インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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答えx応え

「なあ。一体何がどうなってこうなったんだ? 教えてくれよ」

 

「クロロが読み解いた方が確実だとは思うが、俺で良ければ」

 

「そうしてくれ。当事者の知見と言うのは侮れない。それにもう少しパクの様子を診ておきたいからな」

 

 建国王の魂が消え失せたが、ノブナガは何が起きているのか分からないようで首を傾げる。

 

クロロならばだいたい察しているだろうが、流石に身内のパクノダが乗り移られた状態では詳細を見守りたいのだろう。怪しい知識とか推論よりも看病と観察を優先していた。

 

「大昔のカキンでは念ではなく呪術という名前で体系化されていた」

 

 まずは触りから。ここで突っ込みを入れる奴はいない。

 

「特徴的には効果も消耗も馬鹿みたいに大きく、リスクと利益が見合っていない事から、人を呪わば穴二つみたいな忠告が存在する。念で言えば馬鹿みたいに強烈な制約と誓約を作って、自分も巻き込まれそうな範囲で技を使うようなものだ。相手を焼き殺すまで決して消えない火なんか放ったら、抱き着かれて一緒に死ぬだけだからな」

 

 ノブナガあたりが『そりゃそうだ』と茶化すがクロロが睨むと黙ってしまった。『相手を倒せるまで強化する代わりに可能性が失われてしまう、ゴンさん化』とかが分かり易い例だろうか?

 

「とはいえその中でも有益性が高い物や応用性が高い物が汎用化されていく。『Aとaは同じ物であると見立てる』、『感染した者は同じものと見なす』、『白は黒を兼ねる』、『ループするごとに強化される』というメジャーどころの呪術が作られていった。壺虫卵の儀式で参考にされた『蠱毒』はその集大成であり、動植物の品種改良や知識の一般化によって呪術が必要なくなったことで体系自体が失われてしまったとされる」

 

 俺は例として、第二の能力である念空間を使うためにはゲームが必要だという例を挙げた。ゲームをする必要はあるが番号の最大数を決めているため、サイコロやトランプで代用が可能なこと。一緒に遊んだプレイヤーは、俺と同様の使用権を持つこと。シーズン中は結果が固定されるという短所を、長所としても利用可能なこと。失敗のリスクが上昇する追加のチャレンジごとに、特殊能力を持つ部屋を用意できるということだ。

 

「ああ、そうだ。先に言っておくが俺の能力には共通の制約と誓約があって、能力が増えたり奪われても共通ルールは成立するという欠点を付けている。その中に『手に武器や具現化したアイテムを持ってはいけない』というのがあるから盗む時は注意した方が良いな」

 

「けっ。道理で気前よく説明してくれるはずだぜ。まさに人を呪わば穴二つだよ」

 

「俺が知る限り三人はコピー系が居るからな」

 

「……」

 

 俺は誰かさんが先ほど手にしていた本や短刀に注釈した。

 

ノブナガは気味悪そうに俺の方を見て、クロロは苦笑しながら本当かどうかを考えている。あるいはもう少し推測を進めて『もしかして教えてくれた師匠筋が同じで、同じ体系なのか?』と思っているかもしれない。まあ当たらずと言えど遠からずなのだが。

 

「建国王の不運は生贄として捧げた『かつての同志』や『敵対者』ら呪術師たちに自分が含まれてしまったことだ。今で言えば『この場所に居る念能力者を生贄に捧げる』としてしまったら自分が巻き込まれたわけだな」

 

「テメーでテメーを呪うとかアホの極みだな。どれだけ規模がでかいアホなんだよ」

 

「サイズや規模の区別がつかないほど途方もない阿房宮。それがアホの語源だよ」

 

「そう言うことを言ってるんじゃねえよ」

 

 俺とノブナガでボケとツッコミを繰り返すと無言でクロロが笑っていた。

 

元ネタを知っているとか、こういうやりとりが幻影旅団でもあるのだろう。そしてよく笑う青年こそがクロロの本質であるわけだ。初期組のマチだけでなく、後期組のボノレノフまでもがクロロを心配する訳である。

 

「この時に悪戯(わるさ)をした呪術がどれかは分からない。呪術師という括りが引っかかったのか、それとも生贄の中に女がいたとして凌辱したことで子を孕んだから、親である自分も対象に含まれたとかな」

 

「考え得る限り建国王ってのはクソだったみたいだな」

 

「ああ。この国は肥溜めだぞ。俺も含めてみんなクソだ」

 

 呪術では概念の方が重要だから、何かで引っかかると駄目なのだ。

 

念がどちらかといえば闘気の延長上でローリスク・ローリターンでありそこからミドルリターンやハイリターンを目指すのと違って、呪術は概念的な枠を広げることで『ハイリターンを前提に、必要な生贄は幾らでも払う!』としてしまっているのが問題なのである。

