美しくあるために   作:ゲボ

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チアの秘密

「それから、ここにはもう一人捕虜がいるんだよね。別室で死なない程度に管理してるから、私の家に来たかったら同行(アカンパニー)磁力(マグネティックフォース)でその人のとこに飛んできて。後で会わせるから」

「抜かりないな」

「でしょ? あと……もしも裏切ろうものなら、私は何がなんでもあなた達を殺す。逆に私が裏切ったら、あなた達が必ず私を殺すこと。約束だよ? 大事な局面だったら私に爆弾をしかけてもらって構わない……それと、私の能力も教えておかないとね」

 黙って話を聞いていた3人に、私の手のひらを見せる。

「私の能力お手軽桃源郷(ユートピア)は、対象の皮膚に私の手のひらで触れることで発動できる。効果は、肉体、精神の鎮痛。体験したから分かると思うけどーー肉体の鎮痛は意識もあるし動かせるものの、感覚がほとんどなくなるからまともに立って動くことは至難の業。精神の鎮痛は、不安や恐怖が一切なくなって……なんだろうな、無敵な気分になるの。要は判断力の低下だね」

「発動条件はそれだけじゃないだろ?」

 さっき経験したばかりのゲンスルーが突っ込む。

「もちろん。手のひらで触れるだけなら1秒、握手で5分、ハグで30分キスで1時間……ってことにしてるけど最後のは嘘。本当はキスじゃなくて、()()()()()()()()()()()()()()のが発動条件。あなた達が私の血液を取り込んで倒れたのもこれが理由」

「でも1時間って、まだ経ってないだろ。それなのにどうして俺達は普通に動けるんだ?」

「それに精神の方の鎮痛とやらは感じられなかったが……」

 サブとバラが疑問を口にする。

「発動時間内なら、効果は何度でもオンオフが可能。そして肉体の鎮痛と精神の鎮痛は、どちらかだけでも両方でも発動できるの。今回は普通に話がしたかったから、精神の方はナシだったんだ」

 なるほど、と声が上がった。まだこの人達に与えられる情報はないかと考えていた時、ゲンスルーが口を開いた。

「お前の覚悟は分かった。俺のもう一つの能力も教えよう」

「ゲン……!」

 サブとバラが驚いてゲンスルーの方を見る。でもそれは非難の表情ではなく、珍しいものを見るような、そんな表情だった。

「チア、お前も俺達と同類だろう? ずっと猫被ってるみてえだが……組むことにしたんだ、もっとそのクズの部分を見せたらどうだ?」

 クズ、をやたらと強調して、ニヤリといかにも悪そうな表情で笑われる。同類、か。精神性もやってることも、まあ確かに同類ではあるだろう。

「同類って言うのは認めるけど……猫を被ってるってのはちょっと違うね。私は汚い言葉遣いは好まないの。言霊とかは信じてないけどさ、美しさは内面から、でしょ♡」

 わざとらしくにっこり笑ってみる。

「ハッ、ハハハハハ! お前ここ来てから何人殺したんだよ! 美しさ? ドブみてえな内面だろ」

「まー顔だけは綺麗だけどな」

「美しさを求める奴がやる言動ではないだろ」

「それは殺しや脅しがってこと? それが一番効率的で楽なんだから、機能美だよ。美しい自然の動物達だって獲物を殺して肉を食う……人間だってそう。今更自分の罪に目を背けて清廉潔白を自称するなんて、それこそ私には美しいと思えないけどね」

「すげー屁理屈」

「お前イカれてるな」

 3人はかなり楽しそうだ。これはとりあえず、良好な関係を築けたと言ってもいいのだろうか。

「あー、話が逸れた。一握りの火薬(リトルフラワー)……俺のもう一つの能力だよ。こっちは簡単さ、手で掴んだものを爆破できる。掴める大きさはバスケットボールぐらいだ。殺傷能力は命の音(カウントダウン)に比べて遥かに劣るが、相手への精神的な影響は大きい」

「それで爆弾魔(ボマー)か……。なるほど、ここみたいな閉じられた空間なら絶大な効果があるだろうね」

 話してくれてありがとうと笑って見せる。「一応これからは仲間だからな」と笑われちゃったけど。

「チア、お前珍しいぞ、ゲンが俺達以外を気に入るなんて」

「そうなの?」

「あいつ殺しと騙しばっかでまともな人間関係築かないしな。ま、俺達もだけど!」

 サブとバラが楽しそうに笑う。……本当に仲がいいんだなあ、この人達。子供時代からの友人だろうか。

「てかチア、お前何歳? 見た目はわけーけど俺たちぐらい強いだろ」

 バラが軽く聞いてくる。ゴン達ですら聞いてこなかったのに……。

「今年で32だよ」

「うっわ、俺達と同年代じゃん」

「それでその見た目か? 女は怖いな〜」

「あのなあ……念を習得してるだけで老化は確実に遅れるんだぞ? このぐらいならよくあることだろ」

「それにしてもだろ!」

 ……私がつけ入る余地はなさそうだな。まあ、この仲良しグループにプラス1としてでも入れてもらえただけラッキーか。

「ちなみにこの顔は整形。胸も豊胸。顔のケアも美容も毎日欠かさず行ってるし、メイクもヘアセットも毎日丁寧にやってるよ。それでも若く見られるのは嬉しいな♡」

 にっこり笑いかけると、サブとバラの顔がほんのり赤くなって目を逸らされた。ゲンスルーは呆れた様子だ。

「はー……お前ら、こんな奴に惚れんなよ。俺はそろそろ戻らないと怪しまれるから、もう行く」

「あっちょっと! ここに捕らえてる人に会っとかないと」

「ああ……そうだったな」

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