「乾杯!」
三人のビールの缶と、私のプロテインシェイカーで乾杯する。そんなもん飲む空気じゃないだろと言われたけど、しょうがない。ていうか昼間から酒飲みたくないし。
「あ"ーっ、マジで久々だわ。超うまい!」
バラが椅子の背もたれにもたれかかって、飲み干した缶を雑にテーブルに置く。続いてサブもゲンスルーも、景気付けなのか派手に一気飲み。
「今急アルで死なないでよ」
「これぐらいで死なねえよ。チアも1缶ぐらい飲めばいいのに」
サブが私の前にビールを押し出すが、それを押し返す。
「こういうのって飲んだら止まらなくなるから。飲むのはホントにオフの日だけなの!」
「酒好きじゃん」
「お前ら、俺がいない間に随分打ち解けてるよな? なんだ、デキたか?」
ゲンスルーがニヤニヤして私達を見る。本当はそんなこと思ってない癖にさあ……。
「うわあーゲンサイテー! 女にモテないぞ」
バラがわざとらしく顔をしかめる。
「デキてたとして3Pはないだろ」
……まあ、サブとバラがそれを望むなら私はヤるつもりだったけどね、というのは言わないでおこう。
「ゲンスルーだって、ハメ組の誰かとデキてない確証はないよね〜」
私はプロテインを飲み干して空になったシェイカーを、テーブルにドンと置いた。三人でゲンスルーの方を見る。
「アホか、あんなカス共とヤるわきゃねーだろ! ったくあいつらと来たら今更金の分け前で揉めやがって……チア、お前もあいつらの爆破に立ち会えよ」
「そのつもりだけど……なんで?」
「あの瞬間が最高なんだよ。お前も好きなはずだ」
「ま、ゲンは5年も鬱憤溜まってるもんな」
「俺らは大して関係なかったけど」
あの希望に縋る顔が弾け飛ぶのが面白いよな、とゲンスルー。お前趣味悪すぎとバラ。俺らも好きだけどな、とサブ。三人はそれぞれ新しい缶を開けている。
うーん。これは私、大変な人達と組んでしまったかもしれない。
「そうだチア、お前の話しておかなきゃいけないことってなんだ?」
サブが改まって私に向き直る。この三人には、話しておこう……そう決めたのは私だ。
「私がクリア報酬に欲しいカードと、その理由」
「ほーォ、そういや聞いてなかったな」
ゲンスルーがテーブルに肘を付きながら私を見る。少しだけ、柄でもなく緊張で鼓動が速くなっているようだ。
「私が欲しいのは……マッド博士の整形マシーン。効果は言わずもがな分かると思うけど、要はなりたい顔があるの」
「なりたい顔?」
バラがそう言って飲みかけのビールの缶を置く。……一応三人とも、しっかり聞いてくれるみたいだな。少しだけ嬉しい。
「私の、親の顔。私結構貧乏な家だったんだけど……ママが村で一番美人でね、自慢だったの。まあ私が殺しちゃったんだけどさ」
「殺し癖はその頃からか」
「そうだね、私の初めての殺しはママ。で、そのママの顔こそがーー私の人生で一番美しい顔で、一番なりたい顔」
「だから整形マシーンがほしいと。……本当にそれだけか?」
ゲンスルーには分かるようだ、私が全て話していないことが。
「んー、それはまだ秘密♡ この先はもっと仲良くなってからね。私が話したんだから3人もなんか教えてよ」
「俺らが昔からのダチだってのは見りゃ分かるだろうし……」
「まあどうせ想像ついてるだろうから言っとくか?」
サブとバラがゲンスルーに確認を取る。いいぜ、と頷いた。
「俺らの住んでたとこ荒れてて、まー爆弾とか地雷とか大量にあったわけ。俺らは運良くどこも欠損せず生き延びたけど……死んだ奴らの方が多かったな」
バラが昔を思い出すように、それでも悲しむ様子も見せず淡々とそう言った。きっと思うところはあるだろう。それでもわざと感情を隠している。
