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「……ほう。『彼』がこの時期にカキンに来てたのか」
ヒンリギは他所の人間なので、毎回は手助けしてくれない。
頼る訳にもいかないし、やったら法外な報酬を支払う羽目になるので、やるとしても最後の手段くらいで良い。そしてドリームチームを結成するためにも、カキンの近くに来ているハンターを探しておくのは当然だろう。海洋資源だけではなく、仮想通貨などネット環境における資源に関するレポートを書きながら情報を集めていた。
「すまないが、カキンでの調査を申請しているこの男に繋いでくれ。こちらで国境の外に関する依頼を出す。ああ、そうだ。そこで『適性』を見る」
そんな中、取り寄せた入国者申請リストから意外な名前を見つけた。
カキンは閉鎖的な環境なので早い段階から申請して、何度も確認してからだと外の人間には許可が出ない。もちろん観光客くらいならそうでもないが、ハンターともなるとそうはいかない。国の内側に入れて『何を』見られるか判ったものではないからだ。だから知り合いの伝手を辿るか、さもなければ長い時間を掛けた調査で『有能かつ誠実だから通して良し』と分からないと通れないこともある。
「アロー、ミスタ。いきなりで恐縮ですが、カキンの水際で依頼を少々こなしてみませんか? もちろん性に合うかを現地で確認してからで構いません。それだけでもファーストステップ、何も無く戻ったとあれば入国管理局も素直になるでしょう。依頼を受けていただければ、相応に便宜は測りますが、まずはご来訪をお待ちしておりますよ」
極論を言えば俺が伝手でポックル辺りを呼ぶのは簡単だ。
他ならぬ俺が人柄を知っているし、幻獣ハンターとしてUMAを追い掛けたいなんて奴を警戒する理由はない。だが彼はこの時期、師匠の下で念の習得に苦労している筈だ。未来を思えば『こちらで修行しながら調査しないか? 良ければ師匠と一緒に』なんて言えるはずもないではないか。万が一にでも蟻がカキンに来てしまったら、国内で薔薇の雨が降りかねない。
「これで一人確保。だが、これ以上は流石に待ちながら見つけるのは難しいだろうな。ならハンターサイトで見繕うか」
当たり前だが入国申請リストには、その気も無いハンターの情報はない。
先ほどの一人は原作で才能があるハンターの一人とされていたが、それだって専門は海ではなかった。入国しようとしていたのも原作で色々やるための一環だったのだろうし、カキンの入国制限が厳しいとなれば、事前に何の問題もないハンターだと実績を残すためのステップでしかないからだろう。だからハンターサイトで専門家をリストアップすることにしたのだ。
「これほどの大型水棲生物を仕留めれるなら、オレは必要ないのでは?」
「海底専門のやり方でね。同じ方法を素人でも出来るように考案する事は得意だが、俺の戦闘能力は少なくとも今はあなたに及ばない。そして俺は生き物を殺したいわけじゃないんだ」
二人目以降はアポを取っても時間が掛かるので、一人目の話をしよう。
その男は善良な人柄に対して腹に一物ありそうな見た目をしていて、頼もしさを感じるものの、どちらかと言えば外見で損をするタイプだった。入国管理局がスルーせず、審査待ちの後ろの方にしたのも当然だろう。少なくともこのままだと、一年くらい待たされることになる。観光客が能天気なムーミンだとして、ムーミン谷にスナフキンが居たらそりゃ警戒するだろう?
