インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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終結に向けての流れ

「なんでさっきの一撃を使おうとしないんだい?」

 

「判ってる癖に。あれはオーラ以上に水の消耗が激し過ぎる。俺はまだ(・・)水を大気から生成できない」

 

 ヒソカはおしゃべりで心配性の様な顔で煽りを入れて来る。

 

心底案じているとか、こうしたらどうだろうという提案をしてくるわけだが、そうなったら面白いのにと出来ない人間を煽っている訳だ。本心からの忠告であると同時に、出来なければ死ぬよという忠告でもある。

 

「じゃあ今浮かんでる大量の血液を死神の鎌とか剣にしちゃうのは? ああ、それも出来ないんだっけ。不便だねえ☘」

 

「俺は武器を持たないし持てない。いいんだよ。こういうので良いんだ」

 

 水を使って戦うと決めた時にそう決心をした。

 

転生してハンター世界のことを思い出し、特質系の才能があるという幸運と、オーラを覚えることに成功した時点で全て決めた。武器には頼らない覚悟。能力を一度定めたならば、それに準じて能力を磨き続ける覚悟だ。

 

「いいね❤ やっぱり能力ってのはそうじゃないと♠」

 

「汎用性に全振りだが……まあ、それを言えばお前の方がずっとそうだよな。だからこそ基礎を怠らない」

 

 まるで『ジョジョ立ち』の様なヒソカの煽り。だが、そこには隠がある。

 

陰であり隠。ガムとゴムの性質を持つオーラを手首から肘を経由して肩へ、そこから背中を経て足と地面に繋がっていた。まるでチャクラの経絡のように、肩と腰という基本線を通って大地ならぬこの船に根ざしていたのだ。

 

(ヒソカの行動は三択。一つ目はシンプルに拳や裏拳を加速させる大回転攻撃。二つ目は背中や懐に入れているトランプをパチンコのように飛ばして来る。三つ目は全身を操るマリオネットのような動き。そのどれも可能で、かつどれでも良い。誰かの技を真似ているわけではなく、自分の発想を活かすための手段にしているから可能な動き……もちろんブラフでも良いから四択か)

 

 その動きを看破したが、俺のやる事は変わらない。

 

元より技量は奴の方が上。読み合いでもここに至るまでの布石でも負けている。仮にヨーイドンの早打ちをしたって、先ほどの戦いのようにスピード勝負でありながら物量差に繋げる応用力が奴にはあるのだ。ならばすべきことは一つ、現状でも奴に通じる火力の高い技を放つ事。それを確実に奴に当て、ヒソカが『躱すのではなく逃げなければ危なかった』と思わせるしかない。それが可能であれば奴は素直に引くし、出来なかったら生かして返すと言っても殺す非情さがあった。

 

「廻れ……赤き月よ。共に血の花を咲かせよう」

 

「風流だねぇ❤ ちなみに技の名前は?」

 

「カチョウフウゲツ」

 

 操っている血の波を集約して回転させていく。

 

まるで月の様なボールを作り上げ、ソレに語り掛けるように言霊を紡いでいく。放つは先ほど牽制するのに使った血の刃。水ならぬ血を圧縮させて、更に回転運動での高速回転を加えて放つ技である。そして、今のシーズン(・・・・)ならば……念空間で設置出来た力も使う事が出来た。

 

「じゃあ今度は居合いだね!」

 

「斬!」

 

 言葉と共にヒソカが突っ込んで来た。

 

いつの間にか現れたトランプのカードが指先に挟まれている。バンジーガムで加速させた肉体の動きが、まるで彼自身の体を刀の様に行使させていた。極めつけはトランプに集約されたオーラの量! 動き出した瞬間にバンジーガムのオーラは消え失せ、それらが全て無駄なく載って居る理想的な()()である!!

