「えっ、恋愛都市アイアイ? 私の家があるとこですよ。寄ってきます? そこでゆっくりお話しでもましょうか」
「家を持ってるのか!?」
「ええ……でもトレードでゲットしただけですよ」
私達は、ヒソカからの提案でまさかのアイアイに行くことになっていた。そこで家に来ないか提案したんだけど……あえなく却下。
「出会いを楽しむ目的だからね❤︎ 引きこもっていたら有力なプレイヤーに会えないかもしれないだろう?」
「出会いってあそこ……」
ゲームキャラとの恋愛か、くたびれた男プレイヤーしかいなくない? でもヒソカは特に変える気はなさそうなので、言わないでおいた。
話の流れでゴンキルアビスケが前を歩き、私、ゴレイヌ、ヒソカが後ろへ。
「オイちょっと前歩けよ!」
しかしヒソカの熱烈な視線を感じた2人が順番の変更を申し出た。懲りない様子のヒソカに、私は軽くため息を吐く。
「……ホントに狙ってるなら、そんな変なアピールしなきゃいいんじゃないですか」
「アピール? いやぁ……つい抑えられなくて、ね❤︎」
そう言ってヒソカは目を細める。私とゴレイヌは顔を見合わせた。
「あと9人は仲間がいるんだよね?」
「ああ。できればアンタみたくカードに執着がない人物がいいんだが。誰か心当たりはないか?」
「んーないねェ♠︎ みんな
「あら、私もですよ。今は彼らと協力してますけど……ここに残るのは修行が目的ですから」
にっこり笑う。向こうも目を細めた……が、な〜んか見透かされてる気がするな。
「ところで、さっき5人で飛んで来たのって誰かの能力かい?」
「ありゃこのゲームのスペルだよ」
「あーあれがそうなんだ♣︎ 確か店で買わなくちゃいけないんだよね♦︎ しかも何が出るか分からないってヤツ♣︎」
「ああ。40種もあるから目当てのカードを出すのも一苦労だ」
はー、そういうこと。
ビスケの『奴はウソをついている』の意味が少しわかった気がした。私には旅団がどうこうはどうでもいいけれどーー彼の言葉を信じるなら、ヒソカは今
少なくともヒソカは、
ハメ組に入らないのであれば、こういう情報はショップで聞くか実際に購入するかでしか手に入れられないーーまあ他の誰かに聞いたということも、可能性は低いが考えられなくはないけど。
つまりヒソカは一度マサドラに行った。
しかしヒソカは今マサドラにいない……こんな時間のかかりそうな提案も、ヒマだからと言って受け入れた。彼は、もう目標を達成したんじゃないか?
目標ーーつまり旅団員に会って、除念師を探し出すこと!
まあここまで考えたとして私にはなんの関係もないんだけどね。ゴンとキルアにだって伝えなくていいだろう。きっとじきに気づくだろうし。
「そういえばキミ達、名前は?」
「チアです」
「ゴレイヌだ」
「ふーん……チア、その肩っ苦しい喋り方、やめたらどうだい? 仲間になるんだろ❤︎」
「ああ、俺のこともゴレイヌでいい」
ゴレイヌは純粋に善意で言ってくれてるのが分かるけど……ヒソカからは「その喋り方は本当のキミじゃないだろ?」と言われているようで気分が良くない。
「じゃあ遠慮なく。ヒソカ、ゴレイヌ、よろしくね!」
「よろしく頼むぜ」
「よろしく♦︎ やっぱり、そっちの方がイイね……♣︎」
どういう意味なんだよ。
「見えてきたよ♣︎ 恋愛都市アイアイ❤︎」
アイーンアイーンと変な音が鳴る謎の街。しかし久しぶりに来たので、どこか安心している私がいた。
私達はアイアイの中をぶらぶら散策する。
「ここはいろんな出会いが楽しめる街なんだ❤︎」
「きゃん!」
その時、私達の背後から女の子の高い悲鳴が上がった。あー……定番中のド定番イベ。
「メガネメガネ」
「拾ってあげたら? 知り合いになれるよ❤︎」
「え」
ゴンとキルアがびっくりするのも頷ける。ここはグリードアイランドの中でも特に
「ああいうベタな出会いがテンコ盛りの街なんだ♦︎ あ、曲がり角気をつけて♣︎」
そうヒソカが言ってすぐ、ゴレイヌにぶつかった少女が「あイタ!」と声を上げる。
「ちょっとドコ見て歩いてんのよ!」
「ああ……スマン大丈夫か?」
「ったく気をつけてよね! きゃー! 遅刻しちゃう」
「ダメだよ謝っちゃ♠︎ 『そっちこそ気をつけろ』とか『お前の方からぶつかって来たんだろ』とか口ゲンカしないと今のコとは知り合えないよ♠︎ 第一印象最悪のところから徐々に仲良くなるキャラなんだから♦︎」
「たしかにベタだ……」
キルアはゲームに造詣が深いらしい。その後もビスケがイケメンのカットモデル探しに引っかかったり(私もされたことあるけど)、ダンダ団に絡まれた女の子をゴンが助けようとしてキルアとビスケに殴られたり……。
「ねえ、なんでこんなトコわざわざ連れてきたの? こうなるの分かってたでしょ」
「楽しいからね♦︎」
間髪入れずにキルアも声を上げる。
「なあヒソカ、ちょっと場所変えようぜ」
「そおかい? ここなら退屈せずに済むのに♠︎」
ほら、やっぱり。
それから考え込むキルアの様子を見るに……キルアもヒソカの嘘に気付いたようだ。
「チア、お前こんなところに住んでるのか? 気が休まらないだろ」
「外にいればね。でもどうせゲームキャラだから……無視したって断ったって心は痛まないよ」
「それにしても騒がしい街だがな……」
あと、起こるイベントが恋愛系ばっかりっていうのも分かりやすくて助かる。とりあえず身の危険はないしね。
「ヒソカ、バインダーのリスト見せてよ」
雑談していると、ゴンがそう話しかけてきた。
「リスト?」
「バインダーには今まで遭ったプレイヤーのリストが記録されてるから、その中にツェズゲラって人がいるかどうか見てほしいんだ」
そっか、ツェズゲラチームを誘うかもしれないのか……。これは頃合いを見て連絡しないとヤバそうだな。
「へェ……♦︎ それは知らなかったな❤︎ どうやって見ればいいんだい?」
「このカードを最後のページのとこに入れるだけ。そうすれば画面に名前が出てくるよ」
「ふーん❤︎」
ゴンにカードを渡されたヒソカは、ブックと唱えてバインダーを出す。
「ツェズゲラツェズゲラ……ああ、いるね♣︎」
「ホント!?」
「うん❤︎ ホラここ♦︎」
「どれどれ……あっ、あった!」
ゴンとキルアがバインダーを覗き込む。その間ヒソカが目を細めて、意味ありげな視線をこちらに送ってくる。
私の
「……うむ。確かにそれが現実的かもしれんな。ただし奴等が先にクリアした時の保険として、情報の見返りは約束させておこうぜ」
「じゃ、ヒソカこれ唱えてくれる? 交渉は俺達がするから」
「ヘェーこんな便利なものだったのか♦︎ ボクも使えばよかったな♠︎」
嘘ばっかり……。髪の隙間からヒソカの顔を睨む。
「
そうしてゴンとキルアがツェズゲラに話を取り付けて、私達はひとまず会うことになったのだった。