 

「とはいえ、そういう経験が元になって現在のカキンの因習が生まれた。『ループするたびに以前より大きな数字で行う』という術から王子の数を水増しする必要が生まれ、感染者を増やすことで魂の総量を増やすために謝肉祭が行われる。王族の血を引いてないと言われたエイ=イ組の偽モレナも、呪術的には王族扱いで生贄に出来る可能性があるな。ちなみに壺を置いてある場所が宮殿というか、継承戦を行う場所とみなす。そして王の体が次のミイラでありシステムの中枢である魂の保管場所だ。短刀は中枢のコントローラーというか、不要な意見を排除するためだな」

 

 昔話はここで終了である。あくまで推測であるが概ね正しいだろう。

 

ここまで『蠱毒と言う物を参考にしている』という理由と、その影響を語り終わったことになる。ここから『蠱毒があるなら終了する為の、他者を呪うための『嫁金蚕』という言葉がある。という説明の前振りと言う訳だな。要約してコレなのだから実に長い説明だ。

 

「そして重要なのは『蠱毒に終わりはない』ということだ。蠱毒は利益享受者がいる限り、生贄を捧げて利益を殖やし続ける呪術だからな」

 

「あん? んなの無理だろ。永遠に続く能力なんざ……いや、死後の念か?」

 

「似ているが違う。利益を出し続けるシステムという報酬が先払いだからだ」

 

 先ほどゴンさんを例に出したが、あれが最も近いだろうか?

 

あれは『対象を倒せるだけの存在に、今すぐ成長する。その代価は未来の可能性全部』という制約と誓約であり、システム的には呪いに似ている。超強化というか進化を報酬としているため、既に実行されてしまっているのだ。『蟻の師団長を倒せるほどの、人間以上の肉体』という報酬によって変化してしまっている。能力を打ち消しても、その報酬を打ち消すことは出来ない。後は単に、その肉体を蝕むほどの『代価』を支払い続けるだけである。

 

「利益を得た者に、報酬の代わりにシステムの名残として呪術が記載されてしまっている。という事は次の儀式を始めることになり、犠牲者を出しながら強化されていくだろう。前回よりも多く、仮に全滅扱いになるとしたら、僅かで済む可能性もゼロではないがな」

 

「確認したい。パクが乗っ取られたのはシステムを読み込み、利益を得たからか?」

 

「起き上がれば全部解説出来ただろうし、裏技も判っただろうな。クロロ」

 

「ではどうして建国王は能力を失った? パクは再び呪われるのか確認したい」

 

 まるでコンピューターウィルスのように増えて行く災厄。

 

下手に利益を上げてしまうために捨て難い。蠱毒という物を止めることをし難いのだ。そして更に厄介なことに、蠱毒を止めるにはそれなり以上のコストが掛かってしまうのである。俺の回答を途中で補いながら、半ば答えを得ているクロロは、本当に分からない部分だけを尋ねて来た。

 

「利益を捨てたから大丈夫だよ。蠱毒には嫁金蚕という表裏一体を為す術がある。古来、家社会では家こそが大事であり、嫁に出すことは捨てられ失われる事だった。この時に持参金を持たせることで他の家に送り出し、その家に影響を与えたり滅ぼすことも出来た。これが嫁金蚕の始まりであり着せていた絹織物……蚕の作る絹は同じ量の金も同じだったから相手も喜ぶ。その事から蠱毒で得た利益に財貨を上乗せして捨てれば蠱毒は離れていく。捨てることで他者を呪い、コストを押し付けたり自分から引き離すのが嫁金蚕だ」

 

「嫁金蚕は捨てると同時に他者を呪う手段か。まさに白と黒は同じだな……パクは?」

 

「パクノダは得た知識という利益を活かすことなく能力を捨てた。ということさ」

 

「ああ、そりゃ安心って……。パクが能力を捨てたあ!?」

 

 蠱毒と嫁金蚕のシステムを説明するとクロロはいったん安心した。

 

だが俺の説明に押し黙り、ノブナガの大声が周囲に木霊する。おそらくクロロはどうしてそんな結末になったのか、俺に促されるままにパクノダに触れたことも含めて検証しているのだろう。

 

「どういうことだよ! もっと分かり易く説明しろってんだ!」

 

「パクノダに乗り移った建国王の能力消失が早過ぎる。順番的には短刀で切られることで追い出され、『知識を使う前に終わった』くらいで済むはずだった。それが自動的に消え失せた以上は、最初から制約と誓約だった可能性の方が高い。彼女が持つという強力過ぎる記憶収集能力と、マチやヒソカから伝え聞く優しい態度。そしてクロロを見守る事はあっても触れることは無かった行動を考えれば推論は一つしかない」

