インモラルなステディxステディ【完】   作:ノイラーテム

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我が征くは夢の大海

「ここは俺が修練に使っている所だから見られることを心配する必要はない。もっと広い方が都合が良い能力なら、沖合の島でも探すが?」

 

「はっ! 随分な余裕じゃねえかよ! これだけありゃあ十分だ!」

 

 俺がナックルを煽ったのは、この問題を長引かせたくなかったからだ。

 

俺を見極めてモラウが来ても良いだけの資質を見極める……そんなことに時間は使いたくないし、なんならモラウが来てからのことだって、あくまでやりたい事の一環に過ぎない。その一方でヨークシン編が起きる時間は決まっており、余裕なんてものはガンガン削られていくからな。その前にやりたいことだってあるし、時間はいくらあっても足りない。

 

「その筒! 察するにてめえの武器だろ? 何が入ってるか知ら……」

 

「誰の事を想像した? そうだ、この水を操るのが俺の一つ目の能力さ。だが、勝手にお前の師匠を見損なうなよ? 現時点で俺の能力は、あの人の下位互換どころか三段下だ」

 

 俺は海域図などを入れる大き目の筒から水を出した。

 

一定量を高速で動かしたり、少しずつ動かせる量を増やしていく修練を積むためのものであり、同時に護身用でもある。色々検証した結果、持ち歩いているのは咄嗟に使える……高速で動かせる量だけとも言えるけどな。もちろんこの筒にしたのは、魔法瓶より沢山の水を入れられるからと、水産資源調査を搦めて隠し易いからである。

 

独りでに動き出す剣(アンサラー)……。水を動かすのは大変だから、こうやって自動制御の分岐を山ほど作ってる。そう言うのを考えるのが好きだし、考えてからベターの中のベターと思えるのを検証して選ぶのが好きなんだ」

 

「水があれば何でもできる……。こいつマジで師匠と同じタイプか!?」

 

 声と印を組み合わせることで、水で作った剣を浮遊させる。

 

水に圧縮を掛けて剣にする自動制御を作ってみたが、威力がいまいちだったので移動型にしてぶつけることにした。維持の為の印は右拳、配置は肩の上の方でパンチを繰り出した先に飛んでいく様にプログラムを組んでいる。ちなみに左拳で維持する印は水の盾なので、この辺は使い分けであり、暗記の方も判り易くしている。メモリの節約のために、脳内を酷使しても馬鹿らしいからな。

 

「だが! 師匠と同じって事は推測し易いって事だ! 安心したぜ、確かにてめえの能力は師匠の三段下だよ! オレの能力は天上不知唯我独損(ハコワレ)! オレが攻撃した分だけオーラを貸す能力だ! 返せなかったら破産するぜ!」

 

「また、お前はそういう事を……。ここは余計な人がいないから良いが……」

 

「……麻雀由来か? 面白い。死後強まる念に効くか試して欲しい所だ」

 

 ナックルとシュートの台詞は原作と違うが、実に心躍る光景だった。

 

原作ファンなら一度は見てみたいし、別に自分とゴンとでは環境も出逢いも違うので気にすることはない。それに特殊性と言うのは希少価値があるものだし、組み合わせてコンボというのは夢が広がるというものだ。それこそ発を貸出しする仲介能力を持っていたら、メレオロンの能力をモラウに貸したらどうなるかとか、誰でも考える楽しい妄想だからな。

 

「け! てめえが勝ったら一つだけ何でも言うことを聴いてやるぜ!」

 

「モラウ師が既に来てるなら頼む。海に沈んだ町に番人が居るって話だ」

 

「マジで? いや、師匠を呼ぶって勝負だし……いや! 約束は守るぜ!」

 

 売り言葉に買い言葉でナックルが応じて来るので微笑み返した。

 

もちろん海に沈んだ町なんか小耳に挟んだ噂話に過ぎない。いつかは探して見たいものだが、番人が守っている様な危険地帯においそれと踏み込みたくはないし、それこそ何処かの文明のだったら五大災厄の被害とかあっても不思議じゃないからな。あくまで本当に逢ったら検証してみたい程度でしかない。

 

「ならこちらもレイズしよう。本来は隠しておくもう一つの発だ。条件付きで携帯特殊系か大型設置系を選べる念能力。隠し事は無しだ……全開……」

 

