美しくあるために   作:ゲボ

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決着

「タイム!」

 ゴンがタイムを宣言して、内野の3人を呼んだ。

「あ、2人も来て!」

 外野の私とゲンスルーも呼ばれて、ツェズゲラやハメ組達のいるところにまで行ってしゃがみ込む。

「作戦でもあんのか?」

「作戦ってほどじゃないけど……。バックは俺が宣言するって言ったでしょ?」

「そうね。でもバックは内野が2名になってからって言ったはずだわよ?」

 ビスケの言葉にゴンが頷く。

「うん。俺らは言おうと思えば誰でもバックを使えるけど、向こうが言えるのはレイザーだけ……。13番を先に外野に送れれば、それだけでレイザーのバックを一回潰せたことになる」

「でもその13番の相手が難しいんじゃないの?」

 私が言うと、ゴンはその光の宿った目で私達を見た。

「だから協力してほしいんだ!」

 

「それでは試合再開です!」

 No.0の掛け声で試合が再開される。

「ヒソカ!」

 ヒソカからゴンにボールが投げられる。それをパシッと受け取ると、ゴンは静かに深呼吸をした。そして“ジャンケン”のポーズでボールにオーラを込める。

「外野から狙う気か?」

 レイザーは迎撃体制だ。

「最初はグー……!」

 物凄いオーラ量……! そして練り出したオーラが全て拳に集められていく。

「すご〜……避けたほうがいいんじゃないですか?」

「冗談だろ?」

 レイザーが笑う。

「ジャン! ケン!」

 

 ……ダンッ。

 

 その瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()に全員の視線が集まった。

「No.13、アウトー! 外野に移動です!」

「よおおしっ! 当たった!」

「これであと1人!」

 そう、これはトリック……!

 ゴンのオーラに気を取られているうちに、ヒソカが事前に仕込んでおいた伸縮自在の愛(バンジーガム)でゴンが持っていたボールを天井まで移動。(これは作戦会議中に付けさせて隠で隠していた)

 あとはそれをNo.13の頭上に落とすだけ……!

 わざわざ全員に作戦を伝えたのは、視線でボールの行方を悟られない為。私が途中話しかけたのも意識をこっちに向ける為。ぶつかった後のボールがどこに転がるかは賭けだったけど……残念。ゴンチームの内野には行かなかったようだ。

「……フン、トリックとは一本取られたな!」

 レイザーがボールを拾う。まずい……!

 そのまま一直線にシュート。狙われたキルアはとっさに避ける……と、またしてもボールが直角に曲がった。

 ビスケとヒソカが避け、それを向こうの外野がキャッチ。あわよくば3人同時に倒そうとしたらしい。

「ビスケ選手、アウト! 外野に移動です」

「あああっ! 避けたと思ったのに……!」

 ビスケのスカートに、ほんのわずかにボールが当たったらしい。観戦組から残念がる声が聞こえる。

「バック!」

「ゴン選手バックを宣言(コール)! 内野に移動です!」

 何やら()()た様子のゴンが内野に歩いていく。まあ、あんなシュート見せられたら……ね。私の時もそうだったけど、もしボールが曲がる側に避けていたら? ガードが不十分のままボールが当たって、その勢いで隣の選手にまでぶつかっていたら……?

 被害は計り知れない。

「どーすんだよ、またアイツから取り返さなきゃダメだぞ」

「ちょっと……」

 ゴンがヒソカとキルアに何かを耳打ちした。作戦だろうか?

「……なるほど、それは面白い❤︎」

「んー……けどちょっと自信ねーな……」

「そお? でもボクは是非やってみたいね❤︎」

「ったく、オメーはいっつもとんでもないこと考えつくよな」

「へへへ、頼むよキルア」

 何をする気か分からないけど、策があるんだろう。とにかくこっちの内野は3人、対する向こうはレイザー1人……! バックは封じてある。最悪ダメでも、何かまた小狡い手を使って当てればいい話(ゴンは納得しないだろうけど)。

「それでは試合を再開します!」

 No.0が宣言してすぐ、外野のNo.4がレイザーにパスした。

 するとレイザーはパチっと指を鳴らす。

「レイザーの念獣が……消えていく!?」

 オーラがレイザーに戻っていく。……これで、やっと彼の本気というわけだ。

「分散していたオーラを自身に戻した♦︎ 次が本当の全力というわけか♣︎」

 レイザーが片手にボールを構える。禍々しいほどのオーラ……!

 そのまま彼は一歩踏み出すと、ボールを上に投げた。あれは……バレーのスパイク!?

「おいっあっち!」

 外野の声にゴン達の方を見る。腰を低く構えボールを受け取る姿勢のゴン、それを覆うヒソカ。間には2人を支えるキルア。

「レイザーはバレーのスパイク!」

「かたや3人! あれはまさに……」

 ……合体!

