ゴンとキルアの修行に付き合って、ビスケと模擬戦して……私は疲れ切った体のままアントキバに来ていた。もちろん、奇運アレキサンドライトのためだ。
合図として一瞬だけサブの鎮痛を『オン』にする。少しして、
「今日もボロボロだな」
「おかげさまで」
しかし向こうを強くしてる分、私も強くなっている自覚がある。
今回臨むイベントでは山賊に有金全てを渡し、尚且つカードも全て渡し、衣服すらも渡さなくてはならない。だから今日の服は捨ててもいい服ってわけだ。
「俺はこの辺で待ってるから、終わったら来いよ。聖騎士の首飾りを持って待ってるぜ」
「もちろん」
サブに大事なカードは全て渡し、私は山林へと向かった。
奇運アレキサンドライトをなんとかゲットした私は、サブと共に自宅に戻った。私を見たバラが開口一番「うわ、すげー格好」と言う。
「それ中どうなってんの?」
「しょうがないでしょ、服も渡さなきゃなんだから……。これはドロワーズ。中にちゃんとショーツ履いてるから」
「暑苦しそうな服だな」
バラはそう言うと自身のバインダーを整理し始めた。全くマイペースな奴らだ。
「あ、そーそーチア、ゲン曰く、やっぱりハメ組の奴らじゃどうやっても一坪の海岸線クリアは無理だって。あいつらも諦めたらしくて、クリアしたチームから奪う作戦を立ててる」
私の方をちらりとも見ずにバラは告げる。サブの方を見ると、詳細を付け加えてくれた。
「一坪の海岸線のカード化限度枚数は3枚だろ? 戦力も申し分ない15人をぴったり3組集めるなんてほぼ無理だ。それで仲間割れするのを見越して、防御スペルがなくなった頃を突こうって作戦だ」
「ふーん……確かにあの人たち、暴力は使わないって言ってたもんね。スペルか……」
なんとなく、自分のバインダーを開いてみる。他プレイヤーから強奪したスペルはいくらかあるものの、防御系スペルはあまりない。
「あの子達3人組ーーゴン組と呼ぼっか。ゴン組とココを私が繋いで7人にするとして、あと1人必要だね。最悪残りのプレイヤーは私が集めるとして」
「それって、傍目にはチアがゴン組の一員だから……ハメ組代表でゲン、ゴン組、そして俺とサブで3組。そういう風にカードを分配するってわけだよな?」
「そういうこと。問題はゲンスルーがハメ組の代表として出てきても疑われないかだね」
「それはないだろ。ただの決闘なら分かるが、スポーツだぜ。これがこういう理由で得意でーーとか適当な理由つければ納得される」
「それもそっか」
バインダーを閉じる。なんとなく作戦は立っているけど、実際蓋を開けてみないとどうなるかは分からない……。私は椅子に腰を下ろして、二人に向き直った。
「それともう一つ収穫。子供二人の能力が分かった」
二人の空気が一瞬で切り替わる。
「どんなのだ?」
「まだ未完成みたいだから参考程度にね。ゴンの方は、ジャンケンをモチーフにしたみたい。『最初はグー』でオーラを溜めて、『ジャンケングー』で殴る! タメが長いとはいえ、私達でも喰らうのはまずい威力だよ。チーとパーはまだ未完成だけど、チーはオーラを刀状に変化させて斬る能力、パーはオーラを放出する能力にするみたい」
「確かそいつ、強化系って言ってたよな? 隣に位置する放出と変化にしたわけか……理にかなってるな」
バラが嫌そうな顔をする。
「ちゃんとした師匠がついてるもん。まあ、こっちは分かってれば対策が立てやすい……問題はキルアの方! こっちも未完成だけどーー彼は、オーラを電気に変化させられる」
二人が目を見開く。そりゃあそうだ、この歳でオーラを電気に変えるなど、普通は到底不可能なんだから。
「……! 電気か……よくやるな」
「ああ。12歳前後だろ? どーいう教育受けてんだか……」
「実家が
脚を組んで、テーブルの上のクッキーをつまむ。サブとバラもなにやら思うところがあるようだ。爆弾を能力にするような人達だーー幼少期に何があったかは、なんとなく想像がつく。
「まーとにかく、そこそこの強さになったら一坪の海岸線イベントに誘おう。それで強奪、独占、ハメ組の爆破!」
「ああ……。ま、今俺たちにできることはちょくちょくプレイヤー狩りすることぐらいだけどな」
「それも大事な仕事でしょ」
ゲンスルーが私に爆弾を仕掛けていなかったように、まだハメ組内で爆弾が仕掛けられていない者もいるかもしれない。新たな犠牲者が出れば話題にも出しやすいだろう。
「チア……気をつけろよ」
サブが腰に手を当てて言う。もちろん、と笑って見せた。