「へー、それでキングホワイトオオクワガタ3枚も! すごいね」
「もっと取ろうとしたんだけどな、結局3枚しかカード化できなかった」
「独占できるカードはみんな独占したいだろうしね」
3人のバインダーを覗き込んで、集めた指定ポケットカードを確認する。
「それよりキルア、ハンター試験合格おめでとう! 確かゴンもビスケもプロハンターなんだよね? みんな先輩だ」
「チアはハンター試験受けてないの?」
ゴンの質問にうん、と頷く。与えられた仕事とかしたくないし。選挙とかあるらしいし。
「試験は気になるけど……ハンターになるのは何かと面倒そうだからね。別に特別なにかをハントしたい訳じゃないから、禁止区域にも入る必要ないもん」
「交通費とか浮くわよ?」
「でもライセンス狙う人がいっぱいいるんでしょ? 目立ちたくないよ」
「まあ倒しちまったらホントーは強いのバレるもんな」
「強いって言ってくれてるの? ありがとう♡」
「そうだけどそういう意味じゃねーよ!」
表面上はか弱い女の子を演じているから、確かに強いと思われちゃうのはまずい。ハメ組でだって、ジスパーと同格ぐらいには見せておいたけど、それ以上はわざと隠していた。あの時はゲンスルーの実力も未知数だったしね。
「あとチア、結構身長高いわよね」
「元が165ちょいなのと厚底で……170は越えてるのかな? まあ顔が可愛い分には、どれだけでっかくてもいいでしょ」
「親だと間違えられたりしてな」
「え〜、だとしたら見た目違いすぎて全員父親別じゃん」
そしたら私、傍目には娘(ビスケ)に自分と同じような服を着せてる母親に見えるんだろうか……? 嫌、だなあ……。
「ハイハイ、雑談はそこまでにして。次は南。ドリアスに行きましょ! 3つカードを入手できるイベントがあるらしいわさ」
さ、走るわよ! と促され、南に向かって走る。ギャンブル都市ドリアスは……私もまだ行ったことがないな。スタート地点のシソの木をさらに南下したところにあるらしい。
「すげーな、いつの間に」
「聞き込みよ! アンタ達が修行してる間ただボサっとしてたわけじゃないわさ。この姿だとプレイヤーも油断して結構話してくれたしね」
「なんて言ったの? 参考までに聞かせて欲しいな」
「もう帰りたいけど交換に使えるカードが1枚もないの……とか言ったりしてね♡ あんたもきっと使えるわさ」
きゅるんとした顔が可愛らしい。
「ありがと、先輩!」
「ちょっとぉ、その先輩って呼び方なんとかならないの?」
「いーじゃんババアより」
ゴッとキルアが殴られる。私としては実年齢より見た目派だから、ビスケの味方なんだけどね。
「ねえ、チアはいつ念を覚えたの? 俺たちぐらいの歳にはもう知ってた?」
口喧嘩するビスケとキルアを無視して、ゴンが私に話しかけてきた。ゴンとキルアぐらいの歳……私が洗礼を受けた頃だ。あんまりいい思い出でもないから、話したくないな。
「んー……確かそれぐらいかな、私が念を覚えたの。2人はどうやって覚えたの?」
「俺たちはウイングさんっていう師匠に念を起こしてもらったんだ! ええっと……色々あって時間がなくて、だから無理矢理起こしたんだよね」
「時間がなくて……って、それですぐ使えるようになったの?」
「使えるって言うか、そこで纒ができるようになったんだ」
「短時間で!? すご……『たち』ってことはキルアもだよね」
「あー、そうだよ。本来ならゆっくり起こすって言ってたけどな」
……笑っちゃうぐらい凄いな、この子達。それと同時にどうしようもないくらい劣等感とか、嫉妬心とか、恐怖が湧いてくる。……才能。もう生まれからして違う人種なんだ。
「ちなみにそのウイングって言うのはあたしの弟子だわさ。だからこの子達は弟子の弟子ね」
「すごい偶然だったよね!」
にっこりとゴンが笑う。ビスケは「あたしに出会わなかったらすぐ死んでた」と言ったけど、ゴンは笑って、
「でもそしたらチアが鍛えてくれたかもしれないよ! 俺より強いし、それに優しいもん!」
「いやそれはねーだろ。こいつハメ組だったし」
「あっ、それはそっか」
あまりにも純真無垢。今更罪悪感なんて感じないけど、この素直さーー真っ直ぐに向けられた信頼が少し怖い。どうして他人をそこまで信用できるの? 私のバインダーも確認せずに、私がただ修行に付き合ってるだけで信用して……騙してるかもしれないのに……。
その時キルアが「あれ」と声を上げた。
「明日って15日じゃなかったっけ」
「あ! アントキバの月例大会!」
「通るついでだしやってこうぜ」
「今は防御カードもいっぱいあるしね」
アントキバの月例大会……今月は聖騎士の首飾り、か。