 レイザーは宙に放り出されたボールをジャンプして思いっきり打つ。物凄いスピードでそれはゴン達の方へ飛んでいくーーインパクトの瞬間。

 ゴンが球を止め! ヒソカが覆い! キルアが支える……!

 その威力で3人の体が押される。しかしエリア外に出てしまえばアウトだ。止まれるか……!?

 

 ……動きが止まる。

 ゴンの足元に、ポタポタと血が落ちた。

「うおおおーー!! 止めたァーー!!」

 はは……すご。

 思わず笑ってしまう。なんて技術。なんてセンス……!

 ゴンは球を止めるため、手にオーラを全て集中。あの球にビビって怯まず、正確に球を捉えた精神力と集中力は彼ならではだ。

 ヒソカはインパクトの瞬間に伸縮自在の愛(バンジーガム)で球を包み込み、取りこぼしを防いだ。素早く強力な能力発動技術がなければ、ボールはさっきのゴンのように飛んでいってしまったはず。

 そしてキルア!

 2人の間に挟まれ、クッションと踏ん張りの二役をこなしたーーオーラの攻防力移動によって……!

 もしもキルアの体のオーラが少なすぎればクッションの役目を果たせず、球の衝撃によって3人とも大ダメージを受ける。逆に足のオーラが不十分だったら、踏ん張りがきかず球の勢いに負けて3人とも外野へ吹き飛ばされていただろう。

 体と足への攻防力を何対何で振り分けるか……おそらく誤差1%以下の精度を要求されていたはずだ。

 今でこそ私は経験と修行によって、かなり攻防力移動が上手くなった。……それこそ得意分野と言えるレベルまで。しかし今のキルアの役割は、それこそ数年前の私ならまるでできなかったレベルの大役……!

 それをキルアはこの歳でやってのけた。

 経験と、センス。経験なんてほとんどないだろう。あれは天性のモノだ。

 彼らがなんとかしてくれないと一坪の海岸線はゲットできないから、これは喜ばしいことだけど……。私にはこれを素直に褒め称えるだけの精神力はない。あるのは嫉妬と恐怖だけ。

 やっぱり、彼らを出し抜いて勝ってやりたい。私に才能なんて何一つないのだから……!

「キルア」

「わーってるって」

 キルアがボールを構えた。

 ゴンはその前で……オーラを練る!

 肌がビリビリした。窓が揺れる。

「な……んと……いう……」

 誰かの唖然とした声がする。……私も同感だよ。

 こんなの、信じたくないなあ……。でもゴンって、凄いハンターの息子なんだっけか。産まれからして、才能からして、全部違うんだ。

「キルア。全力で行くよ」

「ったりめーだ。エンリョしたらぶっとばすぞ」

 ゴンも腰を落とし、拳にオーラを込める。

「最初はグー!」

 その爆発的なオーラが全て拳に集中した。……これは、凄い威力になるぞ。

「ジャン! ケン! グー!!」

 ゴンの拳がボールを押し出す! 避けるか? 捕るか……? 奴は避けない。かと言って捕れば威力でエリア外まで押し出されてしまうだろう。

 レイザーはレシーブの構え!

「レシーブか!」

 レシーブで球が上がれば、ヒソカに引き寄せられるはず。いや……違う!

 レイザーは腕にオーラを集中。そして()()()()ボールを弾き返した。

「な……!」

「そのままはじき返した!」

「ゴン! よけろォ! それでも勝てるんだァー!」

 いや避けない! ゴンはそんな勝ち方は望まない……! かと言ってこのまま倒れるほどオーラを使い切っていないだろう。

 その為の準備。その為の私の能力。

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 精神と肉体、両方の鎮痛をオン。ゴンはボールを前に、まるで気絶したかのように倒れ込んだ。気絶……ゴンも周りもそう思うだろう。それでいい!

「まだだね❤︎」

 ヒソカが両手間に伸縮自在の愛(バンジーガム)を張ってボールを待ち構える。なんで、そんなこと!

「なっ……なぜわざわざ〜〜〜〜〜ッ!」

「カンペキに勝つ♣︎ だろ? ゴン❤︎」

 ヒソカの伸縮自在の愛(バンジーガム)にボールが突っ込む。その威力にゴムが伸び……反動で! 弾き返した。

「うおおおッ」

「また弾き返したァァーー!!」

 ラリーの応酬か……? でも、そんなの、いずれ捕られて終わる……!