「未知の領域は未知の生物の物だ。その領域を侵す危険性も傲慢さも知っている。だけど、どうせ傲慢なら無駄死が出ない方が面白いだろ? 狙うならパーフェクトゲームとは言わんが、犠牲は少ない方が気分が良い」
「……言いたいことは理解している。ワザワザ偽悪的に言わなくても良い」
そのハンターは帽子を被り直して思案を始めた。
視線を隠すことで思案を読まれ難く、同時にこちらの視線を見ない事で余計な情報を得ずに、冷静な判断を下そうとしているのだろう。俺がカキンマフィアのやり方に合わせた言い方をしていると、それを見抜いて止めた方が良いと忠告するくらいには裏を見抜く事が出来てお人よしだった。
「要するに大型生物の『傾向』と『反応』をデータにしろという事か?」
「ああ。こういう所ではこんな大型生物が現れる。そこで活動するためにはどんな対策が必要か、待ち受けて倒すべきか、それとも事前に危険を避けておくべきか。その辺りの経験則を確立したい。もちろん水辺や地下洞窟周辺だけで良い。空気を大量に水中に持ち込める能力者とかが現れない限りはね」
大型水棲生物なら俺が対処できるが、別にそれだけではない。
空気を飲み込ませるとか、圧力を変動させて鯛や深海魚の様にしてやれば済むし、海中で水を警戒しないから薬剤や電撃を呑ませても良いしな。だけど、それは俺が居る時に限られる。同時に俺が居たとしても陸上ではその手は使えないので、水辺やら洞窟で大型のワニとか出られても困るのだ。蟻編くらいまでずっと鍛えたら勝てるかもしれないが、それでも俺だけである。
「どうかな? それでカキン本国には入らずに実績が詰める。次はカキン内で行動する調査活動に、『守秘義務はちゃんと守った』と推薦状を書かせてもらうよ。そうすればカキン経由でゴルドーやNGLでも調査し易くなると思うがね」
「判った。無駄に戦わなくても良いならその依頼は受けよう」
「では契約成立だ、カイト殿」
という訳でチームに三人目の念能力者が加入しました!
それも俺より強い戦闘能力を持つ原作登場人物だよ、やったね! という感じである。カキンはゴルドーとかNGLと並んで交流が少なく、元独裁国だから外の情報を入れたがらないのだ。その独裁国つながりで『守秘義務を守れる人間という紹介』というのは結構重要なのである。カイトの名前を入国申請者のリストに見つけた時、一連の流れが可能だと交渉したのだ。
「他にメンバーは居るのか?」
「俺が沈没船を引き揚げたと知って一も二もなく飛び込んで来た学者と故買屋が何人か。念が使える奴としては他所の組から一人、面白い能力だよ。とはいえ手が足りないので、もう一組・二組声を掛けてある。生物対策はまだまだ欲しいし、海や輸送の専門家はアシスタント込みで欲しい所だからな。ただ雇用というより同志を望んでるんで、後はお互いの眼鏡が合うかどうかだ」
当たり前ながら大型生物だけ対処しても意味がない。
学者が文献を漁ってデータを残すとして、腕利きの念能力者は欲しいところだ。出来れば輸送任務と海の専門家。その辺は居ればいるほどありがたいし、水棲生物の対処役はもう数人は居ても良いだろう。なので今のメンバーで次のポイントを探しつつ、追加メンバーの審査を『お互い』にすることになる。
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「なあ……。もしかして……いや、自惚れているとは思うんだが……まさか。呼んでいるのは師匠じゃなくてオレなのか?」
「正解だ。シュート殿。モラウ師に協力して欲しい気持ちもあるがね」
ゲストはまだ居るのだが、次なるチームメンバーはシュートだ。
彼の能力は小さな相手なら一回で、大きくても相手の部位を一時的に削れるという、殺さないという前提ならば物凄いアドバンテージを持っている。だから凄腕の『シーハンター』であるモラウを呼ぶ前段階で、彼を呼んだのである。俺がモラウを呼ぶに値する男かを見るためにね。
「か、買い被りだ。オレにはそんな……」
「俺は必要ならこれから何十体でも何百体でも生物を殺すだろう。だが、君の能力があれば飛躍的に減らせるし、カイト殿の調査力と体術があれば何十分の一に出来ると確信している。ハンターサイトでモラウ師の調査能力を調べる過程で君の能力を知れたが、まさしく僥倖だった。正直な話、大型生物よりも小型のトカゲや蛇の方が恐ろしい事もあるし、殺すのは一瞬だからな」