 

「ははは❤ 温いね、君の覚悟♠」

 

「ならまとめて凍らせるまでさ!」

 

 血の刃をトランプがまとめて斬り割いて来る。

 

こちらがまとめて圧縮している部分を斬り割いて飛沫に変えながら突っ込んで来るのだが、俺は血液の刃を凍らせて対抗した。ヒソカが血の刃をただの水飛沫に変えるならば、念空間に設置している凍結室の力を借りて凍らせたのだ。カチョウフウゲツとは、俺が持つ第三の能力である乱れ雪月花の効果を引き出すために、疑似的に作り出した月ないし花の事である(自然界には花がある事が多いので、月をイメージすることが多い)。

 

「足りないよ♠」

 

「いいや、捕まえた」

 

 血の刃が凍って行くが質量の問題で砕かれていく。

 

ヒソカの攻撃を減速させ受け止めるには量が足りないのだ。刃の衝撃は相殺されて奴にダメージを与えてはいない。だが、逆に言えばヒソカの勢いを鈍らせている証拠でもあった。ゆえに今の奴は、強度の強い周による斬撃……いや刺突のみである。ならば俺の肉体と、そこから流れ出る血液で止められない理屈はあるまい。

 

「ああ~。ボクの攻撃で流血することも計算に入れていたんだ……イイネ❤」

 

「男との戦いに欲情する気も心中する気もない。だが……その性癖は素直にクロロに話せ。奴なら口では気味悪がっても受け止めてくれる。イルミと……同じ、様にな」

 

 俺の体をトランプが貫くと同時に、血潮が奴の顔に射出される。

 

これで十分。奴の体に対して攻撃することは、ザクロ・カスタードほど得意ではないがこの距離ならば俺にも可能だろう。だが、これまでだ。これ以上はお互いに本命との戦いに差し支えるからな。

 

「う~ん。もうちょっと戦いたいけどボクに殺意(あい)が向いてないんじゃしょうがないよね。顔射なんて珍しいモノを見たし、良しとしておこうかな❤ でも、一撃は一撃だ。ボクに何をして欲しい?」

 

「クロロと一緒に神器を盗んで予定通り仲良く喧嘩してくれ」

 

「あははっ❤ それはイイネ」

 

 あくまで相打ちでヒソカ有利だが、ヒソカは一撃入れたら協力すると言っていた。

 

俺が無茶振りしないというのを理解しているのもあるし、最初から殺す気で居るから耐えられるならば話を聞いても良いくらいというだけに過ぎない。だからこそ俺としてはヒソカがクロロにタイマンをちゃんと受け入れられ易いようにして戦えという以外の言葉をいう気は無かった。

 

「そうだ。確認だけするが建国王がナスビー陛下の体を使って現れているという認識で良いのか?」

 

「うん。そうだよ。他の用事のついでに便乗しているみたいだね☘」

 

 ドゥアズル妃にまったくやる気がなかったのもそのせいだろう。

 

ナスビー王が政治を握っている間から、時々顔を出して相談役ならぬ予言でもしていたのではないだろうか? だからこそナスビー王も自分をシステムの一つだと達観しているし、継承戦で逃げだした者が居れば即座に魂を抜かれてしまうのだろう。仮に結界に触れたら自動発動であるとしても、『いつ継承戦が始まって』『どの場所を戦場にするのか?』などを定めるには誰かの意志とそれこそ『知識の継承』が必要だからな。本人そのものかは別にして、よく似た何かをデータとして転送しているのだろう。

 

「でも大昔の幽霊なんか倒せるのかい? 死後の念は厄介って聞くけど」

 

「本物の死後の念ならな。だが、死後の念を引き起こすためのプログラム相手なら可能だろうさ。というよりも、建国王のコピーが人格と知識を握り込む為のシステムが三つの神器に隠されている。主に、使い方という意味でな」

 

 カキンの三種の神器は、ミイラ、壺、短刀の三つである。

 

