フリーポケットにある程度のお金とスペルカードを入れられ、私達雑用組は基本自由行動となった。ほとんどのカードがチーム内で揃っており、残りカードは他チームが独占or入手方法が分からないとのことで、私達がお役に立てることはほぼないらしい。
だから私がやるのは地道な金稼ぎとカードショップでの買い物、あとは聞き込みトレードその他諸々……。
特に私は戦闘力を買われたのか、トレード役を一度任された。聖騎士の首飾り(確か触れたスペルカードの呪いを解くとか)をつけさせられ、一人で向こうとカードを交換する。この際、力尽くでカードを根こそぎ奪おうとする輩もいるらしく、だからトレードをするのは主に雑用係のバインダースカスカな人らしい。
それに加えて戦闘力もないと、交換材料となるカードも奪われてしまうーーだから私が選ばれた。
私としては、見た目では相当ナメられると思うんだけどな。いかにも女の子、って格好にしてるのに。
てなわけで、真面目な私はちょこまかとカードを集めに勤しんでいる。もちろん手段は問わず、だ。
しかし目的は他にある。
「ぐ……っ、あ"……っ、な、なんのカードが目当てだ……?」
「No.70、マッド博士の整形マシーン。あるよね?」
「ああ……くれてやるよ」
目の前のボロボロになった男は、バインダーからカードを取り出そうとする。
「あ、まだいいよ」
「は……?」
「私の仲間にならない?」
「仲間?」
「そう! ちょっと協力してほしいの。もう痛いことはしないし、協力してくれるなら安全は保証しよう。それにNo.70以外はもらわない。……どうかな、悪い取引じゃあないと思うんだけど」
訝しげな視線。そりゃそうだ、さっきまで私にボコボコにされてたんだから。でも、彼に拒否権はない。
「…………分かった。何をすればいい?」
「ありがとう、ビクテム君……だっけ? ちょっと来て欲しいところがあるんだ」
「お、チアか。カードの引きはどうだった?」
「それなんですけど……
「……! 分かった、ニッケスを呼ぼう」
アッサムは目の色を変えた。すぐに
「チア、話というのは? それとアッサムは……」
「いえ、聞かれて困る話でもありませんし、どちらかというといた方が助かります」
「そうか。なら遠慮なく聞かせてもらおう」
私はブックと唱えてバインダーを開いた。そこにある全てのカードを彼らに見せる。
「このチームを抜けたいんです」
「……!」
少しの困惑。彼らは軽く目配せをした後、ニッケスが先に口を開いた。
「理由は?」
「私がここに来た理由は、お金もありますけど、カードを現実に持ち帰る為です。ここでクリアしても報酬の3枚は、きっと受け取れないでしょう? それにこのゲーム内限定かもしれませんが、私のやりたいことはクリアせずとも達成することができるようなので。それを知らないままここに入っちゃったのでーー分かった今、クリアを目指す理由がなくなりました」
「し、しかし! 俺らのカードの内訳や戦略を知っている以上簡単にはーー」
アッサムが割り込む。
「ですので、交渉です。私の指定ポケットのカード全てとフリーポケットのカードーー
「……つまり事実上のリタイアということでいいんだな?」
「ええ」
アッサムとニッケスが顔を見合わせる。
「一応だが、バインダーを見せてくれ。他のチームに加入した可能性もあるからな」
「分かりました」
これまで出会った人物を二人に見せる。しばらく眺めた後、頷いた。
「OK。脱退を認めよう。ただしーー俺達の戦略やカード情報が周りにも知られているとはいえ、誰にも漏らさないこと。いいな?」
「もちろんです」
「ありがとう。それではカードを渡してもらおうか。他のやつには俺達から言っておく」
「君のような戦力を失うのは痛いが……しょうがないな。ま、戻りたくなったら戻って来いよ」
「はい! 短い間でしたが、ありがとうございました」
二人の手を握った。