美しくあるために   作:ゲボ

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裏切り

 灯台には私とゲンスルーとニッケスが取り残される。

 どうして……?

 怪しまれるような行動をしただろうか? でも、今のところ決定的な動きはしていないはず……!

 見た限りゴンはヒソカの伸縮自在の愛(バンジーガム)で無理矢理連れられていた。つまり何も知らなかったということ……。

 おそらくゴンは嘘が下手だから、事前に誰かが私のことを疑ってーーそれを仲間内で共有したんだろうけど、ゴンにだけは言わなかった。一坪の海岸線攻略前に仲間割れするのはまずいと判断して、行動に出なかったのだろう。特にゴンが本気を出せなかったらまずい。

 同行(アカンパニー)を唱えたのはツェズゲラだ。となると、ツェズゲラが私のことを最初に疑ったのだろうか?

 ずっと私と行動を共にしていたビスケやキルアがいきなり私を疑うとは考えにくい。ヒソカは私が裏切り者だろうとどうでもいいだろうし……ゴレイヌも、そこそこ行動を共にしているのと、積極的に人を疑うタイプではなさそうだ。ハメ組を警戒しての行動の可能性ももちろんある。けど、それならゴンに伝えていたっていいはずだ。

 やはりツェズゲラか……? ぐ、と奥歯を噛み締める。

「あいつら……! 確かにイベントが終われば俺達は敵だが……だからと言ってここまであからさまにしなくてもいいだろう!?」

 ニッケスが声を荒げる。そうだ、この人達にとっては何ら不思議な状況じゃないわけだ。裏切りがバレたと分かっているのは私とゲンスルーだけ。

「まあ落ち着け、ニッケス。明日全員を集めよう。そこから作戦会議だ」

「ああ……。ところで、俺達はともかく、どうしてチアまで?」

「あはは……元チームメイトってことで、スパイかと思われちゃったのかもしれませんね。それにしてもこの扱いは傷つくなぁ」

 とりあえずみんなの元に戻りましょう、と灯台を降りる。きっと残ったツェズゲラ組の連中も綺麗さっぱりいなくなっていることだろう。

「ニッケス! ゲンスルー! そっちもいなくなったのか!?」

 砂浜に出ると、ハメ組の連中が駆け寄ってきた。ジスパーが慌てた様子でニッケスに言う。

「ああ。一坪の海岸線を手に入れた瞬間、窓から飛び出して同行(アカンパニー)で飛んで行ったよ……。とにかく、明日全員を集めよう」

 警戒されているままゴン達の元には戻れないし……ここらでお別れか。そろそろ家に帰ろうかなと思っていたら、ニッケスに声をかけられた。

「チアはどうするんだ? 確かに君は一度チームを抜けたし、おそらく成功報酬のカードは手に入らないだろうがーー君の一坪の海岸線クリアへの貢献は大きい。もう一度うちに入らないか?」

 おい、とアッサムが止める。この人は分け前を重視してるから、わざわざ金はいらないと言っている私を入れたくないんだろう。入るつもりもないけど。

「遠慮しておきます。それに私、そんなに大したことしてないですし……でもまた()()()()機会があったら呼んでくださいよ。無償で協力しますので♡」

 まるで慎ましくてお淑やかな女性みたいに笑ってみる。ゲンスルーが一斉爆破を決行するのは明日だ。

「じゃあ私もう帰りますね」

「ああ、また機会があればよろしく頼むよ」

 彼らから少し離れてバインダーを出す。

再来(リターン)オン! アイアイへ!」

 

 

 彼らと別れて、ふうっと息を吐く。本当はアーニー君のとこ直接飛んで帰宅と行きたかったけど……人前でできないしね。

 一坪の海岸線攻略が終わり……ゴン組との対立が始まった。そしてハメ組の爆破は明日! そうすればこちらの手持ちはかなり増える。

 夜になり昼とは違う活気を持ち出したアイアイを、私は1人まっすぐ歩く。ここはホテルやらなにやら多くて……立ち止まればすぐそういうイベントだ。夜は特に。

 私は自宅の前に立つと、一応周りを確認してから中に入った。

「ただいまー」

 独り言のつもりで呟くと、中から2人の「おかえり」が帰ってきた。

「あれ、いたんだ?」

「お疲れ。俺らは今日コレやってたんだよ」

 リビングに入ると、サブがジャラッと音の鳴る袋を持ち上げた。

「闇のヒスイ。ツェズゲラ組が一坪の海岸線攻略で気付いてない間に独占してきたんだ」

「ゲイン対策で余分に採ってきたからこんなにあるってワケだ」

 そう言う2人はバインダーのカードを整理している。私は冷蔵庫から炭酸水を取り出し、ダイニングの椅子を引いて腰を下ろした。

 疲れた……。心身ともに。

「チアこれ持っといてくれ。フリーポケットに空きあるだろ?」

 バラに何枚かスペルカードを渡される。

「あるけど、なんで?」

「俺らはこれから現実に戻らなきゃならないからな。同行(アカンパニー)とか離脱(リーブ)とかの有用なカードが消えるのは困る」

「あ、それと闇のヒスイもな。明日の交渉は誰かの指輪にカードを全て入れさせて、外で渡させるって内容だから……俺達どっちかのバインダーをカラにしとかなきゃダメなんだ」

「そういうこと」

 そうして私は、彼らのダブりカードとほとんどのスペルカードを譲り受けた。これで闇のヒスイ独占(まあ今はハメ組が1枚持ってるから独占じゃないんだけど)がバレたところで、ゴン組と決裂した私には関係ない話だ。

「それと……ゲンから聞いたぜ。あいつら、お前の正体に気付いたかもしれないんだろ?」

 バラがバインダーの整理を終えて、同じく椅子に座った。サブはソファに腰を下ろしてこちらを振り返っている。

「情報の伝達が早いね」

「まーな」

 コレ、と携帯を見せられる。そっか、これでゲンスルーはアイツらといる時でも連絡ができるんだっけ。

「ゴンは無理矢理連れてかれたって感じだった。でもそれ以外はどう見ても自主的に飛び退いてたよ。私をハメ組要因と警戒してかーーそれとも、本当に()()()()ってバレたのか……」

「どっちにせよ、お前がその後接触しなかった時点で決まりだろ」

 サブが言う。

「まあ、ね……」

 本当に私になんの心当たりもないのなら、磁力(マグネティックフォース)で会いに行くなり交信(コンタクト)で連絡を取るなりしたはずだ。それをやらなかったと言うことは……と、向こうも今頃思っているだろう。

「とにかく今日は休め。そんで明日、お前もしっかり見届けろよ! なんてったって5年も待ったんだからな」

 バラが私の背中をバシッと叩いた。それから、顔色が悪いんだよと2人に突っ込まれる。だって私、予想外の出来事で取り乱しまくりだし……。

「……うん。楽しみにしてる」

 そう言って私は無糖の強炭酸を飲み干した。弾ける喉の刺激に、気合いが入るような気がした。

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