岩石地帯に着いた時だった。ゴンが私に改まった様子で声をかけたのだ。
「ねえチア、俺達と一緒にプレイしない?」
「え、一緒に……?」
この時を、待っていた。
舌舐めずりしたいぐらい嬉しいのを抑えて、きょとんとした顔を演じる。
「そう! チアってゲームクリア目指してないんでしょ? それに強いし、一緒に修行してクリアを目指そうよ!」
「私にデメリットはないけど……いいの? それで」
ビスケとキルアの方を見やる。二人とも肩をすくめて、「やれやれ」とでも言っているかのようだ。
「こいつ言い出したら聞かねーから」
「ビスケは……」
「あんたが逃げずに対価を払う人間だってのは分かったわさ。ある程度の信頼には値するわね。もちろん裏切ったらあたしがあんたを殺す。いいね?」
「い、いっ、いいの? 本当に?」
「ええ! あたしがいいつってんだからいいのよ」
喜び。演技とは違う本心からの笑顔が表面にまで溢れ出す。
「その代わり! ゴンとキルアの修行にはたっぷり協力してもらうわよ。そして一日一回だけ、あたしととの模擬戦を許可する」
「もちろん! 有望な若者二人を育てられてーーしかも先輩の技術を見られるなんてね。これ以上ない条件だよ」
「調子のいいこと」
こうして、私と彼らは晴れて
「あ〜……つっかれた……」
「お、チアおかえりー」
「すげーボロボロじゃん」
家のドアを開くと、サブとバラが呑気にテレビを見ていた。この二人は私の苦労も知らないで……。
私はあの後ゴンとキルアと何度も何度も何度も何度も組み手をさせられ、その後ビスケとの実戦形式での模擬戦。私はしっかり体を休ませたいからということで(そもそもアイアイに走るだけでだいぶ疲れるんだけど)夜は家に帰してもらえたけれど……。とにかく、やることが多すぎる。
「……ただいま。ゲンスルーは?」
「収穫があったそうだ。一坪の海岸線イベントの発生条件ーー!」
バラがソファからこちらを振り向く。私は汚れた体でソファに座りたくないから、軽くダイニングの椅子に腰掛けた。
「ビンゴだぜ、チア。条件はおそらく、同行を15人以上で使ってソウフラビへ飛ぶこと! 確かにこれは俺達4人じゃ達成できない条件だったな」
「そう……それで、イベントの内容は?」
それが……とサブが続ける。表情が少し暗い。
「レイザーと14人の悪魔だってよ。まず奴らのいる酒場に行って、そこの一人と戦う。勝てばボスのいるとこに通されて、本戦ってわけだ。内容はスポーツ。両チーム15人ずつ代表を出して、先に8勝した方の勝ちだとよ。しかし奴らの実力では一勝すら到底無理だったらしい」
「なるほど……ハメ組の連中だけでクリアするのは無理ってことだね。ハメ組がカードを独占しているのは周知の事実だろうし、そんな状況で分け前を貰おうと後から加入するプレイヤーの実力なんてたかが知れてる。おそらくこの条件を知ったのも私達ーーというかハメ組が初だろうけど、戦闘力も申し分ないであろうツェズゲラ組がこれを知っても、きっと彼らに協力する者はほぼいない」
ツェズゲラ組は私の知る限りで最もクリアに近いプレイヤーだ。バッテラの500億の報酬が消えでもしない限り、彼らに協力したい人間はそうそういないだろう。
「それで、ゲンスルーはなんて言ってた? 私達の戦闘力なら勝てそう?」
「ああ。ボスの実力は未知数だが、俺らには十分勝機がある! チア含め4人ーーイベント発生の為には最低でもあと11人必要だ。そして8勝する為には、実力のある者が少なくともあと4人」
「3人は目星がついてるよ。私が仲間のふりしてる3人」
「ガキだろ? 本当に大丈夫なのか」
「私が修行に協力してこんなにボロボロになってるの見てもそう言える? それと一人はガキじゃないよ。57歳だってさ」
「ご……っ!」
サブとバラが顔を見合わせる。一度盗撮した写真を見せたから、見た目からは想像できないんだろう。
「しかもプロハンターで私より圧倒的に強いんだもん。敵なら最悪だけど、味方にするならこんなに心強い存在もいないんじゃない?」
「それもそうだが……ハハ、すげーな、お前」
「ありがと♡」
それじゃあお風呂に入ってくるから、と席を外す。……この二人、あの一瞬こそ私を“女”として見たけど、あれ以降完全になんの気もないんだよなあ。
どうせなら枕でもして精神的な繋がりを持ちたかったところだけど。まあ、そうしなくとも仲間意識を持ってくれるに越したことはない……か。