 レシーブの構えをしたレイザーの腕にボールが当たる。しかし球は離れなかった。

伸縮自在の愛(バンジーガム)は……ガムとゴム両方の性質を持つ♣︎」

「う、お、お、おおおッ!」

 ギューーッと音を立ててレイザーの体が後ろに滑る。そしてそれは……内野をはみ出しーー外野で止まった。

「レイザー選手、エリア外に触れた状態での捕球は反則! アウトです! よってこの試合ーーゴンチームの勝利です!!」

「うおおお!!」

「すげーぜお前ら!!」

 観客が沸いている。鎮痛を解いたゴンも、意識を取り戻したようだ。本来なら苦痛を取り除くだけーーそれこそ精神の()()だけなんだけど、極度の疲労状態の今、強制的にボーッとさせられた頭では何も考えられなかったことだろう。

「勝ったァ、勝ったんだ!」

「え……でも、最後……どうなったの!?」

 私もほっと息を吐き、ゲンスルーと軽く目配せする。良かった……とりあえず、私達は負傷なしでのクリアだ。

「そっかヒソカが決めてくれたの……」

「結局おいしいトコは全部持っていかれたな」

「みんなの力があったからだよ♣︎ 全員(チーム)の勝利ってやつさ❤︎」

「何かそのセリフ似合わないよ」

 ゴン達の会話を遠くから眺める。……やっぱり私とは違う人種だな。

 そこへレイザーがやってきた。その靴はボロボロだ。

「負けたよ。約束通り俺達は街を出ていく。その前に、ジンについて質問に答えよう」

 

「キルア、手怪我してるでしょ。見せて」

「げ……でも一発だけだから大したことねーよ!」

「そーかもだけど! 手当てするよ」

 ゴンがレイザーから話を聞いている間、私達は全員で集まっていた。

「ゲンスルー! 何事もなくて本当に良かったよ」

「外野だったからな」

 ゲンスルーがニッケス達に話しかけられている。……そっか、まだ仲間だもんね。

「ったく、まだ元に戻る怪我で良かったわさ!」

「つ〜〜〜〜〜ッ!」

 キルアはビスケに包帯を巻かれている。まあ、一発だけだからまだ重症じゃないけど……オーラをほぼ0の状態であの球を受けるなんて、正気の沙汰じゃない。

 ゴレイヌもすっかり目を覚ましたようだ。顔は腫れているけど、特に吐き気もナシということで……。私達の一坪の海岸線攻略は、死者はゼロで終わったのだった。ボポボは死んだけど。

 

 

「灯台もと暗し。入り口はあいつらのすぐ近く……この灯台にあったってわけ。ここがそうよ」

 私達は酒場を教えてくれた女性に案内されて、灯台の中を登っていた。あんまり大人数は行けないということで、ゴン組からは私達4人……そしてツェズゲラ、ゴレイヌ、ハメ組を代表してニッケスとゲンスルー。

「窓……?」

 案内されたのは灯台の一番上ーーそこの窓だった。

「確かにここからは海岸線が見えるが……」

「ここからどうやって『海神の棲家』に行くんだよ?」

 ツェズゲラとゴレイヌが言う。すると、彼女は窓から身を乗り出し窓の下の煉瓦をひとつ押し込んだ。

「こんな所にスイッチが……」

 一筋の光が海を照らす。

「この光が指し示す海面の真下……そこに海底洞窟があるわ。でも本当は財宝なんてないのよ。ダマすようなマネをしてごめんなさい」

「そうなのか?」

「神聖な洞窟だからごく少数の漁師しかその場所を教えてもらえない。そこから一人歩きした勝手な噂だもの。財宝伝説なんて……。もちろんそう言ってもレイザー達は信じなかった。場所を教えてたら……そうは思うけど、それでもあいつらは別の場所を教えたと考えるかもしれないわね」

「ってことは誰も言わなかったの? レイザー達に『一坪の海岸線』の場所」

「もちろんよ。神聖な場所だもの。海に生かされている者が海を汚すような真似はできない。みんなそう言って殺されていったわ」

 ゴンが神妙な面持ちをする。

「ようやく又ここから海を見ることができるのね。昂る朝日……漁から戻ってくる舟……七色に変わる水面(みなも)……。私にとってはこの景色が何よりの宝……」

 その瞬間、このワンシーンを切り取るかのようにボンッと音が鳴り、カードが出現した。

「よし! 『一坪の海岸線』ゲッーーえっ?」

「はぁ……ッ!?」

 ゴンの体に伸縮自在の愛(バンジーガム)が巻き付く。気付いた瞬間には、私とゲンスルーとニッケスを置いてーー彼らは窓の外に飛び出していた。ゴンだけは伸縮自在の愛(バンジーガム)で無理矢理引っ付けて!

同行(アカンパニー)オン! マサドラへ!」

「なっ! なんで……、はぁあ〜〜〜〜〜ッ!?」

 ツェズゲラがそう唱えて……彼らは、行って、しまった。

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