「水がいっぺえ……くっ。この程度じゃ俺を沈めるにゃ足りねえよ!」

 

 『我の強い匠による再建築(エゴ・リ・ビルダーズ)』を解放状態に。

 

卍解風のトーンで扉を開き、仕舞って置いた水を周辺にぶちまけていく。さっきも言ったが高速で動かせる量は決まっているから、これらはあくまで予備に過ぎない。自動制御で使ってるメモリの量が少ないとはいえ、同時使用なんかすると纏や凝に使うオーラが減ってしまうからな。

 

「オラァ! いまてめえにオーラを貸したぜ。そいつが……おぶ!?」

 

「能力説明が条件に入っているのかな? 違うのならば舐め過ぎだ!」

 

 むかついたのか、合図も無しでナックルが殴って来たので殴り返した。

 

なんでこんな泥臭い戦いをしないといけないのか分からないが、ナックルの能力上仕方あるまい。性格的に親切と自慢の両方を兼ねてついつい説明してるのだろうが、それならいっそ制約にしてしまえば良いと思わなくもない。だが、原作で姿を消した状態でユピーに奇襲したことを考えれば、能力を口にしないというのは制約にしなくて正しいだろう。あるいは誓約として無意識に組み込んでいて、口にしたら調子が良くなる程度はやってるかもしれない。

 

「全然効かねえな! オレとてめえの力の差だけ貸しが大きくな……へぶ!? くそが!」

 

「ならその差で埋めるだけだ。言わなかったか? 自動操作だ!」

 

 オーラ量はナックルが上だが、正式な格闘を習ってるのと水で相殺。

 

足を止めて延々と殴り合っているが、利子が付く分だけ俺の方が不利ではある。だが、不思議な事にナックルはステップ掛けて間合いを取り、チラチラと水の方を見ていた。一発浴びせて一撃離脱で逃げないのは、確実に上回っているか不明なのと、何かを警戒しているからだろう。

 

「知識がプラスではなくマイナスになる例だな。俺がお前の顔を水で覆うか警戒してるんだろう? したかったら既にやってるさ。やれるが、やったら負けの恥ずかしい勝ち方。そう言うのがあるだろう? 俺を舐め過ぎだ」

 

「そうかよ! だったらてめえも舐め過ぎだ! なに解説してくれてんだ!」

 

 ナックルの警戒とその頭のキレが良く分る。俺の切り札の一つだ。

 

例え戦闘力で勝っていても顔を覆ってしまえば窒息して死んでしまう。これがウヴォーあたりなら『全部呑み込めば良いだろ』で済むが、ナックルの体力ではそれも無理だ。だから俺が奇襲で頭をスッポリ水で覆わないかを警戒し、それが俺から適度に距離を取ることになったのだと思われた。

 

「じゃあよ! こうされたらどうするよ! 逃げ切ってやるぜ!」

 

「独りでに動き出す剣より如意棒へ、伸びろ如意棒!」

 

「キッタネ!?」

 

 一撃離脱でナックルが体当たりして逃走していった。

 

それを見て俺は水の形を棍棒に変えてぶん殴る。共通条件に武器や具現化系で作った物を持って戦ってはいけないと決めているが、浮遊状態で握り拳の数センチ先に浮かばせるのはアリだからな。その分だけ消費するオーラは増えるが、『カードオープン、ウェポンカードを場に設置』という感じで割と楽しかった。

 

「思うんだが最大量以外に、人間が一瞬で発生させられるオーラ量は決まってる。その枠も貸し付けたらどうだ? そしたら味方にも使えるし、リスクも跳ね上がってもっと強く成るぞ」

 

「俺がピンチになるだろうがよ! 今ここで増やして見ろ! 死んじまうわ!」

 

 みたいな感じでジャンプ漫画の様に殴り合う。

 

これはこれで楽しい青春の一幕だが、トバされてしまっては意味がないし、そろそろ勝負を決めに行くとしよう。一発逆転の技が無いわけではないしな。

 

「さて、俺は全部の発に……これから作る三つ目も含めて共通ルールを用意している。武器を持つな、調整は強い奴と戦った後だけ。他にも、念空間を使った奇襲をするなというのがある。だが、どんなゲームにも裏技ってのがあるよな」

 

「武器を浮かばせるとかか? ……っ!? さっきからオーラが増えてねえ?」

 

 ナックルは気が付いたようだが、俺は念空間を解除していない。

 