「爆発を身近で体験してたら、そりゃあ強いもんは爆弾って思想になるだろ? だからこの能力を考えた。どうせ死ぬまで3人一緒だからな」
サブは笑って見せる。
「そっか……そうだとは思ってたけど」
改めて言われると、流石に私でも思うところがあるわけで。苦しみのない人生が悪いことだとは思わないけど……どうしてもそういう人には嫉妬してしまうから。才能と産まれもったモノで得している、あの子達みたいな人種も。
でもこの人達3人は私と少し似ている。分かり合えるとまで思うのは傲慢だろうから、少し、ほんの「少し」だけれども。
「チア、お前はクリアしたらどうすんの? また俺らとなんかするか?」
バラが私に問いかける。
「さあ……ママの顔になることだけが人生の目標だからね。もしそれが達成されたら、どうなるんだろう」
「だから金がいらないのか」
「でもあれ失敗することもあるだろ? そしたらどーすんだよ」
「それはもう死ぬしかないでしょ」
「うわ、極端ー」
サブとバラとの会話を聞いていたゲンスルーが、やっぱりお前おかしいな、と一言。
「俺にはお前の思考回路が分からねえよ。でも……面白い」
「私も、あなた達といると楽しいよ」
だって、気を張らなくていいから。ボロが出ないように気をつけなくてもいいから。
「ねえ、そっちこそクリア報酬どうするの? 500億はバッテラの依頼を達成する上での報酬でしょ。カードも向こうに決められちゃうんじゃない?」
「そりゃお前だってそうだろ」
にや、とゲンスルーが笑う。そう、その通り。バッテラが3枚欲しいカードを提示したら私達はカードを受け取れなくなってしまう。でも、恐らく……。
「2枚までは向こうにあげるとして、最悪1枠は交渉でなんとかするよ……金額が減ってもね。で、あとはその1枚を聖騎士の首飾りにして……」
「
「御名答〜。まあ、どうしても3枠じゃないと嫌だって言われたら最初っから実力行使に出なきゃ行けないかもだけどね」
やっぱり私達は気が合うようだ。
「でもさー、お前の欲しい整形マシーンってこっちで使ってから外に出ても効果は持続するんじゃねえの? 試したことないから分かんないけど」
バラが言う通り、私もちょっとはそう思っている……でも実験しようにも、こればっかりは勇気が出ないのだ。もしママの顔になれて、そのまま外に出て
「最終的に、それしか手段がなくなったら……試してみよっかな。ここには色々スペルカードがあって、魔法みたいな効果のものもあるけど……それは『この島限定』だからなんだろうし。それを現実に持って帰っても使えるのは、グリードアイランドをクリアするっていう重い制約の元……。普通に考えたらクリアしないまま外に出ても、効果が持続するとは考えにくい」
「そうだな。大天使の息吹もレアだからまだ誰も使っていないし……年齢とか体重は目に見えて分からない」
サブの言葉に、そ、と頷いてみせる。
「でも今は普通にクリアを目指してるよ。例え目標が今達成できるんだとしてもね。だって楽しいもん」
にっこり笑ってみせる。
「……長い付き合いになりそうだな」
「おっ、だってさ〜チア! ゲンが素直♡」
「は? 本当のこと言ってるだけだろが」
普段からのノリなのか酔いが回ってきたのか、バラとゲンスルーがじゃれ合っている。
でも長い付き合いか……うん、やっぱり、嬉しいな。
「簡単に死ぬなよ〜、チア。これが終わっても一緒に金稼ごうぜ!」
サブがへらっと笑って言う。……確かサブが操作でバラが放出だっけ? なんとなくサブとは波長が合う気がする。
「その時は大量爆破の仕込み、私にも手伝わせてね!」