俺は聖人君子じゃないが、それでも限度というモノはある。
ガンダムの世界に転生してジオンの勝利を目指して何億人も殺せ言われても困るが、野生生物を何百万匹なら殺せるかと言えば、これもノーだ。やらない善よりやる偽善というが、可能なら出来るだけ気分よくスッキリ行きたいものである。カキンの因習村生活をしていると実にそう思う。
「いや、オレは……」
「やいやいやい。さっきから聞いて居れば……」
「ああ、そうだね。一方的にすまなかった。それと話の都合上とはいえ、野生動物の命を天秤に載せた話をして申し訳ない。その気になったらで構わないよ」
自信なさそげなシュートと、脇から割って入るナックル。
それらを無視して俺は謝る事にした。振り返ってみると、自分の言いようが独りよがりで見苦しかったからだ。やはりここは、フェアに話を持ち掛けて説得するべきだろう。どこかの大罪司教みたいな言いようは宜しくあるまい。
「おいてめえ! さっきからなに俺の事を無視してくれやがんだ!」
「優先順位というものがあるし、そもそもシュート殿が俺に話しかけたので、俺は返しただけだよ。誤解がない様に話終えてから君と話そうと思っただけだ。ああ、この言い方は良くないな。シュート殿の名前を使って、君の話を止めたことになるのか」
良く分からない理由で激昂しているナックルを宥め損ねた。
もしかしたらシュートが赤面して困っているから助け船を出すつもりだったのだろうか? だとすると俺がナックルの横槍を無視したことで、『シュートに結論を迫らなくなった』という結果が先に来てしまい、ナックルの行動が意味不明になったのかもしれない。だが考えて見て欲しい、言葉は中途半端に連ねてると誤解を生み続けるからな。
「おうおうおう! てめえもしかして俺に喧嘩売ってんのか!?」
「売ってるつもりがないが、そう誤解させたならば謝ろうか? それともこういう対応が気に入らないなら、まずは模範解答を頼む。
「オレが
鏡を見れば確認は不要だと思うが?
そんなクラピカ構文で返したくなるが、ナックルと争って得るモノは何も無い。そもそも必要なのはモラウの協力であり、シュートの中距離封印能力である。対人専門のナックルにはカチョウ達の護衛くらいしかお願いすることが無いんだよな。だが、そういう態度は失礼だし、その辺が滲み出たならば海よりも深く反省すべきだろう。
「だいたいよう! ド素人の癖になに師匠へ注文付けてくれてんだよ!」
「俺は雇用主じゃなくて夢を語る相棒が欲しいんだ。だから『何を調べたいか』に関してはイーブンを要求するのは当然だろう? 雇用主として上から目線で言ったら、そもそも来てくれないのは理解してるよ。その上で現場の判断が必要な時、経験値で誰の意見を優先するかを変える。それは当然の事だろう? 海の中ならモラウ師が、カキンでの行動なら俺が仕切るのは当然だ」
これに関してはナックルの勘違いというか、師匠びいきである。
今までがモラウの下でシーハントや修行をしており、他人のチームに雇われたり共同作業する経験が少なかったのだろう。だから絶対的な経験と指導力があるモラウが全てを決めて、他所のメンバーが居てもモラウの指揮に従うのは当然だったのだろう。俺も同じ立場ならばその流れに反対はしなかったと思う。だが、今回は俺が『一緒に遊ぼうぜチケットは俺持ちな』と呼んだのだ、嫌ならその段階で断っているだろう。
「それに口出し権利を交渉するのはモラウ師であって君じゃない。君の役目は俺という人間を見極めることで、シュート殿がその是非を見定めるというところだろう? それとも何か、君には『自分が気に入らなかったら依頼を断っても良い』という権限が与えられているのか?」
「んだとコラァ! 男だったらコイツでこいやあ!」
ナックルは見た目に反して頭が良い。俺に一理を認めた。
その上で言語化が上手くないのはシュートと同じだ。おそらくは優れた指導者であるモラウと一緒に動き続けたマイナス面なのだろう。二人の対人能力が低いのをフォローしていたことになるが、逆に動物はともかく人間とのやり取りが苦手なままだと思われた。