 

 原作を知っていたという他は無いが、理屈をつけることは可能だった。

 

建国王の魂が口にしていた内容との、その魂が失われたという順番。もはや自動的と言う他は無いその消失速度。そして強大過ぎるパクノダの能力を考えれば、制約と誓約が重すぎたという方が分かり易い結論であろう。

 

「早く言えよ! その条件てやつをよう!」

 

「言うのは構わないんだが、言ったが最後、マチ達に殴られるのは間違いないぞ」

 

「言わなきゃテメーをここで真っ二つにしてやるぜ! さっさと答えってのを言え!」

 

「それが恋とか愛と呼ぶかは別にして、『一番大切な人には二度と触れない』という制約だよ。幸せだったころの思い出を一生背負って生きて行く。だからもう、大切な人には二度と触れないという覚悟が強大過ぎる記憶操作能力を与えたんだ。その能力で大切な人を始めとした、大切な仲間達をサポートするためにな」

 

 俺の胸倉を掴み掛かって激昂していたノブナガの顔が一瞬で真っ青になる。

 

それだけの覚悟を持ってパクノダは幻影旅団にいたのだ。居心地が良いから最初の誓いだからとナアナアで生きて来たノブナガと、全てを捨てるつもりで戦っていたパクノダでは覚悟の質が違い過ぎる。そして、ソレは彼女の思いを赤裸々に、それも他人が語り始めることだ。勝手に語ってよいはずはないし、少なくとも女性陣に俺もノブナガも揃ってフルボッコにされるのは間違いがあるまい。

 

「なんでだよ……なんでそんな……」

 

「大切さに理由なんか要らんだろ。あるいは大切な人が自分を犠牲にしたとかかな」

 

「オレが……オレが原因なのか? だが、お前の推論が正しい証拠は何処にある」

 

「既に気が付いてるんじゃないのか? これは確認だが、どうして具現化した銃を使うんだ? そりゃ便利だが銃器の具現化は微妙と言われているんだぞ。触って発動するならボクシングでも強化する方がいい。それを考えたら記憶に関する能力を銃で放つんだろう。決してクロロに触れなかったとしても、具現化した弾ならば思いを込められる。記憶を奪う能力と、サポートで情報を明確に与える能力が両立する筈だ。そして、そこまでの能力はどう考えてもノーリスクじゃ割りに合わない。そう考えて来ると条件が絞られてくるというだけだな」

 

 ノブナガは驚愕しているが、内心でクロロもそうではないだろうか?

 

パクノダがそこまで覚悟している事もショックだろうが、見逃していた事や俺にそそのかされて迂闊に触れてしまった事。そして何より、その決断が自分を元にしていたことが原因と知らされれば驚きもしよう。原作の流れをみる限り、クロロが自分を犠牲にして復讐や流星街を守るという決断をしなければ、パクノダだってそこまでしなかっただろうからな。まさに連鎖反応というやつだと思われる。

 

「お前……お前は何を知っている? お前がオレ達の何を……」

 

「何でもは知らないさ。ただ仲間の報復のために動いているとか、せっかく立ち上げた組織を大きくしようって事くらい……。ああ、忘れていた。能力の考察時に気が付いたことがあるんだ。クロロ、お前さん……能力使用時のリスクで人格に影響受けているだろ? 俺が話をしたメンバーはみんな、お前の事を心配してたからな。多分、これは十中八・九は外れてない推測だと思う」

 

 ヨークシンで『団長としての言葉か?』みたいな事をノブナガも言っていた。

 

おそらくはみんな、薄々クロロが無理をしているのを理解していたのだろう。それを精神が分裂気味だとか、演技が演技でなくなるとか、そういう方向で解釈していたのだと思われる。

 

「あ? そいつはどういう……。クロロが……」

 

「能力コピーをするのに四つから五つの条件があるとする。コピー自体はそれで可能だ。だが、パクノダの件と同じさ。どう考えても出力がおかしいだろ?」

 

 奇妙な事にこの件でクロロは口を挟まない。

 

首を傾げて疑問を顕にし、その答えを求めようとするのはノブナガだけだ。何故ならばこの問いにどう答えても、今のクロロの状態を肯定する事になってしまうのだ。そんな事は無いと否定できる材料は何処にもない。ならば沈黙するか、それとも俺の口を塞ぐしか方法がなかった。

 

「他者の念をそいつと同じレベルで使うには、疑似的なジョイントで操ってやる必要がある。『盗賊の極意は幻影旅団の継承物で、幻影旅団はメンバーが入れ替わることで組織と共に残り続ける。能力を奪った人間も疑似的なメンバーでありジョイント対象』と言う能力も用意してる。という仮説が成り立つわけだ。どうだいクロロ?」

