「ビクテム……? ハハ……そうかお前、さっきの男を殺したのか」
「……! 本当だ、チアっつったよな……? 名前が変わってる」
バインダーを確認した彼らが口々にそう言う。良かった、成功したみたい。
「お前、裏ルールを知ってるな? どこで知った」
「どこでも何も、実験を繰り返しただけ。外で別の指輪をはめたらデータが上書きされちゃうって言うのは、聞いただけだから今回が初めてだったけど……成功みたいだね」
「なるほど、これでニッケス達にお前との協力もバレないというわけか」
「そーいうこと」
これなら私はゲームの外に出たか、死んだものと見做されるし、出会わない限りは私がビクテムだとは分からない。ガードの所持数が増えてランキングで確認されても怪しまれないという算段だ。あとはゴン達への説明をどうするか、だけど。
「それで提案なんだけど……一斉爆破の時期をずらさない?」
「……一斉爆破するとも言ってないんだがな」
「するでしょ?」
3人は顔を見合わせて、しょうがないと言った様子で頷く。
「もうすぐ全員が揃ってカードを整理する。その時にやるつもりさ」
「それ! その時期をさ、もうちょっと後にずらせないかな? なんとか……」
「なぜだ? 他に同じような企みをしている奴もいるかもしれない」
バラが乗り出してくる。
「いや……戦闘力に劣る奴らだろ? ゲンより強いなんてことはあり得ない。別の目的か?」
「まだ入手方法すら分からないカードがあるよね。えっと……入手経路が分かってるのはあと何種?」
「現在指定ポケットカードは89……しかしあと少しで1枚手に入る。そして残り10種のうち、7種は入手の目処が立っているな」
「90種になったとこで集会ってことか。士気を高める目的もあるだろうな」
「それで爆破されちゃ世話ねえだろ」
サブとバラが楽しそうに笑う。組むとなってからは随分と警戒心がないけれど、大丈夫なのだろうか、この人たちは。
「で、えーっと……No.75、奇運アレキサンドライトは?」
「分かっていないな。しかし5人所有している上にカード化限度枚数が多い。独占される危険はないだろう」
「OK。確かそれって、あの山賊みたいのにカードと有金全部渡して、その後聖騎士の首飾りで呪いを解くってやつだね。根気よく“聞き込み”したんだけど……最初っから順序よく進めてる有能プレイヤーほど達成できないの。しかも1チーム1枚までだって! 面白い設定だよ。これは私が取ろう」
3人はそれを聞いて明らかに驚いた顔をする。
「……なるほど。それで、肝心な爆破を遅らせる理由は?」
「No.2、一坪の海岸線は所有者がまだゼロ。それでいてカード化限度枚数が3枚まで。場所は
「だろうな。一枚手に入れられれば独占は容易い分、全員一度は同じことを考えただろう。しかし所有者が誰もいないことがこのカードの入手難易度を表している……」
「それで爆破となんの関係があんだよ?」
「……まだやっていない条件を達成するため、か?」
サブが言う。私は頷いてみせた。
「そう! ここのプレイヤーは、ゲームの特性上少人数で組むかソロでプレイが多いでしょ。あなた達ハメ組以外はね」
「……ハメ組?」
ゲンスルーが訝しげな顔をする。しまった、これキルアが言ってるのをパクっただけだった。
「あー……勝手に使ってる愛称。まあそれは置いておいて」
「そうか……人数かーー!」
ゲンスルーは気がついた様子で、ニッと口の端を吊り上げた。
「大人数がイベント発生の条件なら、これまでどのチームも情報すら得られなかったことに納得がいく。そこで、このゲーム内で一番のメンバー数を誇るハメ組に協力してほしいの。必要なメンバー数も分からないしね。その為には、まだ殺しちゃいけない」
「必要人数が何人にしてもーーもし俺たちが爆弾魔だと知れ渡っちまえば、協力してくれるプレイヤーはいなくなるだろうな」
その通り。バラの言うことに頷く。だから今は、ゲンスルーの“ハメ組のメンバー”という肩書きがほしいのだ。
「脅して連れて行ける奴らはクズだけだろうし、戦力にはならない……か」
「そう。実際ハメ組だけで解決できる問題ならそっちでゲットしてもらえばいいだけだし、無理なら殺しは延期で戦力確保作戦! どう、いいんじゃないかな」
サブとバラは納得の様子。しかしリーダーの意見を尊重するようだ。
「で、リーダーは?」
「俺らに序列はねーよ、その言い方はやめろ。しかし……試す価値はあるな。いいだろう、殺しは延期だ」