常時携帯にしてるから当然でもあるが、水も出したことだし完全解除しても良かった。そうすれば俺が維持しているオーラが不要になり、纏や堅に使えるオーラ量が増える筈なのだ。そうすればオーラの返済だってもっと楽になっただろう。まあ、その場合は今から行う攻撃ができないわけだが。

 

「恥ずかしい告白するが調整ミスでね。本来ならば別々の空間に施したら便利な能力を、一つの空間に施してしまった。お陰で数少ない部屋の一つが、危険な場所になってしまったんだ。龍天弓拡大(ジーク・フリート・ブリーズ)……王波炸裂(アクアビート)!」

 

「氷の波だと!?」

 

 念空間を作るのにボードゲームを利用する制約にした。

 

苦渋の選択とランダム性を持たせ自分でも制御し難いようにしたのだが、再調整時に迷っていた為、基本セットに追加でエキスパンションを選択するルールだったのに、分岐で組み込んでしまったのだ。お陰で設置型は大きくし易くなったが、常時携帯型は特殊能力が山盛りなので部屋数が少ない。圧力操作に温度低下が起きるという、まともに使えない部屋が出来てしまったのだ。

 

「すまねえ師匠! 負けちまった!」

 

「ほーん。まあオレが言う事を聞く理由にはならねえよな。一応」

 

 結果、俺の勝利で終わったがモラウは言う事を聞いてくれなさそうだ。

 

当たり前だが後発の俺が原作キャラであるナックルに勝ったのは幾つか理由がある。一つはナックルが原作登場時よりも未熟で、かつシュートよりも年下の分だけ甘かったこと。その甘さを突いて俺が精神的に揺さぶった事も大きいだろう。嵌めて勝ったわけではないが、約束も怪しいし褒められた勝ち方でなかっただろうという判断なのだろう。

 

「だから『ルールの範疇』で好きにさせてもらうぜ」

 

「ってことは!? いいのか師匠? オレなんかの為に!」

 

「挑発に乗った弟子の約束でも、まっ約束だわな」

 

 ただ、モラウは弟子の顔を潰すほど傲岸ではない。

 

一定のルール範疇であれば、守ってやっても良いと譲歩したのだ。もちろん俺だって文句を言うつもりはなかった。あるいはだが……モラウは予めこの流れを予測しており、俺たちの行動は全部モラウの掌の上だったのかもしれない。

 

「ああ、それで良い。事前に取り決めをした上で、余った時間は好きにしてもらって良い。駄目な事は先に駄目だと言っておくのが誠実……いや、セオリーというものだろう」

 

「ならまずはカキンの海に慣れねえとな。船貸してもらうぜ」

 

「船と機材は好きに振り回してくれ。足りないのは追加する」

 

 カイトと同じで、許可出せる範囲で好きに行動してもらう。

 

ホテル暮らしもつまらないだろうし、水際ならカキンの内陸では無いからだ。そこでどんな性質なのかとか、何が出来るのかとか、モラウがシーハンターとしてやりたいことに時間を使ってもらうのはアリだろう。でなければ、腕利きのシングルハンターを俺がこの時点で雇えるとは思わなかった。逆に言えば、スケジュール調整中は好きに動けると見越して契約する気だったのだろう。

 

「方針としては海の中に拠点を作って、沈没船に限らず水産資源を調査する。念空間の使い手が見つからなくても、宇宙ステーションならぬ海中ステーションを作ってな。誰もが出来る方法を確立するのも俺の目的の一つだ。その調整中は好きにしてよいし、それ以外で用事を頼むときは正規料金を払う。」

 

「ヒュー。海底遺跡を自分で作る気かよ。楽しくなって来るねぇ」

 

 無理筋に聞こえる話だが、実は可能だったりする。

 

海底トンネルを作る方法の一つに、おわん型のコンクリを落して接続するという工法があるのだ。本当にトンネルサイズでやったら大変だが、ちょっとした研究スペースを確保するくらいなら問題無いと言える。というか、念能力者が数人がかりでやれば、実験施設くらいは普通に可能だからな。ノヴほどの念空間の使い手でなくとも、ちょっとした能力者でも可能だろう。

 

「計画名はどうするよ? 能力と一緒で名前があった方が燃えるぜ?」

 

「それは調整に関して実感させられたよ。我が征くは夢の大海とでもしておくさ」

 