「君、対人専用能力だろう? ハンターサイト経由でも君のデータが無かった。その理由に幾つか考えられるが、あのモラウ師がひよっこに単独行動させるとは思えない。つまり君は対人専用能力者で、調査も出来るが戦闘も可能というタイプの俺に戦えと言うんだな? だが、敢えて言おう。その挑戦を受ける……いや、掛かって来い!」
「てめえ! 舐めんなよ!」
ナックルが一瞬で茹蛸になるが、彼には無茶を言っている自覚がある。
ゴンとキルアの場合は弟子たちも不参加という前提で、勝敗次第で来ても良いという条件だった。だから容赦する理由が無かった。人の良いナックルであろうと自分有利の状態で戦う理由があり、ゴンも対人専用の能力だったわけだしな。だが、今回は明らかに無茶振りだ。俺の人物像を見極めることが目的であり、自分有利で喧嘩に勝つことに意味は無いから後ろめたいのだ。
「舐めてはいないさ。俺が挑戦者なら少しくらい不利でも潜り抜けなきゃ強くは成れん。それにどんな奴か拳で語らないと分からないというなら、これから背中を預けるチームメンバーの事を知ろうとするのは当然だろう? 遠慮はいらん。掛かって来い!」
「上等だ。お前が勝ったら師匠に俺が頭を下げてやらあ!」
こんな戦いをする必要があるかというと、あるんだな。
俺は進歩条件にネームドとの戦闘や、それなりの業績を入れている。沈没船を引き揚げたくらいでは調整できなかったので、ここでナックルと戦うというのは願ったり叶ったりだ。交渉条件を入れることで、ナックルの心にあった遠慮を解き放って対戦するとしよう。死ななきゃ安いし、運が良ければ負けてもモラウが来てくれる可能性がるからな(逆に勝っても、決めたのは弟子だから知らんと言われかねないが)。
こうして俺はナックルと戦うために、場所を移すことにした。
という訳で原作登場人物だけど、この時期には語られないメンツです。
どうみてもヤンキーの集まりにしか見えません。
●カイト
グリードアイランド編の後でカキンに来てるし、カキンは対外情報シャットアウトしてる設定になっている。そこでソ連とかの入国審査みたいに、段階的に色々こなしてたんじゃないかと思いました。後は大型生物の専門家なので、海獣とはいえ情報が気になりそうだと思った感じですね。きっと生き残りの大型水棲生物を見にヒンリギの所に行ってニオニオしているはず。
●モラウ一行
海でこうどうするならば、是非とも来てほしい一座です。
ただし原作で特に語られて居ないのと、有能そうだったので即座には動けなさそうでした。そこで『アポは入れたけど、それでも直ぐには来れない』『だから弟子が審査に来る』としました。真面目な話、シュートだけでも大助かりなんですよね。ナックルは悪いけど、対人戦の経験値扱い。
●なんだか口数が多くない?
原作ファンなので原作勢が傍に居たら興奮しますよね。
ついでにここで名前を上げられるかは重要だし、何とかしようとしたくならないです? 興奮してベラベラ語りつつ、冷静に見返すと自分の姿がキモくなって、自分で自分の言い方を否定する形になってます。
●次の調整
・水操作
具現化系が混ざってしまったので、内容を確認しつつ調整内容の検討。
おそらく応用を効かせようと発の名前を付けてないせいとかその辺。
具現化系を抜いて扱い易くするか、そのまま利用法を考えるかする感じ。
少なくとも現段階でナックルはともかく、モラウや旅団には通じません。
・念空間
携帯型に関する条件を修正予定。
エキスパンションでゲームして、その結果で特殊空間作り易いが狭過ぎ。
この問題を何とかするために、基本セットに戻すか、修正加えるか。
現時点ではMTGの『ノーランドマリガン』みたいな、最低でも拡張空間一枚が初期手札に入るルールを、制限時間の消費と引き替えに入れるか、それとも基本セットにするかの二択中。
・三つ目の発
A案「念空間でしか使えない発」
B案「念空間だと強大化する発」
C案「念空間扱いする発」
この思案の中でA案を真っ先に抜いて、BかCかで迷い中でした。
しかし念空間に引き込むような戦いが難しいので、C案になりそうだなあ……と消去法で決めて、これで良いのか検証したり、それともまだ見ぬD案があるのかと考察している段階です。
●特質系の割りにカリスマ性を感じないんだけど
まだ若く人格形成が未熟な部分に引っ張られている感じ。
未来を見据えて何度も検証、確信もって言ってることにはカリスマはあるかもしれないけど、迷いながら口にしてることはまるでカリスマを感じません。