 

「くだらん。答え合わせをする必要があるのか?」

 

「そ、そうさ。そんな疑問に答える必要なんてねえ……」

 

「間違えるなノブナガ。否定はしてない。必要がないだけだ」

 

 膨れ上がるクロロの殺意と入れ替わりにノブナガの闘気が萎んでいく。

 

当たり前だが手持ちのカードの情報をベラベラしゃべられるとそれだけで怒りが湧くものだ。それに加えて精神的な疾患が存在し、知られたくない大切な仲間の前で暴露されているのだ。クロロが怒らない方が不思議だろう。俺が平然としているのは今の状況を作り出したことに対する罪滅ぼしであると同時に、ファンボーイとして旅団メンバーの生き残りを目論みたいという心情しかなかった。

 

「殺す前に聞いておこう。お前は何がしたいんだ?」

 

「クソみたいなカキンのシステムを終わらせることさ。そのついでに、巻き込んでしまったみんなへ報酬代わりに成る物があれば渡そうというだけだな。お前さんをどうにかできるなら何とかしてくれってのがマチ()からの依頼。俺も確認したいんだが、クロロ。お前の本当の望みは何だ? 幻影旅団を大きくする事か? それとも仲間を守る事か?」

 

 色々と推論が付く中で、クロロは理解できない事を聞いて来た。

 

それは俺の望みであり、単にカキンからの脱出やその後の人生だけを考えるならば意味が分からないことをしている事にたいしての疑問だろう。その答えはこの状況を作り上げてくれた『仲間』たちへの恩返しというか、単なる報酬の支払い。そう見えなかったのは何でもない、本来ならばあり得ないほどに彼らへの報酬を支払うつもりだったから。この戦いで何もかも捨てるつもりだったからだ。

 

「くだらん。答え合わせをする必要があるのか?」

 

「だろうな。両方やらなきゃならないのが団長のツライところだよな。……だから、至極分かり易い。復讐の相手は全て差し出したぞ。旅団ならば大きくなるさ、この戦いでカキンのお宝を何もかも盗み出したという情報が駆け巡る。幻影旅団の後継者になりたがる奴は幾らでも現れるさ」

 

 クロロは同じ応えを返して来た。『答え』ではなく『応え』だ。

 

彼にとってもはや幻影旅団を大きくするのも、仲間達を守る事も不可分なのだ。目的に対して自分を特化させ過ぎてしまい、己を道具にしてしまっている。だから、俺は予め『カキンの神器を奪わないか?』と口に出した時点で報酬は用意していたのだ。

 

「だから見逃せと? そんな話は聞けないな。ここで死んでもらおう」

 

「そうか。それは残念だ。だから可能な範囲で抵抗させてもらおう。ところで、ここで最後の質問だ。盗賊の極意が進化条件を果たすのはシステムが沈黙する前か? それとも後か? 後者ならば問題ない。右から左にお宝が消えていくだけだ。オマケであるカキンの財産ごと捨てた事になる。前者であれば……盗賊の極意を捨てないと大変なことになるぞ? システムごと強奪したという事だからな。蠱毒を養う必要が出て来る」

 

 あまりしたくはないがクロロとの戦いをする必要がありそうだ。

 

様々な能力を所持して居て、しかも奴の方が気力・体力が充実しているという罰ゲームである。戦いそのものは神様・仏様・ヒソカ様にお願いするとして……俺には俺のやることがあった。そこまではこの命に懸けて成し遂げねばなるまい。

 

「くだらん。答え合わせをする必要があるのか?」

 

「だろうな。そんな気はしていた。なら戦おうか……月が出ている間にな」

 

 三度目の応えの後でクロロは本を具現化させた。

 

片手でそれ開き膨大なオーラが彼から溢れる。もしかしたらカキンを運営していたシステムの加護も得ているかもしれない。思えば原作の流れを思い出すに、クロロは『死者の念疑惑のあるヒソカ』相手に勝つ気マンマンだったからな。もしかしなくてもシステムを理解して、自分を犠牲にしつつ幻影旅団こそを未来永劫のシステムにしようとしていたのかもしれない。




 という訳で壺中卵の儀式込みでカキンで何が起きていた彼の説明回です。
ここから作中の最強格と戦わなければならない罰ゲームの開始。

●呪術
 この話が成立する要件と、伝記漫画に登場する呪術を混ぜています。

●パクノダの思いとかの推測・クロロの能力に対する考察
 原作知識ありきです。サーセン!
基本的にクロロがやりそうなことを推測してパクっているので、実質的にクロロのミラーマッチです。再現できてない分は、筆者の能力不足ですね。
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