壺に魂とエネルギーをため込んで、聖獣を作ると同時に本質的にリンクさせる。ミイラに魂の一部を保存し、死んでない扱いにする。そして継承者に渡される短刀を引き継ぐことで次の王が決定する。幾つかの儀式を混ぜ込んで、かつそれらしい歴史ロマンを演じているわけだ。

 

「短刀を受け継ぐと同時に魂の一部の受け継いで洗脳される。そして短刀の役目は『受け取った』という合図であると同時に、不要な魂を斬り割く為だろうよ。王子全員の人格がくっついて居たら御し得無い奴もいるだろうしな。安全装置は必要だ」

 

「カキンの人間がやったら握ると同時に操られちゃうもんね」

 

「ああ。クロロがそのまま盗んでも構わないし、捨てても良い」

 

 おそらく、ここまではクロロも同じ答えに辿り着いている筈だ。

 

もちろんガードシステムも存在するだろうし、カキンの血筋ではないと不可能なこともある。だが、同時にソレを守るのは念でありシステムなのだ。クロロならば穴を突いて侵入するなり、手持ちの念能力で誤認させるなり、奪っているであろうリハンの能力で喰らっても良いのだ。もちろん盗賊の極意で盗むことも可能だろう。何しろミイラには手があるし、ナスビー王にも手があるからな。そして建国王は残留思念に過ぎないから人間に出し抜かれるし、ナスビー王は喜んで明け渡すだろう。

 

「先に言っておくとお前が途中で気を変えたらマズイから言わなかったが、クロロが自分の意識を保ったり、除念する為の手段は渡しているぞ。今のうちに忠告があったら教えてくれ。代価としてそっちに協力するから」

 

「ボクには特には無いかな? あ、ボクにはね。君らはどうかなあ❤」

 

「もういい。何か急ぐべきことがあるんだな」

 

 適当な理屈をつけてヒソxクロを推しているとヒソカがからかう様な顔をした。

 

このタイミングで話すようなことはもうあまりあるまい。ベンジャミン王子が念能力の影響もあって部下の魂と共に捧げられて、儀式がもう始まってしまうというあたりだろうか?

 

「そういえばイルミが第三層に来てるから王子が一人くらい死んでるかもね? それと第四王子はとっくに死んでるから、そろそろ山場だと思うよ♠」

 

「イルミは予想していたが……そうか。クラピカはツェリードニヒを殺ったか」

 

「よく知ってるねぇ」

 

 何でもは知らないが、原作を知って居れば想像がつく。

 

おそらくは原作と違ってツェリードニヒに近い位置にいる彼が、自分の力なりベンジャミンの兵を使って殺したのだろう。どんなに未来を読もうが、兵士に囲まれたらどうしようもないからな。だが、此処に来て時間がもうないことは確かだ。ワブルやベンジャミンの息子みたいな赤子に憑依する気なのか、それともモモゼやマラヤームを使う気なのかは分からない。だが、フウゲツが心配であり、万が一にでも操られないように二線者としての手術もする必要がある。俺たちは儀式場へと急ぐことにした。




 という訳でヒソカにぼこぼこにされました。
一矢報いたけど、ヒソカは余裕だった感じですね。

戦闘に関しては凝とか基本に忠実に。
オーラをまとめて飛ばしてるだけですね。実態である分だけヒソカが有利。
あとは以前に花を水で模した事はあるけど、今回は月を模した感じ。
それで雪月花の能力で念空間の力を借りるけど、それでも負ける。
だから最後に接近戦で、ヒソカの攻撃を喰らって血しぶきで反撃の流れ。

●継承戦と三種の神器
 昔からあるオカルト系漫画(カルラ舞うとか)の話をまとめて
最も有り得そうな話をしているだけで、確証とかは無いです。
でも、一番ありそうな流れを口にしているので、説得力だけはある感じ。

●ツェリードニヒ
死亡確認! というかナレ死ですね。
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