 こうして俺はモラウを条件付きの協力者にする事が出来た。

 

その能力と念も凄いのだが、計画に沿って実行するだけならば彼の経験を考えれば問題無くやってしまえるのだ。俺は念の能力者が何時でも言う事を聞いてくれるとは思っていないし、属人的な部分に頼る気はない。一般人でも可能なように計画を立てた上で、他の用事(主に原作系)も含めて実行する気だった。念能力者に関しては労力を一瞬で出来てしまう工程圧縮や保険であると言えるだろう。

 

(しかし、これまでの経験でなんで特質系がカリスマ的になるのか分かったな。何でもできるからこそ、ブレたら駄目なんだ。再調整以外にも、思わぬところで念がブレる可能性がある。一本貫くような芯が必要なんだろう)

 

 あくまで考察に過ぎないが、クロロの外見がブレている。

 

盗賊の極意を使うと、奪った発の持ち主たちに影響を受けているという説があるのだ。他にも旅団のメンバーが入れ替え式なのは、『盗賊の極意を旅団の長が受け継げる』というメリットがあるかわりに、制御できない他グループのメンバーが必要だとかお互いにジョイントしあって相互影響させているのかもしれない(もしそうなら、単独説でも共闘説でもなく第三のジョイント説が成立する)。

 

(ともあれ今回の件で海洋資源関連の方向性も確立したし、財宝や資源の一部売却で資金も稼げた。まずはオークションの前にバッテラと交渉だな)

 

 念能力の調整はもう最終段階に入った上で微調整に入るべきだろう。

 

海洋資源探索の事業は軌道に乗りそうだし、モラウが自分の意見を通すために、お互いの出資で子会社(終わったら解散)として行う事にした。言い出しっぺとして機材提供や上との交渉込みで計画するのが俺で、現場監督として仕切るのがモラウの役目だ。そして沈没船の財宝やら大型水棲生物を対策が出来たことで掘れるようになった資源の売却。それを持ってバッテラとの面会に向かう事を計画していた。




 という訳で愉快な仲間たちが出来ました!
とはいえ戦闘用のパーティではなく、舞台裏で海洋調査するためです。
このメンツで海の中で探検して、色々と調査して行くという感じですね。

まあ正直な話、純粋なオリジナル話って面白いとは限らないのでサクサクと。

●ナックルとの戦い
 ナックルvsゴンの戦いと、クロロVsヒソカの能力説明ありきの戦い。
原作でのシーンをssでする必要はないし、似た感じの事をしたかったので
オマージュしました。相手が成長前のナックルなのは主人公が弱いせい。
結果、盗聴対策した体育館みたいなところでバトルして勝った感じ。

なんというか性格を見抜いてたり、ナックルが一騎打ち従ってるのを利用
その辺を見抜いて有利に立ち回った扱いで、モラウはそんなに評価せず。
雇用主というか、カキンで行動する為の保証元みたいなので妥協ました。

●二つ目の発の名前
『我が征くは夢の大海』と書いてマイ・ネ・クラフト・ナイツ・モナーク
とかそんな感じの名前になります。実際にはナイツの位置に修正かな。
1:アイネ・クライネ・ナハトムジーク(小さな夜の音楽)
2:銀英伝OVAのタイトル
3:クリスタルナイツ・ネクライム
4:マインクラフト
当たりを混ぜたダジャレ的な名前になります。
名前を決めたことでノリが良くなると同時に、発に関するブレが減って行く感じ。

●特質系のカリスマ性と、ブレとクロロの話
 発を作るだけならどんな能力でもって、良い事ばかりとは思えません。
あれもこれも出来てしまうし、開発途中でブレブレになることもあるかと。
主人公はその辺をようやく理解して、一つ一つ締め直す感じですね。

それはそれとして作中でクロロの顔が変り過ぎというネタがありますが
旅団の過去編で驚いていたの込みで、ワザとそう描いてるのかと構想。
冷酷冷静冷徹な旅団の長という人格を、意図的な二重人格にしていて
盗賊の極意を受け継ぐための伏線にしてるんじゃないかと思いました。
メンバー入れ替え制にしていたら、仮にクラピカが勝利しても、クロロになる感じで。

オリジナルも長く成って来たので、ヨークシン・GI編の順番を少し入れ替え。
次回はバッテラ氏と交渉するお話です。というか、社会背景があればできますよね。
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