

「どうしてそういう思考回路なのかは旅団への義理があるから話せない。だが、やり過ぎると絶対に『楽しめない戦いにする』事を前提にするから、それだけ注意しとくよ。クロロはお前の性癖を知らないが、気が付けないほどの鈍感でもないのは知ってるだろ? 例え復讐心でいっぱいになっても、お前を愉しませないことを前提にしてくる。それを覚悟するなら『好きにしろ』としか俺からは言わんよ」

 

「じゃあデートの誘い方には注意が必要だね❤」

 

「そういうことだな」

 

 最低限の忠告はしておいた。これ以上は余計で余分である。

 

幻影旅団が実は仲良し集団で、半グレなどではないとか教える意味が無い。むしろいかに手足をもぎ取るかの愉しみに走ってしまう可能性があった。もっとも、俺の義理なんかファンボーイが幻影旅団と気狂いピエロに思いを描く程度のものだ。それ以上の肩入れをするのは、まさしく余計である。

 

「で、確認するんだけど時間稼ぎかな? 双子が仲間や水道管引っ張って来るのを待ってるとか? その為のおしゃべりなら幻滅だなぁ」

 

「むしろ双子が居たら使えない戦法を使いたい。それにお互い時間がないだろ」

 

 ヒソカはクロロと戦いたく、俺は双子を守りたい。

 

だから時間稼ぎをしての戦いは厳禁なのだ。それこそ双子レベルの能力者など熟練者でなくとも兵士が居れば一瞬で殺されてしまう。その為に念よりむしろ隠形と陰の方に力を入れて指導したが、この状況では限りがあった。どこかで救援に行かなければならない。それに何より、建国王の魂が出ているならば何とかする必要があった。

 

「強がりじゃないと良いねぇ。少し試してみようか♦」

 

「御随意に。長引かされても今回は(・・・)治療も出来ないからな。二つ目をランダム系の能力にするんじゃなかった」

 

 俺は嘘でもないが本当でもない事を口にして間合いを計った。

 

二つ目の能力は今回、どのみち使えないからな。双子が居れば三つ目を経由することで何とかなるが、今の所はあと一つ足りてない。残念ながら投げつけられた植木鉢に花は生えていたが、月はまだ出ていないのである。とりあえず、ここでセットする自動操作の印は色彩、残り少ない水と上手く組み合わせる必要があるだろう。

 

「二つ目ね。なるほど、それで精密さに比べて量ある時は大雑把なんだ」

 

「そう言う事さ。他にも説明しない限り奇襲してはいけないとか、ガチガチなルールがある。まあ、だからこそ面白いし発展性があるわけだがな!」

 

 飛び込む気配を見せたヒソカに対して錬を行いながら迎撃態勢。

 

防御しても攻防力の差で押し込まれるのは特質系のつらいところだ。その分だけ良い所取りが出来るのだから仕方がないが、クロロほどの猛者でも苦戦するのにより修練の足りて無い俺では対抗するのは難しかった。だからこそ(・・・・・)ヒソカは俺に対して至近戦でケリを付けようとしているのだが。

 

Take that, You fiend(これでも喰らえ) !!」

 

「血❤ 自分の血を隠し玉に使って来たか! やるねえ❤」

 

 流れ出る血を混ぜ、手持ちの水に加えてヒソカに放った。

 

ウォーターカッターで僅かな量でも威力を持たせておく。血を混ぜる必要などないのだが、その方が威力が上がる気がするのと……この後につなげる為である。

 

「迸れ我が血潮! 滾れ我が情熱!」

 

「結構な量の血を抜いたみたいだけど、その分リスクが大きそうな技だね」

 

 血を混ぜた水を赤く染めて、刃の様に圧力を加えて斬撃を浴びせる。

 

手元からは離さず、まるで死神の鎌や、青龍偃月刀の様に使っていく。もちろん刃以上のサイズにすることは難しく、血を抜いた状態でコレを振るうのは、例え威力が上がっても辛いのだがね。だが、コレは準備動作だ。せっかく集中力を割いて用意しているのに、勝機を捨てる訳にもいかない。

 

「確認するけどさ☘ 双子が居たら使えないって意味、別に心配させたくないからじゃないでしょ?」

 

「アタリ。少しくらいは油断しろよ。来い、我が血潮に連なる()よ!」

 

 先ほどから少し違和感がある。この周囲にどうして兵士が居ない?

 

ベンジャミンが危篤で儀式実行のために王子を探しているにしても、いや、だからこそこの辺でもうろついて居るはずではないか。そう、それはヒソカが秘かに倒して隠していたからに他ならない。倒して居たならどうしてクロロとの戦いの様にぶつけてこなかったのか? それは俺が利用するのを避ける為である!

 

「やあ。壮観だねぇ。他人の血を抜いて武器にするなんて凄惨な光景だけど……今はカメラが活きてはいないし、残って居ても『自分の血』に見えている筈だもんね」

 

「そういう事だ。自分の血を抜いたのは本当だから体力が無いのも本当だけどな」

 

 画像を伝達する水を経由して少量の水を操って死体を切断。そして血を回収。

 

途中から色彩を消して少しずつ運んで来たわけだ。おかげで動きの精彩に欠く始末で、ヒソカが狙った罠から逃れるのに苦労した。唯一楽だったのは、液体は具現化していないから気を抜いてしまってもその場に残る事。フラッと来ても画像を伝達する水だけ維持して、できるだけ近場の血を集めたわけである。

 

「俺は放出系じゃないからな。遠くの死体は弄れなかったが仕方がない。仕切り直すとしようか」

 

「そうこなくちゃね。君がボクに一撃いれる事が出来たら、情報を話すなり協力するなりしようじゃないか」

 

 こうして俺たちは最後の勝負に出た。

 

これ以上の戦いは本命に関わる。だからこそ人智を尽くして勝負に挑むのだ。




 と言う訳でヒソカとの勝負の半分です。

●形勢不利
 原作に無い展開であり、かつヒソカの方が有利な状態の勝負。
口八丁が通じないタイプなので苦労して戦ってる感じ。
まぁ半分やられたフリで、死体が有りそうな方向に逃げたわけですが。

●ギリギリ
 旅団にもヒソカにも義理があるし、戦いから逃してくれないので
ヒソカにも有用な範囲で情報を出してます。
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