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「確認するけど君は本当に建国王が生きているなんて事が可能だと思うかい?」
「そんな
建国王が蘇っている。そんなオカルトを話の途中で否定した。
ヒソカは半信半疑というよりは面白そうだから尋ねてみたという所だろう。ドゥアズル王妃が本気で信じ込み、俺までそう言う前提で話しているのだから興味も沸くだろう。だが、俺が否定したことでその興味は別のベクトルに移行している。
「壺中卵の儀式の大元になった蟲毒は既に失われた符蟲呪術の秘奥だという。だがそれは間違いだ。時代を経るにつれて紙の製作や絹織物など動植物の品種改良知識が一般化され、それを伝えていた渡来人が普通の人間になっただけだよ。彼らを養う価値と必要が無くなったんだ」
「ん? ああ……なるほど。ついでに殺した念使い達に巻き込まれたのか」
唐突な例えを出した時、ヒソカは『こいつ何言ってんの?』という顔をしていた。
だが理解が進むにつれて納得したというか興味を無くしていくのが分かる。自分の魂を保存して強敵と遊べるのか? 何度か試したら後は野となれ山となれ……そんなことを思いついて、一瞬で冷めたに違いあるまい。この例えの本質は、『知識と技術を独占し、価値が無くなるまで保存しておく』という部分にある。建国王は功臣であり国外の協力者だった念使い達を殺して、その知識と念を保存しようとして一緒に『データとして』保存されただけだと思われる。
「十人の技術者が居たとして、仲間を殺害したり妾にしてその技術を独占したとする。最後に『こいつらを保管しろ』と言ったら『特殊な技術を持ち王宮にいる者』を
「朽ちたテープレコーダーねぇ。興味なくなっちゃうなぁ」
なんでも斬れる剣は作れないが、それに近いモノは作れる。
それが念というものだが、必中攻撃あたりだとやり易い。テニスコートくらいの範囲攻撃を行った上で、『ダメージが出るのは、コストの割りに指定した一体だけにしか与えられない』みたいなルールにしておけば良いのだ。この場合は最初の範囲内に居たら相手が外に出ない限りは必中で攻撃できる。建国王の場合は念使い達を閉じ込めるとか、材料にして聖獣を作る儀式の一環だったのだろう。
「後は単純さ。『王宮』の指定を定める方法を作れば移動できる。他の魂を切り捨て、自分の意識を残すように出来ればまるで『何年も生きている様な錯覚』を覚えることが出来る。血を投げ入れた者だけが聖獣を得ると同時に次の生贄になる。かくして蟲毒の様に儀式が回り続けている……と」
「なるほど。血を投げ入れてないクロロは別に神器を手に入れても大丈夫なんだ」
「聖獣を欲しがるとか、本当の意味での主になるとかでなければ問題ない」
この想像が当たって居る必要性はあまりない。
あくまでヒソカがこちらを襲わず、クロロと戦う事ができると信じてくれれば良いのだ。少なくともこの論理ならクロロは三種の神器を盗めば良いだけなので意識を奪われる必要はないだろう。システムを解析して幻影旅団を永遠の存在にしようとするかもしれないが、少なくともこんな急場の状態でするとは思えない。
「ん~でも、『国宝を手に入れた』という実績で念の進化を狙ってるんでしょ? なら本当の意味での主人に成りたがるって事はないかな?」
「その為にクラピカを第四王子陣営に置いたんだよ。王子はただのオマケだ」
「なるほど。抜け目がない❤ やはり君とも楽しめそうだ」
クロロは念の進化の為に国宝を手に入れようとしている。
だが、それで破滅したいわけではないだろう。確実に手に入れることが出来て、万全の態勢で幻影旅団を永遠に出来るならばやるかもしれない。だが、あやふやな状態で家族同然の仲間を生贄にはしたくない筈だ。原作の様にヒソカが殺して回って居るならともかく、今の現状ではやらないだろう。
「あれ? この場合、儀式が進んでいた場合は君らはどうやって抜けるのさ」
「蠱毒と同じなら得た報酬に+@を加えて財貨を放り出せば良い。フウゲツは王子の身分も財産も要らないし、それはクロロも同じさ。あいつは過程が重要であって国宝が惜しいわけでも、特殊な念が本当に欲しいわけでもない。もしそうなら『いつのまにか消えているページ』なんてものはないさ。盗賊の極意が進化すれば得た物にオマケを付けて捨てるだろうな」
既に二線者になる表明と、得た利益はシュウ=ウ一家に渡すとしている。
だからフウゲツはおそらく助かるだろう。後は二線者としての傷を付け、場合によっては俺が教えた念も捨てて身軽になる事が出来る。原作での『ゴンさん』の件を考えれば念を捨てる条件も可能だと思う。あとは王子の身分を捨てることが財貨を捨てた扱いになるかどうかだが、これまでの伝統を考えれば問題ないだろう。それに今はハルケンブルグも死んで魂が取り込まれている筈だからな。『価値観』がだいぶ行政寄りに成っている可能性が高い。少なくともカミーラ王子やベンジャミン王子の魂は王族であることに重きを置いているだろう。
「それよりもそろそろナスビー陛下が王子たちの死体を保管している場所に辿り着くぞ。おそらくはこの周囲から動いていない筈だ」
「オーケー。じゃあ後は好きにさえてもらうよ♠ 向かって来る奴は殺しても良いんだろう?」
「双子以外はどうでもいい。好きにしてくれ」
「❤」
王が管理している場所に踏み込む段になってヒソカとは別れる。
これ以上は行動を共にする必要はない。先んじて分散することで迎撃する連中の戦力を分散し、最終的にクロロのもとで強奪に成功させればよいだけだ。出来ればその時に、皆の前でフウゲツの顔に傷を付けておきたいくらいである。
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「ユキ兄! 無事な人を連れて行ったよ!」
「でも……でも、なぜか死んでる人が動き出して……」
「二人とも苦労を掛けたな。これから正念場だぞ。全力で行く。二人は危険だと思ったら、『全ての念』と引き替えに力を高めて能力を使うんだ。そうすれば一回だけは生き残る可能性が高まる」
ヒソカが離れたことで見守っていたらしい双子と合流した。
これで雪月花が使えるが、それ以上に二人が無事だったことが何より嬉しい。最後の戦いだと思えばこそ、二人が見えない場所で死んで居たら後悔しきれまい。
「ああ! さっきの人たちが……」
「追い掛けて来る……ごめんなさい……」
「問題無いさ。此処まで来れば遠慮する必要なんかない。運べる水の量を増やして一気に決めるぞ」
二人はウンマ妃の元へベンジャミンの子供を救いに行ったはずだ。
その時に無事な私設兵を連れて行ったが、死体の一部を逆用されたらしい。そういうタイプの念使いが居たのか、それとも儀式の一環かは分からない。だが、今は排除する相手だと判れば問題ないだろう。
『……さまが。ベンジャミンさまが殺されちまったよう!!』
「迷ったな。だが、死者には生者を害せぬと知れ! 闘いに臨むつわもの、皆これ陣を敷き我が前に列を為す」
死体を操っても弱いが、そいつがマシンガンやアサルトライフルを持てば別だ。
それだけで普通の念使いにはどうしようもないだけの存在になる。傀儡人形如きと侮れば危険なのだが……逆説的に言えばマシンガンやアサルトライフルから身を守れれば問題ないと言える。
「え!? 氷の塊が回転して……」
「かーちん、これ全部小さな氷の塊だよ」
「そうだ。氷の塊を一つの集団にして動かしている。正確には回転させているんだがな!」
雪月花により、いまの念空間で使える氷を作り出している。
水を氷結室の力で固めてある程度のサイズにして、それらを回転する様に配置している。ヒソカとの戦いでは水がないことに加えて、雪月花自体が偽物の月とか作るような段階的だったので消耗が激し過ぎた。だが今はカチョウとフウゲツが居るからダイレクトに実行できるわけだ。そして移動する過程でスプリンクラーだけではなくオブジェなどから水を補給できている。それらを凍らせながら回転させることで、防御力自体はかなり高くできるのだ(簡単に迂回されるから人間相手には使えないけど)。
『なんで! あんたらは! 死なないんだよ! オレ達は死んでるのに!』
「死ぬのが嫌だからずっと前から努力していたからだよ!」
死者の兵隊はただ銃を撃つしかできない。
絶対的な防御壁があってもソレを迂回して攻撃とかできないのだ。ただ与えられたコマンドの通りに『自分が思い描いた最高の攻撃』を繰り返すに過ぎない。だからこちらが死体を封じ込める攻撃手段を用意していたとしても、弾が尽きるまで攻撃しか出来ないのだ。
「凍れ。四肢も、その魂も! ……ふう。こいつらがシステムの成れの果てなのか、それとも国王直属の念使いの仕業なのかで大きく変わって来るな」
「流石にそこまでは……見てないよね? ふーちん」
「うん。特に見知った人とかは見ていない筈」
死体の四肢の一部を段階的に凍らせておいた。
コマンドに従って攻撃を繰り返すという事は、弾丸が尽きたら格闘戦を挑んで来るだろう。実際のところそっちの方が困るので弾が尽きないうちに行動を制限して置いた。この手のゾンビ兵は数で押して来るとか、不意打ちが怖いからな。階段とか中二階みたな場所には気を付けておきたいところだ。
「あ、そうだ。途中で聞いたんだけど……ルズールス兄とチョウライ兄が死んだって……」
「ルズールス兄上は二階で、チョウライ兄上は三階まで降りたところで暗殺者に殺されたそうです……」
「そうか。惜しい人を無くした……。しかし暗殺者か……ふう」
そして一番知りたくなかった話を聞かされることになる。
穏健派で戦力も怪しかったチョウライが殺されるとは思わなかった。いや、原作でも三階に向かっており、イルミも三階に待ち受けているという話だったから何となく覚悟はしていたのだが……これで一つ難しくなってしまった。逆に言えばベンジャミンがギリギリまで粘った理由も察せたという事なのだが。
「フウゲツ。万が一の時は、完全民主制に移行すると宣言するんだ。今ならハルケンブルグの魂がソレを受け入れてくれると思う」
「ハルケンブルグ兄上が? 既に死んだはずでは? 本当にそんな事が?」
「魂があるなら受け入れそうな気もするけど……なんからしいね」
今、一番の懸念はフウゲツが覚悟を決めて王位に就くことだ。
国民を放置できないと王子の責任を痛感して受け容れかねない。だから今のうちに説得しておくことにした。亡きハルケンブルグ王子が考えており、魂が囚われているならば望んでいる事をフウゲツに考えておかせねばなるまい。
間違えて別のSSに貼り付けましたが、修正してこちらに。
ちょっと焦ったので、